【新生日本代表選手の紹介~外野手編】

【代表外野手の紹介】
<新たに選ばれた選手>
本田小百合(23、豊田自動織機:レフト)
河野美里(24、レオパレス21:センター)
永吉理恵(22、レオパレス21:ライト)
狩野香寿美(22、デンソー:ライト)

<北京五輪代表選手>
馬渕智子(28、日立ソフトウェア:レフト)
山田恵理(26、日立ソフトウェア:センター)
狩野亜由美(25、豊田自動織機:ライト)
※狩野亜由美(姉)は今年は代表に参加せず。年齢は今年度に到達する年齢

 

河野美里はソフトボールの盛んな静岡県出身であるが日本代表選手はこの河野が初めてか。静岡には常葉菊川、浜松市立、城南静岡など強豪が多いが、河野は元レオパレスの白井奈保美と同じく飛龍高校(元・沼津学園)出身である。
もともと高い打撃技術を持った選手であり1年目から試合には出ていたがレオパレスが優勝に最も近づいた2004年の決勝戦時にはまだレギュラーではなかった。一気に才能を開花させたのが3年目、初めて規定打席に到達すると0.379の高打率を残す。さらに順調に成績を伸ばし、2007年には1打席余分に立ったため狩野亜由美に首位打者は奪われたが0.408と4割を超え打率2位、2008年も1安打及ばず山田恵理に届かなかったが0.433と2年連続4割超えの打率2位と、今や日本でもトップクラスの安打製造機である。今年は珍しく春から“絶不調”であるが打率は0.289。その打率を残しながら絶不調と思わせるのが河野の凄さでもある。
北京五輪時にも外野手の4番手として代表入りも有力と見られていたが編成上残れなかった。内野手で同じ立場にあった古田真輝も同様だが、この二人は実力的には北京五輪代表選手と互角のものを持っている。ただ一つ気がかりなのが2007年のジャパンカップで全打席三振したように、外国人投手をやや苦手とするところ。その点だけを克服すれば、実力的には日本代表のトップバッターを打ち続けられる選手になるだろう。



本田小百合は名門星野高校で2年生からレギュラーとなり、これまで当該世代の日本代表には常に選ばれてきた天才打者である。2003年、全勝で2連覇を果たした世界ジュニア選手権には高校生として選ばれ、1番打者として2番の増山由梨(デンソー)とともに打ちまくり、アメリカと対戦した決勝戦では狩野亜由美(当時、織機)を2番に押しのけて3番打者に座った。強豪の豊田自動織機に進んだあとも1年目からレギュラーを獲得したところをみてもその非凡さがわかるだろう。
本田の良さはとにかく思い切りがいいところ。思い切りが良すぎて全ての打席で(たとえエンドランでも)フルスイングしていまうところもあるが、とにかくどんな相手にも物怖じせず独特のダウンスイングで鋭い打球を飛ばす。小さな体ながらライナーでフェンスを越えるような鋭い打球を放てるのが彼女の魅力である。
そして最大の魅力がその天然なところ(笑) とにかくいつも笑顔で悩んだことがないのかと思うくらいで、マガジンの選手間投票にも書かれていたようにどんな恐い先輩にも普通に笑顔で話しかけてしまう。とにかくソフトボールも実生活も全てにおいて天然。ほんまもんの天才かも知れない(笑)



永吉理恵は昨年ようやく開花したレオパレス期待の若手選手。とにかく崩されてもバットに確実に当てる技術は高く、そのしぶとさはレオパレスの大先輩である藤本索子二世と言っても過言ではない。1,2年目は選手層の関係からなかなかチャンスを得られなかったがそれでも計3打数3安打と非凡なものを見せ、3年目の昨年はレギュラーを獲得し打率0.421の3位と大ブレイクした。
今年も0.333と好調な打撃を続けている。残念ながらアピールする機会が今年は仙台でのジャパンカップしかないが、少ないチャンスの中で周りをうならせる渋い活躍をしてくれると期待している。

狩野香寿美はご存じ日本代表不動の一番打者・狩野亜由美の妹である。姉そっくりの打撃フォームからミートのうまい打撃を見せる。1年目からレギュラーに近い活躍をし、昨年はとうとう規定打席で3割を超えホームランも放った。デンソー初の決勝トーナメント進出にはこの狩野の成長も不可欠だっただろう。
打撃はさすがに日本一のトップバッターの姉には劣るが、互角以上なのが守りで、須磨ノ浦女子時代からインターハイでも守備で大活躍してきた。足も速く非常に守備範囲が広く特に球際の強さには定評がある。

