【2011年決勝トーナメント・第2試合~織機 vs ソフトウェア ~ 延長10回に及ぶ壮絶な戦い、最後は織機が過去2年の雪辱を果たす】

 織機とソフトウェアというライバルチームによる歴史に残るような壮絶な試合。
 長いレポートですが、そのまま掲載します。


豊田自動織機
 000 0300 111…6-9-1
 002 0001 110…5-8-0
日立ソフトウェア

(延長対ブレイカー10回)
豊田自動織機:○栗田美穂 - メーガン・ウィリス
日立ソフトウェア:藤原麻起子、山中しほ、●藤原麻起子 - 眞鍋幸維
(本):濱本静代(ソ)
(二):国吉早乃花(織)


【試合経過】
【2回裏:日立ソフトウェア~0点】
 先頭の眞鍋がヒットで出塁、杉山がピッチャーへゴロ。これを抜群の守備力を誇る栗田が好フィールディング!1-6-3の併殺打にし自らピンチを防ぐ。

【3回裏:日立ソフトウェア~2点】
 先頭の森田がレフト前ヒットで出塁し2死をとるも打席は濱本。2008年の決勝Tではミッシェルから会心の打球を2本飛ばしている濱本。織機戦には強い印象があるがこの場面でも最高の結果を出す。
 いかにスピードの変化に強く低めをすくい上げるのが上手い濱本とは言っても、この打席のそれは完璧過ぎた。栗田の決して失投ではないアウトコース低めのチェンジアップを腕を伸ばしてジャストミートすると打球はセンターへ。この芸術的な一打がそのままフェンスを越え、ソフトウェアが2点を先制する。

<濱本がセンターへ技ありの先制のツーラン>

【4回表:織機~0点】
 1死から古田、本田という織機が誇る勝負強い打者が連打でチャンスを作り、ウィリスはレフトへのいい当たりのライナーで倒れるも打席は小柳。
 藤原の投球をとらえた小柳の鋭い低いライナーが右方向に飛ぶも、この打球を抑えたのがまたしても濱本。一昨年の開幕戦でも2死満塁からトッピングの打球を好捕しているグラブさばきの非常にうまい濱本が、またしても織機の前に立ちはだかる。


【5回表:織機~3点】

 チャンスを作りつつも得点できないという藤原の術中にはまりかけ、このまま終わってしまうのかという不安がよぎった5回、今年の織機の攻撃陣では間違いなくMVPである国吉がやってのけた。
 高坂、白井の死四球でもらった2死一二塁のチャンスに左中間に完璧な当たり。この打球がフェンス際まで届く二塁打となると、一塁からも白井が長駆ホームインし、織機が同点に追いつく。

<国吉が左中間を深々と破る二塁打>

<国吉の二塁打で白井も一塁からホームインで同点>

 そして控えるのが勝負強さではチーム1のキャプテン古田。この場面でも詰まりながらもフルスイングで打球をレフトの前に落とす。織機は一気に3点を奪って逆転に成功した。

<勝負強い古田がしぶとくレフト前に落として逆転>

 さらに本田も四球で一二塁の場面でウィリスがライトに大きな当たり。抜ければさらに2点、勝負が決まってしまう場面でソフトウェアを救ったのがライトの杉山。
 ライナーで頭を越しそうな非常に難しい打球に対し一直線で背走すると後ろ向きにジャンプし長い腕を伸ばして捕球!このファインプレーでなんとか1点差で食い止める。

<ウィリスの打球をライト杉山がファインプレーでピンチを救う!>

 ソフトウェアというチームは、強打者が多いことからおもに打撃のチームかと思われがちだが、このチームの強さを芯から支えているのは、この鍛え抜かれた守備力なのだ。


【7回裏:ソフトウェア~1点】

 両チーム互角でぶつかり合い凌ぎ合ったこの試合もしかし栗田が好投して7回裏2死に。
 しかしここからソフトウェアが驚異的な粘りを見せ森田、西山が連打で一二塁。しかし栗田にとって痛かったのは次の溝江の打席だった。ポンポンとストライク2つで追い込んであと1球とするも…。
 その溝江に投じたインコースが不運にもユニフォームをかする死球となり、とうとう満塁にここで迎えたのがまたしても濱本。

