【10年ぶりの全日本総合選手権出場~NECアクセステクニカ】

【NECアクセステクニカというチーム】
 静岡県は掛川市に本拠地を置く2部リーグ所属のNECアクセステクニカというチームにについて、今回は書いてみたい。

 現在混戦の2部ホープセクションで6勝2敗で東海理化と並んで同率の2位。先の実業団選手権(2部以下の実業団チームの総合大会)で圧倒的強さで優勝し、ホープセクションでも首位に立つ戸田中央総合病院に今年唯一公式戦で土を付けたチームでもあるのがこのNECアクセスだ。
 1983年創部で今年で28年目。2005年まではおそらくずっと3部リーグ所属のチームで(※)、2006年以降に3部が廃止され全て2部に統合された時に初めて2部リーグに所属した(と思われる)。
 2003年までは現在甲賀医専でコーチを務めている信川真紀さんがかなり若い年齢(20代半ば)で監督をしており、2004年からはそれまで織機で監督をしていて今は鈴鹿国際大の監督である田中大鉄さんが監督をしていた。現在の監督は北京五輪で日本代表スタッフでもあった浦野光史さんである。
 そんなNECが今年10年ぶりに全日本総合選手権の出場を決めたのだ。
 これほど有名な指導者が指揮を任されたチームにして全日本総合の出場が「10年ぶり」というのも何か不思議な感じがするが、ソフトボールが盛んな東海地区のチームであり、中でも隠れたソフトボール王国の静岡にあっては県大会を突破して東海大会に出て、そこも勝ち上がって本大会に出るというのはなかなか至難の業なのである。

 ※実は信川さんが監督の3部時代に「7回で3点差、あと1回抑えれば2部昇格!」という試合で内野手が凡フライを落球という信じられないエラーから大逆転負けで選手が全員崩れ落ちて地面に突っ伏したということもあったはずなのだけど、それは敢えてここでは述べない(あ、言っちまった、笑)


 そのNECが前回出場した2001年大会以降10年間の、東海地区における全日本総合選手権の本大会出場チームを列挙してみたい。
 ちなみに全日本総合選手権というのは実業団、クラブチーム問わず全てのチームに参加資格があるいわゆるソフトボール版の「天皇杯」であるわけだが、1部リーグに所属しているチームには無条件で参加資格が付与されるので、予選を戦い抜くのは2部リーグ以下のチームと言うことになる。

【2001年以降で全日本総合選手権に出場した東海地区のチーム(1部所属チームは除く)】

<2001年石川県金沢大会>
 靜甲、東海女子大、NEC静岡(対伊予銀行2-0、対ルネサス(優勝)0-6)
<2002年鳥取県米子大会>
 靜甲、東海女子大、中京大
<2003年埼玉県坂戸大会>
 三島関病院(2部)、靜甲(2部)
<2004年広島県呉大会>
 東海理化(2部)、靜甲(2部)
<2005年兵庫大会>
 東海理化(2部)、靜甲(2部)、中京大
<2006年秋田由利本荘大会>
 靜甲(2部)
<2007年大分県竹田大会>
 松下電工津(2部)、東海理化(2部)
<2008年新潟県上越・糸魚川大会>
 東海理化(2部)、靜甲(2部)
<2009年千葉県成田大会>
 パナソニック電工津(2部)、東海学園大、靜甲(2部)
<2010年山口県下関大会>
 靜甲(2部)、大垣ミナモ、東海学園大(2部)
<2011年岐阜県大垣大会>
 大垣ミナモ、NECアクセステクニカ、鈴鹿国際大

 ここ数年は大学勢が力を付けてきて出場機会が増えてきたが、それまでを見るとやはり2部所属のチームが強い。
 中でもやはりここ10年は靜甲と東海理化が出場機会の多くを得ており、NECにとってはこの2チームがどうしても目の上のたんこぶ的存在だった。
 加えて昨年からは新たにドリーム☆ワールドという2部の強豪チームが同じ静岡にできたことからなおさら予選勝ち抜きが難しくなってきた。さらに岐阜国体を想定して大垣ミナモという強豪クラブチームも作られたからなおさらだ。
 NECですら難しいのだからそれ以下のチームにはさらに困難で、他地域のようにクラブチームが入り込む余地はほとんどない。
 そんな厳しい東海地区予選ではあるのだが、今年はNECにとって絶好のチャンスが巡ってきた。


【久々に巡ってきたチャンスの年に、揃った選手達】
 同じ静岡勢でずっと負け続けてきた靜甲が、2007年以来久々の1部に昇格してくれたので、予選での強豪チームが一つ減った。さらに昨年はプレーオフにまで出場した強豪のドリーム☆ワールドから日本代表クラスの強打者の3番小野奈津子、4番伊藤綾香が抜けた。さらに愛知県唯一の2部にして常に一定レベルの戦力を有する東海理化が総合予選を辞退した。
 さらに加えて東海地区予選で大会前日に行われた組み合わせ抽選もNECに大いに有利に働き、優勝候補である大垣ミナモとドリーム☆ワールドが初戦で対戦したり、東海地区では強豪の大学である東海学園大と鈴鹿国際大が初戦で対戦したりし、これらのどちらかが初日に消えるという幸運も転がり込んだ。
 静岡ではもう一チームの強豪だった三島中央(関)病院も数年前に廃部になっており、2011年というのはそういうNECに有利ないろんな条件が積み重なった年なのだ。

