【2009年全日本総合選手権~最終日~やはりルネサスは強かった】

【決勝戦:ルネサスv.s.トヨタ~勝利への執念で上回ったルネサスが総合7連覇を達成!】

【試合番号:31(決勝戦)】
トヨタ自動車  000 0000 1・・・1(3安打2失策)
ルネサス高崎  000 0000 5・・・5(8安打2失策)
トヨタ:●アボット-渡邉
ルネサス:○上野-峰
(本)乾
(二)ワトリー

 

~ルネサスの執念~
最後は乾のサヨナラ満塁本塁打という信じられない結果で幕を下ろしたが、乾の本塁打は言わばオマケ。そこに行く過程におけるルネサスの勝利に対する執念は見事という他はなかった。
延長タイブレーカーに入った8回表に1点を入れられたルネサスはその裏、二塁に城戸を置いて1番の山本がキッチリと送りバントを決め、1死三塁の形を作る。ここで打者は2番の大久保。この場面でルネサスは初球からスクイズを選択する。高めのボール球、見逃せば暴投になったのではないかというような投球にバットが当たりファールになる。初球をファールにしてしまったことで作戦がどう変わるかと注目したが、ここから先の作戦に対する強い意志がルネサスの連覇に繋がったといっても過言ではない。
2球目も同じ作戦。豪腕アボットに対し大久保は1球目と同じく最初からバントの構え、城戸もスタートしたが結果はファール。2ストライクと追い込まれてしまう。1球ボールを挟んだ後、ここで宇津木監督はタイムを取り、打者大久保と走者城戸を呼び寄せ作戦を直接伝える。選択した作戦は全く同じ、スクイズだった。スリーバントになることから走者がサインミスすることを恐れ直接サインを伝え徹底し、打者大久保に対しては「死んでもいいからバットに当てて転がせろ!」くらいの気合を入れたのではないか。
4球目、アボットの速球に今度は大久保がバットにしっかりと当てたがその打球が強烈に跳ね返り、前進しかけたアボットの頭上を越えピッチャーズサークル後方に落ちる。スタートを切っていた走者城戸も一瞬躊躇するが、無人のグランドにボールが落ちるのを見届け生還。同点にするとともに、逆転のランナーも塁に残った。
確かに幸運といえば余りにも幸運な打球であった。普通なら小フライとなり完全にダブルプレーで試合が終わるような場面。第7節の織機戦でも田中幹子のバントした打球が強烈に跳ね返り、三塁の頭上を越えてヒットになって点が入ったことがあったがそれとまるで同じ打球。アボットの剛速球が災いして普通ならあり得ないような状況になったのだ。しかしこの場面、3球スクイズを徹底させた執念があの打球に繋がったような気がしてならない。
<1死三塁、ツーストライク、作戦を徹底させるルネサスベンチ>


<大久保の上げてしまったスクイズの打球は幸運にも投手の頭を越える内野安打に>

次の打者は勝負強い峰。連投の疲れが出始めこの試合後半から空振りをあまり取れなくなってきたアボットから峰がレフト前にクリーンヒットを放つ。
もう一つ、ルネサスの執念を見れたのはこの場面である。明らかに無理なタイミングだったが、一塁走者の大久保が迷うことなく一気に二塁を蹴って三塁に向かう。タイミングからは完全に暴走。しかし、こういう試合ではとにかく必死で前に前に進んだ方が絶対に勝つ。進めば相手も焦り、何かが起きる。
トヨタの名手小野が三塁へ力強い送球、コースはストライクもバウンドが中途半端になってしまう。坂元が体全体でキャッチし体と腕でボールを押さえたまま走ってきた大久保に体ごとタッチしにいく。アウトのタイミングだったが大久保も激しく体当たりし、坂元が痛恨の落球をしてしまう。1死一三塁の絶体絶命のピンチ。その後、アボットは岩渕をまさに執念で捕邪飛にうち取ったが、恐い三科を歩かせて満塁にしたあとで乾にサヨナラ満塁本塁打を浴びたのだ。
1死三塁でみえみえの場面で(一つボールを挟んだが)3球スクイズを徹底させた作戦に対する強い意志、1死一塁からのレフト前で明らかに無理なタイミングながらも執念で三塁を狙った大久保の走塁、この二つのプレーに、ルネサスの強さが凝縮されていたように思う。

 

~乾勝負か三科勝負か~
さてその乾の本塁打に繋がる前、2死一三塁で三科を迎えた場面での作戦も一つ大きなポイントであった。三科と勝負していたらどうだっただろうか、というのはわずかながらにもある。1点取られたら終わりの場面で強打者三科を歩かせるのはセオリー的にも当然だし、多くのチームがそうするだろう。ただ今日は三科がノーヒットで前の打席三振、乾は前の打席でアボットのチェンジアップを巧くセンター前にヒットしている。満塁にした時点で高めのボールになるライズを振らせる配球が難しくなり、ストライクゾーン内での勝負を強いられる。捕手として一流の乾ならその当たりの配球も読みきって思い切ってフルスイングしただろう。
ただアボットもあの1球は完全に失投だろうが、乾の思い切りのスイングが完全に上回ったのは事実だ。
<最後に試合を決めた乾のサヨナラ満塁ホームラン>

