【第6節終了~第7節の展望】

【豊田自動織機~したたかな王者】
2-0戸田中央病院
1-5ルネサス高崎

 ルネサスおよび上野の連勝を止めるのは織機しかいない、織機なら止めてくれる、とファンや関係者は強く願っていたはずで、この敗戦には少なからず失望しただろう。
 がしかし、織機の監督ルーシー・カサレスはどこまでも冷静であった。
 「ルネサスが全勝しようが上野が記録を作ろうが関係ない。決勝トーナメントに駒を進め、そこを勝ち抜いたチームが真の王者よ」とでも言いたいような選手起用であった。
 走りに走っているルネサスに無理に勝ちに行っても直接的なメリットは多くはない。それより、戸田中に星を落とすようなことがあってはならない。昨季は後半戦地元の刈谷大会で戸田中に星を落としているのである。

 日本リーグにおいては外国人投手に関して投球回数制限がある。おそらくこれは過去に外国人投手が圧倒していた時期(ルーシー来日が一機か。ちなみに1999年の中国の王投手~現中国代表監督などは年間防御率が0.00であった)において日本人選手の活躍を保証するために作られた制度であろう。世界一の投手が今や日本人である事実や、多くのチームが外国人投手を抱える現状、日本リーグを世界一のリーグにすることを考えると、この外国人投手の投球回数制限はリーグの発展のためにも早急に撤廃すべき悪習であろう。

 しかし現実にはそれがまだ残っているのである。
 五輪金メダル効果で沸く日本リーグ後半最初の節で、昨季王者の織機が戸田中、ルネサスと戦うこの北海道シリーズにおいて、ルーシーは迷わず大エースのミッシェル・スミスを戸田中戦に先発させた。そして昨シーズン苦杯を舐めさせられた戸田中をしっかりと完封し勝利を得た。
 今後のリーグ後半戦の勝負どころに投球回数を残しておきたいミッシェルは、世間大注目の翌日のルネサス戦の先発登板をあっさりと回避した。
 ルネサスとの試合は五輪金メダリストでもある江本が先発したが制球が甘く、またファールグランドからイレギュラーして入ってくる不運な2塁打(本当はファールであり誤審だが)もあり3回に一挙4失点し、その後両チーム1点ずつを奪い合うもルネサスに1-5と完敗した。
 「お客さんの顔見世のためにも10試合は投げさせる(宇津木総監督)」「全部投げて勝ちたい(上野)」というルネサス勢に対し、投球回数に制限のあるミッシェルの直接対決登板を回避させ、狙いを完全に決勝トーナメントに定めている連覇中の王者織機。
 今年は織機がリーグで苦戦しており、決勝トーナメント進出も危ぶまれるが、しかしそれぞれがそれぞれに高いレベルでの駆け引きを行うこの両者、やはり決勝の舞台での戦いを見たいものだ。

 そしてその昨年の王者織機が今節で当たるのが昨季のリーグ1位で 現在勝敗が並んでいるレオパレス。この戦いで勝ったほうが決勝トーナメントに大きく前進するまさに天王山である。

 

9月13日:v.s.Honda(100%以上の確率で勝たねばならない)
9月14日:v.s.レオパレス21(今年の天王山)
<宮崎生目の森球場>

 

【デンソー~強さは本物】
0-2日立ソフトウエア
2-1トヨタ自動車

 後半戦展望において「デンソーはでき過ぎた感がある」などと書いてしまったことを詫びなければいけない。今年のこの強さは本物であった。前半戦は不調の増淵をアマンダや染谷の力投で凌いできたが、後半はこの3人で1試合を任せるかのような戦い方である。染谷をソフトボールでは珍しいクローザーとして起用しだした。
 染谷はもちろん、増淵も長く日本代表を支えてきた銀メダリストであり、アマンダ・フリードもかつてはアメリカ代表だった投手である。3人で1試合を投げさせれば、もしかすると上野を攻略するより難しい戦いを相手は強いられるかもしれない。

