【2000年代ベストナイン~女子ソフトボール日本リーグ】

【2000年代ベストナイン】

入手出来た2001年~2009年までの9年間の1部リーグの記録をもとに、その間5年以上在籍した選手を対象にして、投手以外は主に打撃成績を基準にしてベストナインの選定を行った。
もとより記録を参考に出来るとはいえ各ポジションずつ「一人」を選ぶ(一人に絞る)のは非常に難しい作業。あくまで最終的には個人的な判断に基づいていることはご了承願います。

 


 

【投手:ミッシェル・スミス(豊田自動織機)】
【投手:上野由岐子(ルネサステクノロジー高崎事業所)】

この二人のうちどちらかを選ぶのは不可能であった。
2001年以降において、5年以上在籍し今回対象となった投手は17投手。その中でもやはり結局はこの3人に絞られるのではないだろうか。その3人の主な成績をあげてみたい。

<2001年以降の通算成績>
防御率 被打率 三振率 四球率
ミッシェル・スミス 0.369 0.137 8.80 1.34
上野由岐子 0.476 0.128 8.49 0.52
メラニー・ローチ 0.905 0.157 8.52 2.02
※三振率と四球率は1試合あたりの数字

2000年代の3人はともに2001年から主戦投手として活躍し、ミッシェルは2008年に引退したが活動年数はほぼ同じである。ただ外国人投手は投球回制限があるので、数値は比率にして比較した。
防御率と奪三振率はミッシェル、被打率と与四球率は上野であり、この二人は2000年代はまさに互角と言っていい。特にミッシェルのこの数字は30才を過ぎて以降のものであり驚愕に価する。防御率はやや劣るが、ローチの奪三振率も凄い。
3人ともあげたかったのだが強いて絞ってミッシェルと上野二人。これ以上は譲れない。

 

【捕手:吉田真由美(戸田中央総合病院)】

意外に思われるファンもいるかも知れないが、この10年において捕手としては吉田がもっと数多く試合に出ている。
打撃だけで言えば2009年に10本塁打の新記録を作った谷川まきが通算打点と本塁打に打率で1位と他を圧倒している。ただし近年打者有利に条件が改善されて以降にピークがきた選手であり、いくら谷川が凄いとはいえそのまま比較するのはベテラン選手が酷だ。
次に目立つのがソフトウェアの鈴木由香。2001年以降の通算安打、打点、犠打、二塁打などが2位で打率も0.258と3位だ。インサイドワークも巧みで捕手としての能力が非常に高い。
ちなみに五輪に二度出場したルネサスの乾絵美だが、峰幸代との併用のせいか通算では死球と犠打が1位とあまり目立った数字は残していない。
さてその吉田真由美である。この2001年以降の通算では試合、打席、打数 安打、得点、犠打、四球、三振、二塁打で1位、三塁打と盗塁も2位である。打者有利のルール改正前から主力でもあり通算打率はやや低い(0.215)が、守りも含め、2000年代の10年ベストナインに選ばれるに相応しい素晴らしい捕手なのだ。
ちなみにここにあげた3人の名捕手、谷川まき、鈴木由香、吉田真由美は、3人とも五輪補欠選手止まりで誰一人五輪に選ばれていないという悲運も重ねて強調しておきたい。
※5年以上在籍し対象となった捕手は12人。ちなみに記録がないので正確な数値はわからないが、誘電の山路典子監督は100%の確率で1990年代のベストナイン捕手だろう。

【一塁手:井上絵里奈(大徳・レオパレス21)】
5年以上在籍した一塁手は9人。五輪で活躍した伊藤幸子(トヨタ自動車)や伊藤良恵(ルネサス、デンソー)という名選手がいるが、打撃の通算の成績から言えば文句なしに井上絵里奈である。
通算打率も唯一3割超(0.303)、二塁打33と本塁打15は1位、出塁率も0.379と高く、安打数(145)、打点(92)も断トツであった。五輪では複数守れる選手が重宝がられることからとうとう選ばれることはなかったが、歴代でもトップクラスの打撃のいい一塁手であったことは確かだろう。

 

【二塁手:藤本索子(レオパレス21)】
対象選手は13人だが、ここは誘電の上西晶と藤本索子のまさに一騎打ちだった。藤本が7年で上西が9年。通算得点、犠打、盗塁は上西、安打、打点、四死球で藤本だ。二塁打は佐川の高木美晴(21本)、本塁打はソフトウェアの溝江香澄(5本)であったが、上西と藤本もそれぞれ13本と15本(二塁打)、3本と4本(本塁打)と互いに匹敵する数字を残している。
積算した成績をできるだけ重視したい10年ベストナインではあったが、ただやはり決め手は打率と出塁率になった。0.272と0.283の上西に対して藤本は打率0.333に出塁率0.362と実に素晴らしい成績を残している。守りでは甲乙付けがたくともに日本を代表する両二塁手であるが、やはりここは藤本索子で異論はないであろう。

 

【三塁手:廣瀬芽(太陽誘電)】
文句なしだろう。
安打数151は2位の来條美穂(ソフトウェア)に16本差だが、得点90(2位は古田真輝(織機)で48)、打点103(2位は来條で57)、四球81(2位は中西あかね(トヨタ)で44)はダブルスコア近い大差だ。二塁打31本に本塁打17本は、二塁打王の井上(33本)と2009年本塁打王の谷川(19本)を合わせたような数字であり他を圧倒している。
ただ強いて言えば意外と打率が低く、0.272は古田の0.296、来條の0.276に次ぐ3位の数字。しかしそれでも十分高い値で出塁率に直すと0.370と跳ね上がる。
改めて、凄い打者だ。

 

