【2008年日本リーグ観戦記】第8節刈谷大会2日目:トヨタ自動車 vs 日立ソフトウエア~エース露久保、涙の勝利

【先攻:トヨタ自動車】
1(9):藤野遥香
2(8):前薗理絵
3(D):ガーランド・クーパー
4(3):伊藤幸子
5(5):藤崎由起子
6(6):坂元令奈
7(7):小野真希
8(2):渡邉華月
9(4):丸山なお
DEFO-P:上村さつき

【後攻:日立ソフトウエア】
1(6):西山麗
2(3):森下そのみ
3(8):山田恵里
4(7):馬淵智子
5(9):杉山真里奈
6(D):濱本静代
7(2):鈴木由佳
8(5):来條美穂
9(4):溝江香澄
DEFO-P:藤原麻起子

 

※1~3回:初回にソフトウエアがあっさりと1点を先制する。しかしトヨタ自動車の先発上村も小気味の良いピッチングでそれ以上は失点を許さない。

【1回表:トヨタ-0点】
藤野:左飛
前薗:左飛
クーパー:遊ゴロ

 

【1回裏:ソフトウエア-1点】
西山:四球
森下:遊ゴロ併殺打
山田:四球(ストレート)
馬渕:中前適時打(やや左中間の当たり、山田が一気に一塁からホームへ余裕のセーフ!馬渕も送球の間に二塁へ)

杉山:二飛

 

【2回表:トヨタ-0点】
伊藤:空振り三振
藤崎:中前打
渡邊:遊ゴロ二封
坂元:遊ゴロ二封

 

【2回裏:ソフトウエア-0点】
濱本:左飛
鈴木:一ゴロ(反応素早く伊藤が好捕)
来條:二ゴロ

 

【3回表:トヨタ-0点】
小野:三ゴロ
丸山:遊ゴロ
藤野:左直

 

【3回裏:ソフトウエア-0点】
溝江:三前バント安打
西山:一前犠打(伊藤ジャッグルするもなんとか一塁アウトに)
森下:左飛(詰まり)
山田:二ゴロ

 

※4回:前日織機戦で好投したエース露久保投手が満を待しての登板!

【4回表:トヨタ-0点】
前薗:三前バント安打(スラップ)
クーパー:一ゴロ(走者二進)
伊藤:右直(うまく捉えたが正面)
藤崎:四球
渡邊:見逃し三振(1球もバットを振らせてもらえず)

 

【4回裏:ソフトウエア-0点】
馬渕:右前打
杉山:三ゴロ(エンドランがかかっており馬渕はセカンドへ)
濱本:右飛(やや大きな当たりで馬渕はタッチアップでサードへ)
鈴木:三ゴロ

 

※5回:上村、露久保の好投に応えたいトヨタ打線。坂元の二塁打を足場にとうとう同点に追いつく!

【5回表:トヨタ-1点】
坂元:左中間二塁打(会心の当たり!)

ph五十嵐:捕前プッシュバント安打(高く弾んだ当たり、見送ればファールになりそうな打球を鈴木が思わず捕ってしまう)
丸山:四球(無死満塁の大チャンス!)
藤野:中犠飛(同点に追いつく)
前薗:投ゴロ(三走とのエンドランも正面の投ゴロで本塁憤死)
クーパー:一ゴロ
☆無死満塁も同点止まり

 

【5回裏:ソフトウエア-0点】
来條:空振り三振
溝江:右翼線二塁打(ふらふらっと上がった当たり。ライトの藤野が頭から突っ込めずに中途半端なスライディングで後逸してしまう)


☆ここで露久保投手にスイッチが入る。今までおとなしく投げていたが、両腕で弧を描く独特の投球フォームがここから始まる!

西山:二ゴロ(走者は三進)
森下:遊ゴロ

 

※6回:好投露久保に襲い掛かるソフトウエア五輪組。しかしまずい走塁で絶好の得点機を失う!
【6回表:トヨタ-0点】
伊藤:三直(いい当たりが正面をつくのは二度目)
藤崎:中飛(大きな当たり、フェンス間際まで飛んだ)
渡邊:中前打
坂元:遊ゴロ

 

【6回裏:ソフトウエア-0点】
山田:右中間二塁打
☆露久保の宝刀チェンジアップに崩されながらもファールで粘り最後に持っていく技術はさすが!

馬渕:三遊間レフト前安打(山田がホームを狙うも強い当たりでやや余裕を持ってアウト!暴走か・・・)

杉山:一ゴロ(馬渕も三塁アウト)
☆捕球した伊藤が二走馬渕を牽制し二塁に少し戻してからベースを踏みに戻る。後ろを向いた伊藤の隙を突いて馬渕が三塁を狙うが、素早く振り返った伊藤が三塁へ送球しタッチアウト。伊藤の終始冷静な守備がこの回を救う。

 

※7回:互いに下位打線の7回はソフトウエア藤原、トヨタ露久保が無難に抑え、いよいよ延長タイブレーカーに突入!
【7回表:トヨタ-0点】
小野:三直
丸山:遊ゴロ
藤野:三直

 

【7回裏:ソフトウエア-0点】
濱本:右前打
☆今年ブレイクした濱本選手。チェンジアップに崩されグニャグニャになりながらもセンター前に持っていき、チャンスを作る。

鈴木:一前犠打
ph田中:空振り三振(昨日代打本塁打の田中。しかし代打で出てきて露久保投手のチェンジアップに即応するのは至難の技か)
溝江:一ゴロ
☆しぶとい打席を続けてきた溝江をなんとか押さえる!