 ソフトウエア戦では増淵、フリードの好投で途中まで接戦を演じながら染谷が打たれ0-2と敗戦したが、3投手の継投には自信を得た戦いであった。それに決勝トーナメント進出を争う眼下の敵は、ルネサスとともに頭一つ抜けた感のあるソフトウエアではなく、同じ愛知勢のトヨタ自動車である。
 デンソーはトヨタ自動車の先発リッターを攻略し3回までに2点を奪う。トヨタ自動車が前半戦防御率1位の露久保にスイッチしたときには時すでに遅し、であった。この試合も前日同様に先発の増淵からアマンダとつなぎ最後は染谷への3投手の継投。トヨタは3回に小野の本塁打で1点を返すのがやっとで、点差以上に大きい差のありそうな2-1の勝利であった。

 直接対決でトヨタ自動車を叩けたおかげで3位をキープでき、かつトヨタを6位にまで落とすことができた。それに力のある3投手の継投に手応えも感じることが出来た。決勝トーナメント進出に大きく前進したのは事実である。
 が、その間に5位に上がってきたのがレオパレスであり、しっかり4位をキープしたのが織機である。前半戦は退けることができたこの両者に対する戦いの結果が、今年のデンソーの全てを決めるであろう。

 

9月13日:v.s.日立マクセル(絶対に落とせない)
9月14日:v.s.太陽誘電(良い試合が出来ればよし)
<京都西京極球場>

ちなみに、
レオパレスとは第8節10月13日、
織機との対戦は第9節10月19日、である。

 

【レオパレス21~次が天王山】
12-1日立マクセル
6-1太陽誘電

 やはりというか、とうとうここまであがってきた。

 前半戦の3節7試合を終えての成績が2勝5敗。今年はだめかと思ったファンも多かっただろうが、おそらく選手は諦めていなかったと思う。5敗に関しても強豪のルネサスにソフトウエア、相性の悪い織機、今年絶好調のデンソー、トヨタ自動車相手で、デンソーとトヨタには1点差の惜敗であった。
 そして前半戦最後の節で太陽誘電を相手に小野の逆転サヨナラヒットが出て勝敗を6勝5敗の5割以上にした時点では、もはや決勝トーナメント進出も決して夢ではないと全員が思ったはずだ。
 夏の2ヶ月、キャプテンの佐藤とセカンドの藤本が五輪で抜けたが、その間選手たちは“叱られ怒鳴られ(笑)”ながらも大いに成長した。昨年から逸材として期待された伊藤綾香が完全に一皮剥け、後半早々にホームランを放った。渡邊の穴を埋めるべき頑張ってきた永吉は一休みした感じだが、もともと実力のある河野や藤本、井上、白井などがよく打ち、ティッカム&ローチの豪州銅メダリストバッテリーも健在で日立マクセル、太陽誘電を相手に快勝した。

 この状態で迎えるのがルネサスに対する以上に負け続けてきている織機である。
 昨年もリーグトータルで3敗しかしていないがうち2敗が織機戦である。そしてリーグ1位で通過した決勝トーナメントにおいてはまたしても最終決戦で織機に退けられてしまった。2004年、2007年と、決勝戦で苦杯を舐め続けさせられた織機と対戦する次節第7節は、ともに8勝5敗で並んだ状態であり、決勝トーナメント進出を争う上で決して負けられない直接対決である。
 まさに両チームにとってのここが天王山である。

9月13日:v.s.シオノギ(勝つことが前提)
9月14日:v.s.豊田自動織機(今年の天王山)
<宮崎生目の森球場>

 

【戸田中央総合病院~あまりにも痛い完敗】
0-2豊田自動織機
0-5シオノギ製薬

 初日に織機相手に好投した戸田中・先発の堤。下位を争う二日目の大事なシオノギ戦は初回から投球に精彩を欠いた。
 2回、シオノギにあっさり先制されるとその後も追加点を許し失点を重ね、この日大当たりの1番田城には左中間に放り込まれた。 打つ方でもシオノギの好投手松村歩相手になかなかチャンスも作れず、鈴木、吉田が時折大きな当たりを放つも外野を越えない。一年目の今季開幕から4番を打つ期待の新人内田の2塁打で作ったチャンスからも1点すら奪うことができない。
 前半戦は直接対決を制し、2勝9敗と勝敗でも並んでいたシオノギに対する後半早々の痛すぎる完敗であった。

