2008年飛躍した選手
師走も10日を過ぎてそろそろ2008年も終わり。今年のうちに五輪の試合を1試合ずつ振り返って記録を整理してみようと思ってるのだが、その前にいわゆる“ストーブリーグ”の話題としてこれを。2008年シーズンに特に打つ方で飛躍した選手をあげておきたい。新人として1年目から活躍する選手も多いが、ここにあげたように3、4年目にようやく開花する選手もいる。今回は5人(+1人)だけをあげてみたが、そのほかの選手については来年さらに成長してもらって良い成績を残してもらおう。
☆☆☆永吉理恵(レオパレス21)
(2006年→2007年→2008年の主な成績)
試合数:8→2→22
打席数:1→2→62
安打:1→2→24
打率:(1.000)→(1.000)→0.421(3位)
二塁打:1→0→5(2位)
三塁打:0→0→2
なんと言っても飛躍度で今年のNo.1はレオパレスの永吉理恵だ。
昨年までレオパレスのライトと言えば名選手渡邉潤子さんが長年努めてきたのだが昨年で引退。その穴を埋めるのは結構大変じゃないかと思っていたところ、打撃成績としては最終的にはこの永吉が埋めてあまりある活躍をした。
試合数は昨年の2から今年は22に、打席数も2から62と大幅アップ。二塁打5本は佐川急便の中村歩の6本に次いで、ルネサスの岩渕有美、峰幸代、ソフトウエアの濱本静代、誘電の松崎絵梨子と並び2位(ちなみに二塁打の多い選手には各チーム渋い好選手が揃っているのに気づいた)。
ただ昨年まで出場試合数、打席数ともに少なかったとはいえ、2006年が1打数1安打1二塁打、2007年が2打数2安打、2年間で3打数3安打の打率1.000と、好打者としてのその萌芽はすでに見えていたようだ。
出身は福岡だが九州女子や中村学園、小倉商業などの超名門ではなく近年力を付けてきた筑陽学園。今年の結果を見るとスカウトした藤原監督の目の確かさを改めて感じさせる。
☆☆溝江香澄(日立ソフトウエア)
(2005年→→→2008年までの主な成績)
試合数:16→22→22→22
打席数:36→55→62→57
安打:4→9→13→19
打率:0.143→0.196→0.241→0.373(9位)
二塁打:0→1→3→2
三塁打:0→0→1→1
本塁打:0→0→0→2
失策(守備率):0(.000)→7(.943)→2(.980)→3(.972)
レオパレスの永吉がやっと巡ってきたチャンスを一気にものにしたのとは逆に、毎年チャンスを与えられその期待に応え着実に成長して開花したのがこの溝江香澄。2005年の1年目からセカンドのレギュラーとして起用されてから年々打率はアップ。2006年にやや失策が多いものの1年目の無失策を見ても無難に守備をこなせることがレギュラー獲得の決め手になったのだろう。
2005年と言えば遠藤有子投手が17勝のフル回転でリーグ戦を18勝4敗の勝率1位で通過(対戦成績から3位だが)。そのシーズンに高卒の新人選手としてセカンドを守り続けていたのだから、それは期待の選手だったのだろう。とうとう今年は、レオパレスの藤本索子や戸田中の今泉早智、織機の白井沙織、ルネサス伊藤友里恵などの並み居るセカンドの名選手を抑えてベストナインを獲得するまでになった。
ちなみに名前が香澄(かすみ)。かすみと聞いて誰しもが思い浮かべるのが兵庫県は日本海側の銘酒「かすみ鶴」。でもこっちのかすみは漢字が「香住」だから少し違う。
☆☆濱本静代(日立ソフトウエア)
(2005年→→→2008年までの主な成績)
試合数:9→18→18 →21
打席数:12→35→31→63
安打:2→4→4→19
打率:0.167→0.154→0.154→0.322(20位)
二塁打:0→0→0→5(2位)
本塁打:0→0→0→1
昨年までは代打や、DPとしても1年間を通して鮫島憂子との併用として起用され、打率も2割に満たなかった。ただこれを見てもわかるように、なんとかして濱本の潜在的な打撃力をチームに生かしたいという思いが伝わってくる起用法ではないか。今年ようやくその願いが通じ、1年間を通してDPとしてほぼフル出場で打率も3割を超えた(0.322で佐藤理恵に次いで20位)。
