【一部訂正有り】
大事な選手を忘れているような気がして1日過ごして気がついた。靜甲の植松を忘れていた。というわけで、最初に上げていたトヨタの小野に代えて植松を外野手のひとりに推したい。小野はかつて選んだこともあるし、声も高すぎるしね(それは関係ないだろw)。
「選んだ」と偉そうなこと言っても観戦した試合も限られるしもとより素人目線を超えるものではない。
とにかくこれは「個人的に見た範囲の中で魅了された守備、印象に残った選手」をあげただけでそれ以上でも以下でもないのでご了承願いたい。
【投手:栗田美穂(豊田自動織機)】
投手に関しては全く迷う必要がなかった。とにかく栗田美穂(豊田自動織機)は巧すぎる。リーグでも屈指の遊撃手がピッチャーズサークルで投げて守ってるような、それくらいの抜群のフィールディングを誇っている。
今年のプロ野球、セ・リーグではリリーフの浅尾拓也(中日)がゴールデングラブ賞を獲得したが、スタイルもルックスもよくて守備も抜群に巧い栗田はこの浅尾と非常に共通点が多い。まさに「女子ソフトボール界の浅尾拓也」といった感じじゃないだろうか。
その浅尾が本人曰く昨季一番のプレーが横浜戦でバントを素早く処理して二封したプレーだそうだが、栗田の最高のプレーも同じく、決勝トーナメントの日立ソフトウェア戦の2回、杉山のピッチャーゴロを素早く処理して二塁送球し(併殺にし)たプレーじゃないだろうか。
ただ個人的に強く印象に残っているのは第8節刈谷大会の日立マクセル戦だ。3回まで9つのアウトのうち4つをピッチャーゴロに仕留めるという、とにかくセンター方向への打球は全てグラブで奪い取ってしまうようなキレまくったフィールディングだった。ただ残念ながらフィールディングがキレ過ぎたのが災いし、手を出さなければショートゴロの打球にまで手を出し弾いてしまい、今シーズン唯一の失策を犯したのもその試合だったが、あれも栗田でこそEランプが付くようなプレーで、ある意味勲章だろう。
とにかく昨年までは守備も巧すぎる上野由岐子をなんとか選ばない方向で無理矢理他の投手を選んできた感があった3年間だったが、今年は公平な目で比較しても栗田が一番。ようやく上野に匹敵し、そして超える守備力の投手が出てきた。
<守備は抜群に巧い栗田美穂。ソフトボール界の「浅尾拓也」>
【捕手:渡邉華月(トヨタ自動車)】
渡邉華月はあのプレーがとても印象に残っている。
第2節豊田大会の大鵬薬品戦。結果的には2-0で勝利したが、上位食いの得意な大鵬薬品に先制されていたらどうなるかわからない試合だった。その試合、梅津と山根の好投で0-0で迎えた4回、先制点のチャンスを迎えたのが大鵬薬品で、2死一二塁から千原のヒットで二走の浜田が本塁に突入、タイミング的には微妙でセーフかと思われたが判定はアウト。後でよく見ると確かにアウトで、渡邉のタッチが素晴らしかったのだ(写真)。
浜田もうまく回り込みベースに手を伸ばす。こういうプレーの場合、捕手は無意識に手を伸ばし走者の体にタッチに行ってしまう。するとそのタッチをかいくぐりベースに手を伸ばしてセーフになってしまうのだが、このプレーでは渡邉は走者にタッチに行かず、ベースの縁をなぞるようにミットを動かし、ベースタッチにきた浜田の手をしっかりガードしたのだ。当たり前のことだが、走者というのはベースに触れないと点にならないわけで、すると捕手はたとえ走者をアウトにしなくとも、しっかりとベースをガードして守れば少なくとも点を与えることはないのである。その原理通り、渡邉は走者にタッチに行かず、走者が手を伸ばしてくるベースの縁をしっかりガードしながらミットを動かした。結果的にそのミットに走者の手が伸びてきてアウトになったのである。
もちろん一流の捕手なら当たり前のプレーかも知れないが、ああいう場面でそういうプレーをサラッとできるという、やはり渡邉は一流の捕手なのだ。
<ベースの縁にそってグラブを動かし走者をアウトにする渡邉。優勝決定逆転サヨナラツーランだけではなく、堅実な守備でもチームを支えた>
【一塁手:藤崎由起子(トヨタ自動車)】
一塁手では個人的には3人の候補の中で誰にするか非常に迷った。その3人というのが、グラブ捌きではリーグ1の日立ソフトウェアの濱本静代、ファーストにするのがもったいないくらいのルネサス高崎の大久保美紗、そして捕手も含め多くのポジションを守れるトヨタ自動車の藤崎由起子である。
