【2012年日本代表候補選手の選考について~その2(投手,捕手,内野手)】

<世界選手権について>
 まずは今年第13回を迎える世界選手権のおさらいを。
 1965年に始まった世界選手権はそもそも4年に一度の間隔で開催される世界最強を決める大会であった。五輪年と2年ずらした開催であったことから当初から五輪に採用されることを意識しての開催だったように思われるが、それでも長らく世界最強を決める唯一の大会であったことに違いはない。1996年にソフトボールが五輪に採用されたことから、五輪の間の2年間の最強国を決める大会に位置づけられるようになった。
 2008年をもって五輪からソフトボールが除外になったのに伴い、世界選手権が逆に間隔を狭めて2年に一度の開催に増やされたが、それも将来的に五輪で再び開催されることを想定してのものと思われる。
 ともかく、五輪不採用になった今、この2年に一度の世界選手権をソフトボール最高峰の戦いとして盛り上げていくのが世界のソフトボール関係者(ファンを含め)の責務とではないだろうか。余談ではあるが僕がソフトボールと並んで好きなスポーツであるノルディックのスキージャンプの世界では、世界選手権は2年に一度開催されている。しかも毎年行われている「ジャンプ週間」や、2年に1度の「世界選手権」での優勝の方が、4年に一度しか行われないオリンピックでの優勝よりも価値が高いものとして受け止められている。ソフトボールもたとえ五輪に採用されなくても、世界選手権が世界最高の大会として位置づけられるようになってほしいと強く思っている。


<個人的にとても嬉しい初選出>
 さて本題に移ろう。
 今回の選出で、最初に見て真っ先に目に飛び込んできた名前が「栗田美穂」。一昨年のシーズンからようやく何かを掴み、昨年の春に見たときは見違えるような投手に成長していた。2年間くらいリーグである程度結果を残したら、必然的に日本代表は見えてくるだろうと思っていたが、昨年1年間の大活躍で一気に代表投手に上り詰めた。山根佐由里と並び、是非とも人気投手になって欲しいと思っているが、その素材、可能性は十分。少なくともAKBなんとかより百倍可愛い。
 投手としてもう一人嬉しかったのが太陽誘電の藤田倭。誘電で1年後輩の好投手、森真里奈と切磋琢磨し同じように成長してきた投手で、この二人は実力的に甲乙付けがたい。チーム事情を考慮すると誘電から二人持って行くことは出来ないので、今回は森が選ばれなかったのだろうが、そういう事情を考えると藤田の最大のライバルが森だろう。どちらかが選ばれればどちらかが落ちてしまうトレードオフの関係だからだ。しかしこの若い二人が代表選考レベルという高い競争を常に続けていけば、誘電は本当に強いチームになる。
 そして捕手であるが、ここで眞鍋幸維を選んでくれているところが実に素晴らしい。谷川まきが引退したことからもう一人捕手の補充が必要で、デンソーの伊藤綾香が選ばれても良かったのかも知れないが、しかしこの眞鍋のフットワークの軽い守備と思い切りの良いバッティングは日本代表に相応しいものがある。峰や渡邉が元気なうちはまだ余り出番は回ってこないかも知れないが、彼女たちが引退したあとはこの眞鍋が代表の中心捕手になるのは間違いない。

<おおむね納得の出来る選手選考>
 今回はほぼ納得できる選考であったのだが、それでも「おおむね」と書いた理由は、大学生が2人選ばれていることと、上野の復帰。
 もちろん上野は昨年、代表監督に宇津木麗華さんが就任するのを見越して既に代表復帰していたので今更言うことではないのだが。ただ五輪からソフトボールがなくなり、世界選手権を最高の舞台にしないといけない状況にあった2010年ベネズエラでの世界選手権を、「代表監督が気に入らない」という理由で辞退したのも事実。その上野という絶対的エース不在で苦しかった世界選手権では、代表主将の内藤恵美を中心にチームがまとまり、染谷美佳と山根佐由里が活躍して見事準優勝を成し遂げたのだ。
 そういう事情からも、今後も上野抜きで、日本が誇る技巧派投手と世界一の守備力で少ない得点を守り抜いてアメリカを破り、アメリカの世界選手権連覇を阻止して欲しいという個人的な希望が強かった。
 しかしまあ…、世界で最高レベルの投手である上野を選ばないわけにも、いかんですわなぁ(笑)つくづくあの代表ボイコットが残念でならないのだが、こうなったらその分も取り返してもらって、今年こそは是非とも7連覇中のアメリカの優勝を阻止する原動力になってもらいたい。

