【2011年決勝トーナメント・第3試合準決勝~織機 vs ルネサス ~ 2日間にわたる熱投の栗田美穂、最後に力尽きる】

豊田自動織機
 010 0000 …1
 100 0001x…2
ルネサス高崎

豊田自動織機:●栗田美穂 - メーガン・ウィリス
ルネサス高崎:○上野由岐子 - 峰幸代
(本):メーガン・ウィリス(織)
(二):山本優(ル)



【戦評】

 この試合の上野はまさに「我慢」の投球だった。ただいわゆる「調子が悪くてヒットを打たれながらも粘った」という意味での「我慢」ではなく、全力投球したくなるところをグッとこらえて、ヒットを打たれようがランナーを背負おうが、とにかく力をセーブして打たせて取るピッチングに徹する、という意味での「我慢」だったような気がする。
 前日の1位-2位戦でトヨタ自動車に敗れた以上、ページシステムで優勝するためには3連投が確定したわけである。そのためには、勝ち進んで再び対戦するトヨタ自動車戦に力を残しておかなければならない。織機戦で燃え尽きてしまってはしょうがないのである。だから何が何でもこの織機戦はコントロールと変化球を軸とした上野のもう一つの顔である素晴らしい投球術を前面に押し出した技巧派的なピッチングで勝ち進まないといけなかったのだ。その証拠として、決勝のトヨタ戦では再び打者を圧倒する豪快なピッチングを見せてくれたし、この織機戦でも1死満塁、2死二三塁のここぞというピンチの場面では力を入れた投球を見せてくれた。
 もちろん織機打線とて力をセーブしてきた上野相手に簡単に抑え込まれるような打線ではなく、メーガンのホームランを含め多くのヒットを重ね上野を、ルネサスを追い詰めたが、あと一本届かなかった。もし、山本のサヨナラ打がなければ延長に入っており、当たっている狩野に1死三塁の場面で回ってくるような打順の織機の方が有利だったのではないかと思っているが、そこを最後に山本が救ったのだ。

 この試合でもう一つ注目しておきたいのが、最後の場面、山本の前で死球で出た宇野の打席である。
 GAORAの実況、解説の方が思わず「避けてないですね」と言ってしまったように、明らかにわざと当たった死球である。インコースとはいえ球種はチェンジアップ。避けられないはずはないのだから、あそこは球審にはっきりと「故意に避けていない」と判定してほしかった。もちろん実際に当たっているのを「ボール」と言うにはかなり勇気がいるだろうが、あれが結局は試合を決める走者になってしまったのだから。
 ただ今回強調したいのは「判定ミスではないか」ということではなく、あの場面でよく死球を奪えたな、ということである。球種はスピードを殺したボール。当たったところで怪我もしないし、仮に「わざと当たった」と判定されてもペナルティがあるわけでもない。もちろん一般的にはあまり感心したことではないが、しかし場面も場面、決勝に進めるかどうかを必死に争って戦っている場面では何が何でも勝ちたい、塁に出てチャンスを作りたいのだ。しかも宇野は今年ルネサスに入った高卒1年目の選手。その選手にしてああいうプレーができるというのが本当にすごい。普段なら「わざと当たってないか?」と思うものが、この時はなぜか不思議とそう思わず、むしろ「すごいな…」と感心してしまった。宇野のプレーに、ルネサスの強さの一面を改めて見せられた感じがした。

 それにしても、前日の10回完投の翌日のこの試合も登板し、しかもルネサス打線を7回自責点1に抑えた栗田の投球は素晴らしかった。
 入団後4年間チームは決勝トーナメントに進みながらも栗田の登板は今年が初めて。その初めての決勝トーナメントでのこの熱投は多くのファンに織機に栗田ありを印象づけられただろう。
 いずれジャパンのユニフォームを着ることになるだろうが、今回の好投が大きな自信になることは間違いない。



