【トヨタカップ観戦から今年の展望~「デンソー」と「戸田中」】

(オープン戦観戦から見た各チームの期待と課題、熊野オープンの番外編としてトヨタカップで観戦できたデンソーと戸田中についてです)

 

【デンソー】
<投手>
新外国人投手のマーガン・ギブソンがいい。昨年から所属する主砲のバトラーとそっくりな迫力ある体格だが、投球の迫力は当然としてバッティングも鋭く足も速く、身体能力の高さを伺わせる。トヨタカップでは織機との対戦を見たが、好調の織機打線でさえギブソンにはかなり手こずっていた。初見ということもあり情報が何もなかったであろうが、普通の投球をすればどのチームにも良い投球はするだろう。
逆に染谷美佳が開幕1週間前でやや不調。もとよりオープン戦はどの投手も「わざと打たせる」ような配球や投球をすることがあり、トヨタカップで滅多打ちにあってもシーズンに入ると例年通りの好投を続ける投手も多い。ただし染谷が不調を引きずるようなことがあれば、若手の有望株で次代のエース片山由希の登板も増えるだろう。
<迫力の投球フォーム、マーガン・ギブソン>

<若手期待の片山由希。独特の美しい投球フォームも魅力>

 

<捕手>
竹林彩香が成長し安心して任せられるようにはなったが、ギブソンが投手の時はコミュニケーションを重視しサードも守るクリスティン・バトラーが捕手を務めることになるはずだ。しかし元々サードのレギュラーの衣笠が開幕には間に合いそうもなく、その場合は新崎などの若手がサードを守ることになり、守備が少し心許ない。竹林が捕手として常に出続けられるとその辺りも解消するのだが、さてどうするか。染谷が投げる場合はサードにバトラー、捕手竹林になるだろう。

 

<内野手>
ファーストの伊藤良恵、ショートの松本尚子は問題ない。今年はどのチームもベテランが好調で、この伊藤も今年は復活の年になるだろう。少なくとも打率2割で終わった去年のようなことはないのではないか。松本も昨年ようやくがっちりとショートのレギュラーを掴み、今年はさらに飛躍の年になるだろう。
問題はセカンドとショートである。セカンドはベテランで渋い活躍でチームを救ってきた田中美奈子が、サードは常に3割近い打率を残してきた隠れた名選手・衣笠久美が、ともに怪我の影響か開幕から試合に出られない。
竹林が捕手の場合サードにバトラーをまわすが、バトラーの守備が非常に不安である。思い切って若手の新崎涼子に任せ、バトラーをDPにするか、ギブソンが投げる場合にはDPが余るので守備の上手い若手をサードに入れ新崎をDPに入れるか、とにかく衣笠が帰ってくるまでは頭を悩ませることになるだろう。
同じように田中の穴を埋めざるを得ないセカンドであるが、ここはもう野木あやに任さざるを得ない。野木は小柄だがスピード感溢れる元気な二塁手で、若手の期待株だが、気合いが空回りしてよく望月監督に叱られる(笑)。それでも今年は開幕から本人にとってはこれ以上ないチャンスを手に入れられたわけであり、空回りするほどの気合いが入っても仕方がないだろう。9番を任される打撃の方でどこまでやれるかが関係者やファンの期待と不安の集まるところだが、ジュニア世界選手権にも選ばれただけはあり守備の方は安心してみていられそうである(野木の応援団長様にこの辺りはお伺いしたいところです^^;)。
<元気いっぱいセカンドの野木あや。期待に応えられるか>


 

<外野手>
デンソーの外野陣はレギュラーに名選手が揃う。ソフトボールマガジン誌上恒例の選手間アンケートでは織機の小森と並んで常に「チャンスに強い打者」として名前が挙がる打者がレフトを守る東美幸。昨年決勝トーナメントでのミッシェル・スミスからの逆転スリーランも記憶に新しいところで、今年もデンソーの4番打者として神懸かり的にチャンスに強い打撃を見せてくれるだろう。
センターは全身バネのスピード感溢れる好選手・増山由梨。今年もそのスピードでかき回してくれそうだが、特にトヨタに入ったアメリカのエースで身長191cmのモニカ・アボットに対して148cmのこの増山がどのようなバッティングを見せてくれるのか、今年のリーグで最も楽しみな見どころの一つである。
ライトの狩野香寿美はご存じ日本代表のトップバッター狩野亜由美の実妹。ここ数年ライトのレギュラーとして活躍してきたが、昨年ようやく打率が3割を超えチーム1位の成績を残した。今年はいよいよ姉超えの年になるかも知れないし、一躍日本リーグのトップレベルの選手に飛躍するかも知れない。期待の年になりそうだ。

 

