【2019年インターハイ観戦記(決勝戦詳細、ほか)】

 令和元年の全国高校総体は「南部九州総体」ということで沖縄、鹿児島、熊本、宮崎の各県にまたがって行われ(ヨットのみ和歌山)、ソフトボールは男女ともに宮崎県日向市で開催されました。
 結果は男子は台風の影響で準決勝以上が中止になり、大村工業(長崎)、御調高校(広島)、読谷高校(沖縄)、新島学園(群馬)の4校が優勝、女子が優勝・兵庫大附属須磨ノ浦、準優勝・千葉経済大附属、ということになりました。
 個人的には7月29日までは三重で全日本実業団選手権を見ており、その後に宮崎に移動したため女子の3日目、4日目の二日間だけの観戦となりました。
 とにかく設置したテント以外はほとんど日陰がないような会場で、ただ見ているだけで暑くて暑くてどうしようもない状態でした。選手や審判、係の皆さんは本当にお疲れさまでした。
 そんな状態だったので多くのグランドを回れなかったのですが、決勝戦を中心に観戦できた試合の感想を書きたいと思います。



【決勝戦~詳細(須磨ノ浦は夏→春→夏と3季連続優勝)】

千葉経済大学附属高校
 011 0000 10…3-5-1
 000 1001 11…4-6-0
兵庫大学附属須磨ノ浦高校

(延長9回サヨナラ)

千葉経済大学附属高校:大江真尋、●伊東乃々香 - 宮坂芽以
兵庫大学附属須磨ノ浦高校:和田凛、〇田村真央 - 中辻美空
(本):
(三):笠原朱里(須)
(二):野口楓(須)

 

【戦評】
 須磨ノ浦は3季連続全国制覇ということでまさに黄金世代。特別ずば抜けた選手はいないし、毎試合がほぼ接戦で、圧倒するような試合運びもほとんどないが、高校レベルのひとつのチームとしては完ぺきに仕上がったような、ある意味、芸術的に完成された美しさすら感じられるチームではないだろうか。

 ただ、あくまで個人的な感想ではあるが、この夏の大会だけを見たら、「試合巧者」という意味では千葉経済大附属はその須磨ノ浦をも上回っていたように思える。とにかく強かったし、何より実に点を取るのが上手かった。走者が三塁にいれば内野ゴロや外野フライで簡単に点を取るので、回が進むにつれていつの間にか1点、2点と点差が開いていくような試合運びだった。決勝戦はさすがにチャンスを潰す場面も多かったが、1点リードで7回裏に入った時点では「千葉経大附が優勝する」と確信したし、実は3日目が終わった時点で「決勝戦は千葉経大附と須磨ノ浦で、まあ千葉が優勝するよ」と予言していたほど。そんな試合巧者の千葉経大附だったが、最後の最後に、優勝がすぐ目の前にちらついた最後の場面で、優勝を意識しすぎてしまったか、もったいないミスを連発してしまった。
 まずは2-1と1点リードで入った7回裏の場面。
 ここまで須磨ノ浦打線を1点に抑えてきた千葉経大附の先発の大江真尋が先頭の代打森田華乃に対して急にストライクが入らなくなりストレートの四球。さらに1死二塁となったあとにワイルドピッチで走者を進め、センターへの犠飛で同点とされる。1点を勝ち越して迎えた8回裏には、この回から代わった伊東野乃香が初球を大暴投で走者を三塁に進めてしまうと直後にレフトへ犠飛を打たれて再び同点に。この回結果的には3人で抑えただけに、あまりにも悔しい初球の暴投だった。
 そして攻撃では9回表、1死三塁で打者の川地葵が三走とのエンドランを決めて打球をライト前に運び勝ち越し点を奪ったかと思いきや、この時三塁走者が痛恨の離塁アウトを宣告されており得点は認められず。実はこの場面、どうも最初は打者の川地がゴロを転がすのを見て三塁走者が本塁にスタートするという作戦だったようだが、ファールで追い込まれたためサインをエンドランに変えていたような感じで、三走の「少しでも早くスタートを」という気負いが仇となってしまったように思えた。
 このように相手のミスで点をもらい、点を防いだ須磨ノ浦だったが、実は準決勝の清水ヶ丘戦でも延長で相手の暴投とパスボールで決勝点をもらっている。
 千葉経大附は優勝を意識したこともあろうが、千葉経大附も含めた対戦相手が「相手は須磨ノ浦だ」ということを意識し過ぎた部分もあったのだろう。