強い打球を軽く処理する濱本の華麗なグラブ捌きも捨てがたかったのだが、今年は藤崎が良いところで守備でも貢献したのではないだろうか。特にバント処理での二塁送球や、ファースト後方ファールゾーンでの守備範囲の広さは藤崎の巧さが突出していたように思う。バッティングも含め、あの小さな体のどこにあれだけの力を秘めているんだろうか。とにかく藤崎にはトヨタに限らず、日本リーグの全てのチームから声がかからなくなるまで、とことんまでユニフォームを着続けていて欲しい。
<打つ方だけではなく、どこでも守れる起用で柔軟な守備こそ藤崎由起子の真骨頂>
【二塁手:酒井かおり(大鵬薬品)】
ここも大いに迷った。潜在的な守備力としてはこの酒井かおりとHondaの中村瞳が個人的には双璧なのだが、ここに努力で成長してきた織機の吉良真利菜や天才セカンドのルネサス高崎の市口侑果が参戦してきた。ただやはり見ていて唸らされるような巧さがあるのはやっぱり酒井だった。とにかく守備範囲が広く、打球処理の柔らかさは内野手としては松岡恵美や西山麗に匹敵するものがあるのではないだろうか。補殺数57という一番多い数字も、その守備範囲の広さを物語っている。名手というに相応しい選手だ。その酒井の背番号9とお下がりのグラブ、織機のセカンドに車種まで受け継いだ吉良がいずれはその後継者になってくれるのを個人的には大いに期待している。
さてセカンドに関してはやっぱりどうしてももう一人この選手に言及せざるをえないだろう。それが靜甲の尾方栄里である。
2部時代の靜甲の試合を見に行くと、尾方の守備に毎試合点数をつけるのが個人的に楽しみの一つだった。まあだいたい20点とか30点で、ある試合の後とかは守備で鈴木麻美の足を引っ張った彼女に対してつい「今日の守備は20点だ!」とか業を煮やして直接言ってしまったこともあったかもしれない(「0点」だったか、笑)。そんな尾方が、である。2011年、1部リーグで1年間セカンドを守りきり「失策0」だったのだ! もちろ守備範囲の広さもあるし、失策数だけが守備の巧拙を評価する基準ではないが、しかしながらゼロで乗り切ったのは敢然たる事実である。後輩投手にとって、1年間失策無しで乗り切ったセカンド尾方は、本当に頼もしい先輩だったのじゃないだろうか。2011年の尾方のセカンド守備には、両手を挙げて「100点」をあげたい。
<ここ数年は日本一のセカンドであり続けている酒井かおり>
<不器用だが真面目にひたむきに努力し、1年間無失策で乗り切った尾方栄里>
【三塁手:山本晴香(太陽誘電)】
ここも大いに悩んだ。正直3週間ほど悩んで、そして結局答えが出なかった。
派手なプレーで毎度楽しませてくれるルネサスの山本優がなんと6失策。左右の反応が抜群で肩もいい日立ソフトウェアの林佑季が4失策。かつてGGで選んだことのある織機の古田真輝、復帰した靜甲の白井奈保美、トヨタの坂元令奈も2,2,3失策と、失策ゼロで乗り切ってくれなかった。このジャパンの常連でもある名選手達の体たらく(と、あえて言おう)が、GG賞を誰にするか悩みに悩んだ原因なのだ。
そんな中で最多66の守備機会、48の補殺で1失策だった誘電の山本晴香を今後の期待も込めて今年の三塁手GGにあげたいと思う。大鵬薬品の佐藤光紗もほぼ同じ数字で悩んだのだが、より印象に薄いのが山本だった。この印象の薄さは翻って、無難で安定した守備をした結果ではないだろうか。
<派手さはないが堅実な守備を誇る山本晴香>
【遊撃手:蔭山遥香(ルネサスエレクトロニクス高崎)】
廃部したレオパレス21におけるカリスマ遊撃手・佐藤理恵の正当な後継者であるのが一昨年ルネサス高崎に移籍した蔭山遥香である。この蔭山は山根佐由里と並びわが三重県出身の希望の星でもあり、ノンスタイルの石田でもなければ、たんぽぽの川村エミコでもないのである。
その大先輩・佐藤理恵ゆずりの腰高でチャラいプレーを身上としている蔭山であるが、同時にそのサトリエゆずりの天性のグラブさばきの巧さとスピード感あふれる広い守備範囲も受け継いでいるのだ。
