【2009年入れ替え戦特集~Honda vs 靜甲 ☆マッチアップ式選手紹介☆】

いったい何が悲しくて靜甲とHondaが入れ換え戦を戦わないといけないのか・・・。

1部2部それぞれで応援しているともに大好きなチーム。その2チームが何の因果か入れ替え戦でぶつかってしまった。悲しんでいても入れ替え戦はやってくる。ただ精一杯良いプレーをして悔いのない戦いをしてくれれば、もうそれ以上望むものはない。とにかく、どっちも頑張って勝って、来年は揃って1部に参戦しようではないか!!(どうやって!?)
まあそんなわけで昨年も行った1部2部の入れ替え戦にむけての選手紹介。今年も懲りずにやってみるわけであるが、好きな両チーム故かよくよく見比べると実に似ているところが多いことに気づいた。もちろんチームとして戦うわけで個人同士の比較はナンセンスかも知れないが、しかしその共通項の多い個人同士の対決として見てみるのも面白いのではなだろうか。そこで今回は少々強引な部分はありつつも、1対1のマッチアップ式に選手紹介をしてみたいと思う。

※ちなみに昨年の入れ替え戦前靜甲の紹介はここ→「2008年靜甲チームの紹介」。
※初稿で少々多かった数字の間違いを訂正。

 

【(1)打撃センス抜群、天才肌の左打者対決】
平林真由子(右翼手、25才:神戸常盤女→園田学園女子大)x植松尚子(中堅手、21才:滋賀学園→甲賀医専)
細身の左打者にして打撃センス抜群。ともに左翼手として日本代表を目指した間柄でもあり、この植松と平林には共通点が多い。そもそもこの企画を思いついたキッカケも、この植松と平林の共通項の多さを感じたからである(個人的な思い入れかも知れないが)。
平林真由子は大学選抜の1番打者も努め、Honda入社1年目から実力を発揮、規定打席には足りなかったが4割6分4厘の高打率を残した。だが翌年は2年目のジンクスか見事に低迷し、今年もそこまでの復活とはならなかった。ただむしろ今年後半からは守備に関して突然本慮を発揮しだしファインプレーを連発するようになり、改めてソフトボールセンスの高さを見せ付けてくれた。左中間や右中間を鋭くライナーで抜くような典型的な中距離ヒッターだが、本人としては小技のできるスピードを売りにしているのか、かなり頻繁にセフティーバントを繰り返す。あのバッティング技術に惚れ込んでいるファンとしては、常に普通に打って欲しいと願って止まないのだが、いつもその願いは叶えられない(笑)。
植松尚子は若いながらも打撃センス抜群の中距離打者で、しかも無条件で応援したくなる甲賀医専出身選手でもある。チームでの役割は「8番打者」だが、好打者をあえて8番に置くのが三井監督が好む打順で、昨年まで白井がつとめたこの8番に今年からは植松が起用されている。その下位を担う中距離打者とはいえこの植松、(2部ということもあろうが)時には試合を決めるような1発も放つ。今年の2部においての一番大きな話題は島根三洋の躍進であろう。その島根三洋との直接対決に敗れた靜甲は最終的に1勝差まで迫られており、もし東芝北九州戦に負けていたら島根三洋に逆転されて入れ替え戦に進むことすらできなかった。その貴重な勝利をあげた東芝北九州戦、敗戦がちらついた6回裏に起死回生の逆転満塁本塁打を放ったのがこの植松だったのだ。いい所では必ず活躍する植松、優勝した実業団大会でも打ちまくり、太陽誘電に惜敗した全日本総合でもしっかりヒットを放ちダイビングキャッチの美技も見せるなど攻守に活躍した。
さてその太陽誘電を追い詰めた総合大会であったが、この植松は一塁にヘッドスライディングした際にベースで左指を激しく突き指して退場するという怪我をしている。リーグ後半を残しての植松の離脱にチーム全体に暗雲が立ち込めたが、幸い最終節に間に合うまでには回復した。靜甲打線における植松の存在は非常に重要であるにも関わらず、常に近い位置から一塁ベースへ危険なヘッドスライディングを繰返してしまう(セーフになりたい必死な気持ちは分かるのだが)。植松自身、いかに自分がチームにとって重要かに早く気づいて、何とか危険な一塁ヘッドだけはやめて欲しいと常々願っているのだが、いつもその願いは叶えられない(笑)。

