【今年の2部リーグを占う最大の山場~第4節・靜甲 vs 日立マクセル】

【2日目A面1試合目:日立マクセル 2-5 靜甲】

 さてこの試合が今年のホープセクションの、いや2部の優勝の行方を占う上でも最も重要な試合になるだろう。2時間近く前から球場入りしているマクセルに遅れること一時間。かなり遅めに球場入りしてからは男子投手に投げてもらってバント練習を繰り返していたのが靜甲。遅れてきたのにもそれなりの理由があったはずで、何度も靜甲の試合を見てきたが試合前の様子としてこの1試合にかける意気込みは今まで以上のものだった。
 一方のマクセルは呂投手が先発ということもあるがそれ以上に前半戦4点差勝ち(4-0)していることが大きく、一つの目標としてたとえ負けたとしても3点差以内なら御の字、といった思惑があったはずだ。ただそうは言っても僅差で競り合うと踏んでいたはずで、まさか呂投手が5点も取られるとは思ってなかっただろう。序盤から靜甲の活発な打線に失点を重ね一時レッドゾーンの4点差を付けられた時はかなり焦りも感じたに違いない…。

※ホープセクションの勝敗と点差について
 もちろん勝つに越したことはないマクセルだったが、たとえ負けたとしても3点差なら今後勝敗が並んだ時に得失点差プラス1で上に立てる。もし4失点で±0になると次に考慮される「総得失点差」では22-1の大勝がある靜甲に追いつくのは不可能だ。従ってマクセルにとって「3点差負け」が許される最大の点差だったわけでその最低限のノルマを果たしたことになる。
 結局第4節終了の時点で9勝2敗、8勝3敗となった靜甲とマクセル。東海理化と島根三洋もともに1敗し8勝3敗となったので靜甲が単独首位に立った。残す最終節はマクセルは上位陣対決はなし。逆に靜甲は東海理化と島根三洋との対戦を残している。もし仮に靜甲が東海理化に敗れた場合、東海理化が残り全勝し靜甲と星が並ぶと前半戦も勝っているためにもちろん靜甲より順位が上になる。先に述べたようにマクセルと並んでしまうとマクセルが上になるため、靜甲は一気に三位に転落しプレーオフ進出も逃してしまう。マクセル戦の勝利があのまま4点差なら、マクセルと並んでも上に行けるため最終5節でどこかに1敗してもほぼプレーオフ進出は間違いなかった。つまりあの「3点差に戻したマクセルの1点」は靜甲およびマクセルにとって「1勝」に近い価値があったのだ。
 ただそれは机上の計算でのこと。3点差だろうが1点差だろうが靜甲は勝ったことで勝ち数で一つ抜けることができた。残り3試合を全勝すれば文句なく自力で1位通過ができるわけで、細かいことを考えずに目の前の試合に全力でぶつかるというチームカラーそのままにこの試合の結果も「勝った」という事実だけを前向きに受け止めているに違いない。
 そしてその運命の最終第5節は1ヶ月以上も先のこと。楽しみは残しておいておこうというソフトボール協会の粋な計らいなのだろう(笑)


さて前置きが長くなったが、試合を振り返りたい。

【テーブルスコア】

 

【1回表:マクセル0点】
 試合の立ち上がりは実業団大会決勝とまるで同じパターンだった。2番の加藤が三塁打ではなく二塁打で出塁したのが違ったが、得点圏に走者を置いた場面で迎えたのはマクセルのクリーンナップ。実業団大会では靜甲の河部が力勝負で三番小林、四番高崎をインコースで詰まらせたがこの試合もVTRを見るように同じ攻めで、2打者をともに詰まらせて内野フライに打ち取りピンチを切り抜けた。
<加藤の二塁打。もう「交通事故」とは言わない(笑)>



