【2009年決勝トーナメント第1試合:織機 vs レオパレス~井上の値千金の一打でレオパ逆転勝ち!】

【決勝トーナメント第1試合】

レオパレス21 000 0030…3
豊田自動織機 000 1000…1
レオパ:ティンチャー-ティッカム
織機:バークハート-トッピング
(三):永吉(レ)
(二):田中(織)、井上(レ)

 

<無死満塁策、是か非か?>
6回裏、1-0と織機のリードで迎えたレオパレスの攻撃は、先頭永吉の三塁打で無死三塁となる。この場面、織機は無死ながらも満塁策をとった(明確に敬遠の形を取ったわけではなかったしサインはどうかわからないが、明らかに満塁にしてもいいという意識はあっただろう)。この満塁策が結果的に裏目と出て逆転されたわけで、試合直後はこの疑問符だらけの(と思いこんでいた)満塁策を一番の敗因だと感じかなり悔しい思いをしていたのだが、しかしあとになって冷静に考えてみると、そうそう簡単に批判などできない非常に難しい場面だったことがわかった。
1点リードの終盤6回で無死三塁、打者はティッカム。同点にされるのは仕方がないとしても逆転本塁打だけはどうしても避けたい場面。ティッカムには一昨年の決勝トーナメントでも昨年のリーグでも痛いところでホームランを打たれており、十分すぎるくらいに警戒しなければならない。さてそこで警戒に警戒をしてかあるいはもう勝負せずに歩かせた場合、である。無死で一三塁となって迎えるのは何でもできる小野奈津子。この試合も初回に、白井の好返球でタイムリーにこそならなかったがレフト前ヒットを打たれており、リーグ後半戦でも三走との間にエンドランを決められているなどある意味一番嫌な打者である。三塁走者も永吉であり、この一三塁で小野を迎えた場面では1点を覚悟するだけでなくうまく繋がれると無限にピンチが広がってしまうような危機感をも抱きかねない。
つまり、無死三塁からティッカムを歩かせたとして、無死一三塁で小野を迎えた時点ではさらに追い詰められた気持ちになってしまうのだ。
そうすると残る選択肢としてはもういっそのこと塁を埋めて満塁とし、長打はあるが小技という面ではあまり警戒する必要がない井上勝負というのは、実は十分にあり得る作戦だったのかも知れない。もちろん一か八かのティッカム勝負でも良かったかも知れないが、どちらにせよティッカムと勝負するかさもなくば満塁にまで持っていくという二者択一の場面だったのだろうという結論に達した。何も1点もやりたくないという欲をかいた作戦というだけではなく、1点は覚悟したとしても逆転されないというためにも必然的にそうなってしまうのかもしれないというわけだ。
ただ結果的には井上に決勝の3点二塁打を浴びてこの作戦は大失敗に終わったのだが、それとて井上がエンドラン時のボール球を空振りせずファールで逃れ、最後は低めの球を完璧に捉えるという彼女の執念の賜。あの場面であの打撃をした井上が素晴らしかったのであって、試合巧者の両チーム両ベンチの戦いは非常に奥深いものだったのだ。

 

<織機には不運だった3本のホームラン性打球>
この試合、あわやホームランかというような打球が3本あったが、その全てが結果的に見ると織機に対して不利に働いたのではないか。
1本目はもちろん田中幹子の先制の一打。走者二人を置いて芸術的なまでに美しいフォームから放たれた会心の一撃は、しかし当たりが良すぎてライナーでセンターフェンスを直撃。あとほんの少しだけ角度がついて上がっていたらスリーランで試合が決まっていたはずだし、逆にもう少し当たりが弱かってもよかっただろう。そうすれば一塁走者も還って2点先制できたかもしれない。
この織機が放った1本は当然として、レオパレスが放った2本についても織機にとってはむしろフェンスを越えてくれたほうが良かったかもしれない。
ライトフェンスを直撃した永吉の三塁打も、走者が三塁でとどまってしまったことでその後の攻め方に苦慮して結果的に傷口が広がってしまった。もちろん、そういう試合の流れの機微こそがソフトボールや野球などのボールゲームにおける醍醐味の一つではあるのだが。
そしてもう1本は5回の田中梢子の一打。飛距離十分の完璧な当たりでタイミング的にもほぼ完璧に捉えていたのだが、ほんの数センチ、ポールの左側を通過した。あの時点でホームランで1-1となっていればまた違った展開になっていただろう。
それにしてもその田中梢子である。前回の決勝トーナメントでは決勝戦に最後の打者として代打で出てミッシェルスミスに手も足も出ず見逃し三振の倒れたのだが、2年を経てそのミッシェルの後継者のバークハートからホームラン性の打球を放てるまでに成長した。守備も一年間無難に守りきり、今年は大いに飛躍の年になった。来年は本格的にレオパレスの主軸打者としてリーグ戦でも活躍してくれるだろう。

 