【(2)チームの大砲はともに大阪育ち】
田中清香(一塁手、24才:大阪親愛→大谷女子短大)x計盛志津子(一塁手、29才:浪花女子→神戸親和女子大)
少々確実性は度外視しても一発長打を期待したい打者が田中と計盛。ともに大阪出身だ。
田中清香は本当ならもっと成長してリーグを代表するような長距離砲になってもおかしくない逸材である。毎年期待されながら伸び悩んでいるが、いつかブレイクする時が来るのではないかと密かに期待している。が、なかなか来ない。昨年後半戦あたりからは長打も出だして今年こそと思われたが、ダメだった。チーム全体の打撃が不調に陥るのに引きずられるようにか引きずるようにか、長打も少ないまま同じように低迷してしまったのだ。しかも巻き返しをねらった後半戦開始直前の足利市長杯で打球を目に当てて病院に送られるほどの重症も負ってしまった。その後なんとかカムバックしたが、前半の不振を払拭するほどにはいたらなかった。期待が大きいものだからついつい評価が辛口になってしまう(笑)。しかしそんなことは言っていられない入れ替え戦である。貴重な長距離打者として真の復活の場にしてもらいたい。
一方の計盛(かずもり)志津子、彼女こそまさに大阪の笑いの血を全身で受け継いだ生粋の大阪のオバ、、、、、マさんである(危うく筆が滑りそうになった。セーフ、汗)。打席でも守備でも、そこだけに別世界の計盛ワールドが繰り広げられるという、とにかく魅力たっぷりの選手である。ただ、プレー以外の部分でいつも笑わせてもらっているだけではなく、Hondaの田中にも勝るとも劣らないパンチ力抜群の打撃でも毎回魅了してくれる。ダウンスイングでボールを叩き潰すようなバッティングはまさに「しばくぞ!打法」だ(笑)。こんな魅力的な選手を2部においておくのは本当にもったいないとずっと思い続けているのだが、なかなかその魅力を伝えきれていない(反省)。もっと計盛に光を当てなければ・・・。

【(3)中村対決はソフトボールセンスで勝負】
中村瞳(二塁手、26(27)才:埼玉栄)x中村夏美(左翼手、21才:常葉菊川)
守備位置も年齢も違うが、ともに小柄らながらセンスの塊のような選手でどちらも大好きな選手だ。
ご存じ中村瞳はHondaが誇る名セカンド。去年までの神がかり的なファインプレー連発の守備は、やや控えにまわることも多かった今年は蔭を潜めたが、それでも一つの守備が流れを大きく変えることもある絶対に落とせない短期決戦では、特にピンチを救うようなビッグプレーがこの選手には期待される。シーズン最終の戸田中戦は、この中村の落球(記録はヒット)で逆転サヨナラ負けという痛すぎる敗戦だったが、打球的にはライトの平林が来ないといけない位置であった。中村の守備を信頼しきって最初から任せてしまった不運な打球だったので、グラブに当てて落とした中村本人は何も引きずる必要はない。彼女自身、二部経験も廃部経験もあるさまざまなことを経験してきた元キャプテンだ、きっと入れ替え戦では変わらぬ好プレーを見せてくれるだろう。もちろん守備だけではなく打撃においても、意外と地味にチャンスを作るようなヒットを放っている。最初から誰も期待していない分(笑)、この中村のヒットはHondaにとって時に大きな意味を持つ。
一方の靜甲は中村夏美。地元静岡の常葉学園出身で高校時代は現織機で大親友の栗田美穂とともに選抜準優勝した。その時負けた相手が小倉商業で、そこのエースで四番でキャプテンの大黒柱がこれまた小柄ながらセンス抜群の現佐川急便・外山美紀であった。右左の違いはあるが、この中村夏美もその外山と同じように小柄ながら打撃センス抜群の打者である。一見しただけでは「この選手、実業団でやっていけてるのかな」と思ってしまうようなか弱い女の子(どう見ても小学生にしか見えない)である。実際に足もそこまで速くなく、パワーもおそらく普通の女子以下だろう。しかしこと打撃に関しては天性のものだろうか、とにかくバットコントロールが素晴らしくて当てるのが巧い。実業団大会で2本塁打を放ったように、いざとなれば飛ばせる技術も持ち合わせている。
靜甲が初めて1部に昇格した2007年に入社。リーグ初打席は第2節の江戸川大会だったか第3節の宮崎大会だったたか。速球で簡単に追い込まれチェンジアップに翻弄されるという全くバットに当たる気配すらしないそれこそ子供のような三振だったが、一冬越したら靜甲不動の1番打者に成長していて驚いた。生まれ持ってのセンスというのはあるんだなと、改めて感心したものだ。今年、誘電をあと一歩まで追い詰めた全日本総合でも大食漢の好投手・伊藤美幸からヒットを放ちチャンスを作った。Hondaの中村とは反対に守備には少々目を瞑らないといけないが(そでもだいぶん巧くなった)、この選手が攻撃でチャンスを作れるかどうかが靜甲にとってはかなり重要なポイントである。

