少々、毒を吐いても、いいですか?(づめさんの代わりに)
<同じ過ちを繰返してしまったトヨタベンチ>
最初に断っておくが、何も露久保望美のファンだから言っているのではない。
決勝戦で敗れたトヨタ最大の敗因は、好投手露久保を全く使わずアボットに3連投(3連続完投)させたこと、それに尽きるのではないか。トヨタベンチはこの大事な決勝トーナメントでも全日本総合の教訓をまるで生かせなかったのだ。
全日本総合も今回の決勝トーナメントと同じく2日間でアボットに3連投(3連続完投)させた。そして全日本総合と同じように決勝トーナメントにおいても、その最後のルネサスとの戦いにおいて、終盤ガクンと球威が落ちたアボットがルネサスの右打者に痛打を浴びて逆転負けしたのだ。まるでVTRを見るような同じ結末ではないか。
<初回からあっぷあっぷだった決勝戦のアボット>
アボットがいくら凄いとはいえ、初来日となった今シーズン思ったより完封が少なかったように、ルネサスや織機などのいい右打者が揃っているチームを1試合完璧に抑えられるわけではない。しかも連投で疲れた場合は尚更そうだ。このルネサスとの決勝戦でも実際に点を奪われたのは最終回だけでその辺りはさすがにアボットだったのだが、すでに初回から連打を浴びてピンチを招くなど、ルネサス打線にいつ捕まってもおかしくないような状況だった。ちなみにこの試合アボットが招いたピンチは以下の通りである。
(1回)山本、峰のヒットで1死一二塁
(2回)上野、城戸のヒットで2死一二塁
(4回)三科のヒット、上野の四球で1死一二塁。その後2死二三塁に。
(5回)山本のヒットに犠打、峰のヒットで1死一三塁
(6回)上野ヒットの1死一塁から関の当たりは三直
もはや毎回ピンチの連続である。何とか名前で抑えていたといった感じだが、山本、峰、三科、上野の4人もに2安打ずつされているのだ。
いや、これらの右打者は上野も含めて超一流なのでこの結果も頷ける。問題は左打者であるスラッパー城戸絵理沙に対しての投球だ。守備の巧さだけでレギュラーを掴んだルネサスの9番打者は今年36打数1安打で0割2分8厘という極貧の打率。その城戸が第1打席でアボットからファールで5球粘り最後に内野安打を放った。初球以外はこのリーグ最低打率の左打者から空振りすら奪えなかったのだ。もはや試合開始からアボットはあっぷあっぷの状態だったのである。
<とにかく厳しい3連続完投>
ベンチとしては「とにかくここ(決勝トーナメント)まで来たら全てをアボットに任せる」という戦いで、「それで負けたら仕方がない」という判断だったのかもしれない。しかしそれはきつい言葉ではあるがベンチとしての単なるエクスキューズ、つまり言い訳に過ぎないのではないか。そんな起用法なら誰でも出来る。
アボットといえど緊張するであろう決勝トーナメントにおいて、しかも一度失敗し3連投は難しいことが分かりきっているにも関わらず、何の策もなく同じように全てを託しきって案の定負けた。これで本当に納得できるのか。アボットが連投の疲れからこういう状況になるのは最初からわかりきっていたことだ。なぜにどこかで露久保を使わなかったのか。
16年間決勝トーナメントで投げ続け、オフにはトライアスロンなどで体を鍛えまくる鉄人ミッシェル・スミスですら、決勝トーナメントの3連投のためにはリーグ終了後から定期的に1日に何百球も投げ続けるなど、特別に3連投用の肩のスタミナを必死に作りあげていたらしい。上野ですらまだ3連投で優勝したことはないし、2連投となった今回ですら決勝戦の序盤にトヨタの下位打線につかまり2失点している。それくらい厳しい決勝トーナメントにおいて、全く策なくアボットに全試合完投させたトヨタベンチに、やはり一番大きな責任があると言わざるを得ない。
一昨年、1位通過で決勝トーナメントに進んだレオパレスの藤原監督がシーズン中ことあるごとにインタビューで答えていたのは「今年は何が何でも2位以内で通過する」ということであった。渡邊潤子、佐藤理恵、藤本索子、井上絵里奈、白井奈保美、河野美里、小野奈津子と、完璧な野手陣が揃い、エースにはまだまだ力のあったローチがいて捕手にティッカム。まさにレオパレス史上最高の布陣であり、藤原監督にして「優勝するには今年が最高のチャンスだ」という確信があったのだろう。
