【2010年1部リーグ前半戦総括~その1・上位6チーム】

【2010年1部リーグ前半戦総括~その1・上位6チーム】

 2010年1部リーグの前半戦を、打撃の主要項目をあげながら振り返ってみたいと思います。まずは上位6チームから。最新刊のマガジンで監督のインタビューを交えつつかなり詳しく振り返った面白い記事がありましたので、今回はやや言いたい放題な感じで好き勝手書いてます。腹が立つかも知れませんがそこはそれ、笑って有耶無耶にしてくれることを願います(笑)
 詳しい数値については下の表にまとめてあります。各チーム毎には12チームでの順位のみ要約しました。
 では。


 

【トヨタ自動車(11勝0敗)】
<打率1、出塁1、、守備1、、安打1、打点1、犠打1、四死5、三振5、盗塁3、二塁1、三塁4、本塁1>

 前半戦を終えて打率が1位。しかも2位ソフトウェアの0.298を大きく上回り3割を大きく超え0.344という驚愕の数字。しかも本塁打と二塁打も1位と長打も多く、加えて犠打も1位で盗塁も3位。さらに驚きなのが、鈴木美加と渥美万奈というハンデを背負いながら守備率も1位ということ(笑)(しかもその鈴木と渥美が失策ゼロ!)。言うまでもなく、エースにはアメリカ代表でも主力のアボットがいるのだが、このチームが決してアボットだけのチームではないことを数字が如実に物語っている。
 昨年開幕の時点ですでに「完璧なメンバーが揃った」と書いたのだが、それが1年を経過してさらに熟成された感じだ。その中でも今年の前半特筆すべきなのがベテラン勢の活躍。藤野遥香が打率2位で伊藤幸子が同10位に長打も4本。さらには藤崎由起子が本塁打3本で2位であり打点がダントツの1位と大活躍。無死や一死で走者が三塁にいると確実に外野フライを打ち上げる藤崎の勝負強さなどは世界選手権でも見たかったくらいだ。それにしてもこのベテラン3人の活躍はどうだろうか。昨年の悔しすぎる2度の決勝での敗退をここまでバネにできるのはやはり超一流だろう。他につなぎ役としては贅沢すぎる前薗や小野がいて意外性のある坂元に渡邉、さらに若手には無限の可能性を秘める鈴木と渥美がいるこの打線、ワトリーがいなくても前半戦全勝したかも知れない。
 その最強メンバーが揃ったトヨタのチームとして唯一にして最大の課題が監督だろう(笑)。もちろん大ベテランのリーグでも有数の監督なのだが、結局は最後の最後に監督が腹をくくれるか、その言わば「胆力」に全てがかかっている。去年はその「監督としての胆力」においてルネサスの宇津木麗華監督に一枚も二枚も劣ったことが結局は2度の決勝戦逆転負けに繋がった。今年こそは本気で腹を括って勝負しないといけない。再びルネサスに優勝を譲るようなことでもあればまた悪夢の宇○●ジャパンが甦りかねないではないか(笑)
 今年は総合とリーグの2連覇が至上命題。この戦力で今年も無冠に終わるようなら、もうチームを解散した方が良い。
(注)○は者におおざと、●は宮(もちろん、ウソ)

 

