11月7日(土)から始まる決勝トーナメントについて、簡単に見どころを紹介します。
【第1試合~3位豊田自動織機v.s.4位レオパレス21】
(1)レオパレスの足攻v.s.織機内野守備
とにかくレオパレスと織機の試合において一番重要なのがここだろう。レオパレスはそのチーム設立当初から、五輪にも出た佐藤由希や三塁打数で歴代2位の渡邉潤子など、俊足のプレイヤーを数多く揃えていた(井上を除く)。そこに佐藤理恵や藤本索子が入社し、今年に至っても永吉や河野、蔭山など足を使える選手が数多くスタメンに名を連ねている(井上とティッカムを除く)。加えて、藤本や河野、小野、永吉といった小技も抜群に上手い打者を数多く揃えており、その足と小技で点を奪い取って勝利したのがまさに第8節の織機戦であった。この決勝トーナメントにおいてもここぞという場面ではとことん足を絡めてしぶとく点を奪いに行くだろう。そのキーパーソンになりそうな永吉と小野の二人の選手には特に大いに注目したい。
対する織機。内野手の顔ぶれを見ると長澤、酒井、古田、内藤と日本でもトップクラスの守備力を誇る選手が揃っているにもかかわらず、ことレオパレスのような足を使った攻めに対する守りという1点においては脆い部分を持ち合わせている。その守備のほころびの修正が出来ないまま第10節においてもシオノギ戦で守備が乱れて痛い敗戦を喫した。どこまでこの短期間で対応できるように修正できたか。元々潜在能力の高い選手の集まりなのであまり心配はしていないが、決勝トーナメントでの守備の乱れは即命取りになるのでとにかく慌てず対処したい。
<足を絡めてとことん織機を揺さぶるレオパレス。織機で1番走塁の巧い白井も、そのレオパレスの元選手だ>
(2)山根佐由里v.s.織機打線
試合巧者揃いの織機打線だが、実は山根を意外と苦手にしている。
2008年に鳴り物入りで日本リーグデビューした山根。初登板は第2節の日立ソフトウェア戦で、同じ節の対ルネサス戦でも秋元を継いで好投。強豪2チームで肩慣らしをし、満を持しての日本リーグ初先発が次の第3節、霧島大会での織機戦であった。この試合、初回に2死から田中に適時二塁打を浴びて簡単に2失点するもののその後は好投。ミッシェル・スミスと堂々と渡り合って2回以降の6回を無失点に抑えた。2度目の対織機戦の登板が今年前半の千葉大会。この試合も内藤とトッピングに1発を浴びて敗れはしたが、要所はきっちりと攻めて連打を許さず、大崩はしなかった。そして後半の第8節。2点を先制してもらった2回裏に連打を浴びて3失点するも、それ以降は無安打に抑える好投で味方の同点、逆転劇を呼び込んでいる。1試合のうちどこかでキッチリ点を取っている織機もさすがだが、それ以外は打たせて取る山根の投球に凡打を繰り返して追加点を奪えず、ある意味術中にはまってしまっている。むしろティンチャーのような投手の方が織機打線としては与しやすいかも知れない。山根が先発し、打たされて淡々と回を刻むような試合展開になってしまうと、まさにレオパレスの思い描いた結果になるだろう。
<苦手とする山根の先発は果たしてあるか。その場合、織機ではやはりこのベテラン3人(内藤、田中、トッピング)が鍵を握る>
(2008年前半)○織機2-0●レオパレス
(2008年後半)●織機5-6○レオパレス
(2009年前半)○織機4-1●レオパレス
(○バークハート v.s. ●山根、松村)
・2回にレオパレスが先制
・山根が3回まで無失点の好投
・内藤のホームランで同点
・トッピングのツーランで駄目押し
・ティンチャー登板せず
(2009年後半)●織機3-4○レオパレス
(●バークハート v.s. 山根、○ティンチャー)
・レオパレスが足を使って先制
・織機が連打で逆転
・最終回、井上のヒットのあと内野の守備の乱れで同点に
・延長8回、バントとエンドランで勝ち越される
・3回以降、山根とティンチャーにノーヒットに抑えられる
【第2試合~1位トヨタ自動車v.s.2位ルネサステクノロジー高崎事業所】
(1)モニカ・アボットv.s.上野由岐子
この対決はもはや何も説明は要らないだろう。とにかく今のソフトボール界において、世界でもトップクラスの投手が投げ合う試合である。その豪腕対決を心の底から楽しみたいと思う。
ただどちらがより勝ちたいか、よりプレッシャーが大きいかと言えば間違いなくアボットの方だろう。先の全日本総合において連投の疲れから最後はルネサス打線に捕まったように、決勝トーナメントにおいてアボットが3連投というのはどうしても避けたい。そのためには何が何でもこの試合に勝って決勝トーナメントに進みたいはずだ。逆にスタミナ抜群の上野の場合は特に連投の疲れを気にするような心配もないだろうが、もしここで勝てればアボットの疲れもありかなり優勝に近づくことが出来る。どちらにせよ、いくら試合巧者の織機とレオパレスのどちらかが下から上がってくるとはいえ、今年に関してはこの1位2位対決の試合に勝った方が優勝への確率がかなり高くなるのは間違いない。
__ただ一つだけ、投手に関してはファンとして絶対にお願いしたいことがある。__
“決勝トーナメントの舞台で露久保望美の投球を見たい”
<アボットと上野の投手戦。この投げ合いに説明は要らない。ただただ1ファンとして堪能したい>
(2)上野由岐子v.s.ナターシャ・ワトリー
そして対上野のもう一つの大きな注目点がこのワトリーの打席だろう。全日本総合においても上野はこのワトリー一人に3安打を浴びたのではなかったか。とにかくトヨタはなんとしてでも7回までに最低でも1点を取らないといけない。アメリカ代表の1番打者にして日本リーグデビュー年に首位打者を獲得した名実ともに今や世界一のリードオフマンにかかる期待は非常に大きいのである。ワトリーがこの決勝トーナメントの大舞台においても実力を発揮できるか、上野およびルネサス内野陣が如何にワトリーの出塁を抑えるか、そこが両軍の攻撃面での最大のポイントであろう。もちろん終盤にきて調子を上げてきた伊藤幸子や、初の決勝トーナメントに燃える坂元令奈(性格的に「燃える」なんてことはあり得ないか?笑)などがしぶとくタイムリーを放つことも考えられるし、一度は攻略したルネサス打線が再びアボットを捕まえる可能性もある。しかしとにかくこの攻撃の軸になり試合を左右するのがこのワトリーなのは間違いない。少なくとも対戦する3度の打席、その3回が、今年の日本リーグを大きく左右するだろう。
<寒い11月の西京極でも本来の力を出せるかワトリー>