10位:シオノギ製薬(3勝8敗、○靜甲、大鵬薬品、マクセル)
ここ数年は毎年のように主力選手が引退しながらも常になんとか乗り越えてきたシオノギ製薬。昨年防御率2点台前半で6勝し1部残留に大貢献した松村歩が今年はほぼコーチ専任で、松村とのバッテリーで勝利を導いた捕手の岩切奈那や4番を任され2本塁打を放った田城博美が引退した今年はいよいよ崖っぷちのシーズンかと危惧したが、それでもいつもと同じように苦しみながらもなんとか前半戦を3勝で乗り切った。その3勝の相手がマクセル、大鵬薬品、靜甲というのがまた伝統チームシオノギのしぶとさを表している。直接下位を争う相手にしっかり勝利していることは最終的には1勝以上の価値が出るだろう。
毎年ギリギリで1部に踏みとどまるしぶといチームなのが売りだが、今年の戦い方はまさにその名に相応しいしぶとい試合ばかりだ。開幕の靜甲戦では7回裏に2点差を追いついて延長に持ち込みサヨナラ勝ち。地元尼崎大会では逆に追いつかれる形で敗れはしたが連続して延長戦と、開幕3試合連続の延長タイブレイカー試合の接戦を演じた。2節1日目のデンソー戦には完敗したが、翌日の大鵬薬品戦では再び延長タイブレイカーにもつれ込んだ試合でサヨナラ勝ちと、開幕から5試合で4試合も延長タイブレイカーだったのだ。その後は上位陣と当たったことで負けが込んだが、4節の鹿児島大会で安福智が好投してマクセルに1点差勝利、5節の誘電戦では再び安福が好投し今年好調の誘電相手に敗れはしたがまたしても延長タイブレイカー試合と、最後までしぶとい戦いを続けて前半戦を終えた。
もともと好投手が揃うチームで、投手がしっかり投げて野手が支え、小技を駆使した攻撃で点を奪い少ない点差を守りきって勝利するというチームカラーなのだが、今年はその小技に関しての失敗が目立つ気がする。犠打数22は23の誘電に続いて2番目の数字で、あれだけ失敗しながらこの数字というのがまたすごいのだが、逆にいうと本当ならダントツで犠打数の多いチームであるべきなのだ。打てないチームというイメージがあるが藤田恵や宮幸代などリーグを代表する強打者が今年もしっかり打っているし、杉本夏子や新人の三宅美咲、山根すずかなども前半戦は良い数字を残した。チーム打率0.233は0.238のソフトウェアと大差がなく、ソフトウェアにあってシオノギにない長打力をカバーするためにも、犠打や走者を進める打撃の確実性はなんとか上げないといけない。この夏いかに伝統の小技の確実性をあげられるか、1部残留の成否もその一点にかかっているような気がする。
<前半戦打率ベスト3(10打席以上の選手、カッコ内は打席数)>
0.375(19) 上田恵
0.343(41) 藤田恵
0.300(13) 坪田佳奈
<本塁打を放った打者(カッコ内は打席数)>
1(39) 宮幸代
1(23) 山根すずか
11位:大鵬薬品(2勝9敗、○佐川急便、靜甲)
エース以上の存在の鈴木碧がシーズン前に骨折、正捕手の増井知美も怪我の影響で前半戦は出場できず、昨年打率4位と大ブレイクした中山亜希子が昨シーズン終了後から今春まで腰痛の悪化でほとんどバットを振れない状態でなんとか強引に開幕には間に合わせたが見切り発車状態と、非常事態の中でスタートした2011年の大鵬薬品。特に捕手増井の離脱は如何に新人の三崎がよく守ったとはいえリード面での形にならないマイナスが非常に大きかっただろう。しかし不幸とは続くもので、そんな時に佐々木瞳と並んで最も頼りになる打者の佐藤光紗がシーズン序盤で離脱してしまった。2節までの5試合で14打数7安打1本塁打1二塁打と開幕から絶好調だった矢先、まさに好事魔多し、2節のシオノギ戦の5回の走塁で足を骨折してしまったのだ。
結局1節の靜甲戦で2勝目を上げて以降チームは8連敗で前半戦を終えてしまったが、正直ここまで怪我人が続出した中で負けた中でも惜しい試合がいくつもあり、むしろよく乗り切った前半戦だと思う。とにかく捕手の三崎奈緒、一塁手の大村英利佳、外野手の千原香奈の3人の新人がとても新人とは思えない堂々とした活躍でチームを引っ張ったのが大きかった。この3人がいなかったら正直どうなっていたかわからない。佐藤光の代わりにサードに入った稲垣ゆみこも上野から2安打を放つなど巡ってきたチャンスをしっかりものにしたし、小澤芙美子、井俣茉莉、梅津佳奈子の二十歳前後の若い3投手も打たれるときは滅多打ちにされながらも時にはトヨタ打線相手にも好投するなど、若い選手がそれぞれみんな良い経験を積み、7つの負け越しで終わった前半戦は決して無駄ではなかっただろう。