このショートのポジションに関してはもう一人選びたかったのが日立マクセルの小野奈津子だ。というかむしろギリギリまで小野の方を選びたかった。とにかくどこを守らせても超一流の守備を誇る小野だが、ショートを守ってあれだけ好プレーを連発してくれると本来は選ばざるを得ないのだ。ただそれでも最終的に蔭山にしたのは、1年間ショートを守って76の守備機会で失策がゼロだったという事実。とにかく1年間ショートを守って失策0はそれだけでも賞賛に値するだろう。もちろん見ていない試合について、たとえば8節の群馬大会などではどう考えてもエラーなのをヒットにしてもらったりというラッキーもあったようだが(サイタマンさんの報告によれば)、まあそれも目をつぶろう。とにかくようやく本当の実力を発揮してくれた蔭山に、今後の飛躍を大いに期待したい(飛躍する場はあるのか!?)。
さて蛇足になるがやっぱりここももう一人付け加えておきたい。もちろんそれはデンソーの松本尚子である。一昨年松本が出来てた時点で、彼女が引退するまではGGはずっと松本で安泰だろうと思いきや、2011年は早速4失策と低迷してくれた。今年(2012年)はとにかく好プレーを連発しながらも1シーズン失策0でのりきるのが最低条件という、そういう高いハードルを彼女には課したい。
<左打者の深いショートゴロをアウトにする蔭山の守備>
<小野の想像力溢れるプレーも十分GGに値するもの>
【外野手:阿部環(日立マクセル)】
【外野手:植松尚子(靜甲)】
【外野手:三宅美咲(シオノギ製薬)】
さて外野手に関しては今年も山田恵里、狩野亜由美、増山由梨は最初から除外した(巧すぎるので)。河野美里も同じ理由で除外した。
残りで選ぶとして、これは個人的な好き嫌いも大きいかと思うが、あまり迷わずに選ぶことが出来るのがこの3人だ。
マクセルの名センター阿部環と、トヨタの名レフト小野真希は、まあ文句ないだろう。昨年、一昨年のこの稿で詳しく述べているのでそれを参照されたい。特に阿部環のアグレッシブな中堅守備は世界のトップレベルと言っても過言ではないし、野球で言えばロッテの岡田に匹敵するものがあるだろう。
そして、3人目であるが、サプライズ的ではあるが自信をもって推薦したいのがシオノギの新人三宅美咲。
倉敷中央高から甲賀医専を経るまで、ファーストしか守ったことがない三宅をいきなり外野にコンバートしレギュラーとして1年間使った北村監督の信念もさることながら、やはりそれに耐えうるだけのセンスを持ち合わせていたという裏返しでもあるのではないだろうか。
甲賀医専時代から知るファンの一人としては、果たして外野守れるのかな、と大いに危惧した開幕当初だったが、8節、9節での守備での守備を見るにそれが完全に杞憂だったことを思い知らされた。ただ2011年のあの元気いっぱいの守備力も、多分に「リーグ1年目、外野手1年目」というがむしゃらさがもたらした結果もあるのかも知れない。2年目以降、リーグに慣れてきた時も、この1年目のひたむきさをどうにか失わないで欲しいものだ。個人的には三宅には、引退したシオノギの大先輩である高木由美子的なセンターになってほしいと期待していたが、どうやらその期待を上回る成長すら見せてくれそうな気がする。
さて最初にも書いたが1日経ってつい忘れていた選手が靜甲の植松尚子。あんなガッツある守備を見せ続けてくれるセンターもそうそういない。
<センターは当分この選手か。とにかく僕は個人的にこの阿部環の守備が大好きだ>
<開幕戦で見せたホームランキャッチとバックホームは衝撃だった。とにかく空回りするくらい常に全面に押しだす気合いが植松の魅力的なところ>
<1年目にしてあれだけ守れれば十分だろう。三宅の守備には良い意味で驚かされることが多い一年だった>
<器用すぎてライトやセカンドも守らされているが、やっぱりレフトを守らせると右に出るモノはいない小野真希。最初はこの小野をあげていたが、前にも選んだし巧いのはわかりきっていてるので今回は交代させてもらった>
【参考~守備率10割選手】
<捕手>
渡邉 華月(202)
峰 幸代(131)
竹林 綾香(67)
ローラン・ラッピン(62)
島崎 望(57)
鮫島 憂子(30)
<一塁手>
濱本 静代(188)
佐藤みなみ(129)
大村英利佳(121)
藤崎由起子(80)
新崎 涼子(53)
メーガン・ランゲンフェルド(34)
<二塁手>
尾方 栄里(97)
市口 侑果(31)
<三塁手>
なし
<遊撃手>
蔭山 遥香(76)
<外野手>
河野 美里(38)
阿部 環(36)
陽山 亜美(35)
平林真由子(34)
※かっこ内は守備機会
新年のご挨拶が遅れましたが、
あけましておめでとうございました。
少々さぼっている間に、ブログの書き方も忘れてしまいすっかり間が空いてしまいました。
今年もよろしくお願いします。