【2019年シーズンの日本リーグにおける、二つの大きな規約の改訂について】

 さて日本リーグ開幕まであと数日となりました。

 昨期はシーズン終盤まで順位争いが激しく、特に3位以下の争いが稀に見る大混戦となった1年でした。
 今期も各チームの実力を見るとなかなかの混戦が予想されますが、実は、ふたを開けてみなければ結果がどうなるかが分からないような大きな改革が2つ、ありました。それについて以下に個人的な意見を書いてみました。

 

 まず一つ目は、『移籍の自由化』

 今まではおもに強引な選手の引き抜きを防止する目的で、「前所属チームの承諾がない場合は翌年1年間は日本リーグに出場できない」という規定がありました。その規定が今期からなくなりました。

 もちろん今までも戸田中央総合病院からトヨタ自動車に移籍した坂元令奈や、デンソーに移籍した今泉早智、伊予銀行から豊田自動織機に移籍した中森菜摘のように、翌年にスムーズに他チームに移籍した例はいくつもあります。ただレオパレス21から豊田自動織機への白井沙織や戸田中央総合病院からHondaへの長谷川優理、そして日立から伊予銀行への山口清楓や、デンソーから日立への近藤光、など、1年のブランクを於いて他チームで復帰した選手も多くいます。この場合は元のチームが承諾しなかった場合や、辞めたチームにあえて承諾をもらいに行くのが精神的に負担になった場合など、理由はさまざまでしょうが、どちらにせよ「承諾が必要」という規定が移籍を妨げてきたのは事実です。

 「強引な引き抜きを阻止する」という意味の紳士協定的なこの規則は、戦力を均衡させたり秩序を保つためには、今まではある程度必要悪だったように個人的には思います。ただ最近の流れから言うと、選手の職業選択の自由や、突き詰めれば人権にも関わってくるような問題にもなりかねません。実業団の陸上部関係でも同じような規定があり、それが実際の訴訟にも発展していたようですので、ソフトボール界としては問題が起きる前に「自由な選択を阻止するのは止めよう」という判断に自ら至ったようです。柔軟で先見的な対応で、良かったと思います。

 さてこの規約が改訂されたのが昨年の秋頃。
 これを踏まえて、今期はかなり多くの選手が動くのではないかと予想しましたが、実際の移籍人数を見ると「意外と少なかったなあ」というのが個人的な感想です。
 デンソーから太陽誘電への山口美紀、豊田自動織機への江口未来子。大和電機からNECプラットフォームズへの望月朱里、厚木SCから靜甲への大塚巳那子、厚木SCからDream Citrineへの船山優果などは、自由に移籍できるようになった恩恵に預かったのかも知れませんが、もう少し大物も動くと思っていたのでちょっと残念でした。まあ自由にどこにでも行けると言われても、動く方もそして獲る方も、まだまだ少し遠慮しているような感じですね。
 今シーズン終了くらいから本格的に動き出すかも知れません(個人的には市口侑果を心から応援したいので、どこかよそに移籍してくれないかなあと本気で思ってます、笑)。

 

 

 そして二つ目が『外国人投手の投球回数制限の撤廃』です

 今までは、外国人投手はチーム内で全イニング(7回 x 22試合=154回)の約60%(98回)以内しか登板することは出来ませんでした。これが撤廃されました。
 これも上記のことと関連があるのかも知れませんが、同じ日本リーグに所属する選手として、タイトル争いなど個人成績に直接関わってくるような出場機会などの項目に関し、国籍で制限するのはおかしい、という根本的な問題を解決しようとしたのかも知れません。全て投げられる日本人投手と比べると6割しか投げられない外国人投手は最多勝争いなどでは圧倒的に不利ですからね。
 ただサッカーなどでも他国籍選手の出場制限をしているリーグもありますし、そもそも日本のプロ野球でも外国人登録選手数に制限があるくらいですから、自国リーグの選手の出場機会を確保するためのこういった制限は、本質的におかしなことではないと思います。

 ですので、こうやって制限を撤廃すると「ますます日本人投手の投球機会が減る」とか「外国人投手を獲得できるチームと出来ないチームの差がどんどん開いてしまう」という声も当然出てくると思います。それももっともなことだと思います。

 しかしそれに関しては、実は個人的には大きな心配はしていません。
 いくら投球回数制限が撤廃されたところで、土日の連戦を考えると全試合外国人投手が投げるのは不可能ですし、いつでも自由に登板させられるということで、無理して使うこともなくなるはずですし、(今までは無理にでも使えるだけ使わないと、という感じも少しありました)逆に日本人投手の登板機会が増えることだって考えられます。
 日本人投手も個々人頑張らないと、それこそ登板機会が無くなってしまいますので、意識も変わってくるはずです。もちろん全試合の8割とか9割を一人の外国人投手が投げるようなチームが出ないとも限りませんが、その時はその時で、その場合にどういう結果になるのか、というのもまた一つの実験結果でしょう。
 とにかく一度やってみないことには何もわからないわけで、この改革には個人的には賛成しています。

 そして個人的にこの改革で一番期待している点が、「トヨタ自動車とビックカメラ高崎の2チームが勝ちすぎて、そしてこの両チームの選手が個人タイトルを独占している」という現状の打破です。

 外国人投手が全体の6割しか投げられないと、ギリギリでベスト4入りを争うような中堅クラスのチームが、現状で頭一つ抜けているトヨタ自動車とビックカメラ高崎の両チームには外国人投手を登板させず、中堅以下のチームにだけ集中的に投げさせて勝ちを得ようとする、という非常に悪い流れが出来てしまっていました。
 言葉に語弊があるかも知れませんが、相手チームはトヨタ自動車とビックカメラ高崎相手には「対戦前から勝負を諦めて」いる傾向があり、この2チームがシーズン序盤から勝ち続け、打ち続け、1,2位が早々に独走するのがここ何年もの繰り返しでした。
 もちろん「チームの目標」というのは「シーズンでの優勝」や「決勝トーナメントへの進出」なので、トヨタ自動車やビックカメラ高崎相手に「上手に負けること」も重要な戦略で、批判される筋合いのないことではありましたが、リーグ全体として面白くなくなっていたのも事実です。
 外国人投手の投球回数制限撤廃が、この流れを少しでも変わてくれることに大いに期待しています。各チームとも、この2チームにガンガン外国人投手をぶつけて欲しいです。

 もちろん、ルール改正の詳しい理由は分かりませんが、意外と最後にあげた理由が主要な理由の一つなのかなあ、という気もします。

 ともかく、この二つの大きなルール改正には個人的には大きな期待をしていますので、どういう結果になるのかを楽しみに待ちたいと思います。

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