【第50回実業団大会~決勝戦詳細】

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【決勝戦】
靜甲  000 0000 0…0
マクセル 000 0000 1x…1
靜甲:●河部-田中
マクセル:○呂-中村
三塁打:加藤(マクセル)

<テーブルスコア>

 


試合経過

【1回表】
 靜甲は三者凡退も先頭の計盛がファールで粘って3-2から右飛、尾方もファールで粘って3-1から一ゴロ、鈴木優は詰まったサードフライだったが、三人とも空振りがほとんどなく、呂投手のスピードにはなんとかついていける。

 

【1回裏】
 1死後、加藤が完璧なタイミングで捉えるとライトフェンスにワンバウンドで当たるスリーベースとなり先制のチャンスをつかむ。
 しかしここから靜甲の河部が踏ん張り、3番小林、4番高崎と当たっている右打者二人を内角で詰まらせてともに浅いレフトライナーに打ち取る。
<期待の3、4番、小林、高崎ともに同じようなレフトライナーに>

 

【3回表:靜甲】
 先頭の7番田中(昨年の実業団大会MVP)がライト前に落とすと、8番松井が送りバント、9番白井もセフティー気味の送りバントで走者を三塁に進める。1番の計盛がまたもファールで粘り3-2から四球で出て一三塁とチャンスを広げると、2番尾方もファールで粘る。しかしここは呂投手の勝ちで最後は3-2から外の球で尾方を三振に打ち取った。

<4連投で疲れてはいただろうが、ここぞという時には力を入れ三振を奪った呂偉>


【3回裏:マクセル】
 簡単に2死を取られたあと、1番阿部がライト前に運ぶとすかさず盗塁。先ほど三塁打の加藤に期待がかかったが、ここはサード側へのファールフライになり、ショート鈴木優がスライディングキャッチのファインプレーで救う。

<バッティングでは良いところがなかったが守備で活躍の鈴木優>


 

【4回表:靜甲】
 1死後、今日4番に入った原田(以下、滝)が2打席連続の四球で出塁すると、5番萩藤の平凡なセカンドゴロをマクセル林が後ろに下がってバウンドを合し損ね痛いエラーでピンチを広げる。
 昨年のマクセル戦2本塁打の植松に期待がかかったが、ここは完全に力んでしまいキャッチャーへのファールフライ。しかし先ほどヒットを放っている田中が四球を選び満塁とマクセルを攻める。
 しかし今度も最後は呂投手が踏ん張り、松井も2-2と粘ったが最後は詰まらされてファースト高崎の正面へのゴロとなった。

 

【5回表:靜甲】
 3番鈴木、4番滝が倒れ2死となるが萩藤がライト前に運び一塁に出ると植松の打球は完璧にとらえたライナーとなりセンター左へ。しかしここは名手・阿部の守備範囲で軽くランニングキャッチで打球を抑えた。ただあと少しだけ左に飛んでいれば一塁から萩藤が還れるようないい打球であった。

 

【6回表:靜甲】
 3、4、5回と連続してチャンスを作りながらあと一本が出なかった靜甲に最大のチャンスが訪れる。
 先頭の田中がこの日2本目となるヒットをライナーでセンター前に。松井がしっかりと送って1死二塁とすると靜甲は9番の白井に代打の菊池を送る。
 菊池は空振りとファールで簡単に追い込まれたが動ぜず、呂が投げたインコースの速球を腕をたたんでしっかりととらえ押し込むような感じでセンター前にライナーで運んだ。
 この打球、打った瞬間は「先制か!?」と思われたがセカンド田中のスタートが遅れ三塁止まり。しかしセンター阿部から完璧な送球が本塁に返ってきていたことから突っ込んでいたらアウトになっていたはずだ。
 このあと菊池が二盗し迎えるは1番計盛。浅いカウントで一度三塁ランナーとエンドランをかけるもファールになり、最後は詰まらされてサード後ろへのショートフライとなる。しかし昨日から散々ファールで粘っているボールのよく見えている次の尾方がこの打席も粘りまくって四球を選び満塁とし打者は三番鈴木。
 しかしこの日の鈴木は呂の速球に差し込まれておりこの打席も最後は詰まらされてショートフライと、最大のチャンスを逃してしまった。