 もちろん、だからといって簡単に出場権を取れるような地区ではない。
 東海地区予選の決勝で負けたとはいえ、優勝した大垣ミナモに0-1サヨナラ負けだったように、またリーグ戦で戸田中にも勝利したように、ここ数年を考えるとNECも戦力が充実してきたように思える。

 トップを打つDPの馬場香織が3節を終わって0.452と戸田中勢を除くとD☆Wの谷口敏子に次いで2番目の成績。2番打者の新人嘉屋千紘は昨年の国体神奈川県予選で日立ソフトウェアを破った東海大出身の好打者。甲賀医専出身のキャプテン宮之原真見が3番に座り、自慢の「Wワタナベ」であるスタイル抜群の渡辺祐子とガッツ溢れる渡邊南が4番5番に座る。沖縄出身のキャッチャー井本琴美が6番で、道産子新人の齊藤聖が7番サード、甲賀医専出身の外野手高橋小百合と堅守のセカンドの高卒新人富田あすかで下位を形成するという打線でほぼ固定できているのも、今年落ち着いて戦えている理由かも知れない。
 さらに個人的に毎試合とても楽しみなのが今村千春の打席だ。織機の藤崎絵未莉と鹿児島は神村学園の同期で昨年は4番も務めた強打者だが今年は控えに甘んじている。それでもここぞという場面では毎試合代打に出て来て、そしてその場面が一番盛り上がるし、大事な東芝北九州戦では代打満塁ホームランも放った。
 もちろん少ない控え選手である山下成美、加藤愛、乃一知世なんかも毎試合何かしら貢献している。

 さらに今年の戦力の充実を物語っているのが投手陣である。
 埼玉栄出身の新人左腕宮崎夏菜が3節を終えて防御率1.54と戸田中の李琪(リー・チー)をも上回る成績でセクション2位。日本リーグを代表するセカンドである大鵬薬品の酒井かおりとトヨタ自動車の鈴木美加にちょうど挟まれた年代に同じ東京の日出高校を卒業した山本梢が防御率4位と、この若い二人が大活躍している。
 そしてもう一人、防御率ではこの2人に下回るが、山本より1才上の若さにして甲賀医専、旅程紅葉と渡り歩いてきた苦労人の川口汐里が実に頼もしいピッチングをして投手陣を引っ張っている。やはりNECのエースと言うべき存在はこの川口だろう。

 と、ここまで力入れて書いた段階で白状するのだが、実はNECアクセステクニカの試合は去年までほとんど見る機会がなく未知数のチームだった。
 1部を中心に追いかけているとどうしても2部の試合を見る機会が少なくせいぜい実業団大会くらいで、ましてや最初に述べたように全日本総合にもあまり出てこないチームだと余計に見る機会が限られる。
 そんな中でもNECはさらにタイミングが悪くてほとんど見る機会がなかったのだが、それが今年は一転、大雨で延期の第1節の戸田中戦を偶然見られて以降、全日本総合予選など何試合か見る機会が出来ていっぺんに好きなチームになった。
 そういう個人的事情も相まっての今回の特集で、そしてこのチームが苦労して全日本総合への出場権を手に入れた過程も考えるとどうしても2011年の全日本総合では一番注目したいチームになったのだ。

 以上、つい肩入れしてしまうと長いながい読みづらい文章になってしまい大変申し訳ないが、申し訳ないついでにもう一つ。
 このNECアクセステクニカについてとても残念なことがある。
 それが打率0.413でセクション9位の好成績を残しながら昨年限りで引退してしまった川村美紗のプレーをほとんど見られなかったことだ。恐らく、現在YKKに所属する姉の川村真美と同じようにシャープな打撃をする好打者だったのだろうなと思うのだが、とにかく残念だ。今年の躍進したチームの中で川村のバッティングを見てみたかったのだが。
 それを思うとやっぱりソフトボール選手には油断してはいけない。いつ突然引退してしまうのかわからない(笑)。とにかく、見られるうちにいろんな選手のプレーを見ておかなければ、きっとまた後悔する。そんなことも考えさせてくれるNECアクセステクニカなのだ。



<すらっとしたスタイルでも4番を打つ中心選手、渡辺祐子>


<個人的に買っているのがシャープな打撃の2番打者、嘉屋千紘>

<鈴鹿国際大に貫禄勝ちして全日本総合選手権出場を決めたNECナイン。部員は全部で16人>

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