【2010年世界選手権の成績~投手編】
2010年世界選手権がベネズエラで開催された。開閉会式含め、それは盛大な大会だったそうだ。それもそのはず、ベネズエラのチャベス大統領と言えばキューバの故カストロ議長に負けず劣らずのベースボール好きで、すなわち同じ類のボールゲームであるソフトボールも大好きに決まっている。実際にオフにはメジャーリーガーとソフトボールの試合を楽しんだりもしているのだ。Youtubeで見られるチャベスのはしゃぎっぷりを見ても、この大会を心から楽しんでる様子が手に取るようにわかる。
そのチャベス肝入りで開催された今回の大会、少なくとも今後10年(個人的には20年はないだろうと思う)五輪に替わる世界最高の大会として位置づけすべき「世界選手権」の五輪削除後初の大会なわけだが、日本の盛り上がりの低さにはさすがに不安にならざるを得なかった。その盛り上がりの低さのマスコミ的最大の原因が「上野が参加していない」ことなのは明白なのだが、これについては言いたいことは山ほどあるが、ここでは我慢する。
自分がここで一つだけ強調したいことは、国際大会というのはその時点における戦力による真剣勝負の、結果がすべての大会である。「上野が出ていたら」なんてことは通用しない。何も「潜在能力」を比較する大会ではないのだ。野球でいえば、日本は五輪で金メダルを取ったことはなく、それは巨人や阪神などのセリーグ球団がずっと選手派遣を拒んできたからなのも大きいが、そういうのも含め、つまり国際大会に出たくない選手(やチーム)がいるという現状もすべて踏まえてそれがその国の「戦力」なのだ。古い話になるが、明治時代日本は国力で圧倒的に勝るロシアを相手に日露戦争を勝利し国際社会における地位を確立している。もちろん相手の国内事情による自滅的な部分が大きかったが、そんな言い訳は誰も聞いてくれないのだ。だから今回も「上野が参加を拒んだ」というのもそれも含めて日本の戦力なのである。アメリカだってブストスがいないわけで、結局はそんな死児の齢を数えるような真似をしても仕方がないのだ。
そういう意味では、今発揮できる日本の力での今回の「準優勝」という結果は、個人的には上出来で素晴らしい結果だと思う。僕は逆に「これは上野は要らないな」と思ったくらいだ。ただ斉藤監督に気の毒だったのは上野の有無ではなく、今回日本代表が一枚岩になって世界選手権を戦い抜くという体制が整っていなかったことだ。日本がアメリカに勝つには、少なくとも2年以上目的意識をしっかりと持って目標を定めたチーム作りが不可欠だろう。しかし今回はそこまでの時間も協力体制も得られなかった。そんな中でも工夫して投手起用を考えての銀メダルは、大いに評価してあげて欲しい。北京での奇跡の金メダルで何か麻痺している部分もあろうが、力では圧倒的に劣る日本がアメリカに勝つには、日本のソフトボール界すべてが一枚岩になる必要があるのだ。
今回のメンバーは北京五輪で金を取ったメンバーの4年前の姿と思ってもらえればいい。あの藤本も三科も狩野も廣瀬も佐藤も、みんな簡単なミスを繰り返す青くさい選手達だった。そのメンバーでチームワークを熟成させ、最後は知恵と勇気を振り絞り、すべてが一丸となってようやく、「アメリカ」という世界最高峰の壁を破れたのだ。今回はまだまだスタートしたばかりの新生日本代表、少々頼りないが温かく見守ってあげたいと思う。そして2年後に向けて、世界選手権を五輪に代わる世界最高の大会として盛り上げていってほしいと思う。
さてまたしても前書きが長くなったが、世界選手権おける投手起用と成績をあげたい。そもそもさすがはラテン系らしく大会HPの結果もちょいちょい間違いがあって難渋したのだが、なんとかまとめてみた。
各試合の詳細な報告は今月号のソフトボールマガジンに載っているので今回は簡単に結果のみで。
【投手起用】
第1試合:対アルゼンチン
藤原(1回)、瀬川(2回)、岡村(1回)
第2試合:対台湾
染谷(1回)、山根(1回)
第3試合:対オランダ
藤原(7回完投)
第4試合:対キューバ
山根(7回完投)
第5試合:対カナダ
染谷(7回完投)
第6試合:対イギリス
山根(6回完投)
第7試合:対南アフリカ
岡村(2回)、瀬川(2回)
第8試合:対ベネズエラ(決勝トーナメント1回戦)
染谷(7回完投)
第9試合:対アメリカ(決勝トーナメント2回戦)
山根(5回)、瀬川(1回)
