【2012年日本代表候補選手の選考について~その1(外野手)】

<大事な世界選手権に向けての選手選考>
 2012年は2年に1度の世界選手権がカナダのホワイトホースで行われる大事な年である。
 ソフトボールが五輪から除外された以上、やはり世界のソフトボール選手の最高の舞台がこの世界選手権になるわけで、少なくとも五輪に復帰するまでは五輪に臨んでいたのと同様の真剣さが必然的に要求されるのではないだろうか。個人的には五輪の有無に無関係にソフトボールというスポーツが大好きである以上、この世界選手権が世界最高峰の舞台として権威あるものに成って欲しいと心から願っている。
 その世界選手権開催年である2012年の女子日本代表チーム候補選手が先に発表された。

<2012年、代表選考長崎問題>
 とにかく今回の選考で一番問題になりそうなのが、いや、問題にしなければいけないのがトヨタ自動車の長崎望未が候補選手にすら選出されていないことだ。これは日本のソフトボール界の将来や、現在の日本代表選出のあり方を考えるに非常に大きな問題だと思う。
 その長崎が選ばれなかった外野手選考から見ていきたい(長崎がいかに素晴らしい打者でどれだけ驚異的な成績を高卒1年目にして残したかは、周知の事実なので改めて提示はしない)。

<外野手の代表候補選手について>
・選出選手
 岩渕有美(ルネサス高崎)
 河野美里(太陽誘電)
 関友希央(ルネサス高崎)
 永吉理恵(デンソー)
 藤野遥香(トヨタ自動車)
 山田恵里(日立ソフトウェア)
・主な選出漏れ選手
 長崎望未(トヨタ自動車)
 佐々木瞳(大鵬薬品)
 白井沙織(豊田自動織機)
 増山由梨(デンソー)
 国吉早乃花(豊田自動織機)
 など

 こう見ると、実力的に突出している山田恵里、河野美里、永吉理恵は当然の候補選出で、長崎の代わりに選出されたのがトヨタ自動車の藤野遥香と、代表監督のお膝元であるルネサス高崎の関友希央と岩渕有美の3人であるように見える。
 ただその3人の選出理由を理解できる部分も少なくはない。
 藤野はライトの守備が抜群に巧く(山田、河野はセンター)、バッティングでは小技もできて長打も打て、足も速く、さらに左の好投手の多いアメリカに対して有利な右打者でもある(もちろん山田も河野も左だ)。代表経験も豊富で藤野を選出する理由は十分理解できる(星野高出身というのが唯一ひっかかるが)。
 問題はルネサス高崎の二人である。ただその二人を選出した理由も個人的には理解できる部分も大きい。
 ソフトボール界が誇る経験豊富なベテラン選手でありながら人柄も最高で全てのファンから愛されるのが岩渕で、彼女が代表にいてくれることほど心強いことはない。確かに実力は往年に比し劣ってきてはいるが、その存在感はかつての内藤恵美に及ばぬながら近いものがある。
 関友希央は日本が誇るスピード選手で、関の小技が絶好調の時は誰が何をしても100%一塁でセーフになるような実に嫌らしい打球を放てる。山田、河野の二人を選出するならば、関のような打者が一人いてくれると打線のバラエティが格段に増して攻撃のパターンが飛躍的に増える。何よりアメリカが誇るパワーピッチャーが最も嫌がるような打者であることは間違いない。
 そしてこれらのことと関連することだが、打者のタイプ的に考えて、長崎は言わば山田、河野、永吉タイプであり、山田と河野を外さないならば少なくとも一人は全くタイプの違う選手を揃えたいという選考過程も十分理解は出来る。

 ただやっぱり問題もある。岩渕をもし実力で選ぶのなら問題はないが、宇津木監督とのパイプ役としての意味もあるのならこれには強く疑問を呈する。そもそも日本代表レベルの監督でお気に入りの選手を連れて行かないと選手とパイプが築けずコミュニケーションを取れないようならそれ自体が問題だ。そもそも代表監督を引き受けるべきではない。
 関についての問題はその守備力である。一昨年のルネサスの名物と言えばライトの関とレフトの城戸絵理沙のポジションを打者の左右によって頻繁に入れ替えることであった。これは城戸が名手ということもあったが、それ以上に関の守備力に当の宇津木監督が不安を持っていたからに他ならない。走攻については世界トップクラスでも、やはり守りに不安のある野手を選ぶのは正直ファンも不安になる(もちろん関の守備も成長しただろうが)。
 それでもこの二人の実力は代表に選びたいし相応しいものがある。しかし、である。個人的にやはり言いたいのは、確かに岩渕や藤野の経験と人柄は素晴らしいし、関の足とバッティングも素晴らしいが、長崎のバッティングはそれら全てを超越した異次元の可能性を秘めているのではないだろうか。
 確かに打者のタイプ的には山田、河野タイプであり小技を駆使するタイプではないが、あのバッティングは小技を全く必要としないくらいに全てを超越したものがある。若い選手の将来性を加味して国際大会に若手を試験的に選ぶのは個人的には反対だが、長崎にはそういう試験的な意味ではなく、確信的な意味合いを含めて日本の将来を託し国際大会をもっともっと経験させた方が良いと思っている。それぐらい彼女のバッティングには無限の可能性が秘められているような気がしてならない。
 では結論として、僕が岩渕、関のどちらかを外して長崎にすべきだと主張するのかと言えば決してそれだけを主張しているのではない。打線のスパイスとして関を入れるという選択肢は大いにあると思うのだが、もしその選択肢を排除しないのであれば、非常に大胆かつ極端な意見だが山田を外してでも長崎を入れるべきではなかっただろうかと個人的には思っている。
 ともかく、今年の選考において長崎を候補選手にすら入れないという選択肢だけは正直理解できないし全く予想していなかった。
 たとえば内野手に一人大学生が選ばれているが、そこを削ってでも長崎を入れなければならなかったのではないだろうか。その選ばれた大学生内野手や投手に関してもいくつか問題点があり、いろいろ噂を統合するとまたしても某チーム優遇のきな臭い事態に陥っていそうなのだが、そのことは次の記事にまわしたい。

<昨年の決勝トーナメントで上野から二塁打を放つ長崎望未。日本ソフトボール界歴代最高の打者になる可能性を秘める長崎だが、日本代表候補にすら選出されなかった>

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