【2012年第45回ソフトボール日本リーグ1部決勝トーナメント・第2試合「デンソー vs. 豊田自動織機」~デンソーにはまたしても厚かった織機の壁】

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デンソー 000 0000…0-2-0
豊田織機 001 000x…1-4-0

デンソー:●ジョーダン・テーラー-伊藤綾香
豊田自動織機:○ダニエル・ローリー-メーガン・ウィリス
(本):
(三):
(二):
【テーブルスコア】



【戦評・第2試合】

 3回裏に織機が先制し、その1点をダニエル・ローリーが今季一番のピッチングで守り切った。その唯一の1打点をあげ試合を決めたのは織機が誇る日本一の「職人」白井沙織だ。
 まずはこの回、決勝トーナメントでは無類の強さを発揮し常にチームを救ってくれる7番メーガン・ウィリスがライト前への渋いポテンヒットで出塁すると、代走には判断力のいい神田結美が送られる。
 ここで迎えるのが高坂香月、吉良真利菜の若手内野コンビ。1年目の昨年は打つ方は完全に目をつむり、何とかしっかり守ってバントさえ決めてくれればとだけ願っていたこの二人も、この一年間で見違えるほどバッティングが成長した。この成長した二人がここでチャンスを広げる。まずは8番の高坂が絶妙のスラップバッティングで三塁前にボテボテのゴロを転がすとこれが内野安打になり無死一二塁。この場面で、一度エンドランをかけ吉良が外角のボール球を空振りしたが二走の神田がサインを見逃して事なきをえるという幸運を一つ挟みながらも、次は吉良がしっかり転がして二三塁に走者を進める。吉良も今年の前半まではろくにバントも出来なかったのだが、ひと夏が過ぎて百発百中で走者を進められる打者に急成長した。よほど努力を重ねたのだろう。
 そして迎えるのが職人白井。追い込まれながらも外のボールをうまく合わせて一二塁間へゴロを運ぶと、これが前進守備のセカンドの名手松本尚子のグラブの下をわずかにすり抜けライト前に転がる値千金の決勝タイムリーとなった。この打球も名手松本なら捕られたかどうか紙一重ではあったが、三走神田のスタートも良かったし、あの体制からならたとえ捕られてホームへ送球されていてもホームには生還できただろう。とにかく白井としてはジョーダン・テーラーのアウトコースを悪くともあのコースに転がしたこと自体で最低限の仕事。こういう場面でどういう形ででも仕事が出来るのが彼女の技の結晶のように思う。

 一方、今回もまた織機の壁を乗り越えられずデンソーは敗れた。敗れはしたが、デンソーは最後まで今年のデンソーを貫いた。
 5回表、6回表と1点を追う終盤に二度の無死一塁のチャンスがあったが、5回は狩野香寿美が空振り三振。6回は中岡理美が見逃し三振と、走者を進めるバントやエンドランなどの攻撃は選択しなかった。ともにリーグ戦では一度ずつ犠打を決めてはいたのだが、全く送らせるそぶりすらなかった。
 シーズン通しての「2番中岡」に象徴されるような「とにかく打って打って打ち勝つ」というチーム方針を、この決勝トーナメントでも最後の最後まで貫いた(個人的にはこういうカラーのチームにとってはリーグ戦最終日から決勝Tが始まるまでに時間が空きすぎたのも不利に働いたのかなと思っている)。