<総括>
昨季初めて決勝トーナメントに駒を進めたデンソー。チームの柱であった増淵が引退したが、他のレギュラー陣はほぼ全て残り今年も強豪には変わりはない。新外国人のギブソン投手がソフトウェアやルネサス、織機、レオパレスなどの強豪に対してどれくらい活躍できるかで、2年連続決勝トーナメントへの道は決まりそうだ。その投手のギブソンが打でも期待でき、加えて打てて守れる選手が揃うことから、DPを使わないスタメンになることもあるだろうか。田中、衣笠が不在の影響も響いているのだが、この2人がいない間を若手でどう乗り切るのかも、大きなポイントである。

 

【戸田中央病院】
<投手>
絶対的なエース堤千佳子に全てが託されるチームであり、今年も堤の出来に浮沈の全てがかかっているだろう。昨年まで若手として頑張ってきた稲垣と関が若くしてチームを去った。新人投手が3人入ったが、リーグの試合で使えるようになるまでにはまだ少し時間がかかるだろう。
堤の負担を軽くするには、デンソーから移籍してきた武井智穂によるところが大きくなりそうだ。リーグ屈指の長身で、少なくとも投球フォームは上野由岐子にそっくりである。デンソー時代も期待され県内のカップ戦などではよく投げていたが、結局リーグでは3年間で合計3回の投球回数で終わった。デンソーでは増淵、染谷といった五輪投手がいたこともあり出番がほとんど回ってこなかったが、試合で投げることが確実な戸田中に移籍し、もしかすると眠っていた才能が開花するかも知れない。とにかく、堤の負担を軽くするためにも、武井の投球は重要である。
<移籍の武井智穂には堤千佳子の負担軽減の役割が必須>

 

<捕手・センター>
橋本、高橋、蛭田とレギュラークラスの外野陣が一気に抜けた。手薄な外野陣を補強するため、オープン戦ではなんと名捕手・吉田真由美がセンターに回り、捕手には2年目の高井佑実がほぼ全試合マスクを被っていた。高井も無難に守っていたので期待の捕手であることは確かなのだが、さすがにリーグが始まってからはどうか。大事な試合ではやはり吉田がマスクを被らざるを得ないだろう。
<高卒2年目で捕手を任されそうな高井>

 

<内野手&DP>
サードの宮坂幸恵が抜けた穴を新人の秋山磨貴子が埋める。小柄な右打ちの選手だが、四条畷→日体大と強豪を渡ってきた選手で、スピードもありそうであり、2番サードとして1年を任されそうである(しかし宮坂選手の引退は残念でならない)。ファーストには昨季の新人賞・内田千恵美、セカンドには好打者で今年から主将の今泉早智、ショートは今年飛躍が来される柳井春菜と、昨季からのレギュラーが残った。元々ファーストで昨季はDPのレギュラーだったベテラン鈴木里枝が引退した。DPには2年目大型選手の渡辺瞳が任されそうだ。体は大きいが比較的巧いバッティングもできる選手である。
<大卒1年目からサードのレギュラーと2番打者を任せられる秋山磨貴子>

 

<外野手>
上記したが橋本夕紀子、高橋千春、蛭田菜月といったレギュラークラスがごっそりと抜けた。特に橋本と高橋はいくつものチームを渡り歩いてきた選手で応援していただけに何か時代が一つ終わったような気がしてとても寂しい。
トヨタカップではレフト太田あゆみ、センター吉田真由美、ライト藤田奈央というのがレギュラーだった。太田は昨季代打の切り札として大活躍した選手で、今年満を持してのレギュラー出場である。吉田は説明不要のもはや戸田中の生き字引。恐らく、ずっとチームに残り将来は監督して采配もふるうことになるだろう。
ライトの藤田は東北福祉大から今年入った新人で、期待の高さが伺えるが、とにかく顔が同じ外野手の中條未香子にそっくりなのである。特にほっぺたが。試合で見て「なぜ中條がFujitaというユニフォームで試合に出ているのか。もしかして結婚して名字が変わったのか?」としばらく本気で思っていた。それで外野にはまだこの中條もいるし、元気さではチーム1の東美紀(デンソー東の実妹)もいる。本当に吉田がシーズン通してもセンターを守るのか、それも開幕の楽しみの一つだ。
<ほんとにセンター?大ベテランでチームの精神的支柱の“名捕手”、吉田真由美>


 

<総括>
今年はチームが大きく変わった。稲垣、鈴木、宮坂、橋本、高橋、蛭田、本田と、大鵬との入れ替え戦を経験した選手が揃っていなくなった。昨季と変わらない守備位置の野手は内野の3人だけになりそうだ。各チーム補強もしており、今年も苦しい試合になりそうだが、シオノギと並んでだからこそ応援したくなるチームでもある。新人選手にも活躍してもらわないといけないわけだが、移籍の武井投手に期待するところが特に大きい。武井がある程度頑張らないと、堤投手が過労死してしまうのである(←このネタ押してます笑)。

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