2011年は延べ31人の新人野手が入り(捕手および打席に立った誘電の投手尾崎を含む)、その全員が試合に出場し28人が打席に立った。
近年稀に見る新人打者の当たり年で、特に山田恵里の再来となること必定のトヨタ自動車の長崎望未の記念すべきデビューの年として記憶されるだろう。
長崎以外にも逸材が多く、特にルネサス高崎に入った市口侑果、森さやか、宇野有加里の3選手は将来にわたってのルネサスの常勝を約束させるような素晴らしい選手である。
これらの選手に比べるのは酷だが、開幕から内野の要であるショートを任され1年間守りきった織機の高坂香月、誘電の山城みな、シオノギの山根すずか(後半はセカンドに回ったが)の高卒3選手もとても新人とは思えないような玄人好みのする素晴らしい選手だ。高校時代から名の売れていたルネサスの小松美樹もいずれ成長してチームの主力になるだろう。
大学から入った選手たちには獲得したチームは即戦力としてのより高いレベルを要求するわけであるが、環太平洋大から入った三崎奈緒(大鵬)、千原香奈(大鵬)、田邊奈那(ソフトウェア)の3選手は期待に違わぬ活躍で、2012年にリーグに進む大学の後輩達の活躍にも、いやが上にも注目が行ってしまう。
その他にも大鵬薬品の大村英利佳、Hondaの小川絵里加、ソフトウェアの森田涼、マクセルの篠田美穂などの大卒選手も1年目からチームには多大な貢献を果たした。
唯一の専門学校出身選手であるシオノギの三宅美咲も2部で活躍した経験を生かし1年目から大活躍。しかも初めての外野守備とは思えない好守連発で走攻守全てにわたってチームの柱となった。
その他の大卒選手、高卒選手についても全員が自分の持ち味を出した1年目であり、とにかくこの2011年というのは次世代のソフトボール界を背負って立つ人材を非常に多く輩出した1年だった。
【打席数】
*73(22) 千原香奈(京都明徳→環太平洋大→大鵬薬品)
*73(22) 三宅美咲(倉敷中央→甲賀医専→シオノギ製薬)
*72(20) 長﨑望未(京都西山→トヨタ自動車)
*58(20) 髙坂香月(多治見西→豊田自動織機)
*53(22) 田邊奈那(九州女子→環太平洋大→日立ソフトウェア)
50(19) 山根すずか(木更津総合→シオノギ製薬)
49(17) 市口侑果(木更津総合→ルネサス高崎)
49(18) 小川絵里加(埼玉栄→東北福祉大→Honda)
47(18) 山城みな(須磨ノ浦女子→太陽誘電)
–以上が規定打席数(46)到達–
40(20) 三崎奈緒(岡山東商→環太平洋大→大鵬薬品)
39(21) 森さやか(星野→東女体大→ルネサス高崎)
33(15) 大村英利佳(須磨ノ浦女子→大阪国際大→大鵬薬品)
23(12) 篠田美穂(淑徳→淑徳大→日立マクセル)
21(18) 小松美樹(須磨ノ浦女子→ルネサス高崎)
20(17) 松下美稀(九州文化学園→佐川急便)
20(10) 森田涼(須磨ノ浦女子→園田学園女子大→日立ソフトウェア)
18(13) 宇野有加里(木更津総合→ルネサス高崎)
10( 8) 松木瑛里(八代東→デンソー)
7( 3) 森田歩(済美→佐川急便)
5( 5) 濱名真未(常葉学園菊川→日立ソフトウェア)
5( 3) 野添由加(神村学園→佐川急便)
5( 2) 得真梨奈(園田学園→大阪大谷大→日立マクセル)
4(12) 村中美紀(中村女子→佐川急便)
3( 5) 鈴木鮎美(日出→トヨタ自動車)
2( 2) 粟倉陽香(常葉学園菊川→日立ソフトウェア)
1(13) 佐藤このみ(塩釜女子→富士大→大鵬薬品)
1( 4) 尾﨑望良(辻→園田学園女子大→太陽誘電)
1( 3) 松村優穂(筑陽学園→シオノギ製薬)
0(13) 長平雅(京都西山→シオノギ製薬)
0(11) 上田千裕(筑陽学園→佐川急便)
0( 1) 東遙菜(津幡→日立マクセル)
(*は全試合出場選手、高坂と長崎はジャパン遠征の2試合分を除く)
※昨年も多くの新人野手が活躍したが今年はさらにそれを上回った。
※31人の新人野手がデビューし、全試合出場が5人、規定打席到達が9人と近年稀に見る野手新人選手の当たり年だった。
※打席に立てなかった選手が3人いるが代走で出場しており、ひとまず31選手全員が1部の試合を経験した。
【打率】
(20打席以上の選手、カッコ内は打席数)
0.415(49) 市口侑果(ル)
0.353(72) 長﨑望未(ト)
0.273(23) 篠田美穂(マ)
0.262(49) 小川絵里加(H)
0.250(53) 田邊奈那(ソ)
0.246(73) 千原香奈(鵬)
0.224(73) 三宅美咲(シ)
0.222(50) 山根すずか(シ)
0.216(58) 髙坂香月(織)
0.214(33) 大村英利佳(鵬)
0.211(21) 小松美樹(ル)
0.206(39) 森さやか(ル)
