【新生日本代表選手の紹介~捕手編】

【代表捕手の紹介】
<新しく選出された捕手>
谷川まき(24、太陽誘電)
伊藤綾香(21、レオパレス21)

<北京五輪代表捕手>
乾絵美(26、ルネサステクノロジー高崎事業所)
峰幸代(22、ルネサステクノロジー高崎事業所)
※ただし乾は今年は代表活動に参加しない予定

谷川まき(24、太陽誘電)は直前まで北京五輪代表に選ばれるだろうと多くのファンに思われていた捕手である。残念ながら金メダリストとしての栄光をグランドで味わうことはできなかったが、選ばれてもおかしくない選手だったということは多くのファンに知っていてもらいたい。
2007年に1シーズン28打点という不滅の大記録を打ち立てたが代表落ちした昨年はシーズン通して不調に終わった。ただ今年はまた豪快な打棒が復活し、打点は同僚の廣瀬に次ぐ2位の12、本塁打は廣瀬と並んでトップの4本と、打ちまくっている。

伊藤綾香(21、レオパレス21)は高校時代から将来の代表入りが確実視されていたような、スケールの大きな選手である。それに加え、犠打も巧く一塁守備も無難にこなすなど、器用な面も持ち合わせている。捕手としては所属チームではティッカムがいるためになかなか出る機会がないが、今回の代表においても日々勉強して一流の捕手に成長していって欲しい。
今回多くの選手が代表入りした2007年のジュニア世界選手権代表の一員でもあるが、その時も正捕手としては常に峰の存在があった。いつかはこの偉大なる先輩を追い越してくれるだろうか。

 

【今回の代表捕手選考について】
ソフトウェアのベテラン鈴木由香(29、日立ソフトウェア)がコーチ兼任となり、戸田中央病院の名捕手・吉田真由美(27)も今年は絶好調ながら一つ世代が空いてしまい代表はもう卒業だろうか。これらベテランの名捕手がいなくなったことで、若い投手陣を若手の捕手で引っ張って行かざるを得なくなった。
選考会に参加した捕手9人は谷川まき以外すべて22才以下というフレッシュな顔ぶれである。峰と乾の北京五輪代表のルネサス勢二人がそのまま代表候補として残り、峰は引き続いて今年も代表の試合に参加することを表明していたことから、必然的に新しく選考する捕手は2人となった。その中からの谷川と伊藤の二人の選出は案外あっさりと決まったのかも知れない。打てる捕手ということになるとこの二人は峰と並んで頭二つ分抜けているからであるが、この3人は捕手としてのみならず、日本代表の打線の軸を任せられるほどの力のある打者でもあるからだ。
守りに関しては上野の球を受け続けてきた峰、坂井の球を受け続けてきた谷川は、ともに何も心配は要らないだろう。伊藤に関してはチーム内に豪州代表のティッカムがいることから普段守る機会が少なく一塁手での出場も多いのだが、逆に一塁を守れるということも選考過程ではプラスに働いたようである。スケールの大きさから言えば、伊藤は谷川や峰を追い越し、馬渕の後継者にでもなれそうな潜在能力があるのだが、まだまだ脆さも目につき一回りも二回りも成長する必要がある。
その「脆さ、荒さ」という点では谷川にも同じことが言える。リーグの歴史を塗り替えるようなあれだけの記録を残した打者でありながら、下位チーム相手の固め打ちが目立ち、上位チームの特に外国人投手から試合を決めるような一打を放ったシーンがほとんど記憶にない。伊藤に関しては一打どころかバークハートやアボットには赤子の手をひねるように簡単に抑えられてしまう。その点、たとえアボット相手にも常に期待を抱かせる打撃を見せる峰にはまだまだ及ばない。しかしこれも経験値の違いだろう。峰はあの若さで凄く多くの修羅場をくぐり抜けてきている。谷川と伊藤も、今回の日本代表としての試合のみならず、リーグに戻っても一流の外国人投手を打ち崩すことでどんどんその経験値を上げていって欲しい。

これらの捕手に守りの面では見劣りしない捕手がデンソーの竹林綾香(22)とシオノギの橋元春華(21)である。竹林はチーム内に捕手も守れるバトラーがいることからエースのギブソンとのバッテリーを考えリーグの試合に出る機会が少ないが、守備力を考えると投手に関係なく正捕手として竹林を起用したい部分もあるだろう。また今年はその少ない打席の中でも1本塁打を含む4割近い打率を残しており、全体的にもこれからまだまだ成長しそうな捕手である。
橋元は昨年の入れ替え戦で大当たりしたように時々良い打撃を見せるが、やはり課題は1割台に甘んじている打撃だ。さすがに他の捕手の打撃と比べると見劣りがするが、しかしシオノギの左右の両輪である松村歩と安福智を巧みにリードし、強豪相手にも常に大量点を与えないそのインサイドワークはもっと高く評価されていいはずである。細い体だがグラブ捌きも巧みでキャッチングもうまく、個人的には好きな捕手の一人だ。ちなみに今回代表に選ばれた安福とは神戸野田高時代の同級生でバッテリーを組んでいた(はずである)。
谷川と同じ歳でユニバーシアード代表でもあったトヨタの渡邊華月(24)も候補の一人に十分名を連ねられる捕手であったが、恐らく怪我でもあったのか選考会には参加していなかった。ただリーグでアメリカの2枚看板の一人でもあるアボットをリードする姿は実に堂々としたもので、最近よくなりつつある打撃が開花すれば一気に代表に名を連ねるようになるかもしれない。
これらの選手以外では、さすがにすぐに正代表候補となるのは厳しいかも知れないが、選考会には名を連ねても良かったのではないかと思っている捕手が2部リーグの藤原幸代(24、日立マクセル)と伊藤瑠美子(20、甲賀医専)である。藤原は捕手として完成形に近い選手であり打撃も貫禄十分でもしずっと1部に所属していたら面白い存在になっていただろう。伊藤は全国的にはまだ無名の専門学校生で守りに関しては目をつむりたいがパンチ力十分の強打者であり、おそらく来年はどこかの実業団に進むだろう。今後の活躍に期待したい。

さて最後になったが、問題(?)の山本優である(笑)。今年も4割以上の打率に5割近い出塁率、6割を超える長打率と、打撃の確実性や実績から見ると十分代表に選ばれるべき選手ではあるが、なぜにそこまで捕手にこだわるのか・・・。もちろん、小学生時代からずっと捕手であったプライドを捨てたくないとか、チームメイトである峰に対して内心激しいライバル心を燃やしているのかもしれないが、しかしさすがにルネサスから捕手として3人は選考できないだろう。ジュニア世界選手権ではすでに三塁手として世界の舞台も踏んでおり、あくまで「捕手もできる3塁手」としてであれば選ばれる可能性も十分あっただけに、なんとももったいない気もするが、その辺がまた山本優の山本優たるゆえんで長所でもあるか(笑)。

 

【おまけ】
今年の前半戦、規定投球回に達した16投手の中で唯一「与死球ゼロ」、コントロール抜群の山根投手から選考会で太ももに直接死球を食らってのたうち回る谷川選手。
谷川選手にはこういう運命が常につきまとうのか・・・(笑)

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