~トヨタも勝ちに対する強い気持ちは見せたが・・・~
トヨタ側としてはあのもらったような1点でやはりそのまま勝ちに持ち込みたかった。
延長8回、1死三塁として打者は8番の小野。転がったらゴーのサインで放った打球は一塁へのゴロ。代走の若月が果敢に本塁を狙うが、不運にもこの場面に限って強い打球となってしまいホームは楽にアウト。しかし、走者としてはここは行くしかなかった。トヨタも積極的に必死に点を取りに行くしかないのだ。しかしこれで2死1塁となり、チャンスが潰えたかと思えたが、ここでトヨタは取って置きの代打藤崎を送る。
前日は同じような場面で、バークハートから藤崎が死球を奪い、ワトリーが決勝のスリーランを放っている。この場面も藤崎が右肘に死球を当ててチャンスを広げ、ワトリーに繋いだ。ツーストライクと追い込まれながらもスラップで当てた打球がワンバウンドで上野の頭を越える。ショートが捕球しベースカバーのセカンドに送球するもセーフになったがこの時、タッチに行ったグラブからボールがこぼれセンター方向に少し転がってしまう。
三塁をまわりベースに戻りかけた小野がこれを見て一気にホームへ。この場面もタイミング的にはアウトだったが、やはりここは絶対に突っ込まねばならない場面だろう。二塁からの送球がショートバウンドとなり峰が捕球できず、小野が待望の先制のホームを踏んだ。この執念の走塁で、一時はトヨタの優勝がかなり現実的なものになっていたのだが勝ちに対する執念ではさらにルネサスが上回ったのだった。

 

~トヨタのリーグ優勝に向けて~
さて当たり前のように7回無失点に抑えもはやニュースにもならない上野の好投であるが、内容的には8回を被安打3、しかもワトリーに3本打たれただけという完璧な投球内容だった。一方のアボットも7回無失点と貫禄の投球だったが、やはり連投の疲れは明らかで終盤目に見えてボールの力が落ちたところにルネサスの打者から連打を浴びた。さらに先にも書いたように、やはりイリーガルピッチに関する厳しいチェックの影響もあったのではないか。明らかに球の勢いがなかった。
ただ最後に打たれたのも峰、乾という右打者。18奪三振の記録を作った前日の織機戦でも、実は右打者には結構ヒットを打たれていた。外に逃げるカーブが決まれば左打者は全くバットに当てることすらできないが、強豪チームの右打者に対しては決して「絶対的」な投手ではないのかも知れない。
ほぼ決めている決勝トーナメント進出で再びルネサス、織機と当たることを考えると、この右打者対策は急務だろううし、逆にアボットと対するチームは右打者をどう並べるかがかなり重要になってくるだろう。
トヨタとしてもう一つの大きな課題は打線。今回の総合は完全にワトリーにおんぶに抱っこ状態だった。いくら上野やバークハートが良い投手とはいえ、打たないとリーグ優勝はできない。上野相手には左打者の前園がもっとかき回し、藤野や藤崎、伊藤などの実績のある打者がどこかで1本必ず打たないといけない。
それから若い鈴木や坂元ももっと思い切りのいいフルスイングをしてもいいのではないか。球筋を見るためかも知れないが、坂元などはバントの構えやスラップなど細かい揺さぶりをしていたが逆に早めに追い込まれる結果になっていた。織機のキャプテン小森由香は、恐れるものが何もないかのようにがんがん振り回し、常に決勝トーナメントでは上野からヒットを放ち結果を残してきた。あのような打者が一人でも二人でも出てこなければ、上野相手にはまた同じように助っ人二人に頼りきった試合になってしまう。
とにかく今年、ルネサスの連覇を阻止する最右翼はトヨタなのだから、これから1ヶ月半は上野対策を徹底して決勝トーナメントに臨んでもらいたい。

 


 

【試合番号:29(準決勝)】
レオパレス21 100 0000・・・1(2安打0失策)
ルネサス高崎 011 0000・・・2(4安打0失策)
レオパ:●ティンチャー-ティッカム
ルネサス:○上野-峰
(本)三科(ル)
(三)河野(レ)
(二)関、峰(ル)

ルネサスとトヨタの決勝戦では積極的な走塁が試合を動かし試合を決めたが、この試合のレオパレスはその逆であった。
初回、永吉がセンター前で出ると河野の打球はレフト線へ。これを前進してきたレフトの関がハーフバウンドを取り損ねて後逸してしまう。一塁走者永吉が余裕でホームに返ってきたが、打者走者の河野が無難に三塁でストップしてしまう。
この消極的な走塁が、レオパレス敗退の大きな原因だっただろう。
確かに初回1死の場面でホームに突っ込むには微妙なタイミング、しかも次の打者は4番のティッカム。三塁ストップは野球などではセオリー通りかも知れないが、しかしそこを突き破らないと上野には勝てない。
しかも打球はレフト線に転がっており、いい返球が戻ってきても打者走者の河野と重なる確率も高い。もちろん中継の乱れも考えられるし、それ以上にいくらティッカムといえど上野から得点打を放てる可能性は低い。
後続が倒れて結果的に1点差負けしたからというのではなく、状況を考えてもあの場面は、何が何でもホームに突っ込まなければいけない場面だった。
もともと足を使うのが得意なはずのレオパレスとしては、あの走塁は残念でならない。あそこで河野が突っ込んでいたら、それぐらいの積極的な気持ちがあれば、僕はレオパレスが優勝していたのではないかと思っている。

 


 

【試合番号:30(準決勝)】
太陽誘電  000 0000・・・0(1安打4失策)
トヨタ自動車 100 002x・・・3(5安打0失策)
誘電:坂井-谷川
トヨタ:アボット:渡邉

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