【織機 vs レオパレスの死闘~2008日本リーグ第7節宮崎大会】

決勝トーナメント進出にむけて同率で並んでいる両者。
後半早くも両チームにとっての天王山とでも言うべき試合を宮崎で迎えたわけであるが、2000年代に入り幾多の名勝負を繰り広げてきたこの両チームに相応しい、手に汗握る素晴らしい熱戦が展開された。
見るものすべてにソフトボールの面白さを改めて教えてくれたこの両チームの熱戦を、ここに改めて記録しておきたいと思う。
記述は展開を追いやすいよう打者ごとの箇条書きにした。

 

【先発メンバー】
まずは先発投手である。前節北海道でのルネサス戦においてミッシェル・スミスを温存した織機であるが、勝負はまだ先と見たかこの試合も先発を回避した。一方、ベストメンバーで望んだレオパレスであるが、形を変えない知将藤原監督にして珍しく、ここ数年間は不動の1番河野美里と2番藤本の打順を入れ替えてきた。藤本の今年の好調さを考慮したか。
一方織機もローチに強い小森を3番に上げ、リベラを7番に下げてきた。

 

【先攻:豊田自動織機】
1(8):狩野亜由美
2(4):白井沙織
3(D):小森由香
4(9):田中幹子
5(7):本田小百合
6(5):古田真輝
7(2):クリスティン・リベラ
8(6):酒井かおり
9(3):長澤佳子
DEFO-P:江本奈穂

 

【後攻:レオパレス21】
1(4):藤本索子
2(8):河野美里
3(6):佐藤理恵
4(2):ナタリー・ティッカム
5(D):伊藤綾香
6(3):井上絵里奈
7(7):小野奈津子
8(5):白井奈保美
9(9):永吉理恵
DEFO-P:メラニー・ローチ

 

☆前日の両2番手投手のデキがどう響くか、との文章を一つ前に書いたが、それがなんとも思わぬ形で出た。
☆レオパレスは思惑通り万全でローチを先発に出せたのだが、織機は大黒柱ミッシェル・スミスが昨日の試合で負傷してしまったのである。今日はミッシェルなしでの試合を強いられることとなった。

 

【1回~3回:序盤、両投手の立ち上がりを攻めるが織機は絶好のチャンスを2度も逸す!逆にレオパレスがワンチャンスをものにして2点を先制!】

 

織機 000
レオパ 002

【1回表:織機-0点】
狩野:レフト前ヒット(ファールを重ねて粘り勝ち!)
白井:サードへ送りバント(初球をきっちりと決める)
小森:空振り三振(高めの球にバットが止まらなかった)
田中:ライト前ヒット(本塁への送球の間にセカンドへ好走塁)

☆織機、早くも絶好のチャンスを迎える!

本田:セカンドゴロ

☆田中のライト前はいい当たり過ぎて、狩野は本塁へ返れなかった。2死2、3塁の絶好の先制機も本田がセカンドゴロで惜しいチャンスを逃す。

 

1回裏レオパレス-0点】
藤本:サードゴロ
河野:セカンドゴロ
佐藤:センターフライ

☆昨日は散々だった織機先発の江本、今日は無難な立ち上がりで力のあるレオパレス上位陣を平凡な当たりで簡単に打ち取る。

 

【2回表:織機-0点】
古田:死球
リベラ:三遊間左前打
PH桝本:一ゴ失(バスターエンドランのような形、弾いた井上が拾い上げるも一塁へ悪送球し満塁!代走藤崎)
長澤:三ゴ併殺打(好調の長澤が初球に手を出し、5-2-3…最悪の結果に…)
狩野:三直(カットした三塁線ファールゾーンへの打球を白井が素早い反応で好捕!)

☆雨で変化球にキレがないかローチ?常にピンチを背負う。山根投手がアップを始める。
☆織機にはあまりにも痛すぎる無死満塁の無得点!