【(4)カギを握るスピード対決】
大橋美奈(中堅手、22才:太田市立商)x尾方栄里(二塁手、29才:日大三島)
ともに俊足のスラッパーであり、なんとか足で相手をかき回したい。
大橋美奈は今年ようやくレギュラーを掴んだ中堅手で、いままであまり期待できなかったスラップバッティングも今年はやっと板についてきて安心して見ていられる様になった。大橋の魅力はなんと言ってもそのガッツ。どう見ても普通に可愛いギャルにしか見えないんだが(笑)、実は非常にさっぱりしたかつ熱いハートをもった性格だ(らしい)。常に一塁にはヘッドスライディングで、真っ黒になったユニフォームでチームを鼓舞する。富山のレオパレス戦で好プレーを見せたようにセンターの守備範囲も広く、華奢に見える体つきながら意外と肩も強い。
今年思わぬ低迷で入れ替え戦にまわってしまったHondaだが、開幕の誘電戦ではこの大橋がスラップで出塁し相手の失策や足を駆使してあっという間にホームに戻って先制するというラッキーガールっぷりも見せてくれた(今年の日本リーグの初得点者は大橋である)。それで勢いに乗れなかったのがチームとしては痛かったが、しかし最後の最後にまた、この大橋のラッキーガールぶりが堪能できるかもしれない。
一方の靜甲のスラッパーはコーチも兼任するベテランセカンドの尾方栄里。性格的に言うと、陽の大橋に対して陰なのが尾方。別に暗いわけではないのだが、実に控えめで大人しくあまり積極的に前に前にと出ないという(勝手な)印象がある。小柄でスピードもあるプレースタイルは「2部リーグの増山由梨」とでも言いたくなる潜在能力はあるのだが、いかんせんその控えめな性格が邪魔をしているようで残念だ。増山の10分の1でもいいからあの積極性、物怖じしない性格、ふてぶてしさ、控え目のなさがあれば(増山に怒られるわW)、もっと2部リーグを代表するような選手になっているのだろうが。しかしそれもまた尾方の特徴か。堅実な守備と小技で裏からチームを支え、入れ換え戦でもほとんど目立たないが大事な役割を人知れずそっと果たしてくれるだろう。

※ちなみに、(中村瞳+大橋美奈) v.s. (中村夏美+尾方栄里)、こうするとよりスッキリするかな。

 