 実はミスと言うとさすがの須磨ノ浦にもあり、無死二塁の場面で打者にサードへ犠打を決められるも、サードの小笠原里桜が間に合わない三塁に送球する野選でピンチを広げるという場面が、2回、7回、8回と計三度もあった。
 いずれの場面もその後無死二三塁とされたが、2回は犠飛で、8回は内野ゴロでの1失点のみ。7回などはその後無死満塁とされるも無失点で斬り抜けている。このように一方的な点差になってもおかしくないようなピンチの連続だったが、その都度踏ん張ってチームを救ったのが3回表の途中からエースの和田凛をリリーフした田村真央。準決勝の清水ヶ丘戦でもリリーフで登板し延長8回まで投げて勝ち投手となったように、準決勝、決勝での田村真央は実に頼もしい投球内容だった。試合巧者の千葉経大附の攻撃を田村を中心に全員で必死に守り切り、最小限の失点で凌いで我慢し続けたことが結果的に勝利に結びついた。

 個人的にはこれほどまでに良いチームを作ってきた千葉経大附に3年ぶりの優勝をさせてあげたいなあと願っていたが、やはり最後は須磨ノ浦かと、感心というか納得させられてしまった最終結果となった。とくに今年は佐賀女子短大付属佐賀や岡山創志学園、とわの森三愛のような全国レベルの強豪が地方大会で敗れるという大波乱があった年だったので、全国大会でもいったい何が起きるのだろうかと思ったが、そんな中でしっかり優勝を掴んだ須磨ノ浦がその強さの安定感をみせつけた大会になった。

 


【試合詳細】

【千葉経済大附属高校~先発と交代選手)】
1(8):眞嶋花
2(4):川地葵→(打)原田理子→(再走/4)川地葵
3(5):笠原朱里
4(D):大寄なつみ→(走)小林千晃
5(6):杉浦穂華
6(3):石井桃加
7(7):横山木葉→(打)嘉門璃里花→(再7)横山木葉
8(9):米田百々春
9(2):宮坂芽以→(打)野口楓→(再走/2)宮坂芽以
FP(1):大江真尋→(1)伊東乃々香

【兵庫大附属須磨ノ浦高校~先発と交代選手)】
1(6):山本星
2(4):花浦ひかり
3(5):小笠原美桜
4(3):樫本心美
5(7):久保田優海
6(D):柏坂恵美
7(2):中辻美空
8(8):橋本楓
9(9):西出友香→(打)坂本京花→(再9)西出友香→(打/9)森田華乃
FP(1):和田凛→(1)田村真央

【1回表:千葉経済大学附属高校~0点】
眞嶋:左飛
川地:死球
笠原:二ゴロ・二進
 ※パスボールで三進
大寄:三ゴロ

【1回裏:兵庫大学附属須磨ノ浦高校~0点】
山本:三直
花浦:二ゴロ・送球失
小笠原:中飛
樫本:遊飛

【2回表:千葉経済大学附属高校~1点】
杉浦:死球
 ※杉浦二盗
石井:三犠打・野選
 ※須磨ノ浦のサード小笠原が振り返って三塁に送球も間に合わず
 ※杉浦二盗で二三塁
横山右犠飛
米田:遊ゴロ・本塁タッチアウト(一三塁に)
 ※転がしてからゴーのサインでショートゴロで三走が本塁狙うもタッチアウト
 ※米田二盗
宮坂:二ゴロ

【2回裏:兵庫大学附属須磨ノ浦高校~0点】
久保田:遊ゴロ
柏坂:三ゴロ
中辻左前打(クリーンヒット)
橋本:四球
西出:捕邪飛

【3回表:千葉経済大学附属高校~1点】
眞嶋:二ゴロ
川地:二飛
笠原右翼線三塁打
 ※大寄の打席で投手がイリーガルピッチ、その投球を大寄がセンターフライ
 ※千葉側は「一つのボールと一つの安全進塁権」を選択し追加点で大寄は打ち直し
 ※須磨ノ浦の投手が田村に交代
 ※大寄の打席で一邪飛に打ち取るもまたしてもイリーガルピッチで打ち直し
大寄:投ゴロ

