【2012年飛躍した選手~ソフトボール日本リーグ1部】

 今年も独断ではありますが「日本リーグ飛躍した選手」をなんとか年内に書くことができました。
 2012年は特に思い入れの深い選手がみんな飛躍してくれたおかげで実に楽しく記事にすることができました。やっぱりこういった選手たちが一気に伸びてくれるととても嬉しいです。
 また2013年もソフトボール日本リーグを応援していきましょう。
 ではみなさん、良いお年を。



☆☆☆中岡理美(DP,八代東→デンソー)


(2008→2009→2010→2011→2012)
打席:0→4→11→16→63
安打:0→0→3→4→13
打点:0→0→1→1→9
本塁打:0→0→1→0→2
二塁打:0→0→1→0→4

 眠り続けてきた大砲・中岡理美が2012年にようやく開花し、5年目にして初めてレギュラーを獲得した。
 ただ今年は最初からレギュラーだったのではなく、初スタメンは3戦目のトヨタ自動車戦で、投手が左のアボットということで2番DPで起用されたはずだ。デンソーのDP枠には4番のウィギンズや期待の若手左打者の江口未来子もいることから、今年も結局はこういう左投手相手という使われ方かなと思っていたが、そこにチャンスが訪れたのが続く2節揖斐川大会。1日目のマクセル戦、ウィギンズが試合途中に怪我でもしたのだろうか。中岡がウィギンズの代打で出場するとセンター前へ貴重なタイムリーヒットを放つ。そしてある程度の信頼を勝ち取ったのが翌2日目のルネサス戦。この日もウィギンズの代わりにスタメンDPで出場すると初回の打席で上野からセンターオーバーの二塁打、次の打席でもレフト前ヒットとしっかりと結果を残した。ただそこからは再び代打出場も続いたが、信頼を確固たるものにしたのが5節函館大会での日立ソフトウェア戦。左のエース山中しほを相手に先発出場すると初回に先制のホームラン。5回にも貴重な追加点への足がかりとなる二塁打を放つなどライバル日立を破る大きな役割を果たした。
 信頼を得た後半以降は「2番に大砲を置く」という今年のデンソーのチーム方針とも合致してレギュラーを獲得し、9節の太陽誘電戦などでは2安打1本塁4打点と爆発するなど最後までしっかりとチームに貢献した。
 この中岡は新崎涼子とともにデンソーに入ってきた時からずっと期待していた右の大砲で、新崎が引退し甲賀医専のコーチになってしまってからはその分余計に応援してきた選手。それだけに今年の活躍はとても感慨深いものがあるのだが、しかし一つだけ注文が。リーグ戦9試合観戦したデンソー戦だが中岡が活躍したルネサス戦、日立ソフトウェア戦、太陽誘電戦は自分が見に行かなかった試合。特に誘電戦なんか自分が1日目だけを見た大分大会での2日目で、帰った次の日に大活躍。ということで個人的には中岡は未だ今までの中岡のまま、今年はそこまで活躍した印象がないのだ(笑)
だから是非とも、来年は僕が見に行った試合で打ってくれるように!!!

☆☆☆山中しほ(投手,岐阜女子→日立ソフトウェア)

