【アーカイブ2007年〜第7節刈⾕⼤会3⽇⽬︓⼾⽥中 vs 織 機】

【アーカイブス2007年~第7節刈谷大会3日目:戸田中vs織機】

不定期配信のアーカイブス、今回は高いレベルで熾烈な最下位争いが演じられた2007年の後半戦第7節。最下位独走の戸田中央総合病院が織機の地元・刈谷においてミッシェル・スミスを相手に勝利した奇跡の試合。
前半戦全敗の戸田中、前節でシオノギ相手に初勝利をあげていたとはいえ、この試合がなければほぼ間違いなく2部落ちしていたのではないか。
2部落ちしていたら果たしてその後チームはどうなっていたか。少なくとも強打者内田千恵美や大学ナンバー1投手の長南友子が入ることはなかったであろう今のチームの、ある意味スタートとなったこの試合を振り返ってみたい。

 


 

戸田中 000 1020…3
織 機 011 0000…0
戸田中:稲垣、堤-吉田
織機:ミッシェル-リベラ

<この試合のスタメン>


 

1回裏織機-0点:先発の稲垣絵莉子は100km近いスピード掲示を出しながらもコントロールが定まらない。四球で満塁とされながらもなんとか無失点で凌ぎ切るが、不安いっぱいの立ち上がり。

2回裏織機-1点:織機は無死からミッシェル・スミスが四球、古田真輝の内野安打と盗塁で2,3塁としたあとに9番長澤佳子がセンター犠牲フライを放ち1点を先制する。さらに1番に戻って狩野亜由美、本田小百合が四球で再び満塁としたところでたまりかねず戸田中ベンチは堤千佳子をマウンドに送る。なんとか1試合でも堤を休ませたかった戸田中だが、稲垣が試合を作れない。仕方なく堤がマウンドへ向かうも相手は織機のミッシェルスミス。まさかここから勝てるとは両ベンチともに誰も思っていなかったのではないか。
対戦するは3番の内藤恵美。堤の緩いチェンジアップに思わずバットが出てしまいこれが投手正面へのハーフライナーとなる。飛び出した三走古田が戻りきれずにダブルプレー。ここから徐々に流れが変わり始める。

3回裏織機-1点:しかし戸田中側にもミスが出る。1死2塁から6番小森由香をセカンドゴロに打ち取るも、これを今泉早智が痛恨のタイムリーエラー。1点を追加されるとともに、このプレーで攻守の要、今泉が負傷退場してしまう。


続くミッシェルが四球で出塁し1,2塁とチャンスを広げ、8番古田がライトへ良い当たりのフライ。この打球で2塁代走の千葉逸美がタッチアップで三塁へ達するが、一走のミッシェルが飛び出してしまい戻りきれずにタッチアウト。相手のミスでもらったチャンスを、まさかの神様のミスで潰してしまう。勝っていながらも自らのミスで大量点につなげられず、織機ベンチに嫌な空気が流れ始める。


4回表戸田中-1点:一方のミッシェルはちぐはぐな攻撃面とは裏腹に快投を続けこの回も2死無走者。しかしここから戸田中が粘る。打者吉田真由美が2-2と追い込まれるも、四球を選ぶと、続く5番の鈴木里枝がこの試合ミッシェルから初めての良い当たりをライト前に運び、1,3塁とチャンスを広げる。


6番橋本夕紀子の当たりはどん詰まりのボテボテのゴロ。しかしこれが無人の三遊間ど真ん中を転がり抜け、戸田中がワンチャンスでミッシェルから1点を奪う。

4回裏織機-0点~:1点差にしてもらった堤、ヒットを打たれ常にピンチを背負うも粘りの投球が続く。緩いチェンジアップに主砲クリスティン・リベラも泳がされ、他の好打者も内野フライの山を築く。ガンガン振り回す強打の織機打線が自滅につながる一番悪いパターンであるが、ある意味、堤の術中に既にはまっていたのかも知れない。

6回表戸田中-2点:織機は1点差に迫られたがしかしそれでも投手はミッシェル。1点あれば十分という流れでもあり、1点は失ったがここまで全く危なげなく来た。しかしこのような試合で前回も決勝タイムリーを打たれているこの選手が、やはり鍵を握っていた。
1死から3番の坂元令奈がうまく捉えレフト線にツーベースを放つ。


吉田がまた四球でチャンスをつなげると打者はヒットを打っている鈴木。当たり損ねの弱い当たりも、前進守備の古田のグラブを弾く幸運なヒット。


この打球がコロコロと転がる間に坂元が同点のホームを踏み、なおも1,3塁。ここで先制打の橋本の打球はセカンドへの緩いゴロ。これを名手・酒井かおりが素早くホームに投げるも三走吉田が好走塁で生還し、ついに戸田中がミッシェルから逆転の3点目を奪う。

6回裏織機-0点~:逆転してもらった堤だが、まだ織機の攻撃は2回残されている。しかし一度こういう相に入ってしまうと淡泊極まりないのが織機打線。完全に堤ワールドに引き込まれ、凡打を繰り返す。最後は強打者、ミッシェルを空振り三振に打ち取りゲームセット。

<最後まで絶対に諦めないのがミッシェル。織機にとっては負けてもどうってことはないこの試合も最後の最後まで必死にボールに食らいつく。しかし無情にもバットは空を切る>

<ミッシェルに投げ勝ち、歓喜の堤-吉田バッテリー>


 

織機のミスに助けられ、かたやボテボテの打球がヒットや適時打に結びついた戸田中。この幸運な1勝が結局は1部残留に非常に大きかったわけだが、やはりただ幸運であっただけではなく、先発の稲垣を急遽リリーフした堤の好投がなにより一番の勝因だっただろう。

ただこの時点では戸田中はまだ今季2勝目で、上を行く靜甲やシオノギは既に4勝。ここからが2007年の熾烈な最下位争いの本番への突入で、結局はリーグ最終戦で3チームの順位が大逆転するという結末に至るわけだが、それについては次回くらいになんとかまとめてみたい。

 

<先発して乱調も、先輩堤が助けてくれ、それどころか勝利をもたらしてくれた。それが嬉しくて涙が止まらない稲垣(真ん中)。稲垣は球場を出ても涙が止まらず号泣していた>

<人目を憚らず勝利の嬉しさに号泣していたのが柳井春菜(左から3番目)。その後チームの中心選手となるのがうなずける>

<タイムリーエラーに負傷退場と、この試合は足を引っ張ってしまった今泉(白い帽子)も涙。嬉しさと申し訳なさで帽子をかぶったまま最後まで顔を上げられなかった>

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