【先攻:豊田自動織機】

1(7):白井沙織
2(8):狩野亜由美
3(9):国吉早乃花
4(5):古田真輝
5(D):本田小百合
6(2):メーガン・ウィリス
7(3):小柳薫
8(6):高坂香月
9(4):吉良真利菜
FP(1):栗田美穂


【後攻:ルネサスエレクトロニクス高崎】

1(5):山本優
2(3):大久保美紗
3(2):峰幸代
4(D):森さやか
5(7):中野久美
6(6):蔭山遥香
7(1):上野由岐子
8(8):岩渕有美
9(4):市口侑果
FP(9):小松美樹



【1回表:織機~0点(投手・上野)】

白井:二ゴロ
狩野:二飛
国吉:二ゴロ


【1回裏:ルネサス~1点(投手・栗田)】

山本:三ゴロ・失
大久保:三前バント失敗・二封
峰:四球
森:右邪飛(一三塁に)
中野:中前適時打
蔭山:四球
上野:遊ゴロ・二封

<決勝トーナメントではしぶい活躍が続く中野がこの打席も結果を出す>

<詰まりながらもセンターの前に落とし、先制点を奪う>

【2回表:織機~1点(投手・上野)】
古田:右邪飛
本田:見逃し三振
ウィリス:左越え本塁打
小柳:左直

<上野から点を奪うにはメーガンの一発でも、と期待していたが、まさか…>

<中野もフェンスまで追ったが届かず>

<決勝トーナメント大当たりのメーガンの値千金の一発>

【2回裏:ルネサス~0点(投手・栗田)】
岩渕:遊ゴロ
市口:右邪飛
山本:中飛

【3回表:織機~0点(投手・上野)】
高坂:見逃し三振
吉良:遊小飛
 ※ショートの前に落ちて内野安打になりそうな打球を蔭山が好捕
白井:二ゴロ

【3回裏:ルネサス~0点(投手・栗田)】
大久保:中飛
峰:投ゴロ
森:中前打
中野:二ゴロ

【4回表:織機~0点(投手・上野)】
狩野:左飛(大)
国吉:死球(足の辺り?にかする)
古田:中前打
本田:左前打
ウィリス:遊ゴロ・本封
小柳:遊ゴロ

【4回裏:ルネサス~0点(投手・栗田)】
蔭山:遊ゴロ
上野:中前打
岩渕:投前バント失敗・二封
 ※普通の投手なら楽勝で成功している犠打、栗田が自慢の好フィールディングでダッシュで捕球しセカンド封殺!
市口:三ゴロ

【5回表:織機~0点(投手・上野)】
高坂:投ゴロ
吉良:二ゴロ
白井:遊ゴロ

【5回裏:ルネサス~0点(投手・栗田)】
山本:遊ゴロ
大久保:三内安
 ※古田がグラブに当てて弾くも三遊間よりで内野安打に
峰:捕前犠打
森:左邪飛

【6回表:織機~0点(投手・上野)】
狩野:中飛(大)
 ※あわやホームランという打球
国吉:左前打(ポテン)
古田:空振り三振
本田:左前打
 ※ウィリスの4球目が暴投となり二三塁に
ウィリス:空振り三振

【6回裏:ルネサス~0点(投手・栗田)】
中野:左飛
蔭山:二ゴロ
上野:遊ゴロ

【7回表:織機~0点(投手・上野)】
小柳:空振り三振
ph池原恵(←高坂):一小飛(ツマリ)
ph横野涼(←吉良):一ゴロ(バットの先)

【7回裏:ルネサス~1点(投手・栗田)】
 ※高坂、吉良が再出場
岩渕:二ゴロ
 ※一二塁間、イレギュラーした打球を吉良が好プレー
ph宇野有加里(←市口):死球
 ※わざと避けなかったが、判定は死球に
 ※一塁代走に市口再出場
山本:左中間サヨナラ適時二塁打

<1死一塁で、山本の打球が左中間をまっ分たつに破る!>

<山本に抱きつく歓喜のルネサスナイン>

<うなだれる織機の栗田。しかし本当に素晴らしいピッチングだった>

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