 さて大学生二人のうち、平原は昨年もフル代表に選ばれイマイチ成績はパッとしなかったがなぜか今年も選出された。ただ素材的には素晴らしいので東女体大の大先輩、元祖現役女子大生日本代表美人投手でもあった増淵まり子のような投手になってくれることを願いたい。
 内野手の相馬は、恐らく何度もプレーは見たことはあるはずなのだが、全く印象に残っていなかった。ただ超名門の厚木商から日体大へと進み、高校、大学を通して名将利根川監督のソフトボールを叩き込まれている選手なので良い選手なのは間違いないだろう。遊撃手ということなので、ヤクルトの宮本のような選手だと代表でもなかなか面白い存在になるかも知れない。
 ただやっぱりこの二人、実業団選手を差し置いて大学生から選ぶだけの選手かどうかには少々疑問が残る。投手の平原は、代表候補に他に安福智のように仕事の出来てタイプの違う投手がいるのだが、藤原麻起子や宮本直美が現役引退し候補が減ったのでまだわかる。ただ相馬という選手を、たとえばソフトウェアの林佑季を外してまで選ぶほどなのかなと思う。これらの疑問を払拭してくれるくらいの活躍を期待したいし、しっかりと見てみたい。
 それにしてもこの二人、来年はどこのチームに進むんだろうか。


<投手の代表候補選手について>
・選出選手
 上野由岐子(ルネサス高崎)
 栗田美穂(豊田自動織機)
 染谷美佳(デンソー)
 平原かすみ(東京女子体育大)
 藤田倭(太陽誘電)
 山根佐由里(トヨタ自動車)
・主な選出漏れ選手
 安福智(シオノギ製薬)
 森真里奈(太陽誘電)
 井俣茉莉(大鵬薬品)
 西村瑞紀(日立マクセル)
 ※この中に藤原麻起子の名前がないのが実に寂しいが、逆にしっかりと染谷の名前が残っているのが嬉しい。困ったときに常にチームを助けてくれるのが染谷。若い投手をまとめ上げ、また世界選手権で大活躍してくれるだろう。前回の世界選手権での日本代表のMVPは間違いなくこの染谷だった。

<捕手の代表候補選手について>
・選出選手
 峰幸代(ルネサス高崎)
 眞鍋幸維(日立ソフトウェア)
 渡邉華月(トヨタ自動車)
・主な選出漏れ選手
 伊藤綾香(デンソー)
 橋元春華(シオノギ製薬)
 ※伊藤はまたしても選出されなかったが、腐らず努力してリーグで記録を作るくらいの打撃成績を残して見返して欲しい。

<内野手の代表候補選手について>
・選出選手
 大久保美紗(ルネサス高崎)
 坂元令奈(トヨタ自動車)
 鈴木美加(トヨタ自動車)
 相馬満利(日本体育大)
 西山麗(日立ソフトウェア)
 濱本静代(日立ソフトウェア)
 古田真輝(豊田自動織機)
 松本尚子(デンソー)
・主な選出漏れ選手
 林佑季(日立ソフトウェア)
 市口侑果(ルネサス高崎)
 渥美万奈(トヨタ自動車)

 ※意外だったが西山がまた代表に復帰してくれた。ショート西山、セカンド松本の魅せる二遊間は想像するだけでワクワクする。
 ※北京五輪時のセカンドの三科真澄のような存在になって欲しいと願ってきた鈴木も、そろそろ代表セカンドの常連となってきて三科に近づいてきた感がある。
 ※宇津木監督になってどうなるかなと思っていたのが実は坂元、古田、松本という辺りの選手だが、ソフトボールを知り尽くしているこの3人を毎回外さずしっかり代表に選んでくれるのが嬉しい。
 ※ファースト専門の大久保と濱本は代表内での熾烈なポジション争になるだろうか。
 ※大学生を除くと、選ばれた内野手のメンツも徐々にこなれてきて、何となく見る側からしてもそれぞれの選手が「日本代表」という板に付いてきた感じがする。やっぱり「日本代表」という箔は、それぞれの選手が最初から持っているものではなく、選ばれ続けることによって自然と身につくもの。そういうものがようやく見えるようになってきた。


<嬉しい初選出、の3人の新人の年の写真。栗田の写真は打者としてリーグに初出場した刈谷大会のもの。藤田と眞鍋は熊野オープンの写真>

<栗田美穂(豊田自動織機)>

<藤田倭(太陽誘電)>

<眞鍋幸維(日立ソフトウェア)>

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