【アーカイブス2006年決勝トーナメント~“史上初”の裏側】

【“史上初”の裏側】

 

【決勝】
ソフトウェア  001 0000…1
豊織機  010 0003…4
ソフトウェア:遠藤-鈴木由
織機:スミス-リベラ
(本)リベラ、前川(織)
(二)杉山、西山、森下(ソ)

 

~代打前川・“史上初”の裏側~
この年の日本リーグは前川仁美の「代打サヨナラ優勝決定ホームラン」という史上初の劇的な幕切れであった。しかもかつてベストナインも獲得したことがある強打者前川の、これが現役最後の打席だったというのがすごい。
その最後の打席が「優勝決定ホームラン」とは。「終わりよければ」というが、これ以上最高の終わり方の選手は、今までもそして今後も出てこないのではないか。
さてそんな“史上初”であるが今回はその裏側についてである。とにかくこの当時も多くのファンが感心し恐れ入ったのが前川を代打に送ったルーシー・カサレス監督の采配。押し気味に試合を進めながらも点が入らず、延長タイブレイカー突入直前の7回に巡ってきた絶好のサヨナラのチャンスに、なんと内藤恵美に代えて前川を代打に送っているのである。
前川がいくら良い打者とはいえ打順は内藤。頼り甲斐では日本一でしかも特に調子が悪いわけではなかった内藤に、敢えて代打を送ったルーシー。相性や前川の調子も考え決断したのだろうが、しかしあの場面で内藤に代打を送れる監督はルーシーしかいない。

<“史上初”の代打優勝決定サヨナラホームランを放ち客席に手を振る前川>

<歓喜の織機ベンチ、胴上げされるミッシェル・スミス>

~歓喜の裏側~
さてそんな代打に関する裏側に対して今度は劇的な勝利を挙げた“織機の歓喜”の裏側である。なぜかこの年は負けた側のソフトウェアの選手の写真が特に多く残っていた。
2000年以降優勝から遠ざかっていたソフトウェア、この年は遠藤が最多勝記録を樹立するなど絶好のチャンスだったが、その遠藤が最後の最後に力尽きてしまった。
打たれてベンチからダッグアウトに戻る遠藤の写真があった。この時はこみ上げる悔しさを帽子の下に隠し、無言のまま足早に立ち去ったのだ。


悔しさ、という意味では山田も相当なものだっただろう。前川のホームランはセンターへ真っ直ぐ一直線。素早くフェンスについた山田が精一杯ジャンプするも、本人の感覚としてはほんのわずかだけタイミングがズレたようだ。グラブをかすってフェンスを越えた打球を見送りながら、しばらく動くことができなかったのを覚えている。閉会式に並ぶ杉山も目は真っ赤だ。



馬渕も、この時は若手で売り出し中だった溝江も濱本も田中も、悔しさを通り越して呆然といった感じだろう。


 

~織機応援席の裏(反対)側~
ところで、そもそもなぜソフトウェア側にいるかというと理由は遠藤投手。とにかくイニングの合間にベンチに戻ると、試合展開など目もくれずにすぐに上からのキャッチボールや下からの投球練習で黙々と肩を温める。その遠藤投手の一部始終を間近で見たくて三塁側に移動したのだ。とにかく「投手」としてやるべき役割だけに没頭している遠藤投手の職人的な雰囲気にはいつも引き込まれてしまう(露久保投手にも同じ匂いを感じていた)。



 

【1日目第1試合】
レオパレス21  000 0000 03…3
ルネサス高崎  000 0000 01…1
レオパレス:ローチ-スコット
ルネサス:上野-乾
(二)藤本(レ)

 

史上初の劇的な幕切れで終わった2006年であるが、この年は毎年の主役であるルネサスは初日であっさりと姿を消してしまっていた。ユニフォームの色が今と比べるとかなり濃くて鮮やかだ。


【1日目第2試合】

豊田自動織機 000 3003…6
ソフトウェア 000 0000…0
織機:スミス-リベラ
ソフトウェア:遠藤、鈴木真、瀬川…鈴木由
(本)リベラ(織)
(二)田中、スミス(織)

 

この年の1位、2位対決はあっさりと織機の大差勝ち。しかしここから遠藤投手が踏ん張り、結果的には劇的な決勝戦を演出した。

 


 

【準決勝】
レオパレス 000 0010…1
ソフトウェア 000 1600…7
レオパレス:ローチ、秋元-スコット
ソフトウェア:”’遠藤、瀬川-鈴木由
(本)藤本(レ)、山田(ソ)
(二)山田、杉山(ソ)

 

初日にルネサスを撃破し2日目に進んできたレオパレスも、この試合はソフトウェアの強打の前に完敗。藤本索子が遠藤投手からライトにソロホームランを放ち1点返すのがやっとであった。

~“劇的な最後”の裏側~
この年の決勝トーナメント、劇的な幕切れだった前川と同様に、代打として“日本リーグ人生最後の打席”に立ったもう一人の選手がいた。レオパレスの好選手・古渡美奈である。結果はしかし裏腹であった。
かなり若くしての惜しまれながらの引退であったが、その後中学の先生としてソフトボール部を顧問し、自らも千葉クラブの3番打者として国体予選にも出場と、その後の人生を自ら切り開いている彼女。
しかしこの最後の打席だけはどうにもならなかった。
ベンチみんなの声援に後押しされて人生最後の打席に入るも、4球連続のボールでストレートの四球…。とにかく相手が悪すぎたのだ。そうそこの方正解。この時の投手は遠藤投手をリリーフした瀬川絵美投手だったのだ(笑)

<古渡選手、最後の打席に入るも、一度もバットを振れず>

<試合後インタビューを受ける河野選手と、悔しそうなレオパ時代の白井沙織選手>

~““歓喜の裏側”の悔しさ”の裏側~
さて最後に。
喜びの織機、無念のソフトウェアであったが、その織機の中でもこの選手だけは釈然としないはずだったのが代打を出された内藤恵美選手だろう。そして2日目に残ったものの大敗でシーズンの幕を閉じたレオパレスの選手も悔しいはず。
しかし試合後はまるで裏側。あっけらかんと明るく振る舞うのが織機とレオパの選手のチームカラーではあるが、表彰式前にみんなで楽しく記念撮影大会だ(笑)

<しかし内藤選手はやっぱ若い選手に人気ありますわ>

以上、最後は少々強引な感じの「裏側」シリーズ。
これにておしまい。

 

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