【2012年日本リーグ入替戦前特集~「シオノギ製薬 vs. ドリーム☆ワールド」展望】

【過去の入替戦の結果】

 まずは過去5年間の入替戦の結果を見てみる。左側が1部、右側が2部のチームである。

<2007年>
戸田中央総合病院(7-2)大鵬薬品
戸田中央総合病院(8-3)大鵬薬品

<2008年>
シオノギ製薬(8-0)靜甲
シオノギ製薬(2x-1)靜甲

<2009年>
Honda(10-1)靜甲
Honda(t5-4)靜甲

<2010年>
伊予銀行(3-5)日立マクセル
伊予銀行(1-4)日立マクセル

<2011年>
大鵬薬品(3-0)ペヤング
大鵬薬品(4-3)ペヤング

 過去5年間はいずれも2試合で終わっており3試合目までもつれこんだ年はなく、ある程度実力に差があったことを表している。

 このうち2部のチームが勝利したのは2010年の日立マクセルの一度だけだが、この年は中国代表の呂偉投手がすでに2部のマクセルに加入しており、ライバル靜甲に2部POで敗れ入替戦に回っていたが、2部でありながらすでに1部チームと同等の戦力があった。
 いわばその2010年の入替戦は例外的なもので、過去5年間は全て1部チームが実力差を見せつけて勝利していると言っても過言ではない。

 今年のD☆Wのように「本当」の意味での2部チームが勝利して1部昇格を決めたのは2006年まで遡る。
 その年は2部2位の靜甲が1部11位の大鵬薬品相手に大熱戦。1試合目を落としたものの2試合目で0-2から逆転勝利すると、3試合目も延長タイブレイカー9回の死闘をちっちゃなエース東瑠璃の熱投で勝利し初の昇格を決めた。
 同じ静岡県のチームとして、果たしてD☆Wは2006年の靜甲以来の「2部」チーム入替戦勝利がなるか。

【シオノギとD☆W、ペヤングについて】
 シオノギとD☆W、この両チームは公式戦はおろか練習試合ですら対戦したことはないのではないだろうか?
 トヨタカップなどで同じ会場にはなっていたが直接の対戦はなかったような気がする。練習試合をする機会もなかったはずだ。
 そういう意味では全く想像が出来ない楽しみな対戦ではあるのだが、実力的にはやはりシオノギが頭一つ上回っている気がする。

 2部ではペヤングがセクションを2位通過した以上、本来なら最高でも「入替戦出場」だったわけで、東芝がPOを辞退か、あるいはドリームに負けた場合にはシオノギはペヤングとの対戦だった。
 東芝が優勝して1部昇格を辞退という状況により、シオノギの対戦相手がドリームに変わったようなものだが、これはシオノギにとっても幸運だったように思う。
 ペヤングはチームは若いが選手は経験豊富なベテラン揃いで、しかも昨年も入替戦に出場し大鵬相手に好ゲームを見せた。若い選手の多いシオノギにとっては非常にやりにくい相手だったように思う。
 一方のD☆Wはプレーオフ、天城での試合になるとなぜか無類の弱さを発揮する(笑)
 2010年、2012年とPOに出場し4連敗。小野奈津子、伊藤綾香がいた2010年でさえ1勝もできなかった。

 投手陣を見ても小長井、菊池遥と好投手が2人揃っているペヤングに比べ、苦しい時の熊澤頼みのD☆Wはやはり少ししんどい。
 1部では貧打のイメージの強いシオノギ打線だが、実際にはホームラン王の三宅をはじめ、杉本、橋元、鹿出など長打を打てる打者も多い。
 ペヤングの小長井がはまった時はシオノギの打線もてこずったかもしれないが、そうでなければ普通に打って点を取りそうだ。

 打線でも、大塚や岩本、大島など長打の打てる打者の多いペヤングに対し、D☆Wでは右の強打者も少ないし谷口の長打さえ注意すればいい。
 おそらくシオノギの安福なら守備のミスなどがなければ危なげなく2試合完封するような気がする。
 今年の安福は球の走りもよく以前の迫力が戻ってきており、実力的にはジャパンに選ばれてもおかしくないような状態だった。
 チームも最下位には沈んだが、全チームと1点を争うような接戦を続けており、投手を含めた守りではリーグトップクラスであることは間違いない。

【D☆Wが勝利するには】
 以上のようにシオノギがかなりの確率で勝利するだろうと思われるが、しかしD☆Wとてチャンスがないわけではない。
 先週の練習試合で野手フルメンバーの織機を相手に勝利したように選手の状態も良い。
 シオノギとしてはペヤング相手の方が嫌だと書いたが、実際にはD☆Wはそのペヤングよりリーグ戦では上位だったのだ。チーム全体の総合力は確固たるものがある。

 何より「勝たねばならない」プレッシャーに関しては1部のシオノギの方に遥かに重圧がかかる。
 出た人にしかわからない、と言われるように、入替戦の舞台での1部チームの選手には非常に重苦しい、二度と経験したくないような嫌な緊張感、プレッシャーがあるようだ。
 シオノギでは安福、橋元、杉本など主力に4年前のその経験があるのだが、若い内外野の野手陣には初めての経験になる。そのプレッシャーに押しつぶされないかどうか。
 加えてトラブル続出の天城小屋(ドーム)なのも予想を覆す要素になる。かつてはPOで伊予銀行が川野の大ホームランが飛びすぎて天井に当たり二塁打と大誤審されて敗れたこともあった。安福が打ち取った内野フライが全部天井に当たってファールになりそこから崩れないとも限らない。ドームの屋根という外敵に邪魔をされる可能性もあるわけだ。

 D☆Wはもう「相手はトヨタやルネサス打線も抑える安福だし、どうせ負けるんだから」と半ば諦めて開き直って戦った方がいい。
 とにかく変なプレッシャーは持たないこと。
 「入替戦」における1部チームに重くのしかかるプレッシャーを逆に利用してのびのび試合が出来れば、ひょっとするとなんてことも大いにあり得る。

【捕手が活躍するPО】
 最後に蛇足ではあるが注目選手について。
 前回、シオノギが1部残留を決めた2008年の入替戦では捕手の橋元が打つ方で大活躍をした。
 去年残留を決めた大鵬薬品も、なんと捕手の増井が決勝タイムリーを放つなど打つ方で大活躍した。
 かつての2部PОではD☆Wの谷口が呂投手から同点弾を放ったし、去年の1部PОでトヨタの渡邊が上野から逆転サヨナラ弾を放ったのも記憶に新しい。
 そういえば2006年に1部PО初の優勝サヨナラ弾を放ったのも織機の捕手の前川だった。とにかくPОでは捕手が打つ方で印象に残る活躍をする。
 そういう意味でやはり今年も橋元と谷口の両捕手の打撃には注目したい。谷口はDPでの出場になるだろうが、この打者の結果がD☆Wのカギを握っているだろう。

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