【2012年日本リーグ決勝トーナメント前特集】

【第1試合~2012年11月10日(土)・10時30分(京都西京極球場)】
 ※勝てば翌日の決勝戦に、負ければ3位4位対決の勝者との敗者復活戦へ

<トヨタ自動車(1位)vs. ルネサスエレクトロニクス高崎(2位)>
 ここ数年のライバル対決が、しかも日本リーグでは次元の違う戦いを続けている2チームが、今年も当然のように第1試合で対戦する。
 両チームともに目指すのは優勝以外にない。そしてこの第1戦は落としてもまだ取り返すのつく戦い。そこでどう最終の決勝戦を見越した戦い方をするのかが興味深い。この2チームは最初からそこまでの肚の探り合いになる。

 両チームの戦い方としては、ここまではルネサスは上野を中心とした守りを主にし、攻撃ではバントを絡めた徹底した小技重視の攻め方を身上としてきた。
 逆にトヨタはアボットを絶対的な投手とおきながらも、攻撃では1点を取りに行くのではなく、個々の打者の力の総体として個を重視した攻め方をしてきた。
 もちろんルネサスといえど、ここぞという時の峰(やかつての乾、山本など)の長打が試合を決めてきたし、トヨタにしても小野のチームバッティングが戦術上重要な価値を持ってきたのは確かだ。
 しかし両チームの「ルネサスはチーム全体で統率された攻撃」、「トヨタは個々の打者の能力の総体としての攻撃」というのはずっと変わってない。

 そもそもその攻撃スタイルは、根本的なチームの成立基盤上、変えようがない。

 ルネサスはいざとなれば上野がリーグ戦の全22試合を投げられる。ゆえに徹底的に守りを固め、打線ではとにかく1点さえ取ればいい、という攻撃に特化し徹底できる。
 一方のトヨタでは外国人のアボットがシーズンの6割しか投げられない以上、打線はここぞという時には爆発して大量点を取って打ち勝てる力が求められる。
 そういう前提でチーム作りをしている以上、いざ上野を相手にした時だけ、全打者にバントを徹底させるような攻撃はしづらい部分があるのだ。

 この2チームを歴史的に喩えるなら、ルネサスは未熟な人たちでも徹底して鍛え上げて統率させ一つの方向に向かって訓練させる言わば近代陸軍みたいなもので、その走りでもある「奇兵隊」が当てはまるだろう。
 一方のトヨタの、個々の打者の力を最大限尊重するというのは最後まで薩摩兵児という武士の魂が残っていた薩摩藩の西郷軍みたいなものか。トヨタの監督が鹿児島出身の福田さんというもの面白い。
 この2つの軍が戦うと必然的には近代軍が勝つことになるのだが、ここぞという時には大どんでん返しが起きるのもまたこの二つの全く違いタイプのチームが戦うからこそでもある。
 そういう意味で見てもやっぱりこの2チーム、チームカラーが正反対なゆえに見ていて本当に面白い。

【第2試合2012年11月10日(土)・13時30分(京都西京極球場)】
<デンソー(3位)vs. 豊田自動織機(4位)>
 ※勝てば翌日の1位2位対決の敗者との決勝進出をかけた戦いに、負ければ4位が決定し刈谷に帰ってオモニで焼き肉打ち上げかあるいは串吉で呑んだくれ

こんなん書いたら織機の選手に「負けた方が楽しそう」とか思われそう。(笑)

 本社も練習場もすぐ近くにある刈谷のライバルチームが決勝トーナメントで4年ぶりに対決する。

 監督コーチがガラッと変わり、フルスイングに積極的な走塁を身上とした攻撃が大成功したデンソーが、トヨタやルネサスに匹敵するチーム力をつけてきたのが今年のリーグでの一つの大きな話題だった。
 ただ自分も含め刈谷や豊田近辺で起臥徘徊する見た目怪しいが心からソフトボールを愛するファンの多くは「前監督の望月さんが必死になって集めてきた選手達がようやく花開いた!」という、とことんひねくれた評価を決して捨てはしない。ありがとう望月さん(笑)

 そのデンソーと戦うのは日本リーグきっての古豪である豊田自動織機。この2チームの対戦は2008年以来二度目となる。
 4年前の2008年と言えばデンソーの監督がその望月さんで、織機の監督は現ジャパンコーチのルーシー・カサレスさんだった。デンソーの主力には投手に増淵まり子いて打線の主軸は東美幸。そして何より織機のエースが現役最終年のミッシェル・スミスだったのだ。たかだか4年前なのにこれだけ引退した名選手の名前が揃っていると十何年も前のように聞こえてしまう。
 しかもその試合で織機の逆転勝利の立役者となった桝本亜希と小森由香の二人なんか、今や結婚して苗字がかわったどころか、もうそろそろお母さんに。ほんとたった4年なのに隔世の感が否めない。
 ただその「隔世の感」を決定づけてるのはやっぱりデンソーチームの「変革」のような気がする。
 去年までは良い意味でも悪い意味でもこの2チームは本当に仲が良く、それがデンソーにとっては悪い方に働いてついつい織機に対しては「遠慮」のような気分が働いていたような気がする。太陽誘電がルネサスに対する気持ちのようなものか(知らんけどw)。

 ただスタッフも替わり選手も入れ替わり、織機とデンソーのチームの関係性も微妙に変わった。もう織機にどこか遠慮するデンソーチームはいない。
 だからこそ明日の試合は本当に面白い。
 望月さんが率いた2008年も、デンソーは非常にまとまった強いチームで、ミッシェルのいた織機にリーグ戦で2勝した。しながらも、決勝トーナメントでは後半逆転されて敗戦している。
 今年も同じような展開でここまで来た。
 決勝トーナメント2日目に残ったことが一度もないデンソー。さあデンソーはその壁を破れるか。
 それを乗り越える相手がまたしても織機と言うのがとても興味深い。デンソーはとにかく、織機を乗り越えていかないといけない。

 織機としては今年は「ほとんど諦めかけていた4強」を手に入れたことが何よりの強みだ。
 今までは「出るのは当たり前、初日で負けられない」、というプレッシャーがあった。
 今年はとにかく楽な気分で決勝トーナメントに望める。そんな時に不思議な力が宿るのがこのチーム。戦力的には4番目だが、個人的には本気で優勝を夢見ている。

 そして個人的に一番嬉しいのは「今年、2部の伊予銀行から移籍してきた中森菜摘を決勝トーナメントの舞台で見られる」こと。これでようやく、送り出してくれた伊予銀行のみなさんにも言い訳がたつような気がする。
 とにかく日本リーグの名選手には一人で多くあの舞台に立って欲しいと思っている。
 さあ来年は佐々木瞳の番だな。

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