【2010年/第62回全日本総合女子ソフトボール選手権:3日目準決勝、決勝の結果】

【準決勝第一試合】
ルネサス 000 0000 11  …2
Honda    000 0000 12x…3

ルネサス:上野-峰
Honda:ネルソン-ループ、武藤

 7回まで3安打のHondaと2安打のルネサス。上野とネルソンの投手戦で試合は延長タイブレイカーに。
 8回表、橋本が送って1死三塁とするも9番上野がショートゴロ。2死から山本が四球で歩き、盗塁で二三塁とチャンスを広げたあと2番大久保の打球はどん詰まりで一塁の上にふらふらと上がる。この打球がファースト田中の頭上を越え、カバーに回ったセカンドの中村瞳が素早く処理して一塁へ。タイミングはアウトかと思われたが判定はセーフで待望の1点がルネサスに入る。その後なおも続いたチャンスには峰が強いショートゴロに倒れて無得点。
 8回裏、Hondaはループに代打原田美樹を送るが、この時上野がショートバウンドを投げ峰が少し後に弾くと二塁走者の中村瞳が判断よく三塁を陥れ0死三塁に。原田は外角明らかなボールくさい球だったが無念の見逃し三振に倒れ1死。打者は8番の村上だが、ここで三塁走者とエンドランをかけると村上が低めの速球を叩きつける。これが上野の頭の上を越す高いバウンドのセカンドゴロになり、三塁から中村瞳が悠々と生還し同点に追いつく。
 9回表、ルネサスは0死二塁から4番の岩渕が送りバント。この打球が柔らかい砂場のようなグランド上に止まり、前進してきたファースト田中が捕球して一塁に投げるも左にそれる(砂でボールが滑ったか)。カバーに入った中村瞳が手を伸ばすも届かず、これがライトに達する間に二塁走者が生還しルネサスが再び1点を勝ち越す。送りバント後になおも続いた1死二塁のチャンスはネルソンに封じられて1点止まり。
 9回裏、二走に又吉薫をおき打者は平林真由子。送りバントを一つファールにするとスラップに切り替え、その打球がサードの横を抜け三遊間に。ショート蔭山が一塁に投げるも間に合わず内野安打となるが、二塁走者は目の前の打球でもあり三塁に進めず場面は一二塁とチャンスはあまり広がらない。蔭山が投げた瞬間に走っていればセーフになるタイミングだが、大事な走者でもあり二走の又吉は無理はできなかった。
 続く2番の大橋が打球をしっかり殺したいい送りバントをするとこれを捕ったサード山本の送球がやや左にそれる。一塁カバーの西川が懸命に捕球するも足がベースから離れる。しかし塁審からは死角だったようで判定はアウト。無死満塁となる場面が1死二三塁となったが、しかし、上野に開き直られ必要以上にアドレナリンを出させ、また意外と点が入らない無死満塁となるよりはむしろ1死二三塁の方がHondaには良かったのかも知れない。
 この場面で打者は表の回にタイムリーエラーの田中。ストライク、ファールと2球で追い込まれた3球目。ここで再び三塁走者との間にエンドランをかける。アウトコースの球に田中が腕を伸ばすような感じでバットに当てると、弱い打球がコロコロと転がり前進してきたファースト大久保の右に。

 前進した大久保が、田中がバットに当てた瞬間、一歩だけ投手側に足を踏み出してしまったように見えた。すぐさま一塁側に走って打球を捕りに行くもその一歩が届かずグラブのわずか先を打球がコロコロとすり抜ける。
 あるいはこの場面、ファースト大久保の試合後の呆然とした姿を考えると自らの判断ミスだと感じたのかもしれない。守備位置から考えて「ファールになる、切れる」と瞬間的に判断したのかも知れないのだ。「無理に捕りに行ってフェアグランドで捕ってしまったり、弾いて本塁セーフにするより、見逃せばファールになる」と判断して、さらにはもしかしたらその判断は間違っていなかったが、走塁で荒れているファールライン内側で打球のバウンドが微妙に変化したのかもしれない。

 とにかく、ファースト大久保のグラブとファールラインの絶妙な間を絶妙な速さでコロコロと転がり抜け、ベースの内側を真っ直ぐに通り抜けしかもカバーしたセカンド西川も追いつけないという奇跡的な打球であったことは間違いない。

 この打球で三塁走者の又吉に続き二塁走者の平林までが生還し、Hondaの劇的な逆転サヨナラ勝ちとなった。
 延長タイブレイカーの場面、走者三塁からHondaがしかけた2本のエンドランとそれを見事に決めた村上由里子と田中清香、そして何より、スピードもあり普段のノーコンも陰を潜め、そしてシュートが切れまくっていたネルソンの好投によって、ルネサスの全日本総合での連覇がストップした。

 

