【2012年開幕節第5試合~デンソー vs. 太陽誘電】

デンソー 100 0000…1
太陽誘電 000 0000…0
デンソー:●ジョーダン・テーラー - 伊藤綾香
太陽誘電:○藤田倭、森真里奈 - 原田のどか
(二):伊藤綾香(デ)

【テーブルスコア】


 

【デンソーについての戦評】
 初回、増山が倒れて1死。2番の伊藤がタイミングをずらされながらも高いバウンドの三塁への打球を放つと、これをサードの山本が弾いて二塁打に。
 1死二塁となったチャンスの場面で、デンソーは3番の好打者永吉と大して足の速くない二走伊藤との間にエンドランをかけた。永吉が打者なのでゴロを転がすのは簡単で悪くても走者を三塁に進めるための普通のエンドランだったのか、あるいは永吉には普通に打たせヒットなら伊藤がホームに還るための強硬策的なエンドランだったのか、もしくは伊藤を走らせてサードをベースにつけることで三遊間のヒットゾーンが広がることを狙ったのか、あるいは意表を突く単独スチールだったのか、どういう意図でかけたエンドランだったのかが興味深い。
 ただ残念ながら、投手藤田の投球がワンバウンドになってしまい永吉が空振り、伊藤が三塁盗塁成功というイレギュラーな結果になったためその意図が判明しなかったのが残念だった。
 ともあれそうやって走者が三塁に進んだことで、4番の江口の内野安打で決勝の1点が入ったわけだから、積極的に走者を動かしたこと自体はこの場面では無駄ではなかったようだ。
 その決勝打を放った江口、初の開幕スタメンが4番という大役だったが、それくらいの実力があることはみなの知るところだった。東海学園高からデンソーに入った1年目の愛知県国体予選だったかでホームランを連発し、すごい打者が入ったと評判になっていた。飛躍が期待された2年目のシーズン直前に足を骨折する重傷を負いほぼ1年間を棒に。復活した昨年は19打席で二塁打3本と実力の片鱗を見せつけた。そして2012年、いよいよ本領を発揮する飛躍の年になりそうだ。大いに注目してもらいたい。
<初回、ややタイミングが早かったが打球が高く弾んで二塁打となった伊藤>

<初回、その伊藤と永吉の間でかけたエンドランがワンバウンドになり三盗に>

<江口の詰まった打球は二遊間の真ん中へのタイムリー内野安打。これが結局決勝点に>


【太陽誘電についての戦評】
 観客席の後ろに座っていた酔っぱらったおっさんが、三振した河野に対し「なんやあの10番は、やる気がないんかいな」と大声でヤジっていたが、もちろんそんなわけはない。
 「いや、あの10番はですね、日本でもトップクラスのいい打者で日本代表選手なんですよ。でも天才過ぎて、つい凡退した時なんかやる気ないように見えてしまうんですけど、その辺がまた河野の持ち味なんですよ」と、心の中だけでつぶやき、おっちゃんのヤジはそのままにしといた。面白いから(笑)
 その天才河野が3打数無安打に抑えられたということは、やっぱりデンソーの新外国人投手テーラーが良い投手だったということだろう。
 そのテーラーに4回パーフェクトに抑えられていた誘電が5回に大きなチャンスを作る。
 4番佐藤がチーム初ヒットとなる中前打を放つと岡本も投手強襲ヒット。原田の送りバントが三塁封殺されるも、佐野が死球でミスが帳消しになり1死満塁に。絶好のチャンスだったが8番の遠山が遊飛、9番の石濱がピッチャーライナーに倒れてしまい同点に追いつくことが出来なかった。
 2死満塁となって9番の石濱が打席に向かう途中、三塁コーチボックスの山路監督が石濱を呼び寄せた。代打に尾崎が残っていたことから恐らく石濱本人も100%代打と思っただろうが、「打ってこい!」という指示。あまりにもビックリした石濱は思わず自分で笑い出してしまったほどだった(笑)
 ただ普段はかすりもしないスラップバッターの石濱も、普通に打てば良いバッティングをするのはオープン戦でも証明済み。この場面もツマリながらもテーラーの投球にバットを合わせ、抜ければ二遊間へのタイムリー内野安打になりそうな打球を放つもドンピシャのタイミングでテーラーにグラブを出されて投直に倒れ、ヒロインになり損ねてしまった。
 あのチャンスの場面は代打尾崎という選択肢も十分あっただろうが、もし代打を出すとしたらやはり1死満塁での遠山の場面だっただろう。しかし遠山もこの試合は怪我の山城の代役で回ったショートの守備で好守を連発していたからその勢いを買いたかったのは事実。結果的には最大のチャンスを8番9番の打順で逃したが、監督としてもほとんど後悔はしていないかも知れない。

<1死満塁で遠山が倒れ2死、そのまま打ってこいと指示され思わず笑ってしまいながらながら打席に入る石濱>

<石濱の打球は詰まりながらもいい角度で飛んだライナーだったが…。ベンチで見ているチームメートからも期待感のなさが伝わってくる(笑)。負けるな石濱>

<開幕直前に怪我をした山城の代役でショートに入り好守を見せた遠山>


【デンソー新打線について】
 ベンチから怒鳴り声が聞こえず、初球のド真ん中を見逃して即座に代打を送られる新崎の姿も見られない若干寂しい幕開けとなった今年のデンソー。しかし新監督、新コーチのもと、「2番伊藤」に代表される「新打線」を組んで挑むリーグ初戦には非常に興味深いものがあった。
 こういうエキセントリックな打線については先入観を捨てて結果の数字から判断しなきゃなるまい。果たして結果はどうだったであろうか。
 結果の数字から言えば、7回を戦って9安打を放ち、あげた得点が初回の1点のみ…。大砲伊藤を2番に入れる新打線は、この開幕戦の結果だけから判断すれば、まあ100点満点の5点くらいだろうか。
 だいたい9本もヒットを打てば、監督は何もせずにスマホで遊んでいても気付いたら2、3点くらいは勝手に入っているもの。それが初回の1点だけじゃあアメ車じゃあるまいし、余りにも燃費が悪すぎる。車関連の会社でありながらこのエコが叫ばれる時代に逆行しているとしか言いようがない。

 もちろんこの空回りは何も打順のせいだけではなく、相手投手が粘り強さにかけてはリーグ屈指の藤田と森だったことも大いに関係があるのだが、しかしそれにしても打っても打っても点が入らなかった。
 あまりにも点が入らない新打線について、愛知県K谷市在住のデンソーファンの大串吉子(オオグシ・ヨシコ)さんからはこんな川柳が届きました。
 「デンソーは、新打線ではなく、死んだ線」
 非常に毒の効いた秀逸な川柳ですね。ファンとしてもよほどストレスがたまったことでしょう。心中察します。大串吉子さん、どうもお便りありがとうございました。

 まあでも1試合で判断するのはあまりにも早計か。意外や上野、アボット相手に機能するかもしれないので、最終的にはこの打線の評価は保留にして今後も楽しみにしておきたいと思う。
 いやあそれにしても、面識のない監督の采配は心置きなく批判が出来て、あぁ気持ちがいい。つい調子に乗っていつもの3倍くらい辛口トークをしてしまった。本当に申し訳ない。反省してまーす。

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