長打も増えた。圧巻は5月10日の対デンソー戦。1点ビハインドで迎えた5回裏、1死2塁から同点打を放つとそのまま迎えた7回裏、五輪代表が決まっていたデンソーの好投手染谷美佳から、公式戦初本塁打となるサヨナラツーランを放った。
その後も、20位という打率以上に存在感のある活躍をし、死闘となった後半のトヨタ自動車戦では露久保投手の魔球チェンジアップにも見事に対応し、決勝トーナメントの織機戦ではヒットは出なかったが大投手ミッシェル・スミスの投球を完璧に捉えた惜しいライナーが2本、そして上野からあと1mでホームランという大飛球も放つなど、山田、馬渕と並ぶほどの存在感を見せるようになっていた。
今年で濱本は一つ壁を越えたような気がする。来年はおそらくさらに成長してタイトル争いにも絡むほどの打者になるだろう。
☆酒井かおり(豊田自動織機)
(2006年→2007年→2008年までの主な成績)
試合数:18→22→22
打席数:14→13→48
安打:2→3→14
打率:0.143→0.250→0.318(22位)
二塁打:1→0→3
2006年に新人として入った年は持丸朋子との併用でDEFO(Defence Only=守備専門選手)としてセカンドで起用されていたが、どこでも守れる持丸が外野にまわったことで2007年はほぼ1人でセカンドのDEFOを務めた。
織機は打撃の良いエースのミッシェル・スミスが先発する場合はスミスがそのまま打席に入り、野手一人に対してDPを用いるのがいつもの戦い方であった。そのため酒井に打席があまりまわらなかったのだが、足の怪我や投げることに専念した決勝トーナメントなどにおいては酒井が9番セカンドに入った。そしてその決勝戦、レオパレスのエース、ローチから決勝点のホームを踏むことになるセンター前を放ったのだ。そして不動の遊撃手、内藤恵美のアキレス腱断裂の重傷である。急遽ショートにコンバートされた酒井は、DEFOでの出場もあったが、前年の決勝戦でのセンター前ヒットが自信になったか、打席に起用されることも増えそれにも応え、初めて規定打席に達し打率も3割を超えた。全日本総合でもホームランを放った。
来年はショートに内藤が戻ってくるため起用法は不透明だが、それでもチームとしては打つ方に関しても必要な選手になっただろう。
☆今泉早智(戸田中央病院)
(2007年→2008年までの主な成績)
試合数:20→22
打席数:58→75
安打:13→22
打率:0.236→0.333
二塁打:2→1
三塁打:0→4(1位)
内藤恵美、上野由岐子を生み出した名門中の名門、九州女子校出身で上野の二つ後輩。福岡大を経てから戸田中央病院に入ったガッツあふれる二塁手。オープンに構え全身の力を抜いてリラックスした独特の打撃フォームから確実にミートする打撃には定評があり、チームメイトの柳井がだんだんこの今泉のフォームにそっくりになってきた。内外野のレギュラーがごっそりと入れ替わった2007年新人の年からセカンドのレギュラーとして出場し、怪我もあったが1年目としては十分及第点の成績を残した。今年はそのセンスに磨きがかかり1番打者に定着。3塁打4本はソフトウエアの西山麗と並んでリーグ1位の成績だった。
来年はキャプテンとして戸田中を引っ張りながら、首位打者争いにも名を連ねるかも知れない。
※伊藤綾香(レオパレス21)
(2007年→2008年までの主な成績)
試合数:18→19
打席数:46→53
安打:11→9
打率:0.282→0.214
二塁打:2→1
本塁打:0→3(7位)
1年目の2007年からある程度活躍しており打率も下がっているので今年特に“飛躍”というわけではないのだが、来年はいよいよ来そうな選手として伊藤もあげておいた。本塁打数に関しては確かに成績はアップしたのだがまだまだ全体的に物足りない。
潜在能力としては日本代表の将来の4番も任せられそうな逸材であり、レオパレスの主力打者として若きエース山根とともに新生レオパレスを牽引していってくれるだろう。今年は主にDPとしての起用だったようだが、捕手としてか一塁手としてか、とにかく日本代表の常連選手になるためにもしっかり守れるところをアピールして欲しい。