(2010→2011→2012)
投回:19.3→33.3→123.0
勝数:1→3→10
登板:12→11→21
奪三:8→19→52

 2011年限りで藤原麻起子が抜けた日立ソフトウェアのエースピッチャーとしてフル回転し、日本リーグで今年最も多くの回を投げた山中しほ。10勝で防御率1.59という数字も十分立派なのだが、彼女の今年の活躍は4強チームとの対戦内容を見る方がよくわかる。
 ・トヨタ自動車(前半:登板なし、後半:7回2失点)
 ・ルネサス(前半:7回1失点、後半:7回1失点)
 ・デンソー(前半:5回3失点、後半:7回完封)
 ・豊田自動織機(前半:7回1死までゼロ封、後半:4回3失点)
 このうち、打たれて降板したというのは中岡にやられた前半5節のデンソー戦だけで、他は全てで勝てる試合を作った。ただ大一番となった9節の織機戦だけが4回3失点と最も悪い内容だったが、これにはかなり同情すべき点がある。
 後半に入っても4試合で3勝と順調に活躍していた山中だったが、7節が終わりリーグが小休止し全日本総合、国体と続く期間に少しでも休みがとれていたらその後の結果も違っていたように思える。しかし地元岐阜開催では休むこともままならず国体でもフル回転。さすがの山中も初のフルシーズン活躍の年で疲れがたまったせいかここら辺りから極端に状態が悪くなった。結局はそのままシーズン終盤まで立ち直れずに8節以降の7試合で6敗。地元開催の9節神奈川大会でのシオノギ戦、織機戦では、そこそこ抑えながらも走者三塁から3暴投と自滅。そして10節では佐川急便、太陽誘電打線に滅多打ちを食らうなど、とても山中とは思えないまるで別人のような投球になってしまった。
 しかし高校から入って1年目の西武ドームでの開幕の織機戦ですでにリリーフ登板を果たしていたほど最初から期待されてきた投手で、それを裏切ることなくここまでは順調にステップアップしてきた山中。今年後半戦の不調など簡単に克服し、来年は再び日立ソフトウェアを決勝トーナメントの舞台に導いてくれるだろう。

☆☆☆石濱真実(二塁手,長崎商→太陽誘電)

(2010→2011→2012)
守備機会:0→0→97
打席:0→0→45
安打:0→0→6
 純粋な「飛躍度」としては実は上の二人よりむしろこの石濱真実が今年のNo.1かもしれない。というのも1年目2年目と8試合、7試合の出場はあったが全て代走で、リーグ公式戦では1打席も1守備機会もなかったからだ。
 そんなまるで目立たなかった石濱を僕が初めて認識したのが1年目の2010年8月の星野メモリアル。試合でエラーして監督に〆られ…、じゃない注意されてベンチの隅で一人泣いているのを見たときか(笑)。坂井だったか誰か見に来たOGからも「セカンド守ってるの誰?こんな子いた?」とか言われる始末でほとんど空気みたいな存在だった。
 そもそも太陽誘電の二遊間と言えば上西晶、水谷直子という日本を代表するような名手が長年守ってきたポジションだったのだが、石濱が入った2010年くらいからがちょうど転換期。上西が2010年で引退するとセカンドのポジションが一つ空き、そこを一番手の遠山佑奈に、石濱と新人の山城みなの3人で争うところを、さらに開幕前にショートの水谷が怪我で前半戦絶望になるという緊急事態が発生したことでポジションが二つ空いた。若手にとっては願ってもない機会で石濱にもチャンスはあったのだが、しかしショートには新人の山城、セカンドには遠山がすんなりと決まることで石濱の入る余地は全くなかった。
 2011年後半は水谷が復帰したことでショート水谷、セカンド遠山で固定されたが、2012年水谷が引退し再び二遊間が空いたことでまた「セカンド遠山、ショート山城」の二遊間になるものかと、正直誘電ファンの人でも思っていたはずだ。しかしそこで開幕からセカンドのレギュラーを掴んでいたのがこの石濱だった。
 1年目は空気みたいな存在だった石濱だが、実は2年目の春先にトヨタカップでショートを守っているのを見て守備が格段に巧くなっているのにビックリした覚えがある。それでも簡単なチェンジアップに腰砕けの空振りをするバッティングを見るとまだまだ試合で使えるレベルではないなと感じたのも事実で、実際にも後輩の山城に全然及ばないレベルだった。しかし3年目には自慢の守備に磨きがかかったことと、持ち前の俊足をそこそこに生かせるくらいのバッティングを身につけたことで、見事に伝統ある太陽誘電のセカンドのレギュラーを手にすることが出来た。
 その石濱に対する期待と信頼を表す場面が開幕のデンソー戦。0-0できた5回2死満塁の場面で、ジョーダン・テーラー相手に山路監督は代打を出さずこの石濱をそのまま打席に送った。結果はピッチャーへのハーフライナーだったが、ほんの少し打球が左右にそれていたら、という期待を抱かせるような内容だった。、そして目に見える結果を出したのが続く1節尼崎大会での日立ソフトウェア戦で、2回に山口憲子からセンターへの先制タイムリーを放ち一挙5得点の口火を切った。ただその後はあまり打つ方では活躍できず、45打席と規定打席にもわずか1打席届かなかったが、それでもほぼ1年間セカンドを守り3失策で乗り切ったのには、あの泣き虫石濱がここまで成長したかと、とても感慨深いものがあった。
 ただ今年レギュラーを獲得した石濱の本当の勝負の年は来年だ。今年入ったセカンドの丸本里佳が非凡な打撃センスを見せており、さらに大学から強打の遊撃手も入るらしい。山城も巻き返してくることは確実で、二遊間を守れる遠山も含め2つのポジションに5人がひしめくゼロからのポジション争いになる。この競争を勝ち抜いてこそ本物。プレースタイル的にも似ている上西晶の後継者として、是非とも来年も誘電のセカンドのレギュラーを死守して欲しい。