<最後まで策無しの打線、戻らなかった調子。それでもやっぱり、織機は織機>
監督のルーシーの好みなのだが、織機の打線はとにかくその一打席に選手の全力を発揮させてあげるような形で試合を進める。昨年1年間で犠打数が最も少なかったように、織機は犠打やエンドランをほとんど使わずとにかくがんがんバットを振りまくる。「ヒットでも詰まらされたら負け」、逆に「アウトになっても完璧に捉えていたら打者の勝ち」。そういう価値観で実にのびのびとソフトボールをプレーする。
ただ勝っているときにはいいのだが、今年の後半戦のように負けが続くと攻撃がとにかく「淡泊」に見えしかも打線は「策なし」で、悪く言えば「勝利への執念が感じられない」というように見えてしまう。
しかしこれもチームカラーなのだ。この試合の後も、ファンが悔しくて生中4杯目を買いに行こうとしているのに負けた選手は悔しさを微塵も見せずに笑顔で談笑していた(もちろん悔しさをにじませている選手もいた。むしろ控え選手に)。しかしこういうふうに負けたら負けたでさっさと忘れてすぐに明るく前向きになれるチームカラーもまた織機の魅力の一つ。また来年も同じようにガンガンとバットを振り回してもらいましょう(笑)。

 

<抜群の勝負強さ、最後に花を咲かせた名選手>
さてその逆転の場面、作戦はどうあれやはりあそこで走者一掃の二塁打を放てる井上絵里奈のバッティングは素晴らしいとしか言いようがない。今年は若手が多く出てきたレオパレスにあって、前半戦は時にスタメンを外れ代打で出るだけという試合も続いた井上。観戦した試合での井上はスイングの切れもなく、あっさりと簡単に三振してしまうなど、もう全盛期のバッティングは戻らないのだろうかと感じたこともあった。しかし、夏場以降、チームがベスト4争いの佳境に差し掛かるにつれて徐々にバッティングの調子を上げてきて、8節以降では毎節重要な役割を担ってきた。レギュラーシーズン最後の誘電戦での決勝ホームランに、決勝トーナメントでの試合を決める二塁打と、本当に頼りになる凄い打者だというのを改めて感じさせてくれた。
一昨年の決勝トーナメントでも、その年限りで引退したベテラン渡邊潤子が流血しながらも頭から滑り込んだ気迫の三塁打があって上野ルネサスを撃破したように、若さだけがクローズアップされがちなレオパレスにおいて、しっかりと役目を果たすベテラン選手の存在こそが毎年勝ち進める大きな要因だろう。


 

【先攻:レオパレス21】
1(8):河野美里
2(4):藤本索子
3(9):永吉理恵
4(2):ナタリー・ティッカム
5(7):小野奈津子
6(D):井上絵里奈
7(3):伊藤綾香
8(5):田中梢子
9(6):蔭山遥香
DEFO-(1):エンジェラ・ティンチャー

 

【後攻:豊田自動織機】
1(7):白井沙織
2(8):狩野亜由美
3(5):古田真輝
4(2):ジェニー・トッピング
5(D):小森由香
6(6):内藤恵美
7(9):田中幹子
8(3):長澤佳子
9(4):酒井かおり
DEFO-(1):ケイティ・バークハート

 

【1回表:レオパレス】
河野:右飛
藤本:二ゴロ
永吉:四球
ティッカム:四球
※際どいコントロールに苦しむバークハート
小野:左前打
※3-2からランナー突っ込むも白井からノーバンでドンピシャストライク返球!


 

【1回裏:織機~0点】
白井:遊内野安打
(投手強襲)
狩野:二飛(バスター失敗)
古田:右飛
トッピング:二ゴロ
※無死の走者を進めることもできず

 

【2回表:レオパ~0点】
井上:空振り三振
伊藤:空振り
田中:遊飛

 

【2回裏:織機~0点】
小森:二飛
内藤:右直
田中:左飛

【3回表:レオパ~0点】
蔭山:右飛
河野:左飛
藤本:空振り三振

 

【3回裏:織機~0点】
長澤:遊飛(ツマリ)
酒井:四球(ストレート)
白井:四球
☆狩野の時に二走の酒井がティッカムからの牽制でアウト。完全なボーンヘッド
狩野:遊飛

 

【4回表:レオパ~0点】
永吉:遊ゴロ
ティッカム:四球
☆2球ボールの後に代走川上
小野:四球(ストレート、全部際どい球)
井上:二飛
伊藤:二飛

 

【4回裏:織機~1点】
古田:遊ゴロ(ツマリ、初球)
トッピング:左前打
☆トッピングに代走横野涼
小森:二飛
☆3球目に横野が二盗
内藤:四球
田中:中越え先制適時二塁打!



長澤:遊ゴロ

 

【5回表:レオパ~0点】
田中:空振り三振(ボール横50cmのホームラン性ファールを放つも)


蔭山:三飛
河野:死球
藤本:捕邪飛

 

【5回裏:織機~0点】
酒井:二ゴロ
白井:四球
狩野:三邪飛
☆隙をついて白井が二塁に走るもアウト…

 

【6回表:レオパ~3点】
永吉:右翼線三塁打(ライトフェンス直撃)


ティッカム:四球(ストレート、敬遠)
小野:四球(ストレート、敬遠?)
井上:右中間3点適時二塁打


伊藤:一ゴロ(バント失敗三封)
田中:遊ゴロ閉鎖打

 

【6回裏:織機~0点】
古田:見逃し三振
トッピング:中飛
小森:三飛

 

【7回表:レオパ~0点】
蔭山:右飛
河野:投ゴロ
藤本:右飛

 

【7回裏:織機~0点】
内藤:中飛
田中:遊飛
代打本田:右前打
代打池原:空振り三振



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