【遊撃手:三科真澄(ルネサステクノロジー高崎事業所】
このポジションも名手揃いでありそれぞれに特徴があり、一人を選ぶのは無理なのかも知れない。
特に安打数で1位、打率も0.329という高い数字で他を引き離し、華麗なグラブ捌きを誇る西山麗(ソフトウェア)、エラーは多いが犠打など細かいプレーもできバッティングもよく、二塁打三塁打で2位の水谷直子(誘電)、打率では西山と並んで3割を超え(0.303)、6年間という短い期間だが二塁打26、三塁打4と水谷と並んで2位の佐藤理恵(レオパレス21)などは数字的にも十分な結果を残している。
さらに、打撃の数字だけを見ると特筆すべきものはないが、もはや数字では表しようがない経験や神懸かり的な勝負強さを持っている内藤恵美(豊田自動織機)は、成績にとらわれず世界最高の遊撃手をあげろと言われればまず間違いなく僕は個人的に選ぶだろう。
ただ今回はやはりあくまで数字を純粋に評価したい。そうすると、打率は0.264ながらも打点(82)、四死球(80)、盗塁(23)、二塁打(28)、本塁打(26)でトップの三科を選ばざるをえないだろう。特に本塁打26本は2位の内藤の12を大きく引き離す断トツの値である。
五輪のような大舞台になればなるほどガチガチになって結果を残せないのが玉に瑕であったが(笑)、それも北京五輪でのあの二塁打と今年の2冠達成決勝戦での大活躍で借りを返したか。
新たな道に進んでもまた目立つ活躍をしてくれるだろう。

 

【外野手:馬渕智子(日立ソフトウェア)】
【外野手:山田恵里(日立ソフトウェア)】
【外野手:田中幹子(ミキハウス、豊田自動織機)】

外野手も3人選ぶのは至難の業だった。とにかく数字を見てもらうしかない。選んだ3人の他に岩渕有美(ルネサス)、松崎絵梨子(誘電)、藤野遥香(トヨタ)、増山由梨(デンソー)、狩野亜由美(織機)、河野美里(レオパレス)の6人の主力選手を加えた計9人を対象に、それぞれの部門のTOP3をあげてみた。

安打(馬渕215、山田207、岩渕190)
得点(山田113、馬渕101、松崎97)
打点(馬渕139、田中102、山田102)
犠打(藤野36、松崎31、岩渕24)
四球(田中74、山田55、増山46)
盗塁(山田81、増山59、狩野57)
二塁打(岩渕13、狩野11、河野9)
本塁打(馬渕35、田中32、山田19)
打 率(河野0.380、山田0.378、馬渕0.357)
出塁率(河野0.433、山田0.424、田中0.391)

ソフトウェアの3番4番にして日本代表不動の3番4番でもある山田、馬渕は文句なしだろう。
問題は3人目。どの選手も素晴らしくて落としようがない。特に今現在の日本の外野手としては山田と並んで天才打者の名をほしいままにしている狩野亜由美と河野美里は実際にも素晴らしい数字を残している。
特に河野は通算打率と出塁率においてあの山田を抜いてトップの数字だ。ただ一つ引っかかったのが、打者有利にルール改正された後のデビューでありレギュラーとしては実働4年という点。やはりここ近年の投手間距離の変更や飛ぶバットの解禁は数値向上に対してあまりにも大きな要因のように思える。
逆に言えば、打者が圧倒的に不利であった時代から活躍してきてこの数字を残している田中幹子はやはり偉大な打者だと言うことができるのではないか。
もちろん通算の数字的にも四球で1位、打点と本塁打で2位、出塁率で3位と文句なしの数字を残している。2000年代の日本を代表してきた打者として、田中幹子は十分ベストナインに価するだろう。

 

【指名打者or投手打者:ミッシェル・スミス(豊田自動織機)】
さて最後になったが指名選手である。
ただ各チームとも、長年にわたって同じ選手が指名選手(打者)を務めることが少ない。例えば織機の前川仁美(現マネージャー)や小森由香などは比較的DPとしての打席が多い年が続いたが、それでも他のチームに少ないことから比較が難しい。
誰にしようかと迷っていたが、もの凄い大事な選手が一人いるのに思いついた。それはもちろんソフトの神様ミッシェル・スミスである。
確かに投手として出場し打席にも入ることが多かったが、投球回制限があったため投げない日はDPとして出場していた。そういう意味では十分DP選手として選んでもいいのではないか。
とにかく打撃の数字である。DPの時だけ、というわけではないが、通算の成績が素晴らしすぎる。

131安打、52打点、打率0.335、16二塁打、2三塁打、10本塁打、出塁率0.448

出塁率は恐らく全選手の中で1位で、安打製造機の河野や山田をも上回る。
本当に凄い選手だったのだ。

 


 

では改めて2000年代(2001~2009年)ベストナインを再掲します。
ちなみに、選定にあたって参考にした5年以上在籍した全ての選手の通算成績はいずれここに掲載したいと思います。

【投手:ミッシェル・スミス(豊田自動織機)】



【投手:上野由岐子(ルネサステクノロジー高崎)】



【捕手:吉田真由美(戸田中央総合病院)】




【一塁:井上絵里奈(大徳・レオパレス21)】




【二塁:藤本索子(レオパレス21)】


【三塁:廣瀬芽(太陽誘電)】

【遊撃:三科真澄(ルネサステクノロジー高崎)】

【左翼:馬渕智子(日立ソフトウェア)】

【中堅:山田恵里(日立ソフトウェア)】

【右翼:田中幹子(ミキハウス・豊田自動織機)】

【DP:ミッシェル・スミス(豊田自動織機)】


とまあこんな感じで、今年もよろしくお願いします。

 

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