【(5)背中でチームを引っ張る精神的支柱】
菊池亜佐美(外野手、27才:埼玉栄→東邦銀行)x鈴木優子(遊撃手、27才:大垣商→中京大)
菊地亜佐美は名門埼玉栄高出身。セカンドの中村は高校時代の1学年後輩である。最初に入社した東邦銀行が2002年に廃部となると、翌年2部のホンダ栃木に移籍して優勝し1年で1部に復帰した。その東邦銀行には現ソフトウェアのエース藤原麻起子や元太陽誘電の前田智子など好選手が目白押しだったが、この菊地もその一人である。この菊地の良さはバッティングの柔軟性とでも言おうか、あまり苦手な投手がいなく、たとえ外国人投手相手であっても期待を抱かせてくれるバッティングをする。どんな投手にも対応できるベテランならではの巧さを持ち合わせているのだ。右打者ながら常に3割を超えるような打率を残し、ツボにはまればフェンスを越える力もある。とにかく、打線の主軸に若手の多いHondaにとって、このベテラン菊地の柔軟なバッティングはとても頼りになるのだ。Hondaの「あさみ」と言えば本塁打王も獲得した現鬼コーチの金谷麻美が有名だったが、この菊地亜佐美もその麻美に負けないくらいの実績を残してきている。いまやHondaの精神的支柱である。
岐阜の強豪大垣商業から伊藤幸子と同じ中京大を出て靜甲に入社した鈴木優子。見事に三重(我が故郷)をスルーして岐阜→愛知→静岡と東海地方を東上している。靜甲では一昨年は好外野手の前田真美が抜け、昨年からは切り込み隊長にしてムードメーカーの大矢留美が抜け、さらに1部2部を合わせてもトップクラスのスイングスピードを持っていた滝真由美が出来ちゃった婚をして引退した(ママさん選手として戻ってこんかね)。加えて長年チームを支えたコーチ兼任だった峯田さんも抜けてしまった。ただそれでも残った選手で変わらぬ好成績をあげて入れ替え戦にまで進めた原動力は、もちろん河部祐里という一流投手の加入も大きかったが、何より精神的支柱である鈴木優子がしっかりと軸になっていたからであろう。その鈴木の存在感、贔屓目抜きにしても2部ではダントツではないだろうか。成績だけを見ると確かに打率にしろ本塁打や打点にしろ2部で上を行く選手は何人もいるが、しかしその頼りがいでこの鈴木優子を上回る選手はいない。その存在感、まさに靜甲の(2部リーグの)「内藤恵美」である。存在感だけではなく、右打ちの遊撃手で、大事な場面で常にタイムリーを放つなど、プレースタイルも内藤によく似ている。もちろん、内外野の違いはあるがHondaの菊池ともタイプ的によく似ており、この二人が入れ換え戦でどのような活躍をするのかが勝敗を大きく左右するだろう。今からとても楽しみだ。

【(6)試合を決める一発を打てるか。打線の軸はともに捕手で右打者】
ヘザー・スカグリオネ(捕手、26才:オクラホマ州立大)x萩藤寛子(捕手、24才:須磨ノ浦→デンソー→甲賀医専)
右打ちの四番でともに捕手。この二人もチーム内で期待される役割は非常に似ている。
助っ人の4番打者としてヘザー・スカグリオネにはもっと大きな結果をチームは期待しているのだろうが、いつも裏切られている印象が強い。調子のいい時は鋭い打球を飛ばすのだが、粗さの方が目立ってしまう。それでもやはり靜甲にとってはヘザーのパンチ力は脅威だろう。2部では外国人選手がほとんどおらず、公式戦で対戦する経験はほとんどない。所謂コンプレックスというか必要以上に警戒してしまうようだと、それが思わぬ落とし穴になるかも知れない。ヘザーもツボに来れば楽にフェンスを越える力はあるからだ。しかし若干の心配点はやはり守り。特に送球面での不安がヘザーには大きく、1球が命取りになる短期決戦では、チームとしては何とか無理をせずに無難に守ってくれることを願うばかりだろう。
萩藤寛子はもともと守備の非常に巧い大型捕手なのだが、田中美穂というもう一人のいい捕手がいることから今年の靜甲ではDPを任されることが多い。ただ野手からの返球処理の巧さやその強肩で強打は、おそらく今すぐにでも1部リーグの捕手としてレギュラークラスの活躍はできる選手であろう。バッティングでもヘザーに負けないくらいのパンチ力があり、低めの球をすくい上げるなど技術もある。とにかく、高校時代から活躍し、1度は1部のチームにも所属した萩藤。挫折しかけたソフトボール人生をもう一度立て直してとうとうここまできた。昨年は叶わなかったが、この萩藤を見ているとやはり彼女にはもう1度1部の舞台に立たせてあげたいと願わざるを得ない。