そのためには唯一不可欠なことがあり、それが「2位以内で通過して第1試合に勝って決勝戦に進む。つまり決勝トーナメントを通してローチには2試合を全力で投げてもらう」ということであった。監督自身も「ローチに“2試合”頑張ってもらうため」と何度も新聞紙上で明言していた。裏を返せば「3連投になってしまうとダメだ」ということであり、スタミナに不安のあるローチということを差し引いてもそれほど決勝トーナメントでの「3連投」というのが厳しい状況であることを物語っている。レオパレスは今年1、2戦とティンチャーをほぼ完投させたが、恐らく決勝まで進んだら先発は山根だったと思っている。そのためにあえて山根を温存し続けたのではないか。あの監督ならそこまで計算していても不思議ではない。
とにかく、上野でも厳しい3連投をあまりにも安易にアボットに課してしまったトヨタベンチ。これが11年間決勝トーナメントに出ていないチームの限界だったのか。
<魔球チェンジアップを操る好投手・露久保、登板の機会すら与えられず…>
今年アボットと並んでトヨタを決勝トーナメントに導いたのは紛れもなく露久保である。その露久保が一球の登板機会を与えられることもなく決勝トーナメントを終えた。
しかし、いくらアボットに託すると決めていたとしても、露久保に登板させる機会は何度もあった。1日目のルネサス戦で山本にホームランを打たれたあと、2日目のレオパレス戦で3点差とした最終7回、あるいはその試合1点勝ち越したあとの終盤。そして最後は2点差で迎えた決勝戦の7回。決勝戦の7回など思い切って頭から露久保でも良かったのではないか。アボットはこの試合山本、峰にヒットを2本ずつ打たれており大久保には散々粘られている。それに優勝決定のマウンドに長年チームを支えた露久保が立っているなど、情景的には感動に打ち震えそうな場面だ。繰り返すが何も僕が露久保ファンだから言っているのではない。トヨタファン、ひいてはソフトボールファンならこれ以上ないシチュエーションではなかったか。
あるいは初戦のルネサス戦での先発でも良かったかもしれない。最終回に神がかり的連打を放つルネサスも、序盤から打線が爆発することがほとんどない典型的スロースターターだ。露久保とてリーグでは屈指の好投手で、被打率も5本の指に入るほど低い。どこのチームを相手にしても一回りくらいなら投球術でしっかり抑えられる。チェンジアップの露久保に行ける所まで行かせ、剛球アボットにスイッチすることで目先やスピード感も変えられるし、何よりアボットを少しでも休ませることが出来る。2日目のレオパレス戦でも良かったが、特に1敗できる余裕のある1日目のルネサス戦でこそ思い切って露久保先発でも良かったかもしれない。
__繰り返し言うがなにも露久保ファンだから言っているのではない__。なぜこんな良い駒を持ちながら最後まで使わなかったのか、それが残念でもあり疑問でしかがたないのだ。ブルペンで投球練習をする露久保を見ても投げる気は満々。しかも調子は悪くないどころかシーズン中にも増して迫力ある球を投げ込んでいた。
以前にも述べたが今年のトヨタは優勝が義務づけられたチームだった。2位も3位も結局は同じ、優勝しかなかったのであり、そのためには是が非でもアボットの3連続完投だけは避けねばならなかった。たとえどこかで1回でもいいから露久保を投げさせていれば、果たして最後7回のルネサスの逆転劇はあったかどうか。
<ベンチ裏で本番さながら、鬼気迫る投球練習を繰り返していた露久保>
__もう正直に言うが、露久保の大ファンだからこそ言っているのである__(笑)。織機の宮本と並んで無性に応援したくなる投手。いかにも投手らしい投手、それが露久保なのだ。
その露久保を、せっかくの決勝トーナメントで全く投げさせないとはいったい何ということか。テレビを通して全国にあの露久保の気合いのピッチングを披露させないなんてソフトボール界の損失も甚だしいではないか。露久保こそ今のソフトボール界に咲いた一輪の美しい花なのだ。その露久保が1球も投げられないなんてあり得ない。こんな決勝トーナメントはまるでジョッキの半分以上が泡という状態で出てきた生ビールみたいなものだ。なんじゃこれは。どういうこっちゃ。金返せ。付け出し代まけろ。さもなくば一品増やせ。生中の値段でピッチャー持ってこい。いっそのこと飲み放題にしろ。とにかく一升瓶持ってこい!…
あぁ腹が立って仕方がない。いったいなんでこうなるのか。これで万が一露久保が引退でもした日にゃあ、わしゃあの監督を一生恨む。
<露久保さん、「日本リーグもバイバイ」とかは、なしの方向でお願いしますm(__)m>