<ルネサスの連覇を止めたHondaの2本のエンドラン、(上)8回裏・村上、(下)9回裏・田中>






<9回裏、又吉に続き二塁から平林も生還>



<サヨナラ負けに呆然とする名手・大久保美紗。最後は自ら納得いかない守備になったかもしれないが後悔する必要はない。そんなときもある。なにより昨年の大逆転勝利7連覇の立役者は紛れもなくこの大久保だったのだから>


 

【準決勝第二試合】
織機 000 0000…0
トヨタ 000 300x…3

織機:バークハート、宮本-トッピング
トヨタ:アボット-渡邉

 トヨタがワンチャンスをものにして快勝した。
 3回までパーフェクトと好調の織機先発バークハートだったが、4回裏に先頭のワトリーにセカンド右に打たれる。この打球をセカンド池原が素晴らしいダイビングキャッチをするも、打者走者がワトリーではアウトにできずに無死一塁。前薗が送り、藤野も一塁ゴロで2死三塁となって迎えるは今年もチャンスにはめっぽう強い伊藤幸子。バークハートの球にやや詰まりながらも巧さで押し込み、足下を抜けてセンター前に達する先制のタイムリーとなった。
 そして気落ちしたのか続く坂元への初球が簡単にストライクを取りに行く棒球。こういう場面では特に強い坂元が逃すはずもなく、完璧に捉えた打球がレフトへのツーランホームランとなった。
 3点あれば今日のアボットであれば十分で結局は12奪三振の完封でトヨタが決勝に進んだ。
 ただし織機打線も12三振は喫したが決して完璧にやられたわけではなく、本田小百合、小柳薫の連打でチャンスを作ったり、4回には無死から古田真輝の二塁打と松岡恵美の犠打で先制のチャンスを作るなど着実に対応できるようになってきた。右打者は相変わらずしっかりバットに当てるし特に松岡がアボットに強いのが頼もしい。加えて今日は左打者の小柳が2安打、本田が1安打だが大きなセンターライナーも放っていたのが収穫。逆にとことん苦手のような狩野亜由美、白井沙織、国吉早乃花の3人がどうにかして揺さぶれるようになると攻略の糸口はつかめるかも知れない。

 


 

【決勝戦】
Honda 000 0000…0
トヨタ 000 210x…3

Honda:ネルソン-ループ
トヨタ:アボット-渡邉

 アボット、ネルソンが好投し3回まで互いに無得点。
 4回裏、トヨタは先頭のワトリーがヒットで出ると続く前薗理絵もセンター前に。この打球でワトリーが三塁を狙うとHondaのセンター大橋美奈が勢いよくダッシュしてきて捕球に行くが、ファンブルして打球を後ろに逸らしてしまう。この大橋のエラーでワトリーが三塁を回り一気にホームを駆け抜けトヨタが先制し、打った前薗も二塁に達する。
 ただ確かにこの場面は大橋の失策で先制点を与えたのだがあのプレーは責めたくない。相手がアボットであれば1点が非常に重いわけで、無死一塁からのセンター前ヒットで三塁を狙った走者を刺しに行く攻めのプレーは十分に納得できる。ファンブル自体は頂けないが、無難に捕球して簡単に三塁を陥れられるよりもエラーであってもよほど意味のあるプレーだった。
 ともあれ1点を失ってなおもピンチは続く。ここでネルソンがワイルドピッチをして前薗は三塁へ。藤野が四球で歩くと二盗で二三塁として打者は大ベテランの伊藤幸子。そしてここでも織機戦での先制打に続いてセンター前に貴重なタイムリーを放つ。今年は伊藤幸子の年になりそうな予感が漂う2試合連続の貴重なタイムリーで大きすぎる2点目が入る。ただHondaも負けずに3点目の走者藤野はセンター大橋からの好返球でホームタッチアウトに。この回を2点で食い止める。
 それにしても見かけによらず大橋はいい肩をしている。

 5回裏、トヨタは先頭の藤崎由起子が左中間二塁打で出塁すると鈴木美加が送って1死三塁へ。

 そしてここがもっとも大事な場面。
 投球のたびにうろちょろうろちょろしていた三塁走者の藤崎に挑発された捕手のルプネッティが、昨年までのHondaのスカグリオネを彷彿とさせる「無駄な三塁牽制で悪送球」。ここにきてようやく本来のHondaらしいプレーも披露し、長年のファンを楽しませる余裕も見せてくれたのだった(笑)

 この3点目でほぼ万事休す。Hondaは島崎がセンター前に放った1安打のみ(中村の出塁はワトリーの失策だったはず)で15奪三振の完封負け。

 最後の打者となった中村瞳もファールで粘ったが最後は外のスライダーにまったく手が届かずに空振り。「精一杯やった~。やっと終わった」という清清しい笑顔をいっぱい浮かべてベンチに帰る中村瞳。そしてトヨタの胴上げをみんなで笑顔で見届け、快進撃を続けたHondaチームの2010年の全日本総合が終わった。

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