第10試合:対カナダ(3位決定戦)
染谷(6回2/3)、岡村(0回1/3)
第11試合:対アメリカ(決勝戦)
藤原(3回0/3)、山根(2/3回)、染谷(1回1/3)
【先発投手について】
<予選リーグ>
藤原(アルゼンチン)
染谷(ベネズエラ)
藤原(オランダ)
山根(キューバ)
染谷(カナダ)
山根(イギリス)
岡村(南アフリカ)
<決勝トーナメント>
染谷(ベネズエラ)
山根(アメリカ)
染谷(カナダ)
藤原(アメリカ)
※初戦と第3戦に先発させた藤原を、その後一切登板させず最後の決勝戦まで温存した。もしアメリカに勝てるとすれば、勝つ方法を考えるとしたら、やはりこの投手起用しかないなと思う。技巧派藤原の投球術に米打線が完全にはまり、凡打の山を築いてくれてその間になんとか1点を取って勝つ、というところだろう。染谷や山根も今回かなり良かったが、彼女たちのスピード的にはむしろ合ってしまうかも知れない。今回アメリカに勝つためには藤原を我慢して温存して最後に投入するという方法しかなかっただろう。もちろん監督がそう考えていたかはわからないが、少なくとも周りから見てそういう明確な意図を感じさせてくれる采配をしてくれるのは個人的には好きだ。弱者が勝つには明確な筋立てと入念な作戦計画が不可欠だと思う。今回はうまく行かなかったが、十分「やれることはやった」結果ではないだろうか。
それにしても頑張ったのが染谷美佳。結果的にチームMVPは山根に持って行かれたが、二度の地元ベネズエラ戦、二度の大事なカナダ戦に先発しての4勝は非常に大きな価値がある。個人的に今回の世界選手権のMVPは染谷美佳投手に決定!と行きたい。
【投手別成績】
<染谷美佳(デンソー)>
●5試合、27回1/3、打者98、失点7、自責点5、被単打19、二塁打1、三塁打1、与四球5、奪三振28
●防御率1.28、被打率0.214、4勝0敗
(内訳)
対ベネズエラ
6回、19打者、単打2、四球1、三振8、失点0
対カナダ
7回、28打者、単打6、四球0、三振7、失点1、自責点1、
対ベネズエラ
7回、21打者、単打3、四球2、三振8
対カナダ(3位決定戦)
6回2/3、27打者、6単打、1二塁打、1四球、5三振、3失点、1自責点
対アメリカ(決勝戦)
2/3回、3打者、2単打、1三塁打、1四球、0三振、3失点、3自責点
<山根佐由里(トヨタ自動車)>
●5試合、21回1/3、66打者、11単打、1二塁打、1本塁打、5与四球、19奪三振
●防御率0.980、被打率0.197、2勝1敗
(内訳)
第2試合:対台湾
1回、4打者、2三振
第4試合:対キューバ
7回、22打者、3単打、6三振
第6試合:対イギリス
6回、12打者、1単打、1四球、8三振
第9試合:対アメリカ(決勝トーナメント1回戦)
6回、21打者、4単打、1二塁打、4四球、3三振、4失点、1自責点
第11試合:対アメリカ(決勝戦)
1回1/3、7打者、3単打、1本塁打、0三振、2失点、2自責点
<藤原麻起子(日立ソフトウェア)>
●3試合、11回、39打者、7単打、2二塁打、2四球、7三振、2失点、2自責点
●防御率1.27、被打率0.231、1勝、1敗
(内訳)
第1試合:対アルゼンチン
1回、3打者
第3試合:対オランダ
7回、24打者、4単打、1二塁打、5三振
第11試合:対アメリカ(決勝戦)
3回12打者、3単打、1二塁打、2四球、2三振、2失点、2自責点
<瀬川絵美(日立ソフトウェア)>
●3試合、4回、12打者、2単打、2与四球、2奪三振、2暴投、1失点、1自責点
●防御率1.75、被打率0.167、1勝
(内訳)
第1試合:対アルゼンチン
2回、6打者、2単打、2四球、2暴投、1失点、1自責点
第7試合:対南アフリカ
2回、6打者、2三振
<岡村奈々(小倉商業)>
●3試合、3回1/3、12打者、4単打、2四球、3三振、0失点、0自責点
●防御率0.00、被打率0.333、0勝、0敗
(内訳)
第1試合:対アルゼンチン
1回、2打者、1単打、1四球、
第7試合:対南アフリカ
2回、9打者、3単打、3三振、
第10試合:対カナダ(3位決定戦)
0回1/3、1打者、1四球
投手に関してのコメントの追加、捕手を含めた野手の打撃成績についてはなんとかジャパンカップ開催までにはまとめたいのですがどうなることやら。
全ては暑さのせい。