 

※8回表:タイブレーカー突入直後!値千金、クーパーの豪快なホームランでトヨタが2点を勝ち越す!
【8回表:トヨタ-2点】
☆二走に藤野
前薗:投ゴロ(スラップ。藤野は三塁へ)
クーパー:右中間へ2点本塁打!

伊藤:左前打(代走に若月。若月二盗)
藤崎:左飛
渡邊:投ゴロ

 

※8回裏:ソフトウエアも負けていない。露久保の魔球チェンジアップも西山、山田が攻略!すぐさま2点を追いつく!

【8回裏:ソフトウエア-2点】
☆二走に溝江
西山:中前打
ph林:三ゴロ(二三塁に)
山田:中前2点適時打!(本塁返球の間に二塁へ)
☆二人目の西山はセンター前薗の好返球にタッチアウトと思われたが・・・

馬渕:四球(ソフトウエア、今度は逆に一打サヨナラのチャンス!)
杉山:一邪飛
濱本:二直(良い当たりもセカンドが手を伸ばして捕球)

☆露久保投手、なんとか逆転を許さず踏ん張る!

 

※9回:トヨタ自動車、小野の適時打で1点を勝ち越すも、ソフトウエアが再び、そして簡単に同点に追いつく!
【9回表:トヨタ-1点】
☆二走に渡邊
坂元:三ゴロ(バスターでゴロを転がしランナーを三塁へ進める)
小野:中前適時打(クリーンヒットで再び勝ち越す!)
丸山:捕前犠打
(パスボールで小野は三塁へ)
藤野:四球
(前薗の時に一走藤野がスタート。二塁へ送球され途中で止まり、挟まれて重盗に持っていくが三塁から本塁を狙った小野が西山からの送球でアウトに。西山&鈴木のコンビではそう易々とセーフにさせてはくれない。余裕でアウトにしてしまう)

 

【9回裏:ソフトウエア-1点】
☆二走に濱本
鈴木:三前犠打
来條:一ゴロ(三走濱本との間でエンドラン。一塁前に転がし簡単に同点にしてしまう。さすが来條!)
丸山:一前バント安打
(次の西山の時に盗塁死。次の回も考え少々強引にでも走ったか)

 

※10回表:トヨタ自動車三度勝ち越す!
【10回表:トヨタ-1点】
☆二走に藤野
前薗:投前プッシュバント(藤野は三塁へ)
バトラー:左犠飛(トヨタ、三度目の勝ち越しはまたしてもバトラーが仕事をした!)

伊藤:一邪飛

☆さあ露久保投手、その裏のソフトウエアにどう対峙するか!?

 

※10回裏:ソフトウエア、三度追いつけるか!?
【10回裏:ソフトウエア】
☆二走に溝江
西山:一前犠打(溝江は三塁へ)
☆西山がバントをしてくれてトヨタ側はありがたかったのではないか。
森下のとき、前の回と同じく三走とエンドランを敢行!
しかし、この時の露久保投手の投球がこの日最高のボールであった。
グランド内にゴロを転がそうとする森下に対し、インコースやや高めの非常に厳しいところに渾身のストレート(ライズか!?)が食い込む!


やや体を引きながらのスイングがこのストレートに対して空を斬る!
捕手の渡邊が飛び出したランナーを刺すため三塁へ送球。捕球した藤崎が、回りみながら頭から滑り込んで戻る溝江に対し落ち着いてタッチし、アウト!
この試合はこの時点でほぼ決まった。
が、タッチした藤崎に笑顔はなし。喜び以上に、安堵する気持ちしか湧いてこなかったのではないか?表情はまだ強張ったまま。

そして最後の投球にも森下のバットは空を斬る。
空振り三振!

 

試合終了!

 

3時間に迫る長い試合の幕が閉じた。

力投上村の後を受け、最初は冷静に丁寧な投球を続けながら途中からスイッチをオンにしての気迫の投球。
延長戦で勝ち越してもらうもすぐに追いつかれ、しかしそれでも切れずに後続を断ち勝ち越しを許さず、黙々と投げ続けた露久保投手。
試合終了と同時に、その目には嬉しさと緊張感から開放された安堵の涙が溢れた。





そして、試合終了後、観客席に向かって泣きながらの笑顔で手を振る露久保投手・・・

その手の先には、この日の勝利を約束した余命3ヶ月のソフトボール少女の笑顔は・・・、なかった。
その手の先には、この日まで陰日なたに成長を支え続けてくれた恩師の姿も・・・、なかった。
その手の先には、生後3ヶ月で生き別れになった父親の姿も・・・、なかった。

その手の先には・・・、爪があった。
おやすみなさい。

P.S.
10回を一人で投げぬいたもう一人の主役、日立ソフトウエアの藤原麻起子投手の力投も僕たちは忘れない。


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