ほぼ同じ時間帯で行われていた別会場の試合で、東芝北九州の矢野みなみがドリーム☆ワールド相手に逆転サヨナラホームラン。その余韻に浸りながらとなりの会場に移動して見たのがこの試合で、ちょうど島根三洋が7回に3点を取って3-3と同点に追いついて延長戦に入るところだった。土壇場で追いついて延長戦にもつれ込んだスコアを見て、「このままでは終わらないな。何かがおきるかも」と思っていたら、「何か」どころか予想をはるかに上回るとんでもないことが起きた。これだから2部観戦は油断できない。
そのとんでもないことが起きた延長8回の表裏の攻防をまずは振り返ってみよう。
【8回表:島根三洋】
※二走に荻原
4番舟木:右前打(走者一三塁に)
5番久保:右越え2点適時三塁打(1~2点目、走者三塁に)
6番古関:三遊間適時打(3点目、走者一塁に)
7番古瀬:遊ゴロ(タイミング的には余裕でセーフだったが…、走者二塁)
8番代打柿山:中前適時打(4点目、走者一塁に)
※甲賀医専はここで投手交代、先発し好投した岩田から→寺田へ
9番倉富:一塁前犠打(走者二塁に)
1番平川:(パスボールで走者三塁)中前適時打(5点目、走者一塁に)
2番南:見逃し三振
※「タイ」を「ブレイク」するどころか一挙5点。これで完全に決まったと誰しもが思っただろうが…。
<この古瀬が内野安打になっていたらその後10点くらい入っていたかも知れないが…。でもそしたらその裏11点取られていたかも知れんか(笑)>
<それでもこの5点目の平川のタイムリーで”普通”は十分なはず>
【8回裏:甲賀医専】
※柿山に代わり那須がファーストで再出場
6番木村:右飛失(平凡なフライをライトの南がポロリ、走者一三塁に)
7番小栗:右前適時打(1点目、走者一二塁に)
※一塁代走に秋月
8番和座:右中間適時打(2点目、走者一三塁に)
9番横江:四球
※無死満塁
1番児島:一塁ゴロ・本塁アウト
※1死満塁
2番神田:二飛
※2死満塁
3番小山:右越え3点適時三塁打(3~5点目、定位置に守っていれば捕れたのでは)
※とうとう同点に
4番佐藤:左安ポテンサヨナラ適時打(6点目)
※奇跡のサヨナラ勝ち
<全てはこのライト南の落球から始まった>
<満塁走者一掃の同点打もライト南の頭上。定位置に守っていたら捕れたかも知れない。3点差の2死満塁、外野の頭だけは越されたくない場面。ここは選手もベンチも冷静さを欠いた>
<4番佐藤の詰まった当たりも勢いに乗れば野手の絶対に届かない所に打球は落ちる>
<サヨナラ打に湧く甲賀医専ナイン。若い力が勢いに乗ったときの怖さを思い知らされた>
<パッと見たら「点数計算間違ってるじゃん」と誰しも思うだろう。こんなスコア、あり得るか!(笑)>
確かに1部に比べたらレベルは落ちるが、それでも凸凹で観客席もほとんどないグランドの上で必死に黄色いボールを追い続ける2部チーム同士の試合にはまた別の面白さ、応援したくなる何かがある。その中でもこの試合に象徴されるように「最後の最後まで何が起きるか予想できない面白さ」というのはむしろレベルが低いなかでも必死にやっている2部特有のものではないだろうか。
レベルが低いと言い過ぎてるがそれもあくまで1部との「平均値」の比較であって、何度も繰り返すが2部にも1部選手に負けない選手はたくさんいる。だからこそこんなとんでもない試合が起きるのだろう。
それにしてもこの試合を落としたのは島根三洋にはあまりにも痛かった。大黒柱の古瀬由梨亜が不調なまま開幕した第1節初日にいきなりダブルヘッダーで、しかも優勝候補のペヤングと若さに乗ると何しでかすかわからない甲賀医専が相手というのが不運だった。
もちろん島根三洋の選手やベンチは言い訳しないだろうが、今年の山陰は大雪で春先までほとんどグランドが使えなかったりキャンプ期間も短かったり、山陰の島根が本拠地という地理的ハンデもあり開幕までほとんど練習試合を出来なかった。聞くところによると開幕戦が今年初の対外試合だったらしい。それを思うと専門学校とはいえ熊野オープンから参加した甲賀医専よりも恵まれない環境での開幕となってしまった島根三洋には同情を禁じ得ない。ただこうやって毎年痛い星を落とし続けて上位に残れないチームであることに関しては同情する気持ちを抑えて「島根三洋しっかりしろ!」と言いたくなりもするのだが、でも呂投手擁する日立マクセルに1-0完封勝ちするみたいに強豪と互角に渡り合える潜在能力を持っているのもこのチーム。
とにかく山陰の島根に一つリーグチームが有るという事実が何より嬉しい「島根まで練習見に行ったけどやってなくて見れなかったという隠れ島根三洋ファン」としては、2節以降しっかり立て直してこれからまだまだ優勝争いを思いっきりかき回して欲しいと心から願っている。
それにしても甲賀医専である。ほとんどが2年目までの選手でチームを構成しながら毎年毎年しっかり勝てるチームを作り上げてくるのは見事というほかない。若いってイイネ。また今年も多くの卒業生を実業団に送り込んでくれるだろう。