【2012年、投手に関するデータ解析】

【2009年の解析】
【2010~2011年の解析】

 今年もまた野手に負担をかけない投手としての評価をしてみようと思います(データがたまったらそろそろもう一段階掘り下げたいのですが)。


 使用したデータは前回までと同じく投手の能力を表す、奪三振、与四球、被打率で、奪三振と与四球については「奪三振(K)/与四球(BB)」の比率で表した。これは投手の根本的な能力を表すのに有効な数値であることが経験的に知られている。
 また「被打率」は野手の守備力に影響される部分も大きいが、単純に考えてヒットを打たれないというのは投手の能力が高いことの証明なのも事実。
 そして前回も示したようにソフトボールでは「K/BB比」と「被打率」の間に有意な相関が見られるので、この二つの数値で用いた散布図で投手の能力を視覚的に表すことができる。

 以下にその3つのデータから得られた散布図と数値を図表で示す。

<図.「K(三振)/BB(四球)比」と「被打率」の相関図>

<表.「K(三振)/BB(四球)比」と「被打率」の数値。カッコ内は順位>

【コメント】
 まず最初に、やはりアボットが別格なのがわかる。優勝は運も大きいとはいえ、ミッシェル・スミスが出来なかった3連覇を成し遂げるだけのものはあったのだろう。
 デンソーのテーラーが上野とがほぼ同じ位置にくるのも大きい。テーラーがいる間にデンソーは優勝の夢を見てもいい。
 戸田中の李、Hondaのメロー、織機のローリーという、今年結果を出した外国人3投手もほぼ同じところに位置し数字は嘘をつかないのがわかる。
 そしてこの3外国人投手と匹敵するのがトヨタ自動車の山根佐由里。日本人の好投手の中でもワンランク上に位置するのは間違いない。

 復活した大鵬薬品の江本奈穂、ブレイクしかけてきたデンソーの重藤恵理佳はグラフ上は左上に位置し今年の活躍を裏づけている。
 ルネサスの中野花菜は投球回数が少ないので参考的だが、このグラフでは呂よりも左上で、李やメローと近いところに位置することから潜在能力の高さが伺える。
 栗田美穂や藤田倭などはジャパンに選ばれた好投手だが、今年は全体的な成績が落ちていたこともこの数値から見てとれる。

 表に関しては被打率の低い順に並べてあるが、中には数人、被打率とK/BB比に相関がまりみられない投手もいる。
 赤印をつけたうちの4人で信長香菜、金尾和美に江本、重藤がそうで、しかもその4人とも今年はいい活躍をした投手である。
 このグラフはあくまでも3つの数値に基づく2つの指標だけで示したグラフなので、簡単ではあるが簡単すぎる部分もある。この4人のK/BB値の良さは三振を取るというより「四球を出さないため」であって、これらの投手の好投を見るに、ヒットを打たれない、三振を取る、ということ以上に「四球を出さない」ということが好投する何よりの条件でもあるような気がする。
 その部分に関して、いつか過去のデータから確かめてみたい。

 ただ赤印を付けた選手のうちのただ一人、戸田中央総合病院の田家に関してだけは意味がわからない。
 被打率は高いわK/BBは高いわ、つまりよくヒットは打たれるし三振も取れずにノーコンであるにも関わらず、ルネサス戦完封や織機戦での好投のように時にトンデモない好投をしてしまう。
 この投手が例外的なのか、何か秘密があるのかよくわからないが好投する不思議な投手なのだ。
 そういう意味では山中しほや安福智も同じように数値は低いが好投の印象が強い。やはり左というのはそれだけ大きな強みなのだろうか。打線の中で数人、絶対に抑えられる左打者がいればいくら打たれようが四球を出そうが点は取られない、というのも考えられる。
 いろんな意味で、2013年は田家のピッチングにも大いに注目してみたい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です