 どういう方針でチームを作り、どういう思想、主義で試合を戦っていくのかというのがシンプルで明白で、攻撃や選手起用にもブレない強い意思の見えるチームというのは個人的には見ていて非常に気持ちがいい。
 今回も無死一塁で中岡にバントを命じるのがセオリーかも知れない。あるいは代打を出してのバントもあり得る。しかし、それで失敗したらなんとなくバントが出来なかった打者が悪い、というような空気になる。そういう逃げはせずに、シーズン通りに中岡には自由に打たせた。成功すればいいが、失敗すれば全ては監督やコーチなどベンチの責任になる。その責任から逃げずに最後まで腹をくくって今年のチーム方針を貫き戦い抜いた姿勢は、実に清々しかった。
 もちろん、来年決勝トーナメントの舞台で勝利するためには、リーグ戦の戦いと違うオプションを持つか、あるいはさらに打力を上げるなど、チームはさらに進化しないといけないが、今年のデンソーの戦い方を貫いたこの試合の是非は、結果的な勝ち負けを超えたところにあるような気がする。僕は個人的には大いに成功した戦い方だったように思う。

<今シーズン1番のピッチングでデンソー打線を完封したダニエル・ローリー>

<決勝打を放った白井沙織>

<最後の打者、8番倉成も野球用の90mフェンスを越すことを狙っているかのような全力でのフルスイング。今年のデンソーを象徴する最後のスイングだった>

<4位表彰を受けるデンソーナイン>


【先発メンバー】
【先攻:デンソー】
1(8):増山由梨
2(D):中岡理美
3(9):永吉理恵
4(7):メーガン・ウィギンズ
5(2):伊藤綾香
6(3):狩野香寿美
7(5):今泉早智
8(6):倉成真子
9(4):松本尚子
FP(1):ジョーダン・テーラー

【後攻:豊田自動織機】
1(D):白井沙織
2(8):狩野亜由美
3(4):中森菜摘
4(9):国吉早乃花
5(3):古田真輝
6(7):本田小百合
7(2):メーガン・ウィリス
8(6):高坂香月
9(5):吉良真利菜
FP(1):ダニエル・ローリー



【1回表:デンソー~0点】

増山:空振り三振
中岡:空振り三振・振り逃げ
永吉:一ゴロ二封
ウィギンズ:中飛

【1回裏:豊田自動織機~0点】
白井:右邪飛
狩野:空振り三振
中森:二半直

【2回表:デンソー~0点】
伊藤:遊ゴロ
狩野:二ゴロ
今泉:見逃し三振

【2回裏:豊田自動織機~0点】
国吉:一ゴロ
古田:空振り三振
本田:二ゴロ

【3回表:デンソー~0点】
倉成:空振り三振
松本:空振り三振
増山:四球
 ※4球目に盗塁失敗

【3回裏:豊田自動織機~1点】
ウィリス:右前ポテン安
 ※代走に神田結美
高坂:投前スラ安
吉良:投ゴロ進塁
白井:右前適時打
狩野:見逃し三振
中森:右飛

【4回表:デンソー~0点】
 ※ウィリス再出場
中岡:三邪飛
永吉:三ゴロ
ウィギンズ:右飛

【4回裏:豊田自動織機~0点】
国吉:左直
古田:遊ゴロ
本田:二遊間二安
ウィリス:一邪飛

【5回表:デンソー~0点】
伊藤:四球
 ※代走に松木瑛理
狩野:見逃し三振
今泉:左飛
倉成:四球(ストレート)
松本:中飛(3-2から)

【5回裏:豊田自動織機~0点】
 ※伊藤が再出場
高坂:スラップ遊ゴロ
吉良:中飛
白井:三ゴロ

【6回表:デンソー~0点】
増山:左前打
中岡:見逃し三振
永吉:二ゴロ野選
 ※難しいバウンド捕ったが二塁見て諦め一塁へ投げたボールがフワッとした球でセーフに
 ※一旦「Fc」が点いたがのちに「H」に変更
ウィギンズ:捕邪飛(高い難しいフライ)
伊藤:見逃し三振

<高くあがった難しいフライをキャッチしたウィリス>

【6回裏:豊田自動織機~0点】
狩野:二ゴロ
中森:二半直
国吉:空振り三振

【7回表:デンソー~0点】
狩野:空振り三振
今泉:二ゴロ(好プレー)
倉成:空振り三振

試合終了

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