【2012年第3節刈谷大会2日目第2試合:織機 vs. デンソー~織機の表に出ないミス続出でデンソーが快勝】

豊田織機 010 0000…1-4-2
デンソー 400 020x…6-6-0

豊田自動織機:●ダニエル・ローリー、栗田美穂-メーガン・ウィリス
デンソー:○近藤光、ジョーダン・テーラー-伊藤綾香
(二):メーガン・ウィリス(織)

【テーブルスコア】



【戦評】

 昨年まで監督をしていた永吉慎一さんが「嫌らしく点を取って、試合が終わって気づいたら勝っているようなチームを作りたい」とソフトボールマガジン誌上で言っていた。この日はそういう試合にするにはうってつけの展開だったが、結果はそれとは正反対だった。
 前日に戸田中相手に1点差の辛勝。その切羽詰まった雰囲気を持ち越したまま試合に入り、初回から「これ以上1点もやれない」という余裕のない守りをし、攻撃では「一気に大量点で追いつきひっくり返さないと」という焦った攻め方でチャンスを潰してしまった。悔しいが、これと同じ安打、被安打でも、ルネサスなら4-3で勝つような結果に持って行けるような気がする。

 問題の場面は1回と2回。
 1回表の守り。不運な内野安打もあり無死満塁とされるが二者を抑えてなんとかツーアウト。しかし続く今泉が初球をセンターへクリーンヒットし、楽々2点が入ったのだが、センターの狩野が無理にホームへ返球しショートバウンドになったボールをウィリスが弾いたことで走者が二三塁に進んでしまう。この狩野の返球がなければ一二塁のままで、続く松本の内野安打で失点することもなかったのだが、二三塁に進めてしまったせいで内野安打がタイムリーとなってしまった。
 さらにその内野安打の場面、セカンドの吉良がダイビングキャッチで止めたのはいいが、目クラ滅法な一塁送球が悪送球になるエラーとなり二塁走者まで生還。3点目で止められたはずの好プレーが、無茶な送球で4点目を失うミスになってしまった。
 送球のミスはこれに加えてさらに二つある。
 6回に2失点した場面でも、1死一塁からのセンター前で三塁に走った走者を刺すために狩野がサードへ送球。その間に打った走者にまで二塁に進まれ、結果的に次のポテンヒットで2点を失っている。さらにその場面では、得点にはならなかったがポテンヒットを抑えたレフトの本田が絶対に間に合わないホームへ返球し、打者走者に再び二塁にまで走られている。
 これら4つのプレーは全てが送球の判断にかかわる防げるミス。確かにギリギリのプレーで難しい判断なのだが、やはり初回から「1点もやれない」というような余裕のないプレーを続けてしまったのが原因だろう。これらのミスがなければ、1試合3失点くらいで止められた展開なのだ。
 初回の今泉のタイムリーと松本のタイムリーの2本に関しては、二遊間の守備位置にも疑問が残った。とくに今泉のセンター前の時は、ショートの高坂が2死満塁となっているにも関わらず走路より前の三遊間よりという極端に二遊間をあけた前進守備。冷静に考えて近いところでアウトにできる展開であの前進守備はなかった。吉良も同じようにやや二遊間を開けており、守備位置の取り方についてはもう一度考え直す必要があるかもしれない。

 攻撃では2回表。中森、ウィリスの連打で無死二三塁とすると、6番の小柳がライトの前にポテンヒット。0-4という点差と2回ということを考えると、ライトが後逸でもしない限り二塁走者は三塁ストップ、絶対に無理をしてはいけない場面だった。
 二走の金澤が三塁ベースを蹴るところに立っていた今泉に走路を妨害され、ぶつかるか突き飛ばせばいいものを高卒1年目ではそれも遠慮してできず、大きく迂回した分かなり遅れてしまったという直接的な理由も確かにあるが、しかしやっぱりあの場面はそれがなくても止めなければいけなかった。松岡恵美コーチをしてまで「ここでもっと点を取っておかないといつ取れるか…」という焦りが判断ミスを招いてしまったのだろう。そして金澤のアウトで1死二塁となったあとに、古田の平凡なショートフライで二走の小柳が飛び出すというボーンヘッドも続く。小柳はよくああいう凡ミスをしてしまうのだが、しかし今回はそれ以上にチームの焦りが伝わってしまったようなチーム全体のミスのような気がする。
 攻撃面では4回表。無死一二塁から1番本田、2番狩野、3番国吉が三人ともセンターフライというミスもあった。2死からの国吉の打席は仕方がないが、本田と狩野なら内野ゴロ二つでも1点取れている場面。そういうことがやろうと思えば出来る打者だけに、はたしてチームとしてどこまで攻撃面での作戦が徹底できていたかが疑問だ。

 2点を失っても3点目は止める。3点目を失っても4点目は絶対にやらない。タイムリーで2点取りたい場面、長打で一気に追いつきたい場面でも、点差や回を考え常に頭を冷やし冷静な判断をし、確率の高いプレーを着実に選択していけば、そういうプレーの総和として試合が終わった時に「あれ、どういうわけか織機が勝っている…」という結果に持っていけるのではないだろうか。この日の試合も、点差上は「デンソーの快勝」なのだが、永吉監督が目指していた「結果的に勝ってしまう試合」に出来る要素は十分にあった。

