【新生日本代表選手の紹介~投手編】

リーグ前半戦が終了し、国体県予選なども終わり表面的には静かな時期に入った日本ソフトボール界。しかし7月になると今度は日本代表の試合が行われます。去年は五輪年ということ行われなかったジャパンカップが今夏に行われますし、顔ぶれもがらりと変わった日本代表選手の横顔を紹介しつつ、選考過程の推測もしてみようかと思います。
まずは投手から(あとでもう少し紹介文は付け足します)。
(選手名のうしろの数字は今年到達する年齢)

 

【代表投手の紹介】
<新しく選考された投手>
藤原麻起子(26、日立ソフトウェア)
瀬川絵美(22、日立ソフトウェア)
安福智(21、シオノギ製薬)
山根佐由里(20、レオパレス21)

<北京五輪代表投手>
上野由岐子(27、ルネサステクノロジー高崎事業所)
染谷美佳(26、デンソー)
江本奈穂(24、豊田自動織機))
※ただし上野は今年は代表活動に参加しない予定

藤原麻起子は上野がいない新生日本代表では染谷と並んでのエース的存在だろう。
抜群のコントロールとクレバーな投球術はすでに完成されたものがあり、積み上げた実績からも北京五輪に選ばれてもおかしくはなかった。高校卒業後に東邦銀行に入るも1年目で廃部に遭い、翌年東北福祉大に進学し投手として成長し日立ソフトウェアに進んだ苦労人でもある。大学では同年代より1年遅れる形となったが、同じ年で1学年上の藤崎由起子(今回代表初選出)とバッテリーも組んでユニバーシアードにも出場した。さらに2006年には大学生でありながら五輪代表を目指したA代表にもすでに名を連ねていた。
藤原の良さは決して大崩れしないところだろう。スピードや変化球で相手を圧倒できる投手ではないが、しかしながらどんなに状態や条件が悪くても、要所ではキッチリと締め、早い回に1、2点取られてもそこから持ち直して絶対に試合を壊さない安定感がある。
年齢的にも染谷美佳と同学年で江本奈穂より上。坂井が完全に代表引退を決意したとするならば、あの北京での坂井の役割を担える第一人者がこの藤原だと期待している。

瀬川絵美は新生日本代表の中では選考会で唯一100km超のスピードを記録した剛球投手であるが、とにかく今年はフォーム矯正からか、元々良くなかったコントロールをさらに乱し、深い深い泥沼にはまりこんでいる。しかしそれでも日本には瀬川のスピードは必要不可欠だ。今ぶち当たっている壁を乗り越えて上野に匹敵する最強投手になってくれると信じている。

安福智は2007年世界ジュニア選手権で準優勝したときにエースとしてフル回転した投手であるが、その前年、神戸野田高の3年次に参加した全日本代表選考会ですでに日本代表Bとして選出されていた期待の投手である。
独特の投球フォームの左腕から力強い球をコントロール良く投げ込むが、何より日本に不足しているドロップ系の左腕投手としてとても貴重な存在である。その左腕に如何に期待がかかっているかは、上述の高校時代に最年少で代表候補に選ばれていたことからもわかるだろう。実業団に入ってからはやや伸び悩んではいるが、今回の正代表選出を機に本来の実力を発揮できるようになって欲しい。

山根佐由里はデビュー2年目で、今現在はまだ19才の若手投手。安福と同じく2007年のジュニア選手権に、当時高校2年生で抜擢された将来を嘱望されてきた逸材で、その頃から将来の日本代表に期待されていた。関係者からみれば、高校時代の怪我を乗り越え期待通り順調に成長してくれたといった安堵感が第一ではなかろうか。
10代の若さでありながら打者を翻弄し凡打の山を築かせる投球術を持ち合わせ、日本リーグ1年目からしっかりと結果を出し、文句なしにA代表に名乗りを上げてきた。
山根が一躍全国区に躍り出たのが高校2年次の選抜大会。初出場の宇治山田商のエースとして登場し100km/h近いライズを駆使し、1回戦では笠田を相手に延長11回を2安打21奪三振の完封、2回戦では古豪厚木商に敗れはしたが1失点の好投だった。その1点も現レオパレス21の山下美奈子に打たれた当たり損ねの左前タイムリーで、ちなみに山根のこの時の背番号が21だった。もうこの時から将来レオパレス21のエースとして活躍する道が約束されていたのかも知れない。将来的に井上の背番号21番を引き継げば、まさに名実共にレオパレスの顔になる(でも選考会時の背番号は12、残念)。

 

【選考過程についての推測】
選考過程では代表に不参加を表明した五輪選手の扱いについて若干混乱があった。端的に言えば、今年の代表活動の不参加をマスコミ紙上で表明した上野や三科を代表候補として残したいがため、明確に引退を表明した選手以外を強引に候補に残すという超法規的措置を行ったのだ。そのため本調子とはほど遠い江本など最近の実力的には代表選手として厳しい選手も候補入りすることとなった(ただこの辺りは代表投手としてしっかり結果を残すことで選考が誤りでなかったことを証明してくれるだろう。してもらわなきゃ困る、笑)。
ただ新たに選出された人選を見ると、そういう経緯とは関係なく選考会参加選手から純粋に代表を1チーム作るようなつもりで選考がなされたようだ(繰り返していうがあくまで個人的な推測である)。まず投手の枠として、1大会には4人程度がその人数であり、今回もその枠内での新たな投手選考人数となった。