0.186(47) 山城みな(誘)
0.158(20) 森田涼(ソ)
0.154(40) 三崎奈緒(鵬)
※規定打席ギリギリとはいえ、市口の4割1分5厘は素晴らしい。逆に長崎の3割5分3厘は普通に考えたらとても高いのだが、本人も言っていたように実力からすると物足りない。1年目から5割超えを期待した人も多かっただろう。
※2割を超えた10人については1年目としては十分な数字だろう。それぞれの選手が1年目からすでにチームになくてはならない存在だった。この中では新人打率3位でマクセルの4番も打った篠田の来年の飛躍が個人的には特に楽しみだ。
※1割台に終わった3人だが、1年間ショートを守りきった山城、捕手としてチームを支えた三崎はその分守りで貢献。森田は決勝トーナメントで4安打と大活躍した。
【安打】
<ベスト5>
24 長﨑望未(ト)
17 市口侑果(ル)
17 千原香奈(鵬)
13 三宅美咲(シ)
11 小川絵里加(H)
11 田邊奈那(ソ)
11 髙坂香月(織)
※長崎が24本とダントツの数字。全選手の中でも7位タイである。
【二塁打+三塁打】
<ベスト5>
3 田邊奈那(ソ)
2 長﨑望未(ト)
2 小川絵里加(H)
2 三崎奈緒(鵬)
(1本が9人)
※長崎を抑えて1位になったのがソフトウェアの田邊で、2位に並んだのが小川と三崎と、大卒選手が意地を見せた。
【本塁打】
<打った選手すべて>
5 長﨑望未(ト)
4 森さやか(ル)
2 市口侑果(ル)
2 千原香奈(鵬)
2 大村英利佳(鵬)
1 松木瑛里(デ)
1 宇野有加里(ル)
1 小川絵里加(H)
1 田邊奈那(ソ)
1 山根すずか(シ)
1 濱名真未(ソ)
※昨年は打った選手が大鵬の鷲野と織機の小柳の二人だけ(ともに多治見西出身)で計3本。それが今年は延べ11人で計21本と大幅増。ちなみに全体の合計が116本だから新人選手の本数は全体の18%に当たる。
【打点】
<ベスト5>
22 長﨑望未(ト)
15 市口侑果(ル)
10 森さやか(ル)
7 三宅美咲(シ)
5 小川絵里加(H)
5 大村英利佳(鵬)
※長崎は22でリーグの打点王を獲得。ルネサスの市口の15も打席数を考えるとそれに匹敵するものだ。
【四死球】
<ベスト5>
7 三宅美咲(シ)
5 小川絵里加(H)
4 髙坂香月(織)
3 長﨑望未(ト)
3 宇野有加里(ル)
3 田邊奈那(ソ)
3 森さやか(ル)
※三宅は死球が3と多かった。
【三振】
<ワースト5>
15 三崎奈緒(鵬)
13 千原香奈(鵬)
13 髙坂香月(織)
11 大村英利佳(鵬)
10 小川絵里加(H)
10 田邊奈那(ソ)
※三崎は三振は多かったが二塁打も2本とバッティングセンスの高い捕手。来期は三振数を半減させたい。
【出塁率】
<ベスト5(20打席以上の選手、但し犠飛は考慮しない)>
0.442 市口侑果(ル)
0.389 宇野有加里(ル)
0.380 長﨑望未(ト)
0.340 小川絵里加(H)
0.308 三宅美咲(シ)
※出塁率も市口がトップで4割4分という凄い数字。打席数が少ないが宇野が天才打者長崎を抑えて2位。
※小川も高い数字で、三宅も3割を超えた。6位だが篠田も3割超え。
【犠打】
<ベスト5>
8 三宅美咲(シ)
6 市口侑果(ル)
6 田邊奈那(鵬)
4 山根すずか(シ)
3 千原香奈(鵬)
3 髙坂香月(織)
3 大村英利佳(鵬)
※新人にしてセンターを守り1番~3番の打順を打ち、後半戦では決勝打も何本も放った三宅が1位で8個。しかもバントの失敗もあまりなかったように思う。
【守備データ】
<守備機会上位10人(補殺-刺殺-失策)>
121(15-106-0) 大村英利佳(鵬)
70(35- 33-2) 山根すずか(シ)
70(39- 27-4) 山城みな(誘)
68(14- 53-1) 三崎奈緒(鵬)
58(33- 21-4) 髙坂香月(織)
41( 3- 37-1) 三宅美咲(シ)
40( 3- 36-1) 田邊奈那(ソ)
33(23- 8-2) 小川絵里加(H)
31(10- 21-0) 市口侑果(ル)
22( 0- 20-2) 千原香奈(鵬)
※ファーストで出続けた大村が守備機会最多、しかも失策ゼロと素晴らしい数字。後半怪我でリタイアしていなかったら間違いなくゴールデングラブ賞だった。
※ゴロを多く処理した内野手が山根、山城、高坂の3人の高卒内野手で、ともに30以上(補殺数から推測)。
※三宅と田邊の両外野手は補殺が3と立派な数字。
<春の熊野オープンでのデンソー戦でホームランを放つ長崎望未(トヨタ)>
<第7節の織機戦で満塁ホームランを放った市口侑果(ルネサス)>
<第8節の織機戦で三塁打を放った三宅美咲(シオノギ)>
<夏の星野メモリアルでショートを守る山城みな(誘電)>
<新人選手の全打撃成績>