 狩野にしろ本田にしろ吉良にしろ、実に真面目すぎる。本田なんかあんなに普段いい加減なくせに試合になると本当に真面目。だから常にいっぱいのプレーをしてしまう。そんな時こそお手本にできる選手が白井沙織なのだ。白井なら初回の満塁で今泉にタイムリーを打たれた場面でも、ボールを捕った瞬間に「はいもう駄目~間っに合わない。2点捕られちった。」とか思いながらゆっくりボールを持って内野に走ってきて、最後は歩いてタイムをかけピッチャーズサークルまで行き、ローリーにボールを手渡すと背中を向け、空を見上げ鼻唄の一つでも歌いながら守備位置に戻ったに違いない。もちろん勝手な想像だが。
 何を書いているんだ私は。
 ともあれ、ローリーがあんな乱調だから攻守に焦る気持ちは大いにわかるが、ローリーもあれで結果的には十分抑えてくれる投手。野手が同じように焦っていては逆に足を引っ張ってしまうことになりかねない。常に冷静に判断し、試合巧者と呼ばれていたころの織機の試合を早く再び見せてほしい。

<1回裏、ダイビングキャッチしたまではファインプレーだったのだが…。吉良の送球時にはすでに二走をホームに回しているのがわかる。織機は守りの癖を読まれている>

<2回表、二走金澤が回るタイミングもかなり厳しいが、ベース付近で今泉が走路を妨害。今年のデンソーはスタッフが代わりこういうプレーをするようになった。ただこれがルネサスやソフトウェアの選手なら“正当な権利”として今泉に激突し「走塁妨害」を奪っていただろう。あるいは突き飛ばして今泉の顔を踏んづけて生還したかもしれない。それくらいされても仕方がないポジション取り。織機も仲の良いデンソー相手とはいえ、スタッフの替わった今年はそういうプレーが必要ではないか。>


【スタメン・豊田自動織機】
1(7):本田小百合
2(8):狩野亜由美
3(9):国吉早乃花
4(DP):中森菜摘
5(2):メーガン・ウィリス
6(3):小柳薫
7(5):古田真輝
8(1):ダニエル・ローリー
9(4):吉良真利菜
FP(6):高坂香月

【スタメン・デンソー】
1(8):増山由梨
2(DP):中岡理美
3(7):永吉理恵
4(9):江口未来子
4(2):伊藤綾香
6(4):今泉早智
7(4):松本尚子
8(3):狩野香寿美
9(6):倉成真子
FP(1):近藤光


【1回表:織機~0点】
本田:中飛
狩野:遊飛
国吉:二ゴロ

【1回裏:デンソー4点】
増山:左前打
中岡:遊内安(高坂が二塁に投げたため公式記録はフィルダースチョイス、でもいくら中岡の足でも一塁投げてもセーフだったような気がする)
永吉:四球
江口:二ゴロ本封
伊藤:見三振
今泉:中前2点適時打(初球)
 ※狩野からの本塁へのダイレクト返球がショートバウンド、ウィリスが弾くのを見て走者がそれぞれ進塁(センター狩野の送球エラー)
松本:二適時内安
 ※一二塁間を詰めていた吉良がセンターよりにダイビングキャッチ。しかし止めたのはいいが一塁へ悪送球に。これで三塁をまわっていた二塁走者も生還(セカンド吉良のタイムリーエラー)
狩野:二ゴロ

【2回表:織機~1点】
中森:遊内安
 ※代走に洲鎌夏子
ウィリス:左越二塁打
 ※二塁代走に金澤美優
小柳:右前適時打(ポテン)
 ※二塁からホームを狙った金澤、三塁を回る時に今泉に邪魔されたのと、タイミング的にも無理だったことで余裕でタッチアウトに
 ※小柳は二進
古田:遊小飛併殺
 ※目の前に上がった打球だったが二走の小柳が飛び出して併殺打

【2回裏:デンソー0点】
倉成:四球
増山:遊ゴロ
中岡:四球
永吉:二ゴロ失
江口:空三振
伊藤:空三振

【3回表:織機~0点】
ローリー:四球
 ※代走に中村白
吉良:投犠打野選
本田:中飛
狩野:中飛
国吉:中飛

【3回裏:デンソー0点】
今泉:遊飛
松本:四球
狩野:一ゴロ二進
倉成:死球(ひじにかする)
増山:投ゴロ

【4回表:織機~0点】
 ※デンソーの投手交代、近藤→ジョーダン・テーラー
 ※ショート交代、倉成→野木あや
中森:左前打
ウィリス:二ゴロ二封
 ※ショート野木の送球が中森の顔面を直撃
小柳:空振り三振
古田:見逃し三振

【4回裏:デンソー0点】
中岡:空振り三振
永吉:二ゴロ
江口:中飛

【5回表:織機~0点】
ローリー:見逃し三振
吉良:四球
本田:二ゴロ
狩野:三飛

【5回裏:デンソー2点】
 ※投手交代、ローリー→栗田美穂
 ※栗田がFP、投手のローリーがOPO、DPの中森がショートに
伊藤:遊邪飛
今泉:死球
松本:中前打
 ※今泉が三塁へ、狩野から三塁への送球の間に松本も二塁へ
狩野:左前2点適時打
 ※どん詰まりのポテンヒット、送球の間に二塁へ
野木:空振り三振
増山:遊ゴロ

【6回表:織機~0点】
国吉:二飛
中森:一ゴロ
ウィリス:左飛

【6回裏:デンソー0点】
中岡:空振り三振
PH松木瑛理:左邪飛
江口:三直

【7回表:織機~0点】
小柳:二ゴロ
PH池原恵:空振り三振
PH横野涼:空振り三振

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