<7回裏、2死無走者、ツーストライク、あと1球…(上)、ここから溝江がユニフォームをかする死球で出塁(下)>

 その濱本に対して栗田が渾身の投球で、詰まらせてセカンドゴロに。これで万事休すかと思われたが、やっぱり濱本の打席では何かが起きる。
 この平凡な打球を、今年守備ではチームを何度も救ってきた吉良が慎重になりすぎてジャッグルし、一塁へ送球もこれが遅れてセーフに。
 土壇場も土壇場で、ソフトウェアがついに同点に追いつく。

<2死満塁まで広がったピンチで濱本の平凡なセカンドゴロを痛恨の失策をした吉良>

 2死無走者から同点とされた織機が、今度は一気に窮地に陥る。満塁の場面で迎えるのは世界最強打者の一人山田。しかもボールが続き、3ボール0ストライクという絶体絶命のピンチ。

<そして2死満塁対山田でスリーボールと、一転して大ピンチ>

 しかし開き直るにはこれ以上ないシチュエーションで、今年大ブレイクした栗田は開き直れる自信を手に入れていた。
 一つストライクを取り落ち着くと山田を平凡な左飛に打ち取り、なんとか同点で踏みとどまったのだ。

<ここは栗田が開き直って渾身の投球。山田をレフトフライに打ち取る>

 あまりにも痛すぎるエラーで同点にしてしまったセカンドの吉良だが、正直個人的には彼女のその後の守備を大いに称賛したい。
 7回裏に攻め込まれながらも濱本をゴロに打ち取り、これを処理すれば試合が終わるという極度に緊張する場面。しかもぬかるんだグランドで詰まった当たりだったので慌ててジャッグルしてしまったが、普通ならさらにミスを重ねて暴投してしまってもおかしくないところ。
 握りなおしてからは落ち着いて送球したことでセーフになったが暴投による最悪の結果は免れたし、さらにその後の回と、翌日の試合にかけて、エラーを引きずることなく落ち着いてプレーを続けた。
 全ては吉良の日頃からの努力の賜物でもあるし、またあの場面も、その努力を知ってる栗田だからこそ気持も切れずに踏ん張れた部分もあったのではないだろうか。


【8回表:織機~1点】

 さてさまざまなことが起き延長タイブレイカーに入ると、6回から山中にスイッチしていたソフトウェアの投手にエースの藤原が再登板する。
 8回表の攻撃、点を取らねばならない場面で、後半戦に入りオスターマン離脱後は別人のように攻守に成長したウィリスが、この打席でも結果を出す。センター前にヒットを放ち代走の藤崎が生還。織機がまずは1点を勝ち越す。

<ウィリスがライトに上手く流し打ち、藤崎が還って勝ち越し>

【8回裏:ソフトウェア~1点】
 しかしソフトウェアも普通に攻めれば1点なら確実に追いつく。林の犠打のあと眞鍋がレフトに犠牲フライを放ち同点に。

<ソフトウェアも眞鍋の犠飛で再び同点>

 そして2死となり打者は杉山。打率は低いが昨年の決勝トーナメントでの上野からの3ランや、今年の予備節での7回裏の同点3ランなど、神がかり的に勝負強い杉山が放った打球がライトへ。
 またしても杉山の一発でソフトウェアが勝利するのかと思ったホームラン性の打球であったが、懸命にバックした国吉がフェンス際でなんとかキャッチする。

<杉山の大きな当たりは国吉が何とか捕球>

【9回表:織機~1点】
 白井の犠打がフィルダースチョイスとなり無死一三塁の大チャンスで狩野がセンター前にタイムリーを放ち、三度織機が勝ち越す。

<狩野がセンター前に運び織機が三度勝ち越し>

 しかしその後も続いた無死一二塁のチャンスに得点できなかったのが痛かった。


【9回裏:ソフトウェア~1点】

 勝ち越されたソフトウェアだが三たび追いつく。新人の田邉が落ち着いて犠打を決め走者を三塁に送ると、これまた新人の森田が詰まりながらも一二塁間真中をゴロで破るタイムリーヒットでまたしても同点に。それにしてもこのヒットで今日4本目の森田。新人にしてこの活躍には正直恐れ入った。

