2011年、および2010年の投手データの解析をしてみたので報告します(※各年度、投球回数20回以上の投手について)。
(「2009年の投手データ解析」)
使用したデータは前回(2年前)と同じく投手の能力を表す、奪三振、与四球、被打率というもので、奪三振と与四球については野球でも投手の能力評価に使われる「奪三振(K)/与四球(BB)」という比率の形で表した(これは「一つ四球を与える間にどれだけ三振を奪えるか」というもので、投手の根本的な能力を表すのに簡単だが非常に優れた数値と言われる)。
もう一つの「被打率」は野手の守備力にかかる部分も大きいが、前回も示したようにソフトボールでは「K/BB比」との間に有意な相関が見られるので、この二つの数値で用いた散布図を作成して投手の能力を視覚的に表すことにした。
<図.2010年、2011年のデータを元に作成した「被打率(横軸)」と「K/BB比(縦軸)」の散布図。X,Y軸ともに分数なので対数置換して表示した>
上に示した図では、横軸が左に行くにつれヒットを打たれにくく、縦軸が上に行くほど四球より奪三振が多い、ということで、この図では左上に行くほど投手の能力が優れていることを示している。
2年間続けて突出したデータを示したのがトヨタ自動車のモニカ・アボット(トヨタ)。一昨年はK/BB比が30超えと驚異的な数字で、2011年はそれよりは数値が減少したが、被打率の低さで上野由岐子(ルネサス)を抜いて1位に返り咲き、名実ともに2年連続最高の投手の名にふさわしい数値だった。
日本のエース上野は昨年よりやや数値が下がったが今年は初来日のキャット・オスターマン(織機)とほぼ同じ数値。成績的にはアボットが突出しているが、オスターマンと上野を加えた3人はやはり世界3大投手であることを数値も表している。
その他の突出した成績の投手としては、2010年のケイティ・バークハート(織機)、染谷美佳(デンソー)、2011年の山根佐由里(トヨタ)、それに投球回数は少ないがルネサスの山下絢、黒川春華にも目が行く。山根、山下、黒川に関してはそれぞれチームに大エースがいて2番手以降の存在だが、こういうデータに特徴的な数値を示すというのは能力がある証拠だろう。山根などは2011年は被打率の低さで上野を上回り2位、黒川は被打率はやや高いがK/BB比では4位の高さだ。
2010年に遅咲きにして最高のシーズンだった織機の宮本直美と、2011年に最高のシーズンを迎えた同じく織機の栗田美穂がほぼ同じ数値なのもまた面白い。
ただ藤原麻起子は2010年、2011年と平均的な数値しか表してないにもかかわらず、2年とも日立ソフトウェアのみならず日本代表のエースとしても大活躍したのは周知の事実。中にはこういう数値ではとても表せない素晴らしい投手も存在する。
さてここから先は少しトーンダウンして書きたいのだが、この図で右下に位置する投手、つまり成績の芳しくなかった投手である。
靜甲の鈴木麻美は極端に悪い数値だが、あの後半デンソー戦での16失点の投球が数値に大きく響いてしまった。ただ時に上位相手にも好投する鈴木の能力はその程度のものではないので、来年1部復帰時には大いにリベンジしてもらおう。大鵬薬品の小澤芙美子と言えばリリーフで出てきて試合を引き締めたり、入れ替え戦での胴上げ投手にもなったように素質のある良い左腕なのだが、出てきてすぐ不用意に四球を出してしまうことが多いように2年連続して「K/BB比」がワーストの数値。もう一皮むければほんと良い投手になる素質は持っているのだが、今年はこの数値をどこまで改善させることができるか。
<2010年の被打率、奪三振/与四球比データ。上下位3人は色づけしてある。かっこ内は順位>
<2011年の被打率、奪三振/与四球比データ。上下位3人は色づけしてある。かっこ内は順位>