【2012年第5節新居浜大会2日目第2試合:織機 vs. 大鵬~延長8回、好投の江本から中森が決勝タイムリーで織機が薄氷の勝利】

豊田織機 000 0000 1…1-7-0
大鵬薬品 000 0000 0…0-4-0
豊田織機:○ダニエル・ローリー-メーガン・ウィリス
大鵬薬品:●江本奈穂-増井知美
(二):国吉早乃花、吉良真利菜(織)

【テーブルスコア】


【戦評】
 この試合のポイントは織機が1点を勝ち越して迎えた8回裏。
 タイブレイカーの二塁走者の酒井が、大村がバントの構えで見逃した時に飛び出してしまい捕手からの牽制球でアウトになった場面。これでほぼ織機の勝利が決まった。
 この場面で何としてでも三塁に進みたい酒井が、際どいコースのボールを打者が見逃した時に若干飛び出してしまうのは仕方がない。こういう場面では打者はストライクゾーンを広く取ってバントしないといけないが、ボール球をしっかり見極めた大村も責められない。やはり両者ともに責められないプレーだったかも知れない。

 それよりしっかり二塁に送球したウィリスの好判断と、そして酒井をアウトにした吉良のプレーが光った。

 飛び出した酒井が二塁に頭から戻った時にウィリスからやや左にそれた送球が来た。それを待ち受けた吉良が捕球しながらも酒井を完全に体で止めてベースに手を届かせずにアウトにした。その時に、吉良が酒井の指をスパイクで踏んで怪我をさせてしまったらしい。
 吉良にとって酒井と言えば、同じ東京女子体育大の先輩であり、織機での背番号9とセカンドのポジションを直接受け継いだ尊敬してやまない大先輩。しかも吉良はグラブまで酒井のお下がりを使っている。そんな尊敬する先輩に怪我をさせてまでアウトにした吉良の必死さが勝利に導いたと言っても過言ではない。

 試合後、個人的に仲のいい酒井に怪我の状態を聞いた時に、あの時のプレーについても聞いてみた。
 すると後輩に指を踏まれ怪我をしたことに対し恨み事を言うどころか「私の指を踏んでまでアウトにするという吉良の強い気持ちに負けた。自分の方こそいい勉強になった」と、純粋に後輩をたたえてその成長を喜び、逆に自分を責めるような返事が返ってきた。
 そういう気持ちを持てる酒井こそ素晴らしい選手なのだが、やはりあの気が弱くてへたれな吉良が、酒井に対して気持ちで、体で負けなかったことがチームにとって大きい。

<大村が際どいコースを見逃してしまい、二走酒井が飛び出してしまい、吉良がタッチしてアウトに>

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 7回まで拙攻拙攻でチャンスをつぶし続け、結果的には今年のいつもの織機だったが、しかしこの前半戦最後の試合は今までとは少し違った。

 ひとり気を吐く中森が最後に決勝タイムリーを放ったが、それは一二塁間を緩く抜けるヒット。その前の打者の吉良が走者を1死からでも三塁に進めていなければおそらく点は入ってなかっただろう。
 その吉良が確実に転がして二塁代走の洲鎌をサードに進めたが、打球はショートの前へのやや平凡なゴロ。そのゴロで三塁に進んだ洲鎌の好判断もあったが、その前の打者の高坂が、フライでアウトにはなったがプッシュ気味のバントを試みたのも吉良の進塁打成功に対して意味があったはずだ。
 バントの打球を上げている時点で本当は褒められないのだが、しかし猛ダッシュしてくる一三塁の前に杓子定規にバントをして走者を三塁で殺すくらいなら、フライになってでも「何か」をすることが、次につながってくはずで、高坂のプッシュバント失敗も決して無駄ではなかった。

 その「何か」をするという姿勢がこの試合で一番見えたのが、スタメンで出た池原のプレー。
 2回2死走者なしから、足が速いとは言いがたい右打者の池原が意表を突くセフティーバントで出塁。すぐさま二塁に盗塁するがタイミングは完全にアウト。しかし最後の瞬間まで諦めず、必死になって体をひねって酒井のタッチをかいくぐってセーフになった。
 結局得点にはつながらなかったが、この2回の池原の必死のプレーがチームに与えた影響も大きかったような気がする。

<懸命のスライディングで二塁セーフになった池原>

【追記】
 この池原のプレーについてはソフトボールマガジンの三橋さんも評価してくださっていました。

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 トヨタが独走し、デンソーとルネサスが抜けだし、ソフトウェアと太陽誘電と織機がかなり離れて4位に並んだ状態で前半戦を終えた。
 その4位の3チームの中では、頼りの外国人投手を前半戦でかなり使ってしまった織機が格段に不利なのは否めない。
 しかしこの前半戦最後の大鵬薬品戦での選手たちの必死のプレーが、贔屓目なのは前提としてでも何か後半戦への希望の光のような気がしてしまう。