<ここんとこ見た試合ではいいところで代打に出されヒットを放つ菊池>



<この日の鈴木優は詰まらされてばかりでブレーキとなった>


 

【8回裏】
 先頭の小林が一塁前に犠打。しかしこの打球がファースト正面への強いゴロとなり、捕った計盛がすかさずサードへ。タイミングは十分アウトだったが、この送球がショートバウンドとなってしまう。守備のうまい松井ならいつものように軽くグラブだけで捕ってタッチすればアウトだったが、逸らしてしまえばその時点で試合が終わってしまうため体で止める形で捕球した分タッチがわずかに遅れてセーフになってしまった。
 0死一三塁から、おそらく転がったらゴーのサインで9番東がセカンドへゴロを転がすも打球が強すぎて三走和田が還れず、三本間に挟まれて1死二三塁となる。
 ここで迎えた1番阿部が2-1からの4球目の外角の投球に腕を伸ばす感じでバットに当て、前進守備のセカンドの頭を越えてセンター前に。これがサヨナラ打となり、呂投手を擁した日立マクセルが1回戦から全試合完封で初優勝を成し遂げた。

<阿部のサヨナラ打がセンターの前に落ちる>


 

【勝敗の分け目(1)~靜甲の詰めの甘さ】
 やはり一つだけあげるとしたら8回裏サヨナラの場面だろう。1アウト二三塁となって迎えるのはこの試合河部が唯一ヒットらしいヒットを打たれている阿部。ここで靜甲バッテリーはボールを二つ先行させたあとアウトコースに投げ、阿部が手を出してファールとなる。2ボール-1ストライクからの次の決め球はこの試合さんざんマクセルの打者を詰まらせてきたインコースへの速球。ここまでは靜甲バッテリーの思い描いた通りだったが、しかしこの試合唯一といっていいコントロールミスとなり、アウトコース高めに行ったところを阿倍にちょこんとバットで合されセンター前に落とされてしまった。
 確かに続く2番加藤には第1打席で大きな三塁打を打たれているが、試合早々の交通事故的な感じでのヒットであり、警戒すべきはこの1番阿部だったことは間違いない。しかも7回を投げ河部は与四球ゼロとこの日は抜群のコントロール。満塁にしても押し出しの心配もあまりなかったわけで、やはりここは阿部を歩かせて満塁策を取るのが定石ではなかっただろうか。もちろん最後の一球のコントロールミスがなければ後続まで抑えた可能性もあるし、満塁にするとどうしてもコントロールが甘くなる危険性もあるが、結果はどうあれやはり少しでも確率の高い選択肢を選ぶというプロセスが大事だと感じる。
 靜甲はどうにもこの部分の詰めが甘い。リーグ戦以外の大事な試合において、大差で負けたHondaとの入れ替え戦1試合目を除いて、ここ3試合は最後の詰めの甘さから1点差負けで3連敗しているのだ。昨年の全日本総合ではフルメンバーの太陽誘電を相手に河部が好投。しかし0-0で迎えた終盤、植松の怪我でベンチが浮足立っている隙に1死三塁から無警戒で誘電に楽々と決勝スクイズを決められてしまった。Hondaとの入れ替え戦2試合目では最終回に意地で同点として延長に持ち込み、鈴木麻美がHondaの攻撃を1死三塁から2死三塁までしたものの、その日当たりに当たっていた平林に対し安易に勝負しストライクを取りに行って決勝二塁打を浴びた。入れ替え戦での対平林や今日の阿部との対戦など、空いている一塁をもっと有効に使うべきであったし、誘電戦でもあまりにも簡単にスクイズを決められすぎた。
 靜甲は打者にしろ投手にしろ本当に力のある選手が揃っており、ここ数年はいつ1部に上がってもおかしくないような、2部の中では頭一つ抜けた戦力を維持し続けている。しかしそれでも毎年あと一つ何かが足りなくて一部に上がれないのは、やはりこういう詰めの甘さが原因であろう。リーグにおいても、大事な大鵬戦などを必ず落としてしまい、総合力では上回りながらもいつも結局はそれが最後に響いてここ2年間2位に甘んじてきた。そろそろ本気でその辺を克服し、1部に上がるだけではなく前回わずかながら及ばなかった「1部に定着できるチーム」を目標とした意識改革を行ってほしい。こんな魅力的な選手たちがいつまでも1部に上がれないのは本当にもったいない。今年1部に上がった大鵬の中山亜希子や佐々木瞳や森田まゆ、佐藤光紗や山崎由利の活躍を聞いて何かを感じなきゃダメだ。