【ルネサス高崎(9勝2敗~2敗はトヨタ、織機)】
<打率4、出塁7、守備2、安打4、打点5、犠打6、四死8、三振7、盗塁2、二塁10、三塁5、本塁2>
 まっ先に目についたのが本塁打が2位ということ。三科真澄、乾絵美と抜けたが、峰幸代と山本優が健在で何より打者上野由岐子の存在が大きい。放った2本塁打は下位チーム相手とはいえいずれも試合を決める決勝本塁打であった。それにつられるように蔭山遥香や大久保美紗といった伏兵にも1発が生まれている。守備率が2位で打率4位と基本的なチームパワーは上位ながらも、その他の項目は意外やどれも中位程度。一見打線全体の線が細くなり小技で点を取っていくようなメンバーを揃えながらも、結局は決めるところで貴重なホームランで試合を決めているのがいかにもルネサスらしいしたたかなところだろう。
 とにかく今年のルネサスで一番大きいのは蔭山の補強。強奪(笑)した甲斐があったというか、蔭山がいなかったら1、2敗余分にしており上野を要しながらも4位争いも考えないといけなかったかも知れない。もしそうなっていたら…。宇津木監督の怒りを考えると想像するだに恐怖でキ○○マが縮み上がる(笑)
 その蔭山、なぜかルネサスがからっきし打てない織機のバークハートから前半戦で3安打しているのがチームにとっては実に頼もしい。実はルネサスにとって、確かに2番に大久保を挟んだ山本から峰、岩渕に続く上位打線も嫌らしいのだが、この蔭山と上野が並んだ6、7番が重要な得点源になっているような気がする。織機戦では確かに蔭山に3安打されたが続く上野を3三振に抑えきった。これはたとえどちらかにいくら打たれても、そこさえ断ち切れば点は与えないという結果を証明しているのではないか。上位陣に気を取られるあまりおろそかになりがちなこの6番蔭山と7番上野。どのチームもここを断ち切ることがルネサス打線を抑えるカギになりそうだ。

 

【豊田自動織機(8勝3敗~3敗はトヨタ、ソフトウェア、大鵬薬品)】
<打率3、出塁4、守備3、安打3、打点4、犠打5、四死9、三振1、盗塁7、二塁2、三塁1、本塁5>
 打率が3位で二塁打、三塁打が2位と1位、三振も1位(最も少ない)と数字上は確実性の高そうな値を示しているが、それは記録的大勝をした戸田中戦の効果が大きい。
 やはりこのチームは数字に表れない「脆さ・淡白さ」が最大の欠点だろう。ただそれは良いところでもあり、どんな悔しい敗戦をしても終わった瞬間に全てを綺麗に忘れ去ってしまう(笑)
 ただその欠けている粘り強さという点では、もし後半から本田小百合が復帰してくれば少しは補えるかもしれない。彼女の勝負強さは半端じゃないのだ。それから絶対に不可欠なのがキャプテン古田真輝と元キャプテンの小森由香の復活。古田などは打率0.290に1本塁打1二塁打と無難な活躍はしているのだが、絶体絶命のピンチに必ずチームを救ってくれた古田や小森の勝負強さが今年の前半戦では完全に影を潜めている。若手がどんどん競争して伸びてきてはいるが、本田を含めこの三人がどれくらい本来の勝負強さを発揮できるかが後半戦の大きなカギを握っているのは間違いない。もしこの3人が本来の勝負強さを発揮すれば、意外やトヨタの足下を掬える可能性を一番持っているチームではないかと思っている。
 投手に関しては、やはり2年目でやや攻略されることの多くなったバークハートをサポートする日本人投手だろう。12回を投げ自責点0の栗田美穂が後半戦もそのまま行ければいいのだが、さすがにそろそろ他のチームも警戒し出すはずで、そうすると実績のある宮本直美と江本奈穂に対する期待も大きくなるはずだ。
 とにかくライバルソフトウェアに前半戦で大敗している以上、少なくとも4位争いに巻き込まれないように3位以上を確保すべく後半早々から飛ばしていく必要がある。

 

