今年の2部は、本来なら最高でも入れ替え戦にしか出られないはずのセクション2位のペヤングが自動昇格し、そのペヤングに負けたドリーム☆ワールド(以下、D☆W)が入れ替え戦に出るというイレギュラーな結果となった。もちろん理由は東芝北九州の廃部騒動である。
2部は10月の20、21日の二日間にわたってプレーオフ(以下、PО)が行われて、そこで優勝した東芝北九州が1部昇格を辞退したために替わって2位のペヤングが自動昇格になり、3位のDWが入れ替え戦出場となった。
しかし今回の決定に関しては個人的には非常に不満がある。
<2部のPО改革について>
そもそもソフトボールにおいてはリーグ戦上位の4チームによる「敗者復活ありのページシステム」による決勝トーナメントでの優勝チーム決定方法が、日本の1部リーグはもちろん五輪でも世界選手権でも行われてきて半ば常識となっている。もちろん2部リーグも2010年に2セクションにわかれてからはこのシステムを採用しておりその例外ではない。
しかしご存知のように今年の2部リーグでは、この順位決定のためのページシステムというソフトボール界の常識からやや脱し、「両セクションの1位同士が対戦して勝った方をそのまま優勝(1部に自動昇格できる)とする」、という新たな制度が導入された。
単に順位(優勝)を決めるためだけなら、何もソフトボール界の常識である今までのページシステムを変える必要は全くなかったはずで、わざわざこういう制度に変えたということは、それなりの目的、意味があったはずだ。
その目的、意義というのはすなわち「1部に自動昇格できるのは両セクションでのリーグ戦1位通過チームのどちらかに限られる」ということではなかったか。もちろん、内実では「試合数を一つ減らす」という理由もあったかも知れないが、そんなセコい理由でソフトボール界の常識的な制度を変えるなんてことは表だった理由とはなりえない。やはり前者の、つまり「2部チームの最大目標である“1部への自動昇格”は、セクション1位通過の2チームにのみ与えられる特権」という意味合いが強かっただろうと思っている。
なぜわざわざそうするかと言えば、今までの制度なら比較的弱いチームながらもセクションを2位で通過し、たまたまPО時に調子が良くて短期決戦で勝ち上がり優勝して1部に自動昇格してしまう、というチームも現れてくる可能性もある(つまりリーグ戦の実力的に2部4位のチームが自動昇格する可能性もあるのだ)。せっかく1部に上がってきたチームが極端に弱かったりすると、今度は1部のリーグ戦そのものの価値を下げることになってしまう。
そういう事態を極力避けるためにも、「1部への自動昇格は長丁場のリーグ戦をしっかり戦って1位通過したチームのどちらかに限る」というのは、非常にシンプルでわかりやすく、且つ意義のある改革だったように思う。これなら少なくともリーグ戦の実力で2部全体の2位以内のチームしか自動昇格できない。ソフトボール協会にしてはよくやったと個人的には高く評価もしていた(何さまだお前は?はい、済みません…笑)。
<せっかくの改革だったが…>
ただ、にも係わらず、結果的にはセクション2位のペヤングが自動昇格という恩恵を受けることになった。
個人的にはペヤングに恨みもなければD☆Wに強い思い入れもないが、しかしわざわざ改革した意義を貫くのであれば、たとえD☆Wが東芝に負けたとしても(実際にも負けたのだが)、東芝が昇格を辞退するのであれば「リーグ戦1位」という実績のあるD☆Wが替わって自動昇格の権利を手に入れるのが筋ではなかったかと思っている。確かに短期決戦ではペヤングが勝ったが、長丁場のリーグ戦ではD☆Wが上回った。「1部リーグへ上げる」という意味合いでは後者のチームを上げる方がより説得力がある。何よりそうしなければ何のためにせっかく制度を変えたのか、意味がわからない。
<協会の判断は遵法的だが、しかし>
ただ遵(順)法的に言えば、「普通に全4チームが参加し、今年の制度に則った上でPОが行われ、それで東芝が優勝した。しかし東芝が1部昇格を辞退したので、順番を繰り上げた」というソフトボール協会の最終判断は法に叶っておりなんら間違いではない。というかこれしか解釈はなかっただろう。しかしながら間違いではないが、やはり個人的には大いに釈然としない。
今年の結果は、あとから見たら「普通にPОが行われて終わってから東芝が辞退したんだな」と簡単に流されてしまいそうだが、実際には東芝が勝っても1部に上がらないことはPО前に分かっていた。協会としてはその事実を見ないフリをしてなんとかややこしい問題を背負わずに「最後まで逃げ切った」感が否めない。
せっかくの改革を意義あるものたらしめるためにも、「順位決定戦は行うが、東芝が優勝し昇格を辞退した場合には、自動昇格はD☆W」という英断をしてほしかったと、残念でならない。
<東芝のPО参加問題>
そしてもう一つ不満に思っているのが東芝のPО参加問題だ。
これももちろん東芝のチームに対しては個人的恨みは全くない。ないわけだが、しかしリーグ戦全日程が終了し、さあPОに向けて、と他チームが気持ちを切り替えている段階において、出るか出ないかハッキリしないというのは、何より対戦相手に対しこれ以上失礼なことはない。もちろん東芝の選手も可哀そうだが、しかし親会社がそういう態度でいる以上、やはり東芝というチームに大きな問題があることには変わりはない。
もちろん東芝の選手としては最後まで出ようと努力するのは当たり前で選手監督を責める気は毛頭ないが、そこはソフトボール協会が毅然とした態度で振る舞い「全日程終了時点で3週間後にせまったPОに出るかどうかの確約もできないようなチームは出場不可」とすべきであった。しかし3週間前どころか、聞くところによるとPОへの参加の有無の最終回答期限が開催日前々日だったという噂さえある。。
受け止め方によっては「最後まで出るために努力する東芝の選手、監督たちと、出させてあげるために最大限の猶予を与えてあげたソフトボール協会」のように美談にも聞こえるが、待たされる方、対戦させられる方はたまったもんじゃない。ハッキリいってこの協会のいつもの決断力のなさが招いた事態が、結局は全てD☆Wの方にシワ寄せが行ったとしか思えない。
まあ一通り不満に思っていたことを吐露したが、ともあれ全ては終わったこと。
ソフトボール協会さんも毎年毎年いろんな事態が生じてしまい大変な中、常に一生懸命やってくれているわけで、だから個人的には上に書いたような文句は絶対に言わないでおこうと思うのだが、さて。
そんなわけでともかく、何とも気の毒で頑張ってほしいD☆Wが出場する入れ替え戦が明後日、明明後日と行われる。
でもやっぱりシオノギ製薬の安福智投手相手ではD☆Wにはかなり厳しい戦いになりそうだなあ~、というここでメインで書こうとした予想は、あまりにも前置きが長くなってしまったので次の記事で。