【日本リーグ2010_2011シーズンの引退・移籍・新加入選手~1部・その3(シオノギ製薬・大鵬薬品・靜甲・日立マクセル)】
※表記は「(背番号/ポジション) 選手名 (在籍年数または出身校)」
【シオノギ製薬】
退団選手:3人
(5/LF)田城博美(11年)
(11/C&OF)岩切奈那(5年)
(3/1B)熊谷陽香(5年)
新人選手:4人
(3/1B)三宅美咲(倉敷中央→甲賀医専)
(7/OF)長平雅(京都西山)
(16/IF)山根すずか(木更津総合)
(22/C)松村優穂(筑陽学園)
※退団選手
多くの五輪メダリストが引退した陰で、シオノギでも一人日本リーグの名選手がユニフォームを脱いだ。田城博美は本当に頼りになる選手だった。チームが相手投手に抑えられていても一人気を吐いてホームランを放ち、ここで一本欲しいという時には期待に応え必ずタイムリーを放ち、雨ニモ負ケズ風ニモ負ケズ、日照りの時は涙を流し、寒さの夏はおろおろ歩き、そしてレフトを守ればライナーの打球に突っ込んできて後逸し長打にしてしまう。とにかくそういうイメージだった(どんなだ?笑)。木訥として寡黙な職人風で自分の仕事はきっちりこなし、反面よくポカもするのだがしかしどこか憎めない。田城の存在はシオノギにとって本当に大きかった。
熊谷陽香は体が大きな割にバントや細かいプレーが上手く守備も安心してみていられる一塁手だった。若いときの清原和博みたいな雰囲気でこれから大きな打者に育ってくれるかなと思った矢先の引退。昨年の夏を境に激痩せしてスマートになってたのでもしかしたら何か心境の変化でもあったのかなと思ってはいたのだが残念だ。ちなみに「陽香」と書いて「はるか」。毎度の変換がめんどくさいので単語登録してたのに引退か~、と思っていたら今年ソフトウェアに同じ漢字で同じ読みの新人が入った。登録した甲斐があった(笑)
小柄な捕手でチャンスに強い左打ちと言えば織機の小森由香だが、シオノギの岩切奈那も同じようなタイプの選手でしかも同じようにルックスも性格も良い選手だった。3年目まではあまり試合に出られずノーヒット。2009年に18打席で3割を超えると2010年は規定打席に到達し10安打を放った。まさにようやく花開いたその年を限りの引退になってしまった。そのチャンスに強いバッティング以上に貢献したのが捕手としてのリード。エースの松村歩が投げるときには常にマスクを被り、前半戦不調だったチームを救って後半戦の快進撃を支え続けた。6勝した松村とともに、この岩切が1部残留に果たした貢献も大きかった。
※新加入選手
三宅美咲は甲賀医専1年生の時から注目していた選手なのだが、どうも2年目にちょっと元気がなくなっていたのが気になる。潜在能力は高い選手なのだからシオノギに入って本来の力を発揮できるかどうか。とにかく岡山に今度行ったら三宅牧場産直焼き肉店には必ず行こうと思っている。毎度の成田家飲みをキャンセルしてまでも。
他の選手達についてはオープン戦であまり見る機会がなかったのでリーグ開幕後のお楽しみ。ただ一つ、シオノギはバッテリーにどんだけ「松村」を獲得すれば気が済むのか(笑)
<このガッツ、もしくはボケっぷりこそが田城博美(笑)>
<チャンスに強く人気もあった岩切奈那>
<甲賀医専1年目時代のバッティングを取り戻せるか三宅美咲>
【大鵬薬品】
退団選手:3人
(22/1B)山﨑由利(スルガ銀行2年+三島中央病院5年+大鵬薬品2年)
(4/C)伊藤瑠美子(1年)
(5/OF)北原史織(2年)
新人選手:4人
(8/C)三崎奈緒(岡山東商→環太平洋大)
(14/3B)佐藤このみ(塩釜女子→富士大)
(23/1B)大村英利佳(須磨ノ浦女子→大阪国際大)
(55/RF)千原香奈(京都明徳→環太平洋大)
移籍入団選手:1人
(27/C)松本さとり(とわの森三愛→日体大→1年ブランク→大和電機)
※退団選手
4番ファースト山﨑背番号22、の存在感はやっぱり大きかった。1部で残した結果は本来の実力的には今ひとつだったが、4番に座っているだけで十分な存在感だった。スルガ銀行、三島病院、大鵬薬品と2部畑を渡り歩いての1部参戦。こういう選手が1年でも1部を経験してくれたのが何より嬉しい。西武ドームでの開幕戦での山﨑の地元ソフトボール少女による大きな声援が今も印象に残っている。
伊藤瑠美子は甲賀医専の時から期待していたのだが1年でユニフォームを脱いでしまった。期待されて17打席に立つも1安打しか放てなかった。北原史織も2年間と短い期間だったが、1部で打席に立てたのは幸運だろう。ただ7打席でノーヒット。二人とももう少し成長する姿が見たかった。
※新加入選手
