打撃に関するデータとしては、本塁打数や打点などがあるが、その他攻撃面全体の特徴も加えて12チームで比較するため、盗塁や四球のデータも含め、かつ全てを比率で出して比較してみた。それぞれのデータの説明は以下の通り。
☆打率=一般的な打率
☆本塁打率=安打数全体に占める本塁打の割合(本塁打数/安打数)
☆2,3塁打率=安打数全体に占める2,3塁打の割合(2,3塁打数/安打数)
※柵越えと低いライナー性の2,3塁打を一応わけて考えてみた(が、結果的には大きな違いはなかった)
※ちなみにこれは「数値が高い方がいい」という単純なものではなく、どういう打撃をしているかというタイプを表した数値である。
☆盗塁率=一塁への出塁数に対する盗塁数(盗塁数/(単打+四死球))
☆残塁率=出塁走者に対する残塁走者の割合(残塁数/(安打数+四死球数-本塁打数))
☆犠打率=打席数に対する犠打の割合(犠打数/打席数)
☆打点率=打席数に対する打点の割合(打点数/打席数)
※犠打、打点については打数に含まれない打席でもカウントされるので打席数で除した
☆四球率=四球数/打席数
☆三振率=三振数/打席数
以上の九つのデータについてまとめたのが次の表である。上がそれぞれの項目についての各チームの数値。下が項目別の各チームの順位である(分かり易いように、1位、2位、11位、12位に色づけしてある)
ではこれをもとに各チーム簡単に解説してみたい。
【ルネサス高崎】
三振が一番少ない。打率と打点は2位。その他の項目に特筆すべきものはないが、全体的にやはりバランスがいい。犠打も多い。もとより上野が絶対的なエースに君臨するチーム。これ以上打撃が良かったらリーグが面白くない(笑)
【日立ソフトウエア】
9項目中4項目で1位。打率も2位。さすがリーグ1の破壊力を誇る打撃のチーム。盗塁も比較的多いが、何より打点率が高くて残塁率が少ないのが特徴。非常に効率よく得点しているのがわかる。
【デンソー】
盗塁率が2位、四球率も4位だが、あとは軒並み中位かそれ以下。これはそのまんま増山のイメージに近い。ただ犠打率は10位。
染谷&増淵の新旧日本代表コンビで初の決勝トーナメントに進出したデンソーも、やはり課題は攻撃力か。
【豊田自動織機】
一番特徴的なのがこのチーム。本塁打率が1位でしかも犠打率が最下位。あまり犠打を使わずガンガン振っていきホームランを狙っているイメージか。それでいて三振率が2位ということは三振も少なく、確実性の高さもうかがえる。
【レオパレス】
ソフトウエアに次ぐ打撃のチームがこのレオパレスか。打率が1位だが犠打率も1位と小技も使う。残塁率も2番目に少ないし、四球率は高く三振率も少ない。破壊力のソフトウエア、バランスのレオパレス、といった感じ。
【太陽誘電】
四球率が1位なのは谷川や廣瀬が稼いでいるのか。それでいて犠打率も高く小技も使える。打率が8位、三振率が8位とやや荒削りな部分をチームとしても克服したい。
【トヨタ自動車】
四球率は2番目に高いのに、犠打率が2番目に低い。この辺の攻撃のまずさが前半戦接戦を落とし続けた所以か。盗塁と2、3塁打が3位のことを考えると、余計に犠打の少なさがもったいない。
【佐川急便】
盗塁率が低く、三振率が高い。その他の項目もほとんどが真ん中以下。どうにかして攻撃にメリハリをつけて特徴を出したいところ。ただ打率の5位は健闘だろう。そこをもっと生かしたい。
【Honda】
意外や、安打に対する2,3塁打の比率が2番目に高かった。ただ打率も9位であり、少ない安打に占める長打の割合が多いということ。もっと単打も増やして逆にこの比率を下げたいところ。犠打はやや多い。
【戸田中央病院】
本塁打や2,3塁打の占める割合が低く(12位と11位)、マクセルと並んでもっとも長打の出にくいチーム。盗塁以外全て8位以下というのも苦しい。全体的な打撃のレベルアップが急務である。
【シオノギ製薬】
打率11位、盗塁率12位、打点率11位、四球率12位と苦戦だが、犠打率は2位と頑張っている。この辺りは伝統チームの意地か。全体的に低い打撃成績の中でも、なんとか得点に結びつけるための努力をし、且つ結果も出している。立派なもの。
【日立マクセル】
やはり2部から上がって1年目は全体的に苦しかった。チームの主砲が抜けた影響も痛かった。9項目中5項目で12位、2項目で11位と完敗。犠打7位、盗塁8位となんとか頑張ったが、この成長の続きは今年2部で鍛え上げた後の来年、復帰した1部で発揮してくれるだろう。
【最後にこれらのデータを全部まとめて各チームの全体の特徴を図示】
データを全部ひっくるめてコンピューター君に計算してもらいました(いわゆる主成分分析(PCA)というもっとも一般的な多変量解析)。
計算結果は下のような図になります。「近いところに集まってるチームが同じような攻撃パターンを持っているチーム」、ということになります。
そして、右に行くほどどういうチームか?上に行くほどどういうチームか?左に行くほどどういうチームか?下に行くほど・・・ということも(だいたい)計算結果からわかります(軸との相関係数とかややこしいもんが出てきますので省きましょう)。
とりあえず難しいことは抜きにして、結果を見てみましょう。
右→:右に行くほど打撃力が弱い。三振も多く残塁も多い
左←:左に行くほど打撃力が強い(長打も多い)
上↑:上に行くほど犠打が多い、盗塁は少ない
下↓:下に行くほど盗塁が多い、犠打は少ない
__※つまり、「打つチームは三振も残塁も少ない(当たり前?)」「盗塁が少ないチームほど犠打を使う」__
【結論】
なんかデータいじくってたらなんとなく、ソフトボールのチームが攻撃力を高める3つの方向性が見えてきたような気がします。その3つの方向を矢印で示しています。どちらにせよ基本的には左側に進む、つまりは「打撃の基本的な力を付け且つ三振を減らす」方に向かうわけですが、それ以外で、
(A:白矢印)盗塁はある程度犠牲にしつつも犠打も駆使して攻撃力をアップする
(その進化型が__レオパレス21__)
(B:青矢印)盗塁や犠打はほどほどに、とにかく打撃の破壊力が持ち味
(その進化型が__日立ソフトウエア__)
(C:桃矢印)盗塁も用いるが何よりあまり犠打は使わない。イケイケどんどん型。
(その方向の攻撃をしているのが__愛知の3チーム__)
(D)基本的に右半分は打撃力の弱いチーム。その中でもシオノギは犠打を増やすことで特徴を出している。
__※(A)方向に関東の3チーム(レオパレス、ルネサス、誘電)が、(C)方向に愛知の3チーム(織機、トヨタ、デンソー)が向かっているのが非常に示唆的で面白いですね。__
以上です。おわり。