☆☆佐藤このみ(一塁&DP,塩釜女子→富士大→大鵬薬品)

(2011→2012)
守備機会:1→61
打席:1→61
安打:1→11
盗塁:2→8
 1年目の2011年に13試合に出場した佐藤このみだったがほとんどが代走出場で、打席と守備機会はともに一度のみ。その一度も2節のシオノギ戦で5回に佐藤光紗がホーム突入時に足を骨折し緊急的にサードの守備につき、回ってきた打席で内野安打を放っただけで、実質ゼロ機会みたいなものであった。
 2011年の大鵬薬品といえば選手層が薄いうえに開幕前から怪我人が続出した大変な年だったのだが、大卒で入った4人のうち3人、三崎奈緒(捕手)、大村英利佳(一塁手)、千原香奈(右翼手)が開幕からレギュラーとして活躍することで最後の入れ替え戦に勝利するまでの1シーズンをなんとか乗り切ることができた。そんな中で唯一出場機会がほとんどなかったのが佐藤このみだった。
 ただこれには理由もある。もともと塩釜女子時代は長南友子(戸田中央総合病院)の1年後輩でバッテリーを組んでいたキャッチャー。富士大学時代は俊足巧打の右打ちの三塁手として活躍したのだが、インカレでライトゴロを食らうなど自慢の俊足や器用さを生かしきれてない面もあった。そこで大鵬薬品に入って1年目はその足を生かすために左打者に転向したばかりで、しかも怪我人が続出したせいで本職のサードだけではなく外野やセカンド、ファーストなどいろんなポジションを守りこなさなければならず、正直実業団のレベルについていくのに必死な1年間だった。
 ただやはり元々センスがあったのだろう。それに足が速いというのはとにかく武器になる。2年目の今年、ファーストの大村が腰痛で出遅れるというレギュラーを掴むキッカケはあったものの、持ち前の器用さで開幕から大鵬のファーストレギュラーを獲得し前半戦をなんとか守りきった。後半になってファーストに大村が戻ってきたが、それでも足の速さと常に何かをやってくれそうな期待感からスタメンを外れることなく、2番DPとして試合に出続けて最終的に規定打席にも到達した。
 その佐藤このみがチームから真に信頼を獲得したのは、やはりあの2節でのアボットからのヒットだったように思う。ヒットという結果以上に内容がとても良かった。
 初球、アボットの外のボールに空振りすると、2球目は少し遠目をしっかり見極めボール。3球目のセフティバントがファールになり追い込んだトヨタの捕手渡邉からしたら「はいもう一つ外の高めに投げて三振」と簡単に思っただろう。しかしその球をファールで逃れ、「じゃあ高めの吊り球で」と来た投球もしっかり見極める。次のやや中に入れてきたアウトコースのボールをファールで逃げると、7球目の際どいボールにもバットを止めて3ボール2ストライクに。そして最後は「四球だけはもったいない」とストライクを取りに来た速球をしっかり捉えてレフトの前にはじき返した。左打者がアボットを攻略するお手本のようなストーリー性のある打席内容で出塁すると、即座に二盗、三盗と成功させて一人で相手をかき回しその試合の敢闘賞を獲得した。なぜか愛知でのトヨタ戦には相性がいいようで、後半戦でも2打数2安打1盗塁と一人活躍し連続して敢闘賞をもらい賞品のレクサスLS、ではなく山猫の置物を手に入れた(笑)。
 富士大学を出て大鵬に入ってから毎年着実に成長している姿は大先輩の佐々木瞳とも重なる佐藤このみ。またもう一度どこかで、どういう形でもいいから彼女のプレーしている姿を見られることを心から願っている。

