【過去10年間の打者記録の変遷~その2:二塁打、安打、打点、四死球について】

【過去10年間の打者記録の変遷~その2:二塁打、安打、打点、四死球について】

 さて前回は本塁打数の変遷を見てみて、それが主に飛ぶバットの導入と黄色いボールへの変更による影響が極めて大きいことを指摘した。
 一方で、投手捕手間の距離、外野フェンスまでの距離の延長に関しては、それが同じ年に行われたことからさほど大きな影響を及ぼさなかったことも述べた(やや減少はしたが)。
 今回は、大まかな記録の変化としては同じ傾向にあるが、部分的には本塁打数の変化の傾向とはやや異なる他の打撃記録について言及してみたい。

 

【環境変化のおさらい】
 2000年:飛ぶバットが導入
 2002年:バッテリー間が約1m延び、フェンスまでの距離が約7m延びる
 2004年:同じ革製だが、縫い目が低く白いボールから、縫い目が高く黄色いボールに変更された
 2005年以降:さらに打球の飛ぶバットが改良されている

 

【二塁打と本塁打】



 「安打数」には本塁打数も含まれるのでここではデータが重複しない「二塁打」と「本塁打」を比較してみた。それによって本塁打以外の傾向が見やすくなる。
 二塁打、本塁打ともに黄色いボールが導入された2004年に激減、その後バットの改良に伴って増加傾向、というのは一致した傾向である。
 異なるのは投捕間・外野フェンス距離が延長された2001年と2002年の変化。
 ここで本塁打数はほぼ横ばいながらも若干減少したのに比べ、二塁打数は30%近く大きく増加した。
 フェンスまでの距離が延びるとホームランは出にくくなるが、外野でのヒットゾーンは広がることから柵越え以外のヒットが増える傾向は理解できる。
 この二塁打記録の変遷はまさにそれを表している。
 ただその後の傾向はほぼ本塁数と同じ。
 飛ばない黄色いボールが導入された2004年に一度減少し(それでも2001年ベースまででとどめた)、その後はバットの改良により、本塁打数までの劇的な増加はないが年々微増を続けている。

 

【安打、打点、四球】







 さてそれ以外の打撃記録のデータはどうなっているだろうか。
 実はこれらは「二塁打」の傾向とほぼ一致している。
 つまり、
 (1)2002年の投捕間距離の延長によりデータが増加
 (2)2004年の黄色いボール導入により極端に減少
 (3)その後年々増加
 というものである。

 四死球が増えるのは一見無関係に思われるが、飛ぶバットの導入などで打者有利になるとそれだけ厳しいコース、際どいコースを攻めざるをえないわけで、この傾向は理解できる。
 本塁打数の傾向である「黄色いボールの導入により激減し、飛ぶバットの導入により増加した」という傾向は、そのまま二塁打や安打、打点や得点、その影響による四死球の増加と同じような傾向を示すということがわかった。
 一方、本塁打数にはあまり影響がなかった「投捕間距離と外野フェンス距離の一括改定」が、二塁打数や安打数、打点などには大きく影響しているということが明らかになった。

 

【打撃率と4割打者の数】



 さて最後は蛇足になるが、打率の変化と年間どれだけ4割打者が生まれたかについて調べてみたい。
 打率というのは大きな外的要因の変化がない以上、成熟したリーグではほぼ一定した値に収束することが知られている(プロ野球で4割打者が長年出ないことを見ればわかる)。
 ソフトボールの日本リーグでは、毎年2~3人の4割打者が出ていたが、それがここ数年は6人以上の4割打者が生まれている。
 ただそれも図を見れば明らかなように、平均打率の増加に連動したものであり、すなわち飛ぶバットの導入が年々平均打率を上げて多くの4割打者を生み出す結果になっているようである。

 

【結論】
 本塁打数の傾向と一部異なるこれらのデータについてまとめてみる。
 (1)投捕間距離と延長とフェンスまでの距離の延長で、安打、二塁打に加え、打点や四死球も増加
 (2)黄色い飛ばないボールにより記録は減少
 (3)飛ぶバットの導入のより2005年以降記録は増加

 以上である。

 さて次はこのような記録とは一風変わった傾向を示した「三振数」について取り上げてみたい。
 そして打撃記録の変化の3つの傾向について、総合的に考慮してみたい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です