【(7)思い切りのいい左打ちの外野手】
島崎望(左翼手、20(21)才:佐賀女子)x白井加奈絵(右翼手、25(26)才:飛龍高)
左打ちの外野手という共通点はあるが、実はこの二人だけはとても対照的である。
小柄で若い選手ながらも4番に据えられることも多いのが島崎望。如何にチームがその思い切りの良さに期待をしているかがわかるだろう。とにかく彼女の良さは気持ちの良いフルスイング。あそこまでいつもバットを振り切れるということ自体がすでに才能だろう。高校時代は佐賀女子で全国制覇して1部のHondaに入社した言わばエリート。ただしHondaに来てからはその大きな期待に応えられていないような気がする。頂点を知っている一流選手であるだけに、今回のHondaの一大事にはきっと活躍してくれるはずだ。
一方、同じ左打ちの外野手だが昨年は8番、今年は2番と島崎と違い地味な役割を担っているのが白井加奈絵。昨年までレオパレスで活躍した白井奈保美の実妹で、地元飛龍から3部の靜甲に入った苦労人でもある。植松のところでも書いたが、2番あるいは8番という打順を重視するのが三井監督の戦い方で、常にその役割を担わされているというのも、この白井を信頼している所以であろう。2003年創部当初の3部時代の靜甲に入社し、優勝して翌年2部に昇格、2006年の入れ替え戦勝利、2007年初の1部昇格、翌年の2部降格、さらに2008年の入れ替え戦敗退と、この白井は実の多くの経験をしてきている。ベテラン大矢留美が抜けたことから、チームでは一番の古参となった。若さと勢いでぶつかる島崎と、靜甲の苦労の歴史を知る白井。好対照だがそれゆえにこの対決もとても興味深い・

【(8)名門高校・名門大学出身対決】
田中美穂(捕手、26才:厚木商→日体大)x加藤恵理(三塁手、23才:大田原女子→東北福祉大)
トヨタの露久保望美など、何人もの実業団選手を出している大田原女子から、ここ数年大学ソフトボール界では敵なしでインカレ二連覇を果たした東北福祉大に進み、主将も務めた加藤恵理。実業団1年目から大活躍し、ほぼ野手部門の新人賞を確定させた。とにかくバッティングがよく、パンチ力もミートの巧さも兼ね備えており、三塁の守備も無難で、今や実力的にはHondaでは一番の選手ではないか。一昨年の戸田中の吉田真由美や昨年のシオノギの橋元春華のように、入れ替え戦では一人の選手の大活躍で勢いで連勝してしまうことが多い。今年はこの加藤が大きな鍵を握っているように感じていたのだが、よく見ると2年続けて捕手。今年はヘザーか田中美穂が鍵を握るか。とにかく、1年目ではあるが大学時代を通してさまざまな修羅場をくぐり抜けてきている加藤のプレーは、チーム全体を落ち着かせてくれるに違いない。
高校ソフトボール界の名門中の名門、厚木商業を出て、これまた数多の名捕手を生み続けてきた名門日体大に進んだ田中美穂。元日本代表のソフトウェア・鈴木由香と同じ経歴で、田中が大学1年時に鈴木が4年生だったはずだ。ちなみにその年の3年生には現織機のキャプテン小森由香がいる。経歴的にはまさにエリート中のエリートだろう。そのエリートの田中だが、2部の靜甲でもしっかりと結果を残してチームを引っ張っている。1部でレギュラーを務めてもおかしくない萩藤を差し置いてこの田中が正捕手に座り続けているのも、この日本トップクラスの高校、大学で鍛えられてきた経験が大きいからだろう。靜甲の投手陣が常に好成績を残しているのも、この田中のリードあってのことなのは間違いない。その捕手としての守りに評価が高い田中だが、打撃の方も大いに期待できる。実業団大会では本塁打3本(だったはず)を含む大当たりだったし、バントなどの小技もうまくチームに貢献する仕事をキッチリとこなす。
とにかく名門出身のプライドを持ち合わせる二人、このマッチアップは互いに何が何でも負けられない。