 

【勝敗の分け目(2)~マクセルの決勝までの試合展開と投手起用】
 呂投手があまり調子も良くなく、球も走ってなければコントロールも悪い状態でも結局終わってみれば4試合すべて完封勝利のマクセル。決勝の靜甲戦では再三チャンスを作られたが、それでも要所ではしっかり三振を奪うのがさすが呂投手だ。その呂投手、結局は全試合に先発したが、決勝戦に来るまで、マクセル打線にしては(笑)比較的早い回に点を取り試合を有利に進めたことで毎試合途中で交代させ休ませることができた(その後森川投手や豊崎も好投した)。
 来日してまだ日が浅いことから、スタミナと実戦感覚の両方が心配だった呂投手だが、島根三洋戦などでは序盤0-0の展開で中盤に大量点という理想的な試合運びで、その両方ともに補えたのも良かった。

<とにかく2部の中ではさすがに格が違うなという感じの呂投手。ただ靜甲も「次は行ける」という手応えを掴んだのではないだろうか。リーグ戦での次の直接対決が今からとても楽しみだ>


 

【もしもあの場面で】
 さて最後は完全に蛇足になるがもしあの場面でこうだったら、というのを考えてみたい。こういう1点を争う好ゲームにはそういうポイントになっていた場所がいくつもあり、赤毛の小林麻美じゃない、アンみたいについつい空想して楽しんでしまうのだ。

 

(1) 初回マクセルの攻撃、1死三塁
 2番の加藤が三塁打を放った時点では「こんな感じで今日はマクセルが行ってしまうのかな」という思いもした。だからあそこは強打で攻める攻撃で当然だろう。勢いからしても打順からしても打たせて当然でそれには何の疑問もなく、結果無得点だったマクセル側としても後悔はなかったはず。あそこで3番4番の打力に期待しないようではベンチの信頼感も失われる。当然のごとく真っ向勝負で、強振にきた3番4番を力でねじ伏せてともに同じような差し込まれたレフトライナーに抑えた河部が一枚上手だっただけなのだ。ただあの場面、だからこそその全ての裏をかき、速球で詰まらせにきた河部の投球を逆利用して3番小林にエンドランでもかけさせたら、バットに当て詰まって転がしさえすれば確実に成功しただろうなと思う。呂投手相手には1点が致命的ではあるが、まだ初回であったことから靜甲側も何が何でも阻止するという守備体系は取れなかった。相手の河部の良さも考えると、1点差勝負になることを予想してもしあの場面でマクセルがそこまでやれるようなら、もう一つ嫌らしいチームになれるのかも知れない。
 まあでもなかなかそうは行かないか。これこそ完全な結果論かな(笑)

 

