【2010年飛躍した選手~投手編】
野手は毎年何人かは飛躍した選手が出てくるのだが、投手に関しては「毎年」というわけにもいかない。そんなわけで一昨年、去年と特にあげなかったのだが、今年はやはりこの二人をあげておかなければならないだろう。
☆☆栗田美穂(豊田自動織機・4年目・22才)
(2007→2008→2009→2010)
試合数:1→0→0→8
投球回:0→0→0→18.7
対打者:*→*→*→71
被安打:*→*→*→11
投球数:*→*→*→299
奪三振:*→*→*→7
防御率:*→*→*→0.00
過去3年間はリーグ戦の登板無し。試合に出たのも1年目に1試合だけで、しかもこの時は地元刈谷大会ということで社員への顔見せの代打出場だった(実はバッティングセンスもなかなかいい)。
4年目にしてようやく訪れた初登板の機会は、記録的大勝をした第1節の戸田中戦。先発した江本姉が大差試合ということで早々に退くと、中継ぎをして運良く勝ち投手にもなった。
しかしもともとボールにスピードがあり実力は十分認められていた投手。これをきっかけにして投げる機会が手に入ると、その後は第2節のシオノギ戦、第3節の佐川急便戦、第4節の伊予銀戦、第5節、第6節のトヨタ戦、第7節のルネサス戦、第9節のHonda戦と、全てリリーフではあるが18回3分の2に登板し無失点と素晴らしい投球内容で、今年は実績と経験を大いに積み重ねた1年となった。特に第5節以降に対戦したトヨタ(2試合7回無失点)、ルネサス(2回無失点)といった強豪や、後半調子の良かったHonda(2回無失点)相手に計11回無失点に抑え続けたことは来年以降のさらなる飛躍を予感させるに十分な結果だろう。上野、アボットと並ぶような投手が加わるといううわさの来年、織機が優勝できるかどうかは、この栗田と宮本直美の日本人投手二人がいかにリーグ戦で活躍しサポートできるかにかかっている。
☆金尾和美(Honda・4年目・26才)
(2007→2008→2009→2010)
試合数:6→9→15→12
投球回:19→41→54.7→48.3
投球数:327→628→1013→853
対打者:92→199→260→222
被安打:28→59→70→64
奪三振:6→15→19→9
被本塁:3→5→5→2
防御率:5.07→4.44→2.82→3.04
勝利数:0→0→0→4
大卒投手ということもあり1年目から登板機会は多く、特に3年目の去年などは規定回数以上の投球回で2点台の防御率と十分な実績を残してはいたが、しかし「0勝」が示すように大事な試合や大事な場面での登板というよりやや楽な場面、楽な相手での登板が多かったような気がする。もちろん入れ替え戦での好投は非常に大きかったのだが、やはり初勝利をあげてもらわないとチームの「日本人エース」ということすら憚られてきた。それが今年は一気にその壁をぶち破ってくれた。
初勝利は6節のルネサス戦。3回から先発の稲元沙貴をリリーフするとその後はルネサス打線を封じ込め、4回3分の2を被安打ゼロの無失点に抑える好投でチーム2度目のルネサス戦勝利の立役者になった。すると翌日の大鵬薬品戦では2失点ながらも完投してすぐさま2勝目、7節の佐川急便戦では7回無死一二塁からネルソンをリリーフし、内野安打で同点に追いつかれるも勝ち越し点は与えずその後も抑え、延長タイブレイカーでの勝利に貢献して3勝目、最終10節の戸田中戦でも同点の8回からネルソンをリリーフし9回サヨナラ勝ちを呼び込んで4勝目と、後半戦だけで4勝をあげた。
ルネサス相手のロングリリーフに大鵬薬品戦での完投、佐川急便、戸田中戦での延長リリーフ勝ちとそれぞれ印象に残るような投球内容で、Honda初のシーズン二桁勝利に大いに貢献した今年の金尾。その活躍の中身から言っても十分に「飛躍した選手」と言っていいだろう。
ところでふとHondaのサイトでの金尾のプロフィールを見ると趣味の欄に「スキー」と書かれていた。雪国富山出身なのでさもありなんではあるのだが、それで思い出したのがノルディックのクロスカントリースキー競技からマラソンに転向した「野尻あずさ」。
1982年生まれということで85年生まれの金尾よりは3才年上であり高校時代重なってはいないが同じ富山県の雄山高校出身。雄山高校はスキー部が有名で国体や高校総体でも活躍する選手が多く野尻も全日本大会で3位に入るなど在校時から活躍していたらしい。その後陸上に転向してからもマラソンや駅伝で大活躍で、同じ雄山高校出身のアスリートとして金尾もきっと野尻先輩を尊敬しているに違いない。