 

【2回裏:レオパレス-0点】
ティッカム:三ゴ
伊藤:四球
井上:空振り三振(高めに吊られる)
小野:三ゴ

☆江本ここまではまあまあのデキか。レオパにとってはここ最近の井上の不調が痛い

 

【3回表:織機-0点】
白井:中飛
小森:投ゴ
田中:一ゴ

☆期待の上位打線も簡単に終わりローチを助けてしまう

 

【3回裏:レオパレス-2点】
白井:中直(狩野前進して地面ギリギリで好捕!)
永吉:右中間二塁打
藤本:二邪飛(初球にうまくチェンジアップから入る)
河野:三遊間左前打(織機1、3塁のピンチにもっとも嫌な打者を迎える!)
佐藤:一二塁間右前適時打(この試合先制点はやはりこの選手からだった)
ティッカム:中前適時打(江本我慢仕切れなかったか。センターからの返球カバーも遅れ2、3塁に)
伊藤:右飛(大きい当たりだった)

☆立ち上がり無難だった江本も、レオパレス2順目で早くもつかまってしまう・・・

 

【4回:織機がとうとう本領を発揮。一挙4得点で一気にレオパレスを逆転!しかしレオパレスもすかさず追いすがる!!】

織機 000 4
レオパ 002 1

【4回表:織機-4点】
本田:左前打
古田:中前打
リベラ:中越え逆転スリーラン!

☆2点を先制された直後、打者3人で簡単にひっくり返す!

酒井:遊ゴ
長澤:遊邪飛
狩野:右中間二塁打
白井:左前適時打
小森:二直

☆スリーランの3点で終わらず2死後から追加点を奪うのが織機の強さだ

 

【4回裏:レオパレス-1点】
井上:四球(江本、今日はどうも主審との相性が悪いか)
小野:一前犠打(きっちりと決めるさすが好打者)

☆この場面を解説したい。
一塁長澤が打球を処理→打球から二塁は無理と判断し打者にタッチに行ったがこれが空タッチ(ボールは右手でグラブでタッチに行った)→しかしふと見ると一走は井上でまだ余裕で間に合う→2塁へ送球しタイミングはアウト→しかし球審が空タッチに気づかず打者走者にアウトを宣告してしまい2塁がタッチプレーに→結果的に2塁セーフで打者アウトのバント成功の形になる。

☆本来なら2塁アウト(もしくはゲッツー)のプレー。この誤審がどう響くか。

白井:中前打(すかさず二盗で2、3塁に)
永吉:遊飛(ノースリーから打って出るも凡退)
藤本: 右前適時打!

☆二人目のランナー白井は田中の好返球で本塁タッチアウト!白井の走塁もうまかったが抗議も実らず、同点ならず!
☆しかしレオパレスは着々と追い上げる

 

【5回:レオパレスも負けてはない。豪州代表のクリーンナップ、銅メダリストの意地、ティッカムが逆転ツーランで再び試合をひっくり返す!】

織機 000 40
レオパ 002 12

【5回表:織機-0点】
田中:二ゴ
本田:一ゴ
古田:四球
リベラ:四球
酒井:左直(粘りに粘って打ち勝ったが打球は小野のグラブに!)

☆この打球、レオパレスが誇る“空飛ぶ左翼手”名手小野が滞空時間の長いダイビングキャッチでライン際の打球を大ファインプレー!流れを引き寄せる素晴らしい守り!

 

【5回裏:レオパレス-2点】
河野:右前打
佐藤:捕ゴ(バスターエンドランを決める)
ティッカム:中越えに逆転ツーラン!

☆最も注意しなければいけない打者にあまりにも不用意な投球。直前の監督との打ち合わせは何だったのか・・・
☆ティッカムの打球は弾丸ライナー。このとき、2塁から走ってきた河野が捕手のリベラとぶつかり負傷する

伊藤:三ゴ
井上:四球
小野:投ゴ

【6回:レオパレスは先発のローチ、織機はリリーフの宮本、両投手が踏ん張り試合が落ち着く】

織機 000 400
レオパ 002 120

 

【6回表:織機-0点】
☆この回からレオパレスはセンター河野に代わり蔭山が入る

PH大内田:中飛(織機が誇る長距離砲の打球も、センターフェンスいっぱいで失速)
狩野:遊飛
白井:右飛

 

【6回裏レオパレス-0点】
☆この回から織機は投手宮本、捕手西井に

白井:二ゴ
PH森:空振り三振
藤本:一ゴ

☆不調の江本の後を継いだ宮本が試合を引き締めるナイスピッチング。”’いよいよ最終回へ!’