(2) 延長8回タイブレイカー0死二塁からの攻撃
 延長タイブレイカーにもつれ込んで、靜甲は0死2塁で4番の滝から、マクセルは8番の林からだった。この場面、実は4番の滝から始まる靜甲の方が攻め方に悩んだのではないか。もちろん一番簡単なのは4番であろうと滝に送らせること。しかし次の萩藤はこの日ヒットも放っていたが細かいバッティングは苦手で、エンドランなどはかけづらい。それに今の2部で最もバッティングのいい滝をバントで終わらせたら、むしろマクセルにとってはありがたい部分もあったのではないか。そんな場面で靜甲が選んだ作戦はもちろん「強攻策」であった。これには個人的に大喜びしたのだが、滝のバッティング内容には大いに不満が残った。ランナーを進めるために転がせというサインが出たのか自分で考えたのかはわからないが、とにかく必要以上のダウンスイングで無理に転がそうとしてしまったのだ(それに意外とダウンスイングはゴロにならない)。これではせっかくの滝の強打も意味がなく、バントで送るよりさらに相手を喜ばせたのではないか。結果的にハーフスイングを取られ三振になっていなくても、良くて走者を進めるだけのような打撃にしかならないのではせっかく滝に打たせる意味がない。あそこはもう打たせるなら普通に打たせ、滝本来の打撃力に賭けてほしかった。何が何でも進ませたいなら滝にでもバントをさせるべきだったろうし(バントできないのかな?)、とにかくあの場面で滝が本来の力をすべてぶつけて呂投手と対峙しなかったことにファンとしては悔いが残る。

<極端なダウンスイングでゴロを転がそうとした滝だったが…>

 

(3) 7回表靜甲の攻撃、1死二三塁
 前日から大きく打順を組み替えてきた靜甲のこの日の一番打者は計盛。僕は特別な試合でたまに披露されるこの打順が意外と好きだ。とにかく計盛が先頭打者で試合に入るとチーム全体が元気になる。「元気があれば何でもできる」って、アントニオ猪木も言ってる。元気が一番。ただあの場面、7回1死二三塁、何が何でも1点を取りたい場面で最高の打者が実は一人まだベンチに残っていた。それが中村夏美である。元気な計盛だが試合が佳境に差し掛かれば差し掛かるほど、どんどん力んでしまう。もちろんそれでこそ計盛なのだが、それとまるで正反対の中村はどんな場面でもまったく普段と変わらない力まない普通のスイングを平然と行う。そしてとにかくミートする技術が非常に高い。昨年のHondaとの入れ替え戦でも、一打サヨナラの場面でジーナからあわやサヨナラ打かという火の出るようなライトライナーを放っている。靜甲における影のフィクサー計盛に代打を送るなど最大のご法度なのかも知れないが、やはりあの場面は代打・中村の冷静なバッティングを見てみたかった。
 しかし一つだけ問題なのが、靜甲の攻撃中の多くの時間中村が三塁コーチャーにいたこと。あれではふとひらめいたような場合などにどうにも代打に出しづらい。もちろん何があっても代打と決めたなら呼び寄せれば済む問題だが、試合の流れの中ではベンチで監督と呼吸を合わせておいた方がいい。競った試合の終盤、まだ出番がないなら中村はちゃんとベンチで控えて代打のアピールくらいしておいてほしいのだ。これは植松と中村のバッティングを買いかぶりすぎるくらいに買っているファンからの切なる願いである(笑)

 


 

以上、またしても長々と書いてしまったが、
そんなこんなで記念すべき第50回実業団大会は、田中涼子の優勝で幕を閉じたのだった。


 

【備考:平成以降の優勝チーム】

1:日立高崎
2:太陽誘電
3:太陽誘電
4:ユニチカ垂井
5:ミキハウス
6:東邦銀行
7:東邦銀行
8:大徳ドレッサズ
9:大徳ドレッサズ
10:三洋島根
11:三洋島根
12:三洋島根
13:本田栃木
14:レオパレス21
15:三島関病院
16:大鵬薬品
17:三洋島根
18:靜甲
19:松下電工津
20:三島中央
21:靜甲
22:日立マクセル

※1部チームの参加は平成3年まで

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