【(9)とにかく堅実な守りを期待される下位打線の内野手】
松井志帆実(三塁手、22(23)才:掛川東)x村上由里子(遊撃手、24才:とわの森)
ともに下位打線で内野手を任されるという、役割としては地味だが最低限しっかりと守ることを求められる選手である。
村上由里子は今シーズンからHondaのキャプテンとしてチームを引っ張っているが、シーズン最終戦での怪我がどう響いているかが心配である。すぐに試合に復帰したので大丈夫だとは思われるが、ダメな場合は加藤をショートにまわして原田か五十嵐がサードを守るだろう。ただその村上、今年の内野の要としてショートを動かさなかった割にはエラーが多く、あまり安心して見ていられる守備ではなかった。逆に打撃の方では細かい仕事をキッチリとこなせているようで、むしろ攻撃面での繋ぎ役としての期待が大きいかも知れない。ただしそれでも守りはしっかりとやってもらわねば困る。毎回毎回ポロポロやっていては入れ替え戦では命取りになりますぞよ。
一方の靜甲のサードは一年を通して不動だった松井志帆実。彼女にも同じようにしっかりとした繋ぎ役と共に、堅実なサードの守りが期待される。地元静岡出身で、静岡舞台のわかふじ国体時には同じ靜甲の河部祐里やレオパレスの河野美里、森果愛、トヨタ自動車の若月恵子などとともに国体メンバーに選ばれている。身長169cmと大柄だがやや線が細く、それほど長打を期待できる打者ではないが、高校時代から名を知られた選手として落ち着いてプレーをしてくれるだろう。

【(10)チームのエースはともに小柄ながら馬力で押しまくる】
ジーナ・オークス(投手、28才:フラートン高)x河部祐里(投手、23:浜松市立→愛知教育大)
ジーナ・オークスは昨年Hondaに入社した2年目の右腕。身長167cmはアメリカ人にしては小柄な方だろう。もともとHondaにはオークスの前まではケイシー・クラークというこれまた小柄(163cm)な右投手が在籍しており、二人続けての小柄な右投手の獲得だったせいで、つい最近までジーナが昔からずっとHondaにいたと思いこんでいた。ホント、紛らわしいことはやめてほしい(笑)一応、チーム内ではエースという位置づけだが、いかんせんここぞという時に打たれたり四球を出してしまうので信頼度という点では欠ける部分が大きい。庄子も故障がちなことを考えると、今年金尾が成長していなかったらどうなっていたのかと思ってしまう。ただそういう詰めの甘さを除けば、下位チーム相手にはしっかりと試合を作る投球は続けてきていることから、靜甲打線相手にも大崩するようなことはないだろう。
今年2部では1敗だけで15勝をあげた大鵬薬品の鈴木碧。13勝と大躍進した島根三洋を引っ張ったエース古瀬由梨亜。この二人の好投手の防御率がそれぞれ、0.96、0.94である中、河部祐里はそれをはるかに引き離す0.55であった。同じ防御率0点台でも河部の数字は2位古瀬の約半分である。いかに河部が今年の2部で頭抜けた成績を残した投手かがわかるであろう。入れ替え戦でも勝敗の大部分をこの河部の投球が握っているのは間違いない。
地元静岡西部のソフトボールの名門、浜松市立高出身で愛知教育大に進んだ河部。おそらく現役では唯一の国立大学出身選手だろう。投球にもその頭の良さが表れている。並み居る強豪大学出身者とは違い、国立大学出身であることから大学時代に名前がクローズアップされることは少なかったが、それでも地元愛知のリーグでは強豪大学のエースを差し置きベストナインを獲得するなど活躍していた。ただもともと高校時代からその実力は認められていたようで、静岡が舞台になったわかふじ国体では、河野美里や森果愛といったのちにレオパレスに進んだ選手に混じり浜松市立から静岡代表に選ばれている。ちなみに小柄ながらライズボールを駆使して活躍した高校時代のあだ名は「熊五郎」である(笑)。実業団に入った今年の活躍は上述した通りだが、全日本総合での誘電戦では今年本塁打新記録を作った谷川まきを三打席連続三振に打ち取るなど1部の強打者とも堂々と渡りあえることを証明している。Hondaの打線にとってはかなり手強い相手になるだろう。

