【2009年1部リーグ投手の記録を解析する~その1:野手に負担をかけない投手は?】
正月明けから始まったパソコンの分解再構築にWindows7への移行もようやく完了。今年も熊野オープンが始まるまでは昨年のデータをいじくったり、2010年シーズンの展望を眺めながらオフシーズンを乗り切ろうと思います。
まずは昨年と同様の解析、「投手の記録を解析する」から。
【解析に用いたデータ・条件】
2008年度について行ったのと同じ解析方法で2009年データも解析した。
なお解析条件は「投球回数20回以上の投手」であるが、8回と1/3の瀬川絵美のみ例外的にこれに加えた。
使用したデータは以下の通り。
(1)防御率~1試合(7回)当たりの自責点(一般的なデータ)
(2)被打率~被安打/打数(ヒットを打たれた確率)
(3)与四死球率~与四死球数/打席数(対戦打者一人当たりに四死球を与える確率)
(4)奪三振率~奪三振数/打席数(対戦打者一人に対して三振を奪う確率)
(5)投球数率~投球数/投球回数(1回を抑えるのに要した球数)
(1)防御率~上野、バークハート、アボットの順。伊予銀としては清水の8.6が誤算。もう少し抑えて欲しかったか。
(2)被打率~アボットがトップで、上野、バークハートと続く。露久保の0.163もトップクラス。
(3)与四死球率~アボット、上野は四死球も少ない。3位に誘電の伊藤。瀬川はほぼ3人に一人を四死球で出す。
(4)奪三振率~三振率もアボットがトップで2位が上野。
(5)投球数/回~球数が最も少なかったのが露久保。豪腕上野に投球術で張り合う。ベテラン帰山が3位
【その1:野手に負担をかけない投手は?】
今年も上記のデータのうち、「ヒットを打たれないこと」「四死球を与えないこと」「三振を奪うこと」の3つに着目して解析した。
★★★モニカアボット(トヨタ自動車)
記録から見る2009年の日本リーグのNo.1投手。被打率も奪三振も上野を上回った「世界一」の投手(オスターマンも日本リーグにこんかね)。
★★上野由岐子(ルネサス高崎)
その世界一アボットと匹敵はやはり世界の上野。アボットと二人で他を圧倒的に引き離す。
露久保望美(トヨタ自動車)
被打率の低さはリーグ屈指。三振は少ないが与四死球も少ない。
ケイティ・バークハート(豊田自動織機)
バークハートも他を引き離している。この4人は2009年シーズンにおいては頭一つ(アボットと上野は3つくらい)抜けていた投手だ。
その他の投手
昨年コントロール面で顕著な数字を残した山根、今年も被打率の低さと四死球の少なさでやはり他の一群の投手からは半歩リードしている。
瀬川が評価不能なのは今年も同じ。奪三振の多さと四死球の異常な多さが相殺され、且つそれでいても被打率が低い。コントロールが何割かでも改善されればかなり変わるのだろうが。
ティンチャー、ローチ、ギブソンの外国人3人が同じような成績なのも面白い。被打率はそれほど低くはないが、三振の多さで特徴付けられる。
【被打率と四死球/三振・比の関係】
さて昨年もこの二つのデータの相関関係を見たわけであるが、今年はもう少しまじめに解析してみた。
「被打率(安打/打数)」も「四死球/三振」もともに比率である。こういうデータの場合は数値を対数置換すれば直線関係に置き換えられる。
今回は2008年と2009年の2年間のデータについて、両対数グラフで表してみた。
一目瞭然、この二つの数値には明らかに相関関係が認められる。
(Ln(三振/四死球)=-4.09xLn(被打率)-5.40,相関係数=0.691,危険率1%未満で有意な相関あり)。
つまり、これらの2つのデータには相関があり、四死球の割りに三振を多く取れる投手というのは比例して被打率も低く、つまり「好投手」といえるだろう。
一つの簡単な数値で能力を表すことには懐疑的ではあるが(OPSとか)、日本リーグの投手にいてはこの「三振/四死球・比」というのは比較的有効な数値なのかもしれない。
多くの投手は投手としての能力を高めるよう、相手を抑えるよう努力することで、この回帰直線に収斂されるような方向に技術革新していくのであろうが、それでもここから離れて位置する投手もやはり存在する。
その典型が藤原麻起子で露久保望美であろう。彼女たちは三振を取るボールを持てないながらも、コントロールと変化球を磨いてある境地にまで達したような投手でる。
今回も「野手に負担をかけない」という点に絞ってみたが上記の藤原や露久保、山根といった技巧派の好投手はやはり違った評価が必要だ。
それで次回は昨年と同様に、これらのデータを使って各投手のタイプについての解析してみたいと思う。