【3回裏:兵庫大学附属須磨ノ浦高校~0点】
山本:遊飛
花浦:三飛
小笠原三前飛安
樫本:中飛

【4回表:千葉経済大学附属高校~1点】
杉浦:投ゴロ
石井:遊ゴロ
横山:遊飛(須磨のショート山本がダイビングキャッチ)

【4回裏:兵庫大学附属須磨ノ浦高校~1点】
久保田三弾く安(失?)
柏坂:二ゴロ・二進
中辻左前打(クリーンヒット、一三塁に)
橋本:四球(満塁)
(打)坂本(←西出):中飛
 ※二走の中辻にテンポラリー走者で柏坂
山本右前適時打
花浦:二ゴロ・タッチアウト
 ※西出が再出場

【5回表:千葉経済大学附属高校~0点】
米田投弾く中前打
宮坂:バント二封
眞嶋:三ゴロ二封
川地バスター左前打
笠原:四球
大寄:二直

【5回裏:兵庫大学附属須磨ノ浦高校~0点】
小笠原:右飛
樫本:遊ゴロ
久保田:遊飛

【6回表:千葉経済大学附属高校~0点】
杉浦:左直
石井:セフティバント一ゴロ(好プレー)
横山中前打(良い当たり)
米田:二ゴロ二封

【6回裏:兵庫大学附属須磨ノ浦高校~0点】
柏坂:空振り三振
中辻:投ゴロ
橋本:遊ゴロ

【7回表:千葉経済大学附属高校~0点】
(打)野口(←宮坂)左中間二塁打
 ※代走に宮坂が再出場
眞嶋:三犠打・野選
 ※須磨ノ浦のサード小笠原が捕って振り返って三塁に送球も間に合わず(2回目)
 ※眞嶋二盗で二三塁
(打)原田(←川地):四球(無死満塁)
 ※代走に川地が再出場
笠原:一ゴロ併殺(3→2→3)
大寄:中飛(センター橋本が前に走って走って好捕)

【7回裏:兵庫大学附属須磨ノ浦高校~1点】
(打)森田(←西出):四球(ストレート)
山本:スラップ三ゴロ・二進
 ※ワンバウンドの暴投で走者三塁に
花浦:四球(カウント4-1)
 ※花浦二盗で二三塁
小笠原中犠飛
柏坂:三邪飛
 ※代打の森田がそのままライトに

【8回表:千葉経済大学附属高校~1点】
 ※二塁代走に小林
杉浦:三犠打・野選
 ※須磨ノ浦のサード小笠原が捕って振り返って三塁に送球も間に合わず(3回目)
 ※杉浦二盗で二三塁
石井二ゴロ(打点)・野選
 ※三塁走者、ゴロが転がるのを見て走って生還
 ※石井二盗でなお無死二三塁
(打)嘉門(←横山):空振り三振
米田:投ゴロ・本塁タッチアウト
 ※米田二盗で二三塁に
宮坂:一ゴロ
 ※嘉門に代わり横山がレフトで再出場

【8回裏:兵庫大学附属須磨ノ浦高校~1点】
 ※千葉経大附は投手に伊東
 ※二塁走者に樫本
 ※伊東の初球が捕手がジャンプしても捕れない大暴投で走者三塁に
久保田左犠飛
柏坂:左飛
中辻:遊邪飛

【9回表:千葉経済大学附属高校~0点】
 ※二塁走者に宮坂
眞嶋:投ゴロ・三進
 ※川地の打席でゴロを転がしに行くもファールで追い込まれ、その後三塁走者とのエンドランに切り替え
 ※川地の打球は強いゴロで一二塁間を抜けてタイムリーヒットに
 ※しかしこの時、三塁走者の離塁が早く、無念の離塁アウトに
川地:中直

【9回裏:兵庫大学附属須磨ノ浦高校~1点】
 ※二塁走者に中辻
橋本:一ゴロ・三進
森田:四球(ストレート)
山本:故意四球(満塁に)
花浦右前サヨナラ適時打

 


 