<河部の投球に詰まらされる小林。高崎の飛球を計盛がダイビングキャッチ>

【1回裏:靜甲2点(靜甲+2)】
 靜甲は先頭の植松が四球で出てその後迎えたのは3番の原田。この2部最強の打者がこの場面は幸運にも送る場面ではなく力勝負の場面。呂投手の投球を完璧にとらえる右翼線三塁打でいきなり先制点をあげると、間髪入れずに4番鈴木優がスクイズを決めて2点目を奪う。この打球、タイミングは完全にアウトだったが呂投手が至近距離から強く暴投してしまう。
<原田の先制三塁打、鈴木優のスクイズ>

【2回裏:靜甲1点(靜甲+3)】
 懸念したマクセルの守備に乱れが出る。植松の中前打で一塁から三塁に向かった尾方を刺すために阿部が三塁へ送球すると、その間に打者走者の植松も二塁へ。三塁手小林から二塁への送球が悪送球になってしまい痛い追加点を与える。これで3点目。マクセルは2回にしてはやあと1点もやれなくなってしまう。
<植松のヒットとサード小林の悪送球>

 

【3回表:マクセル1点(靜甲+2)】
 なんとか点差を戻したいマクセルは簡単に2死を取られたあとに1番阿部が左越えにエンタイトル二塁打。続く加藤が左前にぽとりと落とし阿部が間一髪で生還。好投の河部が最も注意すべき打者に2死から連打されるというなんとも後味の悪い失点で再び2点差に。

 

【5回裏:靜甲2点(靜甲+4)】
 しかし今日の呂投手は明らかに調子が悪かった。球の走りの悪い呂投手では靜甲打線に捕まるのは目に見えている。
 先頭の植松が左中間とショートの間にぽとりと落とすと好走塁で二塁打に。白井が犠打で三塁に送ると原田との間にエンドランを成功させ再び3点差とする。そしてこの時点で2死無走者となるがここから靜甲打線が繋がる。4番の鈴木、5番の計盛がセンター前でチャンスを作ると、6番のキャプテン萩藤がレフト前に待望の4点差となるタイムリーヒット。さらに呂投手にはめっぽう強い靜甲の代打の切り札、菊池が左前に会心のヒット。しかし当たりが強すぎてレフト加藤からも好返球が送られ計盛が間一髪でホームタッチアウト。安全圏の5点差にすることはできなかった。
<萩藤のヒットで鈴木が二塁から生還>



<菊池のヒットで計盛ホームを狙うもタッチアウト>

【7回表:マクセル1点(靜甲+3)】
 このまま4点差で終わると非常に厳しくなるマクセルは最終回に執念を見せる。先頭の4番高崎が中前打で出ると4点差ビハインドながら5番の林が送りバントをする。明らかに得失点差の点差を考え、なんとか「1点」を取りに行く采配だ。ここで打席に入ったのは代打の河瀬。一本を期待してのことだろうが、河部に頭の高さの速球を2球振らされツーストライクとなり、まるでタイミングが合わなかった。が、ここでの河瀬の執念が結果的にチームを救った。河部の決め球は絶対の自信を持っているインコースへの速球。詰まらせてポップフライを上げさせる投球がやや内よりへ入ると、河瀬が逃げずに当たりに行く。もちろん球審が死球判定を出した以上死球であるわけだが、しかしこの場面だけは逆にうまく当たりに行った河瀬を褒めたい。そしてその勢いをかって続く強打者和田がライト際にホームラン性の打球を含む2本の安打性のファールのあと、一塁手計盛のグラブを弾く強烈な打球の強襲二塁打を放ち、喉から手が出るほど欲しかった1点を奪い取ったのだ。
 結局3点差で試合が終わり、負けたマクセル側に安堵の表情が浮かんだ。
<高い球に2球つられた河瀬(上)、インコースを避けずに執念の死球えで出塁(下)>



<強打者和田が値千金のタイムリー二塁打>



マクセル 001 0001…2
靜甲   210 020x…5

 


 

 前半戦、実業団大会決勝と2度の完封負けを喫した呂投手に対し11安打5得点で完全にリベンジを果たした靜甲。次に対戦する機会があるとすれば、それは勝った方が1部に上がれるというプレーオフの最終戦である可能性が高い。そのときは、2010年の全てをかけた両チームの死闘が繰り広げられることになるのは間違いない。

 

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