古瀬由梨亜(島根三洋電機)と言えば2部リーグに所属する島根三洋が誇る絶対的なエースにして主砲というまさにチームの大黒柱。
その古瀬が2年続けて2部でセクションナンバーワンの投手成績を残しながら、今年もついになんのタイトルも取れず表彰もされなかった。やはりこの素晴らしい投手を正当に評価してやらないといけない。
それにチワワの諭吉にも先日こう頼まれた。
「うちの由梨亜があんな頑張ったのに今年も無冠て、偉いさんはいったい何しちょーよ?しかも熊に負けたって?そら聞き捨てならんだにぃ。熊っていうたらウチら犬界では縫いぐるみのモデルを争う目の上のたんこぶだけん、前から好かんかっただで…。おい猫!何しとるや?お前が黙っとったらあかんがね。はよ由梨亜を持ち上げんと!。。。だんだん」
諭吉に頼まれたら仕方がない。任せとけ。
【2012年ホープセクションでの二投手の成績比較】
今年の2部リーグ、ホープセクションはドリーム☆ワールドの熊澤怜子が7勝0敗、防御率0.19という素晴らしい成績で投手部門の優秀選手賞を獲得した。
ただ入替戦で対戦したシオノギ製薬のご父兄の方が「防御率0.19っていうからどれだけすごいピッチャーが出てくるのかと思ったけど…」というように、この成績は結構ゲタを履かせてもらった部分が大きい。
まずは防御率上位二人のトータルの成績を比べてみる。
<熊澤怜子(ドリーム☆ワールド)>
試合数:13
投球回:37.3
防御率:0.19(1位)
勝ち数:7
負け数:0
<古瀬由梨亜(島根三洋電機)>
試合数:14
投球回:92.3
防御率:0.61(2位)
勝ち数:8
負け数:5
熊澤も13試合に登板し7勝もしていることから結構投げたように思えるが、ただ規定投球回数をわずかに上回る37回で、それに比べて古瀬は2.5倍の92回も投げている。
その投球回数以上に大きな違いがどのチームに投げたかという対戦相手だ。
【2投手の登板相手】
二人の投手が2部のどのチームに何回投げたかを調べてみたのが以下の数字である。
「vs. ドリーム☆ワールド(1位)」
熊澤:-
古瀬:14.6回
「vs. ペヤング(2位)」
熊澤:1.0回
古瀬:8.3回
「vs. NECアクセステクニカ(3位)」
熊澤:4.0回
古瀬:14.0回
「vs. 島根三洋(4位)」
熊澤:3.3回
古瀬:-
「vs. カネボウ小田原(5位)」
熊澤:8.6回
古瀬:13.0回
「vs. 大和電機(6位)」
熊澤:4.3回
古瀬:14.0回
「vs. 日本ウェルネス(7位)」
熊澤:9.0回
古瀬:14.0回
(小計)
「1-4位相手」
熊澤: 8.0回
古瀬:37.3回
「5-7位相手」
熊澤:29.3回
古瀬:41.0回
この数字が全てを物語っている。
今年のホープセクションを見た方ならおわかりのように、4位の島根三洋以上のチームと5位以下のチームは残念ながら戦力差がありすぎた。
古瀬は5位以下の3チームにも3位以上の3チームにもほぼ同じように登板している。
一方の熊澤は、もちろん1位である自チームには投げないが、2~4位の3チームにはわずか8回(1部昇格のペヤングにはたった1回)、逆に5位以下の3チームには29回も投げている。
初めての先発が後半第4節での佐賀大会で最下位のウェルネス相手で、1安打完封。あれで結構投球回も増やせた。もちろん意図したものではないだろうが、こういう登板内容なら正直「0.19」の防御率でも大して不思議でもない。
【古瀬由梨亜を2012年2部の最優秀投手と認定したい】
全14試合中13試合に先発して13完投。もちろん上位チームにもほとんど先発完投してシーズン通しての防御率が0.61だった古瀬由梨亜。
2部の「優秀選手賞」の投手部門は単純に防御率の数字だけで決めてしまっているのでこうなるのは仕方がないが、しかし「優秀選手」という名称である以上はやっぱり「優秀な投手」を選んで欲しい。
今年の優秀選手は個人的には絶対に「古瀬由梨亜」だったと思っている。仕方がないから何か個人的に表彰してあげようと思っている。だんだん(笑)
【古瀬由梨亜の未来】
この古瀬、「2年続けて(の不運)」と書いたが、実は去年も同じように半分以下しか投げていないペヤングの小長井に防御率がわずかに負けて無冠に終わっている。
ただ投手としてはここまで無冠の古瀬だが、実は打つ方で一度タイトルを取っている。
それが入社3年目の2008年。当時の島根三洋には馬場沙織というエースがいたので古瀬はDPでの出場が多かったが、打率4割2分9厘でという好成績でDP部門のベストナインを獲得した。
この2008年の後半くらいから投手としても1本立ちし、打撃も潜在能力を開花させ、2009年以降は投げて打っての大活躍を続けることになる。
ただその後は一度もタイトルを取っていない。
今年の失点14、自責点8が示すように、投げても投げてもバックに足を引っ張られてなかなか勝てない(そういうところがまた古瀬の古瀬らしい哀愁を感じ惹かれる部分ではあるのだが、笑)。バックがもっとしっかり守れば、もっと防御率も下がるしタイトルだって毎年取れるくらいの成績は残せるのだが。
と、端から見ている僕なんかは簡単に思ってしまうのだが、しかし当の古瀬は「バックに足を引っ張られている」なんてことはこれっぽっちも思っていないだろう。
それどころか「いつも打たれてしまってゴメン。ずっと必死に守ってきてくれてありがとう」と、きっと古瀬はそう思っている。
なぜなら古瀬はこのチームを本当に心から愛していたから。
多分このチームとずっと試合をして、辞めるときもこのチームで、チームが無くなるならその時は自分もプレイヤーを終わる、そう思っていたくらいチームを愛していただろう。
他のチームでプレーを続けるなんて彼女の性格からはすぐにはとても考えられないはずだ。
しかしリーグで7年が経ち経験も積み、今年の成績を見てもわかるようにピッチングとしては人生で最高の状態にあるような気がする。
もちろん彼女なら打つだけでも十分1部でも戦っていけるものがある。
新しい環境で、また別のソフトボールに挑戦する後ろ姿を心から楽しみにしているのは諭吉と僕とイレブンさんの3人だけじゃないはずだ。チームのみんなもソフトボールファンも古瀬を知っている人ならみんなきっとそう思っている。
島根三洋で培った技術と気持ちとみんなの期待を背負って、来年は一部の舞台で、あるいは違うユニフォームを着て一部昇格を目指すグランドで、もう一度古瀬由梨亜のプレーが見られることを心から願っている。
<2010年厚木大会での「投手」古瀬由梨亜>
<2010年厚木大会での「打者」古瀬由梨亜>