<森田の4安打目が一二塁間を抜けるタイムリーに>

【10回表:織機~1点】
 先攻の織機は何が何でも最低1点を取らなければいけない展開。なかなかバントもエンドランもできない不器用な打線ではその1点を確実に取るのは至難の業だが、シーズン最後に近づいて実力を発揮しだしたウィリスの存在が非常に大きかった。
 まずはバントはできなくても打つだけなら天才的な本田がバットを短く持って投手前にバントのようなゴロを「打つ」ことで走者を三塁に進めると、ウィリスが8回に続き再び右方向にタイムリーヒット。織機が4たび勝ち越す。

<ウィリスが再びタイムリーを放ち4たび織機が勝ち越す>

【10回表:ソフトウェア~0点】
 そしてようやく迎えることになる最後の回。
 スローイングの関係により8回から濱本に代わりファーストに入っていた先頭の手塚が送りバントを決め1死三塁とすると打席に迎えるのは山田。
 ここで織機ベンチはギャンブルに出る。
 山田と勝負すればかなりの確率で、おそらく9割近い確率で同点に追いつかれる。しかしヒットさえ打たれなければその1点で食い止めることもできる。
 もし山田を敬遠すれば、すぐさま二盗されて1死二三塁となることから、今度は一気に逆転サヨナラのピンチにもなる。
 しかし織機が勝つには、試合をここらで終わらせる必要があった。さらに延長が続けば自力に勝るソフトウェアがいずれ逆転する可能性が高いのだ。

<山田を敬遠するのは、逆転覚悟のギャンブルだったが、そこに賭けた>

 それゆえ、一か八かのギャンブルでもあるが、織機が勝つためにはもっとも可能性の高い選択肢である「山田敬遠」を織機ベンチは選んだ。
 案の定山田が二盗し二三塁となると、もうこの後は栗田の投球と心中である。迎える打者は日本代表クラスである林と眞鍋。
 しかしここまで来て、この強打者二人に対し、打球を前に飛ばさせずに抑えきる力と精神力が栗田に残っていたというのがすごかった。
 強打の林を三振に仕留めたことで、ここでようやく五分五分。逆に眞鍋は精神的に追い込まれてしまい、本来の打撃ができなくなったのかもしれない。
 打ち損じて真後ろのフェンス際に上がった眞鍋の打球。球審と交錯しながらもこれを押しのけ走ったウィリスがフェンスぎりぎりでこの打球をキャッチ。
 長い長い、しかし非常に見どころの多い歴史に残るような壮絶な試合を制した豊田自動織機が、3年ぶりに決勝トーナメント二日目の戦いに駒を進めたのだった。

<最後の打球を今日大活躍のウィリスがフェンス際で捕球>


【試合結果詳細】


【スターティング・メンバー】

【先攻:豊田自動織機】

1(7):白井沙織
2(8):狩野亜由美
3(9):国吉早乃花
4(5):古田真輝
5(D):本田小百合
6(2):メーガン・ウィリス
7(3):小柳薫
8(6):高坂香月
9(4):吉良真利菜
FP(1):栗田美穂

【後攻:日立ソフトウェア】
1(6):西山麗
2(4):溝江香澄
3(3):濱本静代
4(8):山田恵里
5(5):林祐季
6(2):眞鍋幸維
7(9):杉山真里奈
8(7):田邉奈那
9(D):森田涼
FP(1):藤原麻起子



【1回表:豊田自動織機~0点(投手・藤原)】

白井:遊飛
狩野:四球
国吉:一ゴロ
古田:空振り三振

【1回裏:日立ソフトウェア~0点(投手・栗田)】
西山:左飛
溝江:死球
濱本:三ゴロ・二進
山田:四球
林:左飛

【2回表:豊田自動織機~0点(投手・藤原)】
本田:一ゴロ
ウィリス:空振り三振
小柳:死球
 ※高坂の4球目に離塁アウト

【2回裏:日立ソフトウェア~0点(投手・栗田)】
眞鍋:中前打
杉山:投ゴロ・併殺打
田邉:一ゴロ

【3回表:豊田自動織機~0点(投手・藤原)】
高坂:二ゴロ
吉良:二ゴロ(好プレー)
白井:四球
狩野:中飛

【3回裏:日立ソフトウェア~2点(投手・栗田)】
森田:左前打
西山:空振り三振
溝江:投犠打
濱本:中越え2点本塁打
 ※低めのチェンジアップを技ありですくい上げセンター左へ
山田:二ゴロ