と、ほぼ全体的に同情してしまうチーム事情ではあるのだが、やっぱりちょっとは愚痴も言いたい(笑)もちろんそれは酒井かおりと森田まゆと上釜恵に対してだ。常々書いているが大鵬薬品はいつも相手チームからエースをぶつけられる不利な条件で試合をしているのだが、それでもこの元気な3人が前半戦2割前後の打率で終わっているのには納得がいかない。酒井、森田はせめて3割を超える数字を残して欲しいしそれくらい十分にできるはずだ。9番の上釜が嫌らしいヒットで塁に出て上位に繋げて点になるパターンも多かったが今年は打席全体に淡泊な感じもする。4番の佐々木は後半戦も必ず打ってくれるので、その脇を固める玄人好みのこの3人の好選手たちがどこまで巻き返してくれるか、後半戦を大いに期待して楽しみにしたい。
<前半戦打率ベスト3(10打席以上の選手、カッコ内は打席数)>
0.500(17) 佐藤光紗
0.464(36) 佐々木瞳
0.333(19) 稲垣ゆみこ
<本塁打を放った打者(カッコ内は打席数)>
2(36) 佐々木瞳
2(28) 大村英利佳
1(35) 千原香奈
1(17) 佐藤光紗
12位:靜甲(1勝10敗、○マクセル)
開幕戦で痛い敗戦を喫し、その後は大鵬、佐川戦以外は大敗が続いたが、5節1日目の織機戦で惜しいサヨナラ負けをすると最後のマクセル戦でなんとか初勝利をあげることができた。マクセルとは昨年2部で優勝を争った強烈なライバル関係だったが、今年は補強したマクセルがほぼ現有戦力の靜甲より一馬身先に行ってしまった感がある。それでも初めての1部の舞台での対戦で河部祐里の完封で快勝するというのが、2部優勝の意地をここぞという場面で見せてくれたようで何とも痛快な結果だった。
その河部であるが、マクセル戦での好投は彼女の実力通り。しかし個人的にはもっと早い段階からこれを見せてくれると思っていた。彼女の良さはなんと言ってもハートの強さ、向こうっ気の強さで、打者に対して決して気持ちで負けることはないのだが、それが裏目に出ているのが被本塁打7という数字だ。2番目に多いのが安福智の5本だが、安福が投球回数59回なのに対し河部は28回なので、河部の7本はダントツと言っていい。やはりいくら気持ちで押すと言っても1部の強打者は甘くはなく、力勝負では負けることも多かったのだ。しかし学習能力の高いクレバーな投手なので、前半戦打たれたことを経験値に変えて後半戦はきっと見違えるような好投を続けてくれるだろう。
その河部と対照的なのがもう一人のエース鈴木麻美。若いながらもやはり多くの修羅場を経験してきた投手だけあり、遅いボールを駆使しながら投げた日はしっかり試合を作ってきた。初勝利は河部に譲ったが、かつての1部新人賞投手の名に恥じない投球が多かったと思う。特に織機戦での好投はまさに彼女の真骨頂で、上位チーム相手でも抑えられる投球術を持ってることを証明してくれた。後半戦では2007年にソフトウェアを破ったような上位を破る金星をあげてほしいと願っている、というか、きっとそうしてくれると期待している。
そしてもう一人、やはり3人目の投手が出てこないと1部リーグでは厳しく、後半戦を戦い抜くにはどうしても更ヱ万梨菜の成長が不可欠なのだ。前半戦は先発してもほとんどアウトも取れないまま降板するような試合もあり、すると試合早々から河部がリリーフに出ざるを得ないという悪循環で、河部の不振の一端が更ヱにあると言っても過言ではなかった(1年目の投手に対しては酷だが)。打たれてもいいから取れるところでちゃんとアウトを取り、何回かでも責任を持って投げられるようになれば河部や鈴木に対する負担も大きく減る。本人はチームの足を引っ張っているだけで申し訳ないと思っているかも知れないが、しかし靜甲の後半戦にとっては更ヱの成長が意外と大きな意味を持っているように思えるのだ。
打撃に関しては実力を発揮できていない選手がほとんどだが、久々の1部の前半戦ではこんなものか。出来れば一人二人、特に萩藤寛子や植松尚子あたりが4割に近い打率を残すなど突き抜けた成績を残す選手が出ていてくれたらチーム成績ももっと違った結果になっていただろうが。ただ意外と本塁打に関しては頑張っていて、5本はデンソーやルネサス高崎と同じで織機よりも多い数字。前回1部時は計盛志津子の1本だけだったので大いに飛躍した。長打では引けを取らないのだから後はやはり確実性だろう。特に前半戦2割未満の不振に終わった植松尚子、原田真由美、白井奈保美、田中美穂の4人の好打者には是非とも後半戦は巻き返してほしい。そして初めての1部を経験した吉田早希や菊池美咲、加藤菜奈子などの若手の成長や、二度目の1部の中村夏美や白井加奈絵のしぶい活躍にも期待したい。
<前半戦打率ベスト3(10打席以上の選手、カッコ内は打席数)>
0.261(24) 松井志帆実
0.250(21) 白井加奈絵
0.222(37) 萩藤寛子
<本塁打を放った打者(カッコ内は打席数)>
2(37) 萩藤寛子
1(36) 計盛志津子
1(35) 植松尚子
1(33) 白井奈保美