【準決勝-1】
千葉経済大附属高校
 000 0210…3
 000 0000…0
山梨学院高校

千葉経済大附属高校:〇大江真尋 - 宮坂芽以
山梨学院高校:●田中愛花、眞篠理音 - 新田愛実
(本):
(三):
(二):横山木葉②、笠原朱里(千)

【戦評】
 0-0で迎えた5回表、千葉経済は横山木葉の二塁打で先制。さらに代打嘉門璃里花のサードゴロで追加点。投げてはエースの大江が完封。最後はピンチだったがレフトの横山のファインプレーで試合終了。



【準決勝-2】

兵庫大附属須磨ノ浦高校
 300 0000 1…4
 100 2000 0
…3
清水ヶ丘高校

兵庫大附属須磨ノ浦高校:和田凛、〇田村真央 - 中辻美空
清水ヶ丘高校:●東ひかる - 香山なな
(本):
(三):
(二):

【戦評】

 1回表、須磨ノ浦が3点を先制すると清水ヶ丘もすぐに1点を返す。ただその後さらに満塁のチャンスは見逃し三振で逸機。
 清水ヶ丘は4回、満塁からの竹光久莉寿の押し出し四球と代打沖日向のタイムリーで2点を奪って同点に。その後は立ち直った清水ヶ丘先発の東ひかると、リリーフの須磨ノ浦田村真央の好投で延長戦へ。
 延長8回、須磨ノ浦は打者小笠原里桜への初球がワイルドピッチ、1死三塁で打者樫本心美が空振り三振した投球を捕手がパスボールと、相手バッテリーのミス二つで勝ち越し点をもらう。その裏、相手の送りバントが失敗でこれを三塁でアウトにしたあと、田村投手が残り二人を抑えて試合終了。

 



【準々決勝-1】

千葉経済大附属高校
 211 2000…6
 000 2000…0
東海学園高校

千葉経済大附属高校:〇大江真尋 - 宮坂芽以
東海学園高校:●石堂紗雪、永井柚衣、池内彩乃、中野花季 - 池上桃花、鈴木香歩、池上桃花
(本)
(三)
(二):笠原朱里②、杉浦穂華(千)

【戦評】

 2回までに3点を先制した千葉経大附は、4回に石井桃加のセフティバントタイムリー、5回には笠原朱里に二塁打、杉浦穂華のヒットと2本のタイムリーが出て突き放す。
 東海学園も4回に神谷優衣に2点タイムリーが出て食い下がるも反撃もここまで。千葉経大附が危なげなく勝利した。

 



【準々決勝-2】

香ヶ丘リベルテ高校
 010 1000 0…2
 000 0200 1…3
山梨学院高校

香ヶ丘リベルテ高校:岩崎紗菜 - 恒松郁奈 
山梨学院高校:田中愛花 - 新田愛実
(本)
(三)
(二):横山葵、岡本紗希(香)、神林碧莉子、新田愛実(山)

【戦評】
 この試合も見ていたのですが、メモを紛失。

 



【準々決勝-3】

藤村女子高校
 000 0010…1
 010 0001…2
兵庫大附属須磨ノ浦高校

藤村女子高校:●飯島綾香 - 小山桃佳
兵庫大附属須磨ノ浦高校:〇和田凛 - 中辻美空
(本)
(三)
(二):久保田優海(須)

【戦評】

 1点を追う藤村は6回、先頭の秋葉菜々がライト前ヒットで出ると保谷蓮の遊ゴロで走者が入れ替わり二盗で1死二塁。ここで4番の阿出川美夢がセンターへ同点のタイムリーヒット。
 須磨ノ浦は7回裏、先頭の中辻美空が粘って四球を奪うと2死で三塁まで送り、1番の山本星(あかり)がサヨナラのタイムリーを放った。

 



【準々決勝-4】

東北生活文化大学高校
 000 0001…1
 041 010x…6
清水ヶ丘高校

東北生活文化大学高校:●藤田岬、渡邊莉子、藤田岬 - 蓮沼久瑠美 
清水ヶ丘高校:〇東ひかる - 香山なな、塩谷真優
(本)
(三):渡邊莉子(東)
(二):和泉柚耶(東)、右田涼夏②、石井花姫、東ひかる(清)

【戦評】

 

 

2 comments for “【2019年インターハイ観戦記(決勝戦詳細、ほか)】

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です