【2010年日本リーグデータ~新人投手成績】

【2010年日本リーグデータ~新人投手成績】

 今年は例年にもまして「高卒新人投手」で活躍した投手が多かったような印象を受けた。ただたしかに新人賞の井俣茉莉の防御率は素晴らしいがそれをのぞいては、トータルの成績的にはそれほど目を見張るような数字は残せていない。しかしそれでも、たとえば2勝8敗防御率5点弱の西村瑞紀にしても前半のルネサス戦、後半のソフトウェア戦と強豪相手の好投の印象が強いし、また防御率5.66の梅津佳奈子にしても第5節での織機戦、戸田中戦の連勝に貢献した好投が印象的だ。佐川急便の信長香菜、誘電の森真里奈、ソフトウェアの山中しほも、要所で好投しチームのベテラン投手を支えた。これらの高卒投手は、残した数字以上にチームに大いに貢献したと言えるのではないか。
 それに比べ、大いに期待をされて入団した大卒投手、特に戸田中の長南友子やデンソーの重藤恵理佳は期待はずれな結果に終わり、それははっきりと記録にも表れている。長南も何試合か好投はあったが、やはり即戦力として1年目から各チームのエース級に並ぶような結果を求められていたはずだから。

 

【投球回と防御率(防御率はかっこ内)】
50.7(4.97) 西村瑞紀(高卒,伊予銀行)
46.3(3.78) ヒガ・マユミ・ニウゼ(大卒,戸田中)
33.0(7.64) 長南友子(大卒,戸田中)
29.7(5.66) 梅津佳奈子(高卒,大鵬薬品)
27.3(0.51) 井俣茉莉(高卒,大鵬薬品)
25.7(4.36) 信長香菜(高卒,佐川急便)
19.3(3.62) 山中しほ(高卒,日立ソフトウェア)
16.0(4.81) 森真里奈(高卒,太陽誘電)
6.7(4.20) 重藤恵理佳(大卒,デンソー)
4.3(1.62) 山田麻未(大卒,デンソー)
2.0(7.00) 上原楓(高卒,Honda)
1.7(0.00) 松本優香(高卒,シオノギ製薬)
0.3(0.00) 細野了華(高卒,トヨタ自動車)
0.3(0.00) 村瀬文香(高卒,トヨタ自動車)
0.3(42.0) 大工谷真波(高卒,ルネサス高崎)
 ※今年もっとも多く投げたのは伊予銀の西村。規定投球回にはわずか1打者足りなかったが、それでもエースの坂田那巳子を上回るチーム1の投球回でまさに「エース級の活躍」だった。
 後半から活躍し始めた戸田中のヒガが2番目。チームは惜しくも最下位に沈んだが後半チームを支えたのは間違いなくヒガだった。
 梅津、井俣の大鵬勢に佐川の信長も1年目から十分過ぎる投球回。ソフトウェアの山中、誘電の森も高い将来性を感じさせる使われ方だった。

 

【勝利数】
3 井俣茉莉
2 西村瑞紀
1 ヒガ・マユミ・ニウゼ
1 梅津佳奈子
1 山中しほ
1 重藤恵理佳
 ※今年の新人勝ち頭は新人賞も受賞した井俣。特に最後の伊予銀との大一番での完封勝利は2勝にも3勝にも値する大きな1勝だった。

 

【敗戦数】
8 西村瑞紀
7 長南友子
6 ヒガ・マユミ・ニウゼ
3 梅津佳奈子
3 信長香菜
3 森真里奈
1 重藤恵理佳
※負け数の多さも裏を返せばそれだけ期待され使われた証拠。と言いたいところだがそれはやはり高卒新人投手にのみ言えることだろう。
 最初からエース級の活躍を期待された長南にとってはこの負け数7は大いに期待を裏切った数字ではないか。

 

【被打率(20人以上の打者と対戦した投手、かっこ内は対戦打者数)】
0.196(106) 井俣茉莉
0.243( 30) 山中しほ
0.283( 68) 森真里奈
0.286( 20) 重藤恵理佳
0.290(219) ヒガ・マユミ・ニウゼ
0.319(140) 梅津佳奈子
0.320(247) 西村瑞紀
0.333( 22) 山田麻未
0.347(140) 信長香菜
0.382(173) 長南友子
 ※新人賞の井俣が唯一の被打率1割台で1位。投球回数が違うので並列で比較はできないが、20回以上を投げた投手において、被打率1割台は上野、染谷の両代表投手に、アボット、バークハート、ローチの外国人勢と、この井俣だけである。

 

【1試合あたり奪三振率(20人以上の打者と対戦した投手)】
3.15 重藤恵理佳
3.07 井俣茉莉
2.90 山中しほ
2.42 ヒガ・マユミ・ニウゼ
2.33 長南友子
2.18 信長香菜
2.07 西村瑞紀
1.75 森真里奈
1.18 梅津佳奈子
 ※重藤は対戦打者数が井俣の5分の1に過ぎないので参考データ程度ではあるが、それでも一応奪三振率では上回った。大卒投手としての意地。

 

【被本塁打】
8 ヒガ・マユミ・ニウゼ
8 西村瑞紀
6 長南友子
5 梅津佳奈子
2 信長香菜
2 森真里奈
1 山中しほ
 ※ヒガ、長南はよく打たれていた印象が強いが、意外にも西村が本数としては1位タイ。梅津も投球回数が少ない割にはよく打たれた。

 

【1試合あたり被本塁打率(20人以上の打者と対戦した投手)】
1.27 長南友子
1.21 ヒガ・マユミ・ニウゼ
1.18 梅津佳奈子
1.11 西村瑞紀
0.88 森真里奈
0.55 信長香菜
0.36 山中しほ
0.00 重藤恵理佳
0.00 井俣茉莉
 ※1試合当たりに直すと1位が長南。鳴り物入りで入団した長南。怪我の影響や「不正投球=4」が示すように投球フォームに対する迷いから、今年は本当に豪快によく打たれたという印象。
 正直ここまで打たれると本人も気持ちが良かったのではないか(笑)。ただトヨタ自動車戦でアボットと投げ合って7回をゼロ封したように押さえる力は本来持っている投手。来年2部で復活した姿を見せてくれるのが今から楽しみだ。

<素晴らしい成績で新人賞を獲得した井俣(左、大鵬)と1年目からエースとして活躍した西村(右、伊予銀)。四国のライバル誕生>


<5節の織機戦での初勝利と戸田中戦の連勝に大いに貢献した梅津(左、大鵬)、期待を大いに裏切った長南(右、戸田中)。長南には来年今年の3倍返しを義務づける(笑)>



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