 

<外野手の選考について>
新たに選考された外野手の中で、というより全ての参加選手の中で、投手の藤原麻起子と並んで誰よりも選出されることが確実視されていたのが河野美里であろう。もともと北京五輪代表を決める際にも、内外野ともに最低一人はバックアップをと考え内野5、外野4という布陣もあり得たわけで、その場合の4人目の外野手がこの河野だった。ただ、内野手の中に佐藤理恵三科真澄伊藤幸子といったように内野を複数守れる上いざというときに外野も任せられる選手が揃っていたことから外野をレギュラー3人に絞り、そのことで河野は代表に残れなかった。天才的なバッティング技術を考えると、山田や狩野にも匹敵するものを持っており、残念ながら年が若いと言うことで国際経験が他の選手より少なかったのもネックになったかもしれない。

選考会の外野手ではこの河野の次に誰を選んだのか、非常に興味あるところである。ポジション別に選手の本職を考えてレフト、センター、ライトから一人ずつにプラス一人という感じだろうか。そうするとレフトの守備位置を本職とする織機の本田小百合が次の選出だったかも知れない。何より本田には日本代表で大活躍してきた実績があり、若い代表にはとても頼もしい存在になるのは間違いない。
レフトとしては実績からすると本当はここに佐川の中村歩の名前があってもおかしくはなかった。しかしこの選考会時にもそうであったが今年は完全にバッティングを崩してしまい、過去3年間常にリーグのベスト5に入る打率に昨年本塁打王の面影は全くなかった。思えば2月末に織機と練習試合をした時点から速球には詰まりチャンジアップには腰が引けるというどん底の状態でこの不振は相当重そうだ。潜在能力としては非常に高いものがありながら今年調子が悪くてアピールできなかったのはHondaの平林真由子も同じである。シャープな打撃と俊足好守を誇り、1年目に30打席に立ち5割近い打率を残した逸材だが、今年は1割をやっと超える打率でチームの不振を象徴しているような低迷だ。この二人には後半からの復活を心から願っている。
守備で言えばこのレフトには名手が揃っている。先の平林もそうだが、トヨタの小野真希とレオパレスの小野奈津子の両小野は広い守備範囲に果敢なダイビングキャッチなど、守りに関しては群を抜いているだろう。%color(violet){守備の巧さに加えパンチ力もあり、勝負強く右打者であることから、レオパレスの小野奈津子は選ばれるだろうと予想していたが、残念ながら名前がなかった。恐らく最後の最後まで悩んでギリギリの落選だったのではないか。あるいは本職がライトならば選ばれたかも知れない。

さて、レフトに本田小百合、センターに河野美里が新たに選ばれた。ここに北京五輪代表からそれぞれ馬渕智子と山田恵理が加わるため、レフトとセンターには二人ずつ選手が揃った。
一方代表でライトを守った狩野亜由美が代表への参加を辞退したため、ライトからは新たに二人を選ぶことになったのではないか。もしポジションを考えないならデンソーの増山由梨が選ばれていないとおかしい。センターに二人揃ったことで、本来であれば選ばれてもおかしくない増山由梨が選ばれなかったのだろう。ちなみにセンターでは2部の選手だが靜甲の植松尚子もいい選手だ。一見線は細いが走攻守にセンスがある。三井監督の方針として打てる選手を下位に置くことからチームでは8番打者だが、リーグでの逆転満塁弾が示すように選考会で一段上のレベルを肌で経験して今年急激に成長した選手である。

さてそのライトであるが、実は選考会にはライトを守る実業団選手は二人しか参加していなかったため、もしかすると倍率1.0での選択だったかも知れない。もちろんそれでもこの狩野と永吉の二人がそれに値する選手であったためすんなりと決まったのだろうが。
ここでチャンスだったのが大学ソフトボール界ではすでに有名な選手でスピード抜群の浜渦聡美(IPU環太平洋大)である。ワールドゲームズに大学日本代表として出場するようにすでに実力は折り紙付きだが、選考会でもう少しアピールできれば面白い結果になったかもしれない。ただ結果的には実力通りにしっかりとしぶといバッティングを見せた永吉と、パンチ力のあるところも見せつけた狩野妹が選ばれたのは妥当なところだろう。特に狩野妹については、本田がワールドカップ、永吉がジャパンカップとそれぞれ1大会だけなのに対し、両方に名を連ねている。首脳陣の期待は意外と大きいのかも知れない。

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