☆又吉薫(遊撃手,佐賀女子→Honda)

(2007→2008→2009→2010→2011→2012)
打席:0→2→1→30→29→53
安打:0→1→0→2→4→12
本塁打:0→0→0→0→0→1
守備機会:0→0→0→52→61→55
 最初3年間はほとんど試合に出られなかった又吉薫だが、もともと守備には定評があり、4年目には多くの先輩たちを押しのけてすでにショートの準レギュラー的な立場も手に入れていた。ただ打順が9番で頻繁に代打を出されることから、4年目5年目と規定打席には遠く及ばなかった。そして6年目の2012年にしてようやく走攻守すべてにおいて成長しHondaの遊撃手のレギュラーを手に入れたのだ。そういうふうに少しずつ成長してきたので飛躍度としては☆一つだが、活躍的にはもちろん三つくらいあげたい選手ではある。
 個人的に強く印象に残っているのが又吉が4年目の星野メモリアル。守備はそこそこ、という印象だったがバッティングでかなり成長していたのに驚いた覚えがある。
 そもそも又吉に注目したのは知り合いのHondaファンのHN「ふるぐらさん」に、二年目の又吉に対し「これはHondaの秘密兵器ですよ!」という強いプッシュを受けていたからこそ。
 見る目のない自分はそこまで期待はしてなかったのだが、少しずつレベルアップし6年目の2012年にはとうとうベスト4争いをするチームの正遊撃手にまで成長して来た。
 規定打席にも達し大事な試合で二塁打やホームランも放った又吉だったが、来年チームがベスト4に入るには又吉が打つ方でもさらにレベルアップし、リーグトップクラスのショートとして活躍するのが絶対条件。
 2013年は又吉にとっては真価の問われる一年になる。

☆唐橋亜由佳(三塁手,京都西山→シオノギ製薬)

守備機会:0→2→38
打席:0→5→39
安打:0→1→7
二塁打:0→0→2
 1年目、2年目とほぼ代走での出場だった唐橋亜由佳だったが、名選手だった宮幸代が抜けたサードの後釜として2012年は開幕からレギュラーの座を掴んだ。ただそのまま1年間乗り切れれば良かったのだが、後半に入ってからは京都西山でも1年後輩だった長平雅が成長してきたことで7節以降はサードのスタメンを明け渡した形になってしまった。
 ただ長平が実力でサードを完全に奪い取ったかというと、決してそうでもない。ハッキリ言って今年の段階ではこの二人は明らかに「どんぐりの背比べ」で、どちらか試合に出ても大差はなかった。互いにタイプ的にも似た選手だし、残した成績もほとんど同じような数字だったのを見てもわかる。
 ただ今年をもって捕手を含めた内野のレギュラーが3人引退するシオノギにとって、来年は唐橋と長平の成長が必要不可欠の年になる。どちらか器用な方がセカンドに回るか、DPとしての出場になるか、或いは再びサードのレギュラーを巡っての競争になるかはわからないが、とにかくこの二人、特に先輩の唐橋がしっかり成長して内野を引っ張っていかないと、最下位に終わった今年以上に来年のシオノギは厳しい戦いになる。



【飛躍した6選手の下積み時代】

中岡理美
<2010年、地元八代大会で代打出場>

山中しほ
<2010年、1年目の開幕戦で7回2死から藤原をリリーフし最後の打者(矢野みなみ)と対戦>

石濱真実
<ほとんど存在感のなかった1年目、星野メモリアルにて>

<守備は急成長したがバッティングが全然だった2年目、トヨタカップにて>

<そして3年目、開幕からレギュラーを掴みJ・テーラーから惜しいピッチャーライナーを放つまでに>

佐藤このみ
<2008年富士大時代のインカレ、右打席で先制タイムリー>

<2009年富士大時代の熊野オープンで三塁を守る>

<2011年大鵬薬品での熊野オープンでレフトを守る>

又吉薫
<2年目の2008年、地元佐賀大会でリーグ戦に初出場し初打席でヒット>

唐橋亜由佳
<代走出場がほとんどだった最初の2年間だったが、1年目の2010年からこんなガッツある走塁を見せていた>

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