 ここ戸田中は堤次第のチームである。堤が調子の良いときは織機やルネサス相手にも最小失点で抑えられるが、このように下位チームが相手でも先取点を与えてしまうと途端に試合が投げやりになってしまう(少なくともそのような印象は受ける)。
 投手が一人しかいなかった(稲垣はノーコン過ぎてとても使えなかった)昨季はまさに堤が全試合を投げぬいたと言ってもいいくらいであった。
 その結果が入れ替え戦へまわる低迷であるとともに、逆に入れ替え戦を勝ち抜く成長の源にもなった経験でもあったが。
 がしかし、そうそう堤一人に頼っていてはいられないだろう。世の中には労働基準法というものが存在するのだ(笑)。それに弱いチームは弱者なりの知恵を使うべきだと、詳しいチーム事情等を全く無視した上で、あえて言いたい。

 五輪後最初の大会で大勢のお客さんの前で無様な戦いは見せられないから、今節の織機戦での堤先発も仕方がない。
 ただ次からは強豪相手にはストライクが入るまでには成長した稲垣と、高卒新人ながら無難な投球はできる左腕の関に思い切って試合を任せてみてはどうだろうか。
 まだまだ若く成長し始めたばかりのチームである。1部残留を目標にして戦ってもいいのではないか。1部にいることが何よりの財産なのであるのだから。

 不運にもルネサスとの遠征帯同が多く、常に大勢の観客の前での試合になろう。嬉しいのはもちろん、反面、チームのペースが乱されないかが心配である。
 シオノギに負けてしまった以上、戸田中が直接叩かないといけないのはHondaと日立マクセルである。この相手に万全の体制で堤をぶつけられるか否か、戸田中の来年はその1点にかかっている。

9月13日:v.s.日立ソフトウエア(大敗は逃れたい)
9月14日:v.s.トヨタ自動車(前節連敗し意気消沈の相手の足下を掬えるか)
<岡山市県営球場>

 

【Honda~一般社員への土下座が現実味を・・・】
2-3太陽誘電
3-4日立マクセル

 社員への土下座も現実味を帯びてきた。
 初日、地元福井出身の金メダリスト坂井寛子先発の太陽誘電を相手に接戦を展開。
 5回表に1点をリードし勝利が現実味を帯びてきたその裏、誘電の好打者・前田智(子をつけない表記の方が打ちそうだからw)に逆転のツーランを浴びた。好投のジーナ・オークス、悔いの残る1球であった。
 しかしそれでも誘電に対してのこの接戦、翌日の相手、ここまで12戦全敗のマクセルには自信をもって挑んだはず、であったが・・・。
 この日のマクセルの先発は中国代表のエースで五輪後に加入した呂偉。守備の乱れにヒットを集められ4回に3点を先制されるが、それでも4、5回に点を奪い同点に。しかし続く6回、オークスから替わった金尾が加藤に決勝打を浴び、全敗の相手に今シーズンの初勝利をプレゼントしてしまった。

 今年のシーズン前、もともと立派なグランドがあったのにさらに別の場所に新しい専用グランドを造ってもらった。お金があるということはもちろん、昨年7位に躍進した好結果からさらなる飛躍を期待されてのものだったはずで、まさか2部に落ちるようなことがあれば全員で土下座をしても済まないくらいではないか。
 自動降格の最下位までとうとう1差になってしまい、完全な最下位争いである。若い選手と外国人選手の歯車がまったくかみ合っておらず今後も厳しい戦いが予想されるが、もはや気力と根性で乗り切るより他に方法はないだろう。
 特にシオノギ戦に負けるようなことがあると、最低限入れ替え戦対策をスタートさせた方が良いかもしれない。

 このチームは本当に不甲斐ないが、見ていて心から応援したくなるような微笑ましい「何か」を持っている。
 神懸かり的なファインプレーを連発する苦労人の主将中村の引っ張るチームである。なんとしてでもこの難局を乗り切って欲しいのだが・・・

9月13日:v.s.豊田自動織機(奇跡をおこせるか。一昨年は何故かミッシェルを攻略し大差で勝っている)
9月14日:v.s.シオノギ製薬(シオノギ以上に負けられない。ここで負けたら2部落ちも見え始める)
<宮崎生目の森球場>

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