正直熊野で松本さとりを見たときは驚いた。あれ、これ大和電機にいた松本じゃないか!?と。球場で見て一目でわかった、というか、シルエットでわかった(笑)。日体大から大和電機に入る前に1年間ブランクがあるのは何かのインストラクターをやっていたようで、去年の2部厚木大会ではその時の友達が応援に来ていて一番大きな声援を受けていた。捕手で美人の増井知美が怪我で半年出られないことにより急遽補強されたみたいで、日本リーグに入ってとんとん拍子に2部から突如1部選手に昇格。人生どうなるかわからない。ただ名捕手を大量に輩出している日体大の出身。捕手能力の高さは折り紙付きだろう。バッティングもなかなかいい。
大鵬薬品は他にも強打者でまんぷく隊長の中山亜希子や、薄幸なエース鈴木碧など怪我人も多くて大変なのだが、どうやら今年の大卒新人4人全員が少なくとも守備と走塁は任せられる選手ばかりでチームとしては安心して見ていられそうだ。新たなコーチも加わり、なんだかんだ言ってこのチームは結果を残すと確信している。
ちなみに、織機の小森由香やシオノギの岩切奈那などルックス・ジャパンのレギュラーが数多く引退した中、今年のルックス・ジャパンのドラフト1位は間違いなく大鵬薬品の佐藤このみだろう。それにしても大学の先輩後輩だけはある。新人時代の佐々木瞳に本当によく似ていてとても可愛い。「かっぺ!」って感じで(笑)
<1部でもホームランを放った山﨑由利。四番打者に据えてこれほど据わりの良い風格のある打者もいなかった>
<大和電機時代の松本さとり。なかなかこう見えてシャープなスイングをしている>
【靜甲】
退団選手:1人
(6/SS)鈴木優子(6年)
新加入選手:1人
(13/P)更ヱ万梨菜(金光桐蔭→甲賀医専)
復帰入団選手:1人
(15/3B)白井奈保美(レオパレス→2年ブランク)
※退団選手
まさか鈴木優子がチームを去るとは思ってもみなかった。何よりチームの1部復帰を願って引っ張ってきた選手なので、驚いたと言うより残念、残念と言うより何か寂しい感じがした。もう一度鈴木優子に1部の舞台に立ってもらってその姿を写真に納めたかったのだが、ただ本人としてはいま大垣ミナモで藤本索子と二遊間を組めていることにソフトボール選手としての喜びを感じて生き生きとプレーしているようなのでその点は安心した。
ただ鈴木優子以外、昨年2部で頑張ってきた選手全員が残留して1部の舞台を踏めるようになったのは嬉しい。とにかくこのチームは毎試合毎試合1球1球全選手で食らいついて行くしかないのだ。
※新加入選手
さて全チームの新加入選手については公式発表前にもいろいろな練習試合等で漏れ伝えられてくるのだが、知らずに公式発表を見て一番驚いたのがこの靜甲の白井奈保美の復帰。鈴木優子の退団に伴い手薄になった内野を強化するため乞われて復帰したようだが、レオパレス引退翌年の2009年から靜甲の試合には頻繁に応援に訪れていたので相思相愛的なチーム加入であろう。2008年限りでレオパレス21を引退したが1部リーグでサードのベストナインを獲得したこともある名選手で、僕が「ゴールデングラブ賞」を始めた2008年に最初に選んだ名手でもある。織機に移籍した白井沙織、誘電に移籍した河野美里などと同じようにいかにも“レオパレス”らしい選手で、なんか適当に遊びながらヘラヘラしてるようでどうみても真面目にプレーしているようには見えない(笑)。しかしそうは見えても実際のプレー内容自体は誰よりも熱く、そして結果もしっかりと残す。昨年1部に昇格したライバル大鵬薬品が結果的に1部に残留出来たのも、織機から移籍してきた経験豊富な酒井かおりの存在が大きかったのだが、実績的にはその酒井以上のものを残してきている白井の存在も、きっと同じように靜甲にとって大きいに違いない。
白井を除けば靜甲の新加入は投手の更ヱ万梨菜一人。靜甲には鈴木麻美、河部祐里の二枚看板がいるが、この更ヱも甲賀医専時代に熊野オープンで織機を完封しかけた大型投手。コントロールを磨いて試合を作れるようになれば、勝てる勝てないは別にしても二枚看板をサポートできる大きな存在となるだろう。
<“2部リーグの内藤恵美”的なプレイヤーだった鈴木優子。大垣ミナモで新たなソフトボール人生のスタート>
<レオパレス最強時代を鉄壁の守備で支えていた白井奈保美(右、背番号11)>
<甲賀医専時代から良い投球で目立っていた更ヱ万梨菜>
【日立マクセル】
退団選手:3人
(7/LF)加藤愛(7年)
(21/P)森川憲子(5年)
(17/P)高田翔子(織機3年+マクセル3年)
新人選手:7人
(2/C)篠田美穂(淑徳→淑徳大)
(3/OF)頼孟※(らい・もんてぃ(ん)、台湾師範大 ※は女偏に亭)