 

【1点ビハインドの7回、絶体絶命のピンチ!最後の最後、2死走者なしから織機が執念で同点に追いつく!】

織機 000 400 1
レオパ 002 120 0

【7回表:織機-1点】
小森:空振り三振(高めの球に吊られてしまった)
田中:中飛

☆期待の3、4番で簡単に2死。このまますんなり終わってしまうのか・・・
☆しかし織機には知る人ぞ知る神懸かり的勝負強さを持ったこの二人がいた!

本田:左中間二塁打(河野に代わってセンターに入っていた蔭山、飛びつくもグラブに当てるのが精一杯)
古田:左中間へ起死回生の同点二塁打!!(追い込まれながらも執念の同点打!)

☆2ストライクと追い込まれた3球目が胸元に。際どく避けた古田はそのままの反動で前に出、左打席からゆっくりと球審の後ろを回るように時間をかけて歩いて再び右打席に戻る。
☆そして次の投球・・・ 打席でのこの落ち着きが彼女の全てを物語っていた。

西井:一ゴ(良い当たりの三塁線ファールもあったが)

☆宮本との相性から初めて試合に出た高卒新人捕手の西井。しかもリーグ初打席がなんとこの死闘のサヨナラ機だったとは。

 

【7回裏:レオパレス-0点】
蔭山:三ゴ(止めたバット)
佐藤:左飛
ティッカム:空振り三振

☆7回の恐い3、4番も好投宮本が気合で抑える! ”’ついに延長へ!!”’

ティッカムを三振にとりガッツポーズの宮本投手

 

【8回:互いに犠打を成功させた1死3塁を投手が踏ん張り勝ち越し点を許さず!】

【8回表:織機-0点】
☆延長タイブレーカー。二塁にランナー西井

酒井:二ゴ(エンドランを決めセカンドゴロ。しっかりランナーを三塁へ送る)
長澤:遊飛(一打勝ち越しの場面だが、ショートへ浅いフライを打ち上げてしまう)
狩野:左飛(頼みの狩野だが。レフトへのややいい当たりのフライに終わる。この当たりが1死から出ていれば・・・)

 

【8回裏:レオパレス-0点】
☆二塁走者はティッカムに代走川上

伊藤:一前犠打(きっちりランナーを三塁へ送る)
井上:一ゴ(正面の平凡な打球)
小野:投ゴ

☆宮本踏ん張り気合のガッツポーズ! レオパレスも勝ち越せず

 

【9回:死闘の最終章。踏ん張った宮本、織機もついに力尽きる!! 最後はあっけない幕切れに・・・】

織機 000 400 100・・・5
レオパ 002 120 001x・・6

【9回表:織機-0点】
☆二走に狩野
白井:三前犠打
小森:一ゴ
田中:見逃し三振

☆この日結果が出なかった織機の3、4番。最後の田中の見逃し三振はしかしローチの勝ちであった。外角高めいっぱいの球でツーストライクと追い込んだ後、さらに際どい球をほとんど同じコースに投げ込んだ。あの田中といえどもバットが出なかった

 

【9回裏:レオパレス-1点】
☆二走に小野
白井:捕前犠打

☆ここまでは両チーム3度おとずれた攻撃と全く同じである。しかし、ここでレオパレスとしてはソフトボールをよく知っている走者と、最も作戦を仕掛けやすい打者に打順が回った

永吉:1球見た後の2球目、三走とのヒットエンドランを敢行!
走者の動きを宮本が察知。空振りを誘うべく、やや高めのまっすぐを投げ込む。
狙い通り、コンタクトヒッターの永吉のバットに空を切らせる。ここまでは宮本が勝った!
しかし捕手が高卒新人でしかも今日初めて出場の西井であった。
ノーサインでのウエストボールに一瞬気づくのが遅れた。
投球は西井の差し出したミットをかすり、無情にもバックネットまで達する
安堵と喜びが入り混じった複雑な笑みを浮かべながら決勝のホームを踏む小野、レオパレスナイン。

しかし逆に、誰よりもすがすがしい表情で笑顔を見せていたのは敗戦投手になった宮本であり、
織機を応援するファンであった。

レオパレスとの天王山、織機にはあまりにも痛い敗戦だが、こんな良い試合を見せてもらえて、両チームには感謝の気持ちしか思い浮かばない。

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