 負けたチームに対してこういういのも失礼だけど、前半戦の最後の試合で試練を与えてくれた大鵬薬品の選手たちと、特に元織機のエース江本奈穂に純粋にありがとうとお礼を言いたい。


【豊田自動織機・スタメン】
1(3):中森菜摘
2(8):狩野亜由美
3(D):横野涼
4(9):国吉早乃花
5(7):本田小百合
6(2):メーガン・ウィリス
7(5):池原恵
8(6):高坂香月
9(4):吉良真利菜
FP(1):ダニエル・ローリー

【佐川急便・スタメン】
1(8):千原香奈
2(D):佐藤このみ
3(5):佐藤光紗
4(7):佐々木瞳
5(1):江本奈穂
6(9):稲垣ゆみこ
7(4):酒井かおり
8(3):大村英利佳
9(6):森田まゆ
FP(2):増井知美


【1回表:豊田自動織機~0点】
中森:左飛
狩野:三ゴロ
横野:右安(ポテン)
国吉:中飛

【1回裏:大鵬薬品~0点】
千原:空振り三振
佐藤こ:左前打
佐藤光:守備妨害アウト
 ※佐藤このみが盗塁したとき、ウィリスの送球が佐藤光紗を直撃。ボックスから出ていたということで打者がアウトに
 ※佐々木の打席の時に佐藤このみが盗塁も離塁アウト
 ※ルール上仕方がないとはいえ、大鵬にはちょっと同情してしまうこの回の攻撃

【2回表:豊田自動織機~0点】
本田:見逃し三振
ウィリス:一直
池原:捕前バント安
 ※池原二盗(アウトのタイミングも必死に体をひねらせてタッチをかいくぐる)
高坂:空振り三振

【2回裏:大鵬薬品~0点】
佐々木:空振り三振
江本:見逃し三振
稲垣:右飛

【3回表:豊田自動織機~0点】
吉良:左飛
中森:中飛(大飛球)
 ※完全に入っている当たり。フェンスについてセンター千原がホームランをもぎ取る
狩野:投ゴロ

<(バットでもカメラでも)完全に捉えた当たりだったが…。センター千原が超美技。千原はフェンスの向こうに落ちた帽子を拾ってグランドに>

【3回裏:大鵬薬品~0点】
酒井:左前打(ポテン)
大村:空振り三振
 ※この時に酒井が二盗
森田:左前打
 ※森田が二盗
千原:空振り三振
佐藤こ:空振り三振

【4回表:豊田自動織機~0点】
横野:一ゴロ
国吉:左線二塁打
本田:投ゴロ
 ※強い打球にセカンドの国吉が飛び出してしまい二三塁間に挟まれ、最後はスリーフィートオーバーでアウトに、
 ※しかしタッチされていない国吉がアウトと気づかず、生きようとさらに逃げているのを見て本田が二塁へ、
 ※サードの佐藤からボールが送られ、今度は本田が一二塁間で挟まれタッチアウト、ダブルプレーに。
 ※織機としては必死さが仇になった、ミスというよりは不運なプレーかも知れない。

【4回裏:大鵬薬品~0点】
佐藤光:三飛
佐々木:二ゴロ
江本:空振り三振

【5回表:豊田自動織機~0点】
ウィリス:遊ゴロ
池原:遊邪飛
高坂:右前打
吉良:左中間二塁打
中森:遊ゴロ

【5回裏:大鵬薬品~0点】
稲垣:一邪飛
酒井:中飛
大村:中前打
 ※代走に三崎奈緒
森田:空振り三振・振り逃げ
千原:一邪飛

【6回表:豊田自動織機~0点】
狩野:投ゴロ
横野:右直
国吉:捕邪飛

【6回裏:大鵬薬品~0点】
佐藤こ:三前バントゴロ(間一髪)
佐藤光:空振り三振
佐々木:死球(かすり)
 ※佐々木が盗塁死

【7回表:豊田自動織機~0点】
本田:中飛
ウィリス:捕邪飛
池原:空三振

【7回裏:大鵬薬品~0点】
江本:空振り三振
稲垣:三飛
酒井:三飛

【8回表:豊田自動織機~1点】
 ※二走に洲鎌夏子
高坂:バント投飛
吉良:二ゴロ三進
 ※洲鎌も好判断で三塁へ
中森:右前適時打
 ※弱いゴロだが一二塁間真ん中を執念で抜く
PH白井沙織:左前打
 ※代走に狩野が再出場
横野:一ゴロ

<今年の前半戦の織機は中森で始まり、中森で終わった>

【8回裏:大鵬薬品~0点】
 ※二走に酒井
 ※ウィリスからの牽制球で酒井が飛び出してタッチアウト。冒頭で述べたセカンド吉良の執念のタッチ
大村:四球
森田:三犠打
千原:空振り三振

試合終了

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