(13/OF)得真梨奈(園田学園→大阪大谷大)
(17/OF)東遥奈(津幡)
移籍・復帰入団選手:3人
(7/SS)小野奈津子(厚木商→レオパレス21→ドリーム☆ワールド)
(19/P)西村瑞紀(京都西山→伊予銀行)
(16/2B)田中梢子(厚木商→レオパレス21→1年ブランク)
※新加入選手
とうとうマクセルが本気を出してきた、といった感じのなりふり構わぬ補強。2部の準決勝で破ったドリーム☆ワールドから小野奈津子を獲得、入れ替え戦で破った伊予銀行から西村瑞紀を獲得と、勝った相手から選手を一人もらえるシステムでもあったのだろうか?(笑)。ただ西村瑞紀に関しては伊予銀行を辞めた後にマクセルが拾ったような感じだったようであり、小野奈津子にしてもジャパンに選ばれてもおかしくないようなオールラウンドプレイヤーでさすがにドリーム☆ワールドが抱え続けるに余る選手なので、この移籍の両選手はソフトボールファンとしても応援したい。もちろんその反動でむしろ伊予銀行とドリーム☆ワールドが好きになるような判官贔屓な自分ではあるのだが(笑)
田中梢子はレオパレス最後の年にレギュラーを獲得して1年間無失策。決勝トーナメントではあと数センチでホームランという大飛球をバークハートから放った。ヘアメイクアーティスト?の道を諦め?昨年からマクセルチームには帯同していたようで、体調も万全で満を持しての復帰になるだろう。もちろんあの人気急上昇中の田中涼子の実姉である。
そしてもう一人のビッグニュースが台湾代表のライ・モンティの加入。ジャパンカップでは何度も来日し、台湾代表の1番打者も努めていた選手なので日本のファンにもなじみが深い。数少ない台湾の国立大である名門「台湾師範大学」出身の才媛でもある。世界ランク的には同じ教育+α系カレッジでもある日本の横浜国立大と同じレベルなので、言わば眞鍋かおりがソフトボール選手になったように思ってもらえればいいだろう、か。違うか。格的にはもっと上で昔の東京教育大(今の筑波大は全然別物)くらいかも知れない。まあソフトボールには関係ないからどうでもいい。とにかくライは才媛なのだ。
ちなみに高卒新人の東遙菜は美人選手の東綾華の実妹。どことなく顔は似ている。
※退団選手
加藤愛は名門神村学園および近年良い選手を輩出している愛短出身の実業団選手のハシリのような存在。道を切り開いてきた選手に相応しく、プレー自体もしぶとくて守備もバッティングも粘りがあり、目立たないが玄人好みのする本当に良い選手だった。試合を決めるような一打がなくても、それを辿っていけば加藤のあの打席が起点だった、という存在の選手ではなかっただろうか。マクセルに関しては前回も2部で優勝し1部昇格を決めた年にチームを支え続けた4番平山薫が引退した。1部で見たかったのだが人生設計にそった決意の引退だったようで、その道を切り開いて教師になりそして今は高校ソフトボールの監督として活躍している。どうやら加藤もそういう夢を抱いているようなので、いつか加藤監督の雄姿を目にすることもあるだろう。
左腕の森川憲子も加藤と同じようにマクセルを代表するような選手でもう一度1部の舞台で見たかった投手だ。ただ本来なら昨年も現役を続けるのがいっぱいいっぱいの状態だったようで、かつてのように主戦で投げられるような状態ではなかったが、それでもここぞという試合ではリリーフで出てきて試合を締めてチームを勝利に結びつけていた。とにかく昨年2部で1年間投げ続けてチームを昇格に結びつけて、そして燃え尽きての引退。見事なソフトボール人生だ。個人的にはあの投げた後にちょっとだけ斜めにコテっと傾く投球フォームが得も言われぬ愛嬌があって、やっぱりああいう特徴的な選手は見ていて楽しかった。
高田翔子は埼玉栄時代から代表にも選ばれていた選手だが、リーグに入ってからはあまり結果は残せなかった。それでも彼女の良さは誰にも負けないくらいに努力したことと、そして誰よりもソフトボールが大好きだったこと。織機3年目で初めて訪れたリーグ戦登板にはチームのみんなが嬉しくて泣いていたし、織機を去る最後の練習ではチームのみんなが離れるのが淋しくて涙した。マクセルに拾ってもらってからも試合ではあまりチームには貢献出来なかったが、しかし気持ちよく打者に打たせてアウトにする「癒し系のセットアッパー」が努力するうしろ姿が残したものはきっと大きかったと思う。僕は大好きなピッチャーだった。
<二度目の一部昇格となった2008年にはキャプテンとしてもチームを引っ張った加藤愛>
<台湾代表常連でジャパンカップでも活躍したライ・モンティン>
<織機からマクセルに移籍し昨年限りで引退した高田翔子。常に黙々と投球練習を続けていた>