【(11)コントロールで勝負する右投げ本格派対決】
鈴木麻美(投手、20(21)才:飛龍)x金尾和美(投手、24(25)才:雄山→日体大)
このよく似た両チームは2番手投手までそっくりである。
金尾和美は富山の雄山高を出た後日体大に進んだ大型投手。球速はさほどでもないがコントロール重視の投手で、昨年までは並以下の投手だったが今年ようやく実力を発揮して頭角を表し、1部でもしっかりと試合を作れる好投手に成長した。いやもともと大学時代はユニバーシアードにも選ばれていたような投手、成長したというよりようやく本来の力を出せるようになったということか。
春先の熊野での織機戦の好投を見たとき、強豪の織機打線が金尾のペースに巻き込まれて打たされて抑え込まれたのを見て今年はやるのでは、と思ったが、実際シーズンに入っても好調を維持して良い投球を続けた。ただ金尾もジーナ同様に、1試合を通じて好投するという試合がなく、どこかで1度捕まってしまうような投球を繰り返した。1試合でも完封するような投球が出来ていれば自信にもなったであろうが。ただやはりジーナも投げてみないとわからない部分があることからも、入れ替え戦でも金尾の肩にかかる場面もきっとあるだろう。
一方の靜甲の鈴木麻美は大柄とはいえ金尾には身長で5cm、年齢で4歳下回るが、一部リーグで残した実績ではすでに上を行っている。2007年、前年の入れ換え戦でエース東瑠璃が好投し初の1部昇格を決めていた靜甲に入社。その年高卒1年目ながら、五輪前で全盛期の西山、山田、馬渕を擁する日立ソフトウェア戦でエース遠藤と投げ合い3-2で勝利したのである。不調時にやや打たれることもあったがそれでも1年を通して1部で活躍し、規約改定年ということで2年目の瀬川絵美と同時に投手部門の新人賞を獲得した。昨年の入れ換え戦ではエースとして出場してシオノギと対戦。1試合目は滅多打ちの大敗であったが連投の2試合目では見違えるようなピッチングを披露し、敗れはしたが7回を1点に抑えて鈴木麻美ここにありを見せつけた。今年は新人ながら2才年上の好投手河部の加入で2番手に甘んじたが、それでも河部とほぼ変わらないチームの半数近い回数を投げてリーグ上位の防御率も残している。入れ換え戦は二日で最大3試合の短期決戦である。河部がいいとはいえどこかで鈴木麻美が繋がないといけないだろう。1部で強烈な印象を残した2007年の靜甲で新人ながらエース級の活躍をした鈴木麻美。大事な大事な入れ換え戦で靜甲の本来のエースとしての意地を発揮して欲しい。

【予想スタメン】
(靜甲)       (Honda)
(7)中村夏美    (8)平林真由子
(9)白井加奈絵   (4)中村瞳
(6)鈴木優子    (7)島崎望
(D)萩藤寛子    (2)ヘザー・スカグリオネ
(3)計盛志津子   (D)菊地亜佐美
(2)田中美穂    (5)加藤恵理
(5)松井志帆実   (3)田中清香
(8)植松尚子    (6)村上由里子
(4)尾方栄里    (8)大橋美奈
(DEFO-1)河部祐里 (DEFO-1)ジーナ・オークス

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