この中で真っ先に決まったのが藤原麻起子だろう。むしろ選出が1年遅かった感があるくらいで、投手としての能力を総合的に見ても文句なしの選出だ。
次に決まったのがレオパレスの山根ではないか。スピード、コントロール、若さ、リーグでの結果、全ての面から見てもこのリーグ2年目の山根が選ばれて当然であった。
ここまでは普通に読めたが、残り二人は正直読めなかった。その原因は瀬川である。何よりも「速い球が投げられる」というのは魅力で、本来的には文句なく瀬川が選ばれるのだが、いかんせんここ1年くらいはコントロールが悪くとても使いものにならない。しかし誰が見てもその潜在能力的には日本代表には必要不可欠なのも確かで、果たして選ぶ方がいいのか選ばない方がいいのか、どっちになるだろうかと思っていた。結果的に選考されたのをみると、やはりジャパンのスタッフの瀬川に対する期待は相当なものがあるのだろうと思い、正直、嬉しくなった。

さて結果的に瀬川が選ばれたが、もしここで瀬川を選考しないとしたら、残り2枠を松村歩(27、シオノギ)と安福智のシオノギコンビで占めるのではないかと思っていたが、このうちのどちらか一人を選び、残り1枠で若手で意外な投手を抜擢するのも面白いなと思った。
その若手として個人的に期待していたのが鈴木麻美(21、靜甲)である。1部で投手新人賞も獲得した好投手で、何より2部からの抜擢という点も合わせ、代表には全ての選手に門戸が開かれているというアピールにもなり面白いと思ったのだ。もちろん実力的にも毎年2部ではダントツの成績を残してはいるが、やはりこういう原石は1部の荒波に揉ませて磨き上げたい。他に実業団所属の若手としてはジュニア代表経験もある片山由希(21、デンソー)、姉妹代表を目指す江本侑香(20、織機)などもいるが、まずはリーグでしっかりと実績を残して選ばれるような投手に成長してほしいし、その可能性は十分にある。
若手の抜擢という点では大学生投手もありだったかもしれない。常に冷静で落ち着いた投球をする宮城出身で東北福祉大の長南友子(22)、厚木商時代から期待された逸材で順調に成長してきた日体大の重藤恵理佳(22)などは、すぐにでも1部リーグで活躍できそうな好投手である(ただ重藤は選考会には参加していなかったように記憶している)。それでもこの二人は大学日本代表投手として今夏のワールドゲームズに出場が決まっており、そちらでの活躍を楽しみにしたい。

さていろいろと書いたが結果的に瀬川が選ばれ、そして残りが1枠となった。その時点でおそらく松村と安福のどちらかの選択であり、個人的にはどちらを選んでも代表投手として恥ずかしくない好投手だと思ったのだが、結果は安福であった。
日本人としてあれくらいの投球が出来る左腕投手というのは非常に価値のある存在で、最終的に選考された4人を見渡しても、この中に安福がいるのは非常に良いバランスであり、大いに期待できる投手陣となった。
<個人的に大いに期待している若手投手、鈴木麻美(左)と長南友子(右)>

【個人的に入れたかった投手】
今回代表には入ってないが、ある程度日本リーグを見てきたファンなら「一度代表で見てみたいな」と思う投手が織機の宮本直美(27)とトヨタの露久保望美(23)ではないだろうか。
宮本は上野と同じ歳の遅咲きの好投手。同じチームにミッシェル・スミスや高山樹里、江本奈穂といった好投手がいる(いた)ことから試合に出るチャンスもなかなか得られなかったが、去年後半のレオパレス戦の好投以来、織機での日本人エースの座を不動のものにした。今年も好投を続けており、実力的には十分だったのだが。
露久保はとにかく打者が分かっていても泳がされる魔球チェンジアップが持ち味のいかにも投手らしい投手である。あのチェンジアップが外国人打者相手にどう威力を発揮するのか、やはりファンとしては見てみたかった。アイドル的なルックスと裏腹に「ヨイショー!」と叫ぶ気合いのピッチングはジャパンのユニフォームを着ればさらに人気が出たと思うのだが。
ただこの二人に共通するのは、チームがリーグ優勝を争うような強豪であり、チーム内にバークハート、アボットといったアメリカを代表するような投手がおりその二番手としてしっかりリーグで結果を出すことを求められる立場ということ。もちろんその二番手投手になるためには、チーム内の日本人エースの座を確保しないといけないわけで、代表選考会にチャレンジするよりチーム内での役割をしっかりこなすことが優先される立場にあったのだろう。

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