【4回表:豊田自動織機~0点(投手・藤原)】
国吉:二ゴロ
古田:右前打
本田:二内安
ウィリス:左直
小柳:右直

【4回裏:日立ソフトウェア~0点(投手・栗田)】
林:二飛
眞鍋:見逃し三振
杉山:遊ゴロ

【5回表:豊田自動織機~3点(投手・藤原)】
高坂:死球
吉良:投ゴロ・二封(走者送れず)
白井:四球
狩野:左飛
国吉:左中間2点二塁打
古田:左前適時打(ポテン)
 ※本田の5球目に古田が二盗(暴投?)
本田:四球
 ※二塁代走に千葉逸美
ウィリス:右直
 ※大きな当たり、杉山がファインプレー

【5回裏:日立ソフトウェア~0点(投手・栗田)】
 ※古田が再出場
田邉:一バントゴロ
森田:遊内安
西山:遊ゴロ・二封(ショート右強い当たりを高坂好捕)
溝江:空三振

【6回表:豊田自動織機~0点(投手・山中)】
 ※投手交代、藤原→山中しほ
小柳:捕邪飛
高坂:三ゴロ
吉良:中前打
白井:中飛

【6回裏:日立ソフトウェア~0点(投手・栗田)】
濱本:左前打
山田:三ゴロ・二封(三遊間寄り、古田好プレー)
林:左飛
眞鍋:捕邪飛

【7回表:豊田自動織機~0点(投手・藤原)】
狩野:二ゴロ
国吉:中飛
古田:中前打
ph池原恵(←本田):空振り三振(チェンジアップタイミング合わず)

【7回裏:日立ソフトウェア~1点(投手・栗田)】
杉山:遊ゴロ
ph来條美穂(←田邉):三ゴロ
森田:左前打
西山:中前打
溝江:死球(かすり)
濱本:二ゴロ・失
 ※平凡なセカンドゴロを緊張した吉良がジャッグルする痛恨のエラー
山田:左飛
 ※3-0までいくも、栗田が踏ん張る!

【8回表:豊田自動織機~1点(投手・藤原)】
 ※投手交代、山中→RE藤原
 ※田邉が再出場、ファーストに手塚沙也花
 ※二塁走者に藤崎絵未莉
ウィリス:中前適時打
 ※代走に横野涼
小柳:空振り三振
 ※三振の時に横野が二盗
高坂:遊ゴロ(西山好プレー)
吉良:二ゴロ

【8回裏:日立ソフトウェア~1点(投手・栗田)】
 ※ウィリス再出場
 ※二塁走者に山田
林:三犠打
眞鍋:左犠飛
杉山:右飛(大)
 ※ホームラン性の打球、国吉がフェンス際でキャッチ

【9回表:豊田自動織機~1点(投手・藤原)】
白井:三犠打・野選(一三塁に)
狩野:中前適時打
国吉:遊ゴロ併殺打
古田:中直

【9回裏:日立ソフトウェア~1点(投手・栗田)】
 ※二塁走者に杉山
田邉:三犠打
森田:右前適時打
 ※詰まりながらも一二塁間を破る今日4本目のヒット
西山:左飛
溝江:二ゴロ

【10回表:豊田自動織機~1点(投手・藤原)】
 ※二塁走者に古田
RE本田:投ゴロ(進塁打)
ウィリス:右前適時打
小柳:一ゴロ・二進
高坂:中飛

【10回裏:日立ソフトウェア~0点(投手・栗田)】
手塚:一前犠打
山田:敬遠四球
林:空振り三振
眞鍋:捕邪飛

【試合終了】

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