【日立ソフトウェア(7勝4敗~4敗はルネサス、トヨタ、デンソー、誘電)】
<打率2、出塁3、守備7、安打2、打点2、犠打9、四死10、三振6、盗塁1、二塁2、三塁2、本塁3>
 四死球が少ないのが気になるがその他の数字はさすがはソフトウェアといった値。アボットを相手に攻略しかけたようにどんな相手にも打線は力負けしない。これらの数字も各チームのエースを相手にした値であり、ある意味ではアボットや上野を相手に試合しないトヨタやルネサスのものより評価できる。ただ前半戦は上野相手に完敗した。後半戦ではきっと復讐してくれるだろう。
 投手陣では瀬川絵美が完全復活にはほど遠い。マガジンの取材では藤本監督は前半戦を振り返り「瀬川も良かった」と書いていたが、瀬川にはなんとか自信を付けさせるために腫れ物に触るような思いやりのあるコメントをしてるんだろうなと思った。確かに防御率1.81だが投げた6試合中5試合が戸田中、伊予銀、大鵬薬品、佐川急便、シオノギと下位がほとんど。唯一の上位陣への登板も負けているトヨタ戦での5番手と、瀬川に自信を付けさせるための首脳陣の涙ぐましい努力が手に取るようにわかる。
 その分、藤原麻起子に対する負担が大きくなりすぎ持ちこたえられなくなっている。世界選手権でのアメリカ戦でもそうだったが、前半戦4敗のうち、ルネサス戦以外の3敗はそれまで順調に抑えていた藤原が突如崩れて大量失点し逆転負けした試合だ。一回りは確実に抑えていながら二回り目になると急に捕まってしまうのである。しかしこれにはやはり捕手の影響が大きいだろう。もともと圧倒的なパワーピッチで抑え込む投手ではないが、逆に常にどんな場面でも粘り強いピッチングをしてコントロールも乱さずスタミナにも全く問題はない藤原。鮫島優子は十分及第点だが、やはり藤原のような投手がいるとリード面での捕手鈴木由香の抜けた穴が大きいのだろう。
 ただその鮫島、鈴木にはまだまだ及ばないがリード面も含め守りでもバッティングでも開幕前に心配したような危惧が全く取り越し苦労に終わったくらい本当によくやっている。打率は高くないが良いところで2塁打を3本放っているし、とにかく元気がある。彼女の前半戦に関しては80点を付けてあげたい。
 そしてそれ以上の90点をあげたいのが1年目の左腕山中しほ。投球回数10回だが8試合に登板し防御率1.35。伊予銀戦ですでに初勝利もあげたし開幕の織機戦ではや初登板も果たしている。状況によっては後半戦さらに大事な場面で投げる機会が訪れるかも知れない。

 

【デンソー(6勝5敗~5敗は誘電、トヨタ、織機、Honda、ルネサス)】
<打率7、出塁6、守備6、安打8、打点6、犠打4、四死3、三振2、盗塁4、二塁4、三塁9、本塁>5
 どこを見ても可もなく不可もないという数字が並んでいるのが不満だ。それがそのまま順位に反映されている。昨年打ちまくった大砲選手が一挙に去り、走って守れる選手を揃えたのかと思っていたが、あにはからんや。今月号のソフトボールマガジンでの監督インタビューを見ると大砲3人が抜けたことをどうやら嘆いている風で、敢えて大砲を切って方針転換したのでもなさそうだ。ただその代わりキャニーやタミーといった全米クラスの選手を入れることはできたのだが、その2人もチームを変えるほどの活躍ではないのが不満だ。
 チームから大砲が抜け、新外国人のタミーのプレースタイルを考えると、守りとスピードに関してはどこにも負けないくらいのチームに変身しないといけない。幸い守備では日本一の内野手になる日も近い松本尚子がいてスピードでも日本一の増山由梨がいるのだから少なくともその点で4強に負けているようではなかなか厳しい。新崎や倉成がバッティングではようやく開花してきたと監督も評価していたが、やはり4位以上を狙うならもっともっと相手がいやがる味を出して行かねば。
 ただこんな時には東美幸が大活躍してチームを引っ張っているはずなのだが、今年前半は2本塁打は放ちながらも打率は30傑にすら入っていないという信じられない成績。そして極めつけで個人的に最も不満なのが永吉理恵。レオパレス時代のあの手のつけようがない嫌らしさはいったいどこに消えてしまったのか。とにかく今年のスタート時点では「優勝争いもある」、とかなり贔屓目に期待した手前、デンソーの前半戦の成績には不満だらけである。素晴らしいのは野木ちゃんだけだ(ウソ、笑)。
 そんなデンソーであるが、第4節のソフトウェア戦で逆転勝利したことが非常に大きかった。あれを落としていたら前半終わって「今年もダメか」なんてなりそうなのが、あの1勝で完全にベスト4争いに足を踏みとどめ後半戦に望みが繋がった。そしてさらにデンソーにとって朗報だったのが続く第5節でのソフトウェアの誘電戦の敗戦だろう。これでソフトウェアには勝差-1ながら直接対決で2点差で勝っているため気分的には0.5差、ほぼ並んだと言っていい。2年ぶりの決勝トーナメント進出も十分射程圏内だ。
 しかしそれにしてもつくづく惜しいのが佐川急便とHondaに対する1-0敗戦。この2勝があれば織機と並んでおり、少なくともどちらかさえ取っておけばソフトウェアを上回れた。後半戦はこういう取りこぼしが即命取りになる。

 

【佐川急便(6勝5敗~5敗は誘電、トヨタ、織機、ソフトウェア、ルネサス)】
<打率8、出塁8、守備7、安打10、打点10、犠打8、四死4、三振9、盗塁9、二塁5、三塁9、本塁9>
 S・ポーター&J・スメサートの豪代表コンビが思った以上に活躍できず一見苦戦を強いられているのだが、なんとか前半戦を勝ち越して4位争いダークホース的な存在には踏みとどまった。打撃成績の各項目ともに真ん中以下の数字が多く、それを考えるとこの結果は上出来か。
 ただ昨季が前半戦を終えて3勝8敗と大きく負け越していたことを考えると、実力的には不満足な結果(防御率2.64)であるスメサートだがその存在はやはり大きいのかも知れない。現に6勝全てがスメサートについており、中堅以下のチームからしっかり白星を奪えたのもスメサートの存在を抜きにしては考えられなかった。ただそれは前半戦では、トヨタ、ルネサス、織機という強豪にはスメサートを登板させず、主に下位に当ててきた結果が功を奏しただけであって、ベスト4を狙うにはそれではどうしようもない。後半戦は強豪相手にスメサートをばんばんぶつけて行くことになるだろう。そのスメサートをサポートする形の大ベテラン帰山悦子と信長香菜の大阪羽衣学園の先輩後輩コンビがともに防御率1.54と好調であることから、後半戦は投手起用を入れ替えても十分下位チームからも勝ち星を計算できるのではないか。
 そういう意味でも、実は後半戦で一番最初に大きなカギを握っているのがこの佐川急便なのだ。後半初戦函館での相手がベスト4争いでは最大の直接の敵であるソフトウェアである。前半戦強豪を避けてきたスメサートだが、4強を相手に唯一先発したのがソフトウェア戦であった。しかしながらその試合、3回に一気に崩れ、3長打を含む5安打を浴び2死球も与えて7失点と滅多打ちを食らっている。また同じく先発した誘電戦では北京五輪で決勝の一発を浴びた廣瀬相手に再び決勝弾を浴びるという返り討ちに遭っている。このソフトウェアと誘電に対する2試合、特にソフトウェア戦は佐川急便が決勝トーナメントに行くには何が何でも勝たないと行けない相手である。後半戦その函館での1戦でのスメサートの投球内容が佐川急便にとってもソフトウェアにとっても、そしてデンソーにとっても非常に大きな意味を持ちそうで今からとても楽しみだ。
 楽しみと言えば佐川急便の若手には非常に楽しみな若手選手が多い。デンソー戦で決勝弾を放った田中里依や開幕戦勝利の殊勲者山科真里奈。前田遥や岩川奈美絵もそこそこ出てきたし、もともと力のあった松下友里も少ないチャンスを確実に生かしている。そして投手の信長香菜と、甘く見ていたら痛い目に遭いそうな伸び盛りの若手が多く、後半彼女たちの活躍も楽しみだ。
(外山と柳瀬ももっとがんばらんかい!)

 

<1部前半戦チーム別打撃成績(主要項目について)>





※ベスト3が赤、橙、黄、各色、ワースト3が水色系の濃い順
※失策の項目は「失策数(守備率)」

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