【前半戦総括~日本リーグ1部・その2:中位5チーム】

 


5位:太陽誘電(7勝4敗、●トヨタ、ルネサス、ソフトウェア、マクセル)
 開幕のマクセル戦に善戦しながら敗戦した時には監督はどんな気持ちだっただろう。前半戦こんなに好成績を残せるような「手ごたえ」は掴めていただろうか。そのあたりにすごく興味がある。
 というのも2節から続く対戦相手が、織機、ルネサス、ソフトウェアで、もちろん勝つつもりで臨んだはずとはいえマクセル戦に負けてしまうといきなり開幕4連敗からのスタートとなる最悪の結果も想定しないといけない状況だったからだ。そういう意味でも今年の誘電にとって第2戦目にオスターマン相手の織機に快勝した試合は非常に大きいものだった。あの1勝でチームもエースに成長した森真里奈も完全に波に乗ったような気がする。
 開幕での敗戦を除くと、負けた相手はトヨタ、ルネサス、ソフトウェアという上位陣にのみ。トヨタには1-9と完敗したが、ルネサス、ソフトウェア相手には1点差負けと後半十分に逆転できる点差。とにかく思い切り振りまくる元気のいい若手打線に経験値が加わり、今年ブレイクした岡本由香のような選手がもう一人二人出てきたら、これだけ投手がいいと4年ぶりの決勝トーナメント進出も十分射程圏。とにかく今年は太陽誘電の最終結果に大注目。

<前半戦打率ベスト3(10打席以上の選手、カッコ内は打席数)>
0.417(29) 岡本由香
0.361(40) 河野美里
0.280(38) 谷川まき

<本塁打を放った打者(カッコ内は打席数)>
3(38) 谷川まき
2(40) 河野美里
1(16) 佐野志津香


6位:デンソー(6勝5敗、●ソフトウェア、ルネサス、織機、太陽誘電、マクセル)
 開幕前にちょっと吹いたとは言え「全勝優勝も!?」なんて持ち上げてきた手前、そのチームが前半戦こんな成績で終わってくれると正直こっちも辛い立場になる。
 でもそこまで期待するくらいに開幕前のデンソー打線は絶好調で、特に新加入の伊藤綾香が打ちまくっていて今年はとにかく点は何点でも取れるという雰囲気がチームに漂っていた。もしかしたら冷静になるべき首脳陣もそうタカをくくってしまったのかもしれない。でもよくよく考えたら、確かに伊藤は日本でも一二を争うくらいスケールの大きな打者なのだがレオパレス時代から思い返してもどうも大事な場面で試合を決めるような一打を放ったのをほとんど見たことがない(たまたまかも知れないが)。彼女の長所でもあり欠点である「まじめさ、気の優しさ」の表れなのかもしれないけど、移籍1年目でいきなり開幕から4番に据えて最大限の結果を求めてしまったのも酷だったかな、と思う。でもあれだけの選手だし早いこと日本代表の中心打者になってくれないといけない選手なんだから、その程度の期待とプレッシャーに負けちゃダメだとも思う。
 とにかく3節のマクセル戦で負けてからズルズルと落ち続けて結局は6勝止まりでは決勝トーナメント進出も赤信号点滅。2節のソフトウェア戦の敗戦は豪雨で中断を挟む間の失点で不運な面もあったが、マクセル戦で1回から3回までの3連続二三塁のチャンスのうち二度を4番伊藤、5番ランゲンフェルドで1点も取れなかった時点で前半戦が決まってしまったような気もする。後半は1敗も許されないような状況ではあるのだが、何が起きるかわからない今年の日本リーグ。本気で全勝を目指して戦ってほしい。

<前半戦打率ベスト3(10打席以上の選手、カッコ内は打席数)>
0.467(34) 永吉理恵
0.400(41) 増山由梨
0.333(39) 松本尚子
0.333(28) 今泉早智
0.333(10) 江口未来子

<本塁打を放った打者(カッコ内は打席数)>
3(34) 永吉理恵
1(37) 伊藤綾香
1(27) 衣笠久美


7位:佐川急便(4勝7敗、○織機、シオノギ、靜甲、マクセル)
 土日で二日続く試合では「下位チーム相手に外国人エース、上位チーム相手に日本人投手」という明確な投手起用をするチームの一つである佐川急便。そのようなチームゆえ上位チームを破るような試合がほとんどないのだが、そういう投手起用のチームにとって4節のソフトウェア戦が雨天中止で予備節にまわったのはひとつの転換点になっただろうか。ソフトウェア戦が1試合だけ飛んだことで満を持してエースのスメサートをぶつけることができ、6回まで0封で勝利目前まで持って行けた(最後は信じられないような逆転負けだったが)。日本人若手一番手の信長香菜が成長しており、スメサートも強打のソフトウェアですら抑え込める以上、やはり後半は「上位チーム相手にスメサート、下位チームに信長」というパターンで常に連勝を狙って戦ってほしい。
 ほとんど上位に勝たないとは言っても、2008年に熊本八代大会でレオパレスを破ったり、2009年に岐阜長良川大会でソフトウェアに勝利したりと、年に1回くらいは勝つチームでもある。しかも負けたチームはその1勝分が届かず決勝トーナメントに進出できないというジンクスがある。ということは今年は織機が決勝トーナメントを逃す番か?そんなジンクスを打ち破るためにも、今年は1勝と言わず2勝目3勝目と上位から勝利を重ねていってほしい。

<前半戦打率ベスト3(10打席以上の選手、カッコ内は打席数)>
0.435(40) S・ポーター
0.296(37) 高木美晴
0.292(33) 柳瀬友紀

<本塁打を放った打者(カッコ内は打席数)>
2(40) S・ポーター
1(38) 松下友里


7位:Honda(4勝7敗、○佐川急便、シオノギ、大鵬薬品、靜甲)
 今年は開幕戦で1試合を見ただけで、その他のリーグ戦はもちろん練習試合もオープン戦も見る機会がなかった。もしかしたら後半戦も1度も見る機会がなく終わってしまうかも知れない。
 なのでチームがどういう状態で、新人がどの程度の役割で、パウリーがその後どうなのかもチームの速報サイトを通じて知るだけなのであまり詳しいことを書くことはできない。
 ただ完封負けが何試合も続いて、今年は例年以上に打てないのかな、と思っていたがそれでも前半を4勝して終えたのには驚いた。正直もっと勝てないのかなと思った。それとパウリーがあまりにも多く投げすぎて後半戦ほとんど使えないのかなとも思ったが、記録を見ると46回1/3と半分未満。意外とうまいこと使っているので後半戦も少なくとも同じくらいは勝てそうな感じだ。
 ただ去年はルネサスキラーでリーグを盛り上げたチームとしては今年の4勝はまだまだ全然物足りない。後半戦は去年のミラクルHondaの再現と、全日本総合での優勝、それからトヨタ戦勝利を目指して戦ってほしい。

<前半戦打率ベスト3(10打席以上の選手、カッコ内は打席数)>
0.276(34) 芝﨑恵梨
0.273(26) 小川絵里加
0.250(21) 村上由里子

<本塁打を放った打者(カッコ内は打席数)>
1(32) 田中清香
1(26) 小川絵里加


7位:日立マクセル(4勝7敗)
 2部から上がったばかりで一度も残留経験がないチームとしては前半戦4勝は大健闘、なのかもしれないけど、監督も選手もファンも今年のチームをそんなレベルでは最初から見てないし、むしろ「もっと勝てたはず…」と思って悔しくて仕方がないはずだ。
 去年復帰した呂偉が今年は開幕からいることはもちろん(前回の1部時は後半からの来日だった)、小野奈津子と田中梢子の元レオパレス二人の補強がすごく大きくて、この二人の軸が入ったことで阿部環や中村祥子、小林朝子、高崎千恵、東綾華といった元からいた選手の役割がはっきりしてとても機能的なチームになった。そして何より元伊予銀行の西村瑞紀投手が入ったことで、呂が投げない試合で上位相手でも期待の持てるシーズンとなった。。
 そんな戦力が充実したマクセルの前半戦を振り返ると、ファンでなくても悔しくなってくるような惜しい試合ばかりなのだ。2節の佐川急便戦は小野、中村が本塁打を放ちスメサートをノックアウトして4-1とリードするも終盤にリリーフの西村が打たれ逆転負け。4節のシオノギ戦では不運な判定から逆転を許して1-2の惜敗。5節1日目のソフトウェア戦では1-2とリードしながら最後まで呂を温存したことが裏目となり7回裏逆転サヨナラ負け。翌日の靜甲戦では満を持して登板させた呂が靜甲打線につかまり河部にも完封を許して靜甲に初勝利を献上した。靜甲戦は相手に2部優勝の意地を見せられほぼ完敗だったが、4節のシオノギ戦での敗戦から続く悪い流れを断ち切れなかったのも大きい。あのシオノギ戦で勝っていれば5節の2試合もどうなっていたかわからない。佐川急便、シオノギ、靜甲には小林監督も勝ちを計算していただろうし、もしソフトウェアを合わせたこの4つを取っていたら前半戦8勝3敗で、ソフトウェアより上を行き織機と並んで3位タイとなる数字なのだ。初の残留どころか一気に決勝トーナメントも見えてくるような数字で、ソフトボールファン全体のマクセルに対する注目度もケタ違いだったはずだ。それだけの戦力を持ちながら結果的には3つの負け越しで前半戦を終えてしまったというのは、やっぱり一ソフトボールファンとしても残念としか言いようがない。

<前半戦打率ベスト3(10打席以上の選手、カッコ内は打席数)>
0.375(38) 小野奈津子
0.324(40) 阿倍環
0.265(36) 小林朝子

<本塁打を放った打者(カッコ内は打席数)>
4(38) 